2025年6月27日から、スペイン・カタルーニャ州では、新しい税制改正の一環として、大口の不動産所有者が住宅や建物全体を購入する場合に適用される不動産譲渡税(ITP)が、従来の倍となる20%に引き上げられることとなった。この措置は、「カタルーニャ税法典」の第641-1条に基づき、住宅価格の継続的な上昇が続く中、不動産投機の抑制を目的としている。

この税制改正の対象となるのは誰か?

この制度は、いわゆる「大口所有者」に直接適用される。
つまり、カタルーニャ州内で住宅用不動産を10戸超、または1,500㎡(平方・メートル)を超える住宅用の建物を所有している個人、または法人が対象となる。

また、バルセロナ市を含む「逼迫地域」に指定された自治体(270以上)では、基準がより厳しくなり、住宅を5つ以上所有している場合にも対象となる。

さらに、仮に区分登記されていない場合でも、2戸以上の住宅を含む建物全体を購入する者も課税の対象となる。
ただし、一戸建て住宅(単独住宅)はこの定義から除外されている。

主な例外:

新たに導入された20%の課税措置は不動産投機を抑制することを目的としているが、想定される対象に当てはまらない事例にまで不当に影響が及ぶことを避けるため、いくつかの重要な例外を設けている。

「大口所有者」と見なされないケース:

  • 使用権(ウスフルクト)や居住権のみを有している者。
  • 自宅(通常の住居)が唯一の不動産資産である個人(この住居は計算対象とならない)。

家族利用による免除:

  • 個人が最大4戸までの住宅がある建物を購入し、それを本人または二親等以内の家族の住居として利用し、かつ全員が少なくとも3年間その場所に居住している場合には、20%の課税は適用されない。

その他の免除対象:

  • 社会的住宅開発を行う事業者(プロモーター)。
  • 非営利団体。
  • 購入物件が、買主自身の事業所や本社として使用される場合。

所有権の取得:

  • もしある人が、有償で使用権者の死亡後に完全な所有権を相続、または取得し、その人が大口所有者の条件に該当する場合は、所有権の統合が完了した時点で20%の税率を適用しなければならない。

カタルーニャ州における一般的な不動産譲渡税ITPの引き上げ

この新しい課税措置は大口所有者だけでなく、その他の市民にも影響を及ぼす。ITPの一般的な税率が不動産の価値に応じて段階的に改定された。

  • 60万ユーロまで:10%
  • 60万ユーロ〜90万ユーロまで:11%
  • 90万ユーロ〜150万ユーロまで:12%
  • 150万ユーロ以上:13%

その結果、ファンドや大口投資家と関係のない多くの売買取引でも費用が増加。

例えば、70万ユーロの住宅の場合、これまでは10%の税率が適用されていたが、今後は11%が課されることとなる。

賃貸市場への影響

カタルーニャ政府の意図は投機を抑制し、価格の上昇を抑えることにあるが、不動産業界の専門家や団体は逆効果の可能性を指摘している。
不動産取得に対する課税が増えることで、賃貸住宅への投資が減少し、供給が縮小し、その結果、賃料がさらに上昇する恐れがあるからだ。

賃貸住宅所有者協会(ASVAL)は、この措置を「非常に厳しい罰則的なもの」と指摘しており、カタルーニャが手頃な価格の住宅不足に直面しているまさにこの時期に、市場から合法的な賃貸物件が撤退してしまう可能性があると警告している。

また、この規則は、不動産を専門的に管理する者と投機目的で所有する者を区別せず、数量的な基準のみを適用しているため、少数の不動産所有者や家族経営の賃貸管理者に不利益をもたらしているとの批判もある。

課税の公平性の原則に対する懸念

20%の課税措置は、その憲法適合性について疑問が生じている。スペイン憲法第31条は、すべての国民が公平かつ能力に応じた課税制度のもとで公共支出を負担しなければならないと定めており、その課税は、平等性と累進性の原則に基づき、いかなる場合も過度の徴収的な性質を持ってはならないと規定されている。

よって、物件の使用目的(例えば社会賃貸用か居住用か)を区別せずに、一律の高い税率を適用することは、不相応であるとみなされる可能性がある。

その他の法令改正

大口所有者への課税措置に加え、カタルーニャ政府が承認した法令には、以下のような優遇措置も含まれる。

  • 住宅購入時の軽減税率5%を適用できる年齢が35歳まで引き上げ。
  • この優遇措置は、現在ではドメスティックバイオレンス(DV)被害者にも適用。

この新しい規定により、カタルーニャは不動産市場における課税面で、トップに立っている地域となった。政府はこの措置を住宅の過剰所有を抑え、価格の上昇を抑制する手段と位置付けているが、不動産業界からは、供給を減少させ、賃貸投資に悪影響を及ぼす恐れがあるとの指摘もある。

この新たな税制改革がその目的を達成できるか、または効果と公平性のバランスをとるために修正が必要になるかは、今後の運用次第で明らかになるだろう。

 

 

松岡研吾

ヴィラ法律事務所

 

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2025年 7月25日