2016年3月16日付の登記・公証局の決定では、取締役の人数が取締役会の定足数を下回る状態になったことに起因して取締役会の機能が停止する可能性に焦点を当てている。
前提事実:
株式会社ユナイテッドワイナリーズ(United Wineries, S.A.)の取締役会は3名の取締役で構成されていたが、そのうち1名が辞任した。2015年3月18日に、残りの2名が取締役会を開催し、諸事項の審議を行うための株主総会の招集を満場一致で決定した。2015年4月28日に株主総会(招集手続きの省略はされていない。)が開催され、取締役会の構成員の選任を含む議案のすべてが過半数により承認可決された。
会社の定款には、取締役会が有効に成立するためには、取締役の過半数(半数プラス一名)が出席をしなければならないと規定されていた。
論点:
*定款では取締役の最低人数が3名と規定されており、
*そのうちの1名が辞任したため、実際の取締役の人数は2名であり、
*取締役の選任その他の事項にかかる決議を行う株主総会を当該取締役2名が招集した場合、
当該取締役会の決議に基づき招集された株式会社の株主総会の承認決議は有効なのか、また、登記することは可能か。
商業登記官は、欠員が生じた状態の取締役会に招集された株主総会が決議を行うことができる事項は、欠員を補うための取締役の選任議案等に限られると理解できるとし、本件の株主総会で決議された諸事項の登記を認めなかった。登記官は、資本会社法第171条を引用し、本件において欠員が生じた状態の取締役会よって行われた株主総会の招集は無効であったため、本件株主総会にて決議された諸事項については登記をすることができないとの見解を示した。
登記・公証局は、会社が永続的に経営機関を備える必要性を示したうえで、異常事態が発生した場合であっても会社が迅速に対応出来る能力を維持することの重要性を唱えた。そして、欠員が生じた状態が経営機関の機能を妨げることがないのであれば、取締役の人数が欠けた状態であっても役員の選任にかかる登記は可能であることを再確認している。
当該決定の法的根拠は、株式会社の取締役会が有効に成立するために過半数の取締役の出席を求める資本会社法第247条2項である。本件の場合、定款の定める取締役の最低人数が3名であるため、2名以上の取締役の出席で取締役会が有効に成立する。
取締役の欠員という事実は、取締役会の成立の有効性を妨げるものではなく、本件で言えば、当該欠員が補充されるまでの間、出席取締役の満場一致による決議がされなければならない。
この結論は、用意されている法的手段(新たな取締役の選任または株主総会における決議)によって取締役に欠員が生じた状態を補填することを妨げるものではない。むしろ、適宜株主総会を招集することで、会社の利益のためにもっとも適切な態様で会社の事業を進めていかなければならない現任取締役の忠実義務に適うものである。
まとめると、
- 取締役会におけるあらゆる辞任又は解任が取締役会の機能停止を引き起こすわけではなく、辞任等に起因して、取締役会の構成人数が取締役の員数の過半数に満たないような場合にそのような事態が生じる。本件は、3名の取締役のうちの1名の辞任であり、取締役の過半数は失われておらず上記とは前提事実が異なることから、資本会社法第171条の適用はされない。
法又は定款により定められた取締役の員数を満たさないが、過半数以上の取締役が取締役会に出席をした場合、当該取締役会において行われた決議は有効とみなされる。他方、法又は定款により、取締役の特別決議による承認が求められるような事項又はその決議に際し特別過半数の取締役の株主総会への出席が要求される事項の場合、この規則は適用されないことを理解しなければならない。
ヴィラ・エドアルド (Eduardo Vilá)
ヴィラ法律事務所
より詳細な情報については、下記までご連絡ください。
2016年4月15日