ESPAÑOL | ENGLISH | DEUTSCH | 日本語 |

1 of 34 Pages

会社設立時に“ノウハウ”は出資の対象となり得るか

会社を設立する際、有効に設立するために遵守すべき必須要件について多くの疑問が生じる。そのうち最も重要となるのは、資本金と資本として充当可能となる財産の種類に関する疑問である。 最も一般的なケースは、資本金が全て金銭的に拠出される場合である。一方で、会社目的のために高度な知識が必要とし、その独占性により差別的価値を生み出すような会社の種類のケースでは、機密情報の保管・保護が必要とされるため、「ノウハウ」という名の特定無形の知識が資本の一部に充当可能であるかという疑問が生じる。 2019年12月4日付登記・公証局判断において当該疑問の提起がなされ、商業登記官は、複数の財産構成の一部に、特定のプロジェクト獲得を可能とする商品、または部品のデザイン、製造、使用、管理、商品化のために必要な技術情報によって構成される「ノウハウ」を含もうとした、ある有限会社の会社設立登記の拒否を支持する判断をした。本ノウハウは、会社の設立、発展、及び商業化に必要なビジネスモデルと同様に、会社の知識、特殊能力及び獲得経験の総体として機密として管理されるものと定義された。 本件商業登記官が提起した問題は、会社設立の必要払込に充当し得る財産について以下のように規定するスペイン資本会社法第58条に起因する。 「1. 資本会社においては、換価可能な資産または権利のみが出資の対象となりうる。 2. いかなる場合も労働またはサービスは出資の対象となりえない。」 担当登記官は、「ノウハウ」は、第58条第2項のコンセプトにより近いとし、つまり、労働またはサービスとして扱われるため、資本金の出資の対象とすることはできないとした。 「ノウハウ」の概念を明確にするために登記・公証局は、2005年10月21日付スペイン最高裁判所判決を参照し、一連の異なるアプローチを行った上で、「ノウハウ」は公有に属さず、製品の製造又はマーケティング、サービスの提供、又は事業の組織化に必要な固有もしくは技術知識のパックであると定義し、本知識をコントロールする者は、開示を回避し競合者からの保護に努めることで、優位性を持つとした。 登記・公証局は、当該「ノウハウ」という用語は営業権という用語と同様に義務として扱われるものではなく、無形ながらも資産の一つであるとの見解を示し、その点において、スペイン資本会社法第58条が規定する性質を兼備する、つまり換価可能であり、利益を生み出す資産的性質を有すとした。 また、「ノウハウ」の経済的価値特定の困難、及びその無形性に由来する差押え時の取扱等が別の問題とし存在する。従って立法者側がより頻繁に、会社の「ノウハウ」に関する様々な法的問題についての分類・更新を実行することは、法的安全性の向上に貢献することとなろう。     更なる詳細を知りたい方は以下までご連絡ください。 Jaime Madero va@vila.es   2020年1月31日 バルセロナにて

会社目的はどのように決まるか(2)

1. 適用規則 スペイン資本会社法(LSC)第23条、商業登記規則第117条(株式会社に適用)及び第178条(有限会社に適用)は、会社の活動を構成する会社目的を定款に記載することを義務付けている。 会社目的の記載は商業登記所における定款の登記の必須要件であり、ひいては、あらゆる資本会社の設立に必要不可欠なものである。 2. 登記公証局の見解 スペイン登記・公証局は、会社目的は、産業分類、法的または法人としての事業活動の区分が十分に可能な方法によって決定されるべきとの見解を示している。(同様の多数判断の中から2018年10月9日付スペイン登記・公証局決定より) 上記の見解に加え、商業登記規則が会社目的に含むことを禁止する以下の2つの制限に留意する必要がある。 「会社目的に記載される事業活動の実現または発展のために必要な法的行為」という記載は、取締役の代表権限は会社目的のための行為全てに及ぶため、不必要であるとしている。(スペイン資本会社法第234条第1項に則る) 「あらゆる合法的な商業活動の実施、またはこれに類似的な意味の用語を用いること」は、会社の目的が不確定で包括的なものになることを回避するために制限している。 上記に関連して、登記・公証局は、一般的な用語によって表現される事業活動は、具体的な活動をも内包してしまうため、会社目的から排除するためには、用語のより特定な定義を要するとし、その逆は認めないとしている。 前述の見解では、会社は設立時から、(将来的に、事業活動が実際に発展するときではなく)会社目的を構成するあらゆる活動の完全なる発展を可能とする要件を満たさねばならないという事実と相まって、活動のために特別な規制に準拠することが要請されているが当該規制にしたがっていない場合、そのような事業活動を定款から明示的に削除する必要性を意味している。 例を挙げると、業務実行には学士資格を要する専門的活動を会社目的に含むことは、職業的会社に関する2007年3月15日付スペイン法第2/2007号の強行規定に抵触するため禁止されている。ただし、設立会社がメディア、通信、営利企業、または仲介会社であることが明示的に表明されている場合は、これを例外とする。 3. 結論 スペイン登記・公証局はある判断の中で、本来、合法的でないこと、想定分類内において活動が不可能であることなどを理由に除外されるあらゆる事業活動を、例外的に定款に含むことを容認し、本例外を、無意味もしくは非合法な表現とせず、逆に本例外は、会社目的の具体化に寄与するとの見解を示した。 しかし、株主/出資者が特定な活動を実行することを望んでいる場合、特別な要件を要求する一般的な活動を含める代わりに、該当する特定事業のみを会社目的に含むべきである、とした。 会社目的、及びCNAE番号(スペイン標準産業分類による経済活動コード)の決定方法に関する更なる情報については、2018年5月発行の記事をご参照ください。     詳細を必要とされる方は以下までご連絡下さい。 Carla Villavicencio va@vila.es   バルセロナ、2020年 1月 24日

当事者の合意を得ることなく 管理組合が防犯カメラを 設置した場合

欧州連合司法裁判所は直近判決で、既に規則に置換された1995 年EU指令95/46/EC号データ保護指令に規定された正当な利益を根拠として、当事者の同意なしに集合住宅の共有部分への防犯カメラシステム設置を可能とする規定を、加盟国の国内法に定めることを認めた。 前述指令第7条f)項は、管理者の正当な利益と、対象となる当事者の利益、又は基本的権利及び自由を比較検討する必要性を規定していた。本件の場合、管理者は、区分所有者により構成された組織である管理組合であった。 本件は、ルーマニアのある管理組合が、組合総会にて防犯カメラシステムの設置を承認した決議に対し、区分所有者の一人がプライバシー侵害を理由に反対した事案に発端する。同区分所有者は、居住する集合住宅の共有部分に設置された防犯カメラに記録された個人データの取扱いに同意しなかった。 ルーマニア国内法では、個人に属する性質を有するデータ取扱いは、当時者の明示的且つ明確な同意がある場合にのみ行えると定めていた。但しその例外の一つとして、当事者や脅威にさらされている他者の生命、身体の安全、または健康を保護する目的での個人情報の取扱いを許可していた。 本件判決では、一般に公表され、アクセス可能な個人データベースに保存される場合と、アクセス不可能なデータベースに保存される場合を区別し、データ取扱いに反対した当事者の権利侵害の重大さを部分的に評価しつつ、対立する両当事者の利益の評価を試みた。 当該評価は、一般にアクセス不可能なデータベースに保存されている個人データの対象者の利益と、これに対立する集合住宅住民の安全と安心を保証 (財産、健康、生命保護)の観点から、防犯カメラシステムの設置根拠となる全ての住民の正当な利益の重要性を判断することとなった。 本欧州連合司法裁判所判決は、最終的に、正当な利益に関するルーマニア国内法が、現在はEU一般データ保護規則へ移行・更新されている、当時有効だったデータ保護法(1995 年EU指令95/46/EC号)と矛盾しなかったと判断し、管理者組合が追及する正当な利益の実現(安全の確保と、人及び財産の保護)は特定の影響を受ける区分所有者の権利よりも優先されるべきかどうかの評価を、第一審裁判所判決に準じた。 現在、当事者の同意なしに個人データを取扱うための両当事者間の正当な利益の評価は、EU一般データ保護規則第6条項1項f)に規定されている。同様に、当該評価を行う際には、現行規則の第5条に規定される、データが取扱われる目的との関係における妥当性、関連性、及び必要性に関する基本原則を遵守している必要がある。     詳細を必要とされる方は以下までご連絡下さい。 Andreas Terán Beres va@vila.es   バルセロナ、2020年 1月 17日

通貨でも貨幣でもない 暗号通貨

暗号通貨の性質に関する問いは、特に暗号通貨が通貨あるいは貨幣のいずれかであるとみなす必要がある場合は、学説上の議論及び膠着した姿勢の対象となってきた。スペイン最高裁判所はある刑事事件判決において、この問いに対し暗号通貨は有形物ではなく、また法定通貨とみなすこともできない、との他のヨーロッパ諸国の判例に追随する見解を示した。 上記2019年6月20日付判決は、ある数人の小規模投資家が、各自が保有するビットコインの運用に関しある運営会社との間に高頻度取引契約を締結し、本件会社は手数料を支払う代わりに、配当金がある場合は再投資を行い、全利益を契約満期に支払うとしたケースについての判断を示したものである。高頻度取引契約(HFT)とは、金融市場情報をテクノロジー利用よって獲得しながら、プログラムされたアルゴリズムによって高速、高頻度で自動売買を繰り返す売買取引を指す。本件は、上記契約の終了時に、本運用会社が何かしらの配当金を投資家に分配しなかったことに発する。被害を受けた投資家たちは、これは詐欺及び横領にあたるとして、本運営会社を告発した。 本記事における我々の関心は、本運用会社が意図的に義務を不履行したかではなく、民事的な問題、つまり、本運用会社の投資家に対する資産・負債の所在にある。投資家は、ビットコイン購入のために運営会社に初期投資した法定通貨を損失したため、投資した法定通貨ではなく、ビットコインで賠償するよう請求したのである。注目すべき点は、投資家達はビットコインを運営会社に預入れたのではなく、ビットコインに交換するための法定通貨を預入れたことである。したがって、運営会社が本件高頻度取引契約を遵守せず、契約終了時に預入金が未返金で、投資家が財産的被害を被ったと容易に判断できるとしても、運営会社の詐欺行為の結果として本来返却されるべきビットコインを搾取されたとは主張できないのである。 最高裁判所は暗号通貨の性質に関し、ビットコインは有形物ではなく、また法定通貨とみなされてもいないため、返却不可能であると判断している。それどころか、ビットコインは、非公開ではあるが2100万台の「同名のネットワーク網のアカウント単位」で「確立されたコンピューターネットワークを通して分割可能な方法で取引されている」と定義した。 本最高裁判所判決は、ビットコインとは、「ビットコイン」と名付けられたコンピューター及び暗号化技術により成立するアカウント単位の形をとる無形資産であると結論づけた。アカウント単位の価値はビットコイン取引が実行されるプラットフォームにおける需要と供給により決定されるため、単一的、もしくは統一的な価格を有しない。その結果、ビットコインだけではなく他の暗号通貨に考察を広げてみると、最高裁判所は、契約両当事者により適切に容認された、あらゆる取引時に補償または両替可能な無形資産として扱うが、従来の通貨や貨幣でもなく、ましてや電子マネーでもないとの見解を示した。電子マネーは電子的または磁気的方法により管理される貨幣価値として定義されるが、 (i)発行人に対するクレジットを表象していること、(ii)支払実行を目的とした資金を提供後発行されること、(iii)発行人ではない自然人または法人が受領すること、という条件を満たす必要がある。アナログの通貨でも電子的マネーでもないビットコインは、動産(法定通貨も含む)またはサービスと交換可能な変動価値を有する無形資産として分類するしかなかろう。 先に述べたように最高裁判所は、投資家に対しビットコインによる賠償支払いは不可能であり、投資額(法定通貨による)に本件契約開始から終了時までに受領したであろうビットコインの利益を損害額として加算した総額を支払うことで当該損害を賠償するものと結論づけた。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2020年1月10日 バルセロナ

取締役の責任限定 有限責任会社の解散事由

2019年11月8日付のスペイン最高裁判所判決は、法定期間内に会社解散義務を履行しない有限責任会社の取締役の連帯責任範囲について概説した。 本件は、解散が義務付けられるような状況に至った有限責任会社において、本件の被上告人である取締役が当該会社の取締役に任命される前に生じた債務について、債権者がその支払いを前任の取締役に代わり、本件取締役に対し請求した場合の有限責任会社の取締役の責任限定に言及している。会社解散事由は被上告人である取締役の前任者の任期中に生じている。 まず第一審である商事裁判所は、原告である債権者の訴えを退け、本取締役には本債務の支払義務はないとした。 第二審、サラゴサ県高等裁判所は商事裁判所の判決を破棄し、本取締役に対し、債権者が主張した債務は会社解散事由が生じた後に発生したものであるが、取締役が債務の弁済連帯責任を負うためには、債務の発生前に役員選任を受諾することを要求していないことを挙げ、取締役は本債務の支払いについて連帯責任を負う、との判断を下した。 取締役はこれを不服として本件を最高裁に上告し、上告理由として、第二審判決は以下の2点においてスペイン資本会社法第367条に違反すると主張した。 a) 本件会社債務の発生が、上告人である取締役が本職に選任された日より前であること b) スペイン資本会社法第367条を適用するには、債権者は、債務者である清算会社が債務の一部あるいは全部の支払い能力があったことを証明する必要があること 最高裁は、上記のb)にて陳述された要件はスペイン資本会社法第367条に基づき取締役の責任を追及する場合は適用可能ではなく、同法第241条に基づく個別責任による行動により適用されるものであるとし、これを拒否した。その上で、スペイン資本会社法第367条に基づき取締役の責任を認定するには、会社が解散事由に該当するにもかかわらず解散手続き申立てを行なっていなかった事実、及び会社の負債が会社解散事由の発生日より後に生じた事実で足りるとした。 しかし、a)については上告人である取締役に同意する判断を示した。第一に、会社に解散事由が生じた場合、スペイン資本会社法第367条は以下の取締役の義務を規定する。(a) 2ヶ月以内に株主総会を招集し、解散決議を採択すること、(b)株主総会が成立できなかった場合、同日から2ヶ月以内に裁判所命令解散を申請すること、(c)株主総会で解散決議が採択されなかった場合、または否決された場合、株主総会の開催日から2ヶ月以内に裁判所命令解散を申請すること。 上記の法律上の義務の不履行による一般的な帰結として取締役の連帯責任が生じる、としている。しかし、2013年12月2日付スペイン最高裁判決第731/2013号は、「上記法定義務を履行しない取締役は、会社解散事由が生じた後に発生した債務についても連帯して弁済する義務を負うが、取締役退任後に発生した債務についてはその限りでない。」としていることに留意したい。 本案件は、前任の取締役が会社の解散(破産手続き)を求めたことがなく、債務の発生が会社解散事由発生後、かつ取締役選任前である場合に関し、会社解散事由が発生後に選任された取締役の責任が争点となった。 会社解散または破産申立義務を履行しない取締役に対するスペイン資本会社法第367条が規定する責任の根拠は、「弁済義務の履行に十分な資産保証を享受することなく契約を締結した債権者に対し生じるリスク」にある。しかし本最高裁判決は、会社が解散事由を抱える中で役員変更があった場合、新取締役は解散手続きを開始するまでに2ヶ月間の猶予を有し、上記第367条が規定する義務を履行しない場合に限り、本取締役選任後に発生した会社の債務について連帯責任を負うと判断を示し、選任前及び解任後に発生した債務についてはその責任を負わない、とした。 上記の理由により、債務発生時にすでに会社に解散事由がある状態にあり、かつ取締役が新規に選任された場合でも、訴訟物としての債務が取締役就任前に発生したものである場合、最高裁判所は新取締役には本債務の支払い義務はないと結論付けた。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2019年12月13日 バルセロナ

事業秘密と守秘義務

企業が自社の営業秘密の保護に多大な関心を寄せるのには、多くの理由が考えられる。 2016年6月8日付「企業が開示していない知識・技術・情報 (営業秘密) の取得、利用、不法開示からの保護」EU議会及び理事会指令第2016/943号( 以後「営業秘密指令」という)を受けて、スペインは国内法に置換した2019年2月1日付「事業秘密法」を制定し、第1条にて「事業秘密」について、技術、産業、商業、組織、または財務情報を含むあらゆる情報・知識と定義し、次の要件を満たすものとした。 a) 秘密とは、それを使用する集団に所属していない者には一般に知られておらず、簡単にアクセスできないことを指す。 b) 秘密であることが、実際に、若しくは潜在的にしても、ビジネスの上価値があること。 c) 秘密保有者は、秘密の状態を維持することに合理的な措置を採っていること。 従って、「事業秘密」は、ノウハウ、研究開発、イノベーション(特許の有無に関わらず)、式、材料、発見、過程、ビジネスプラン、供給ネットワーク、マーケティング技術、顧客リスト、価格ポリシー等、が該当すると理解される。 同様に、事業秘密法第3条において、事業秘密違反に該当する行為及びこれに対して行い得る民事訴訟について規定している(第8条以下)。 会社は、会社にとって特にセンシティブとみなす情報に関し、その重要性故に、事業上または労使関係の下で許可されている事業秘密の使用を明確に定義することを目的として、法的規定を以外にも、他の会社(プロバイダー、パートナー、営業等)や従業員との契約書に特定の契約条項を組み込むことにより、情報の秘密性を明示的に表示すること適切である。 守秘義務契約若しくは条項の目的は、機密情報と見なされる情報を定義することと、ビジネス関係または雇用関係が持続している間、若しくは関係が終了した後に、秘密維持のために第三者への開示禁止期間を確定することにある(2年、5年、無期限など)。 加えて、罰金条項を規定することにより、守秘義務違反から生じる可能性のある経済的帰結を、スペイン民法の第1152条規定に従い罰金が損害賠償と代替となることを回避するために、罰金が損害賠償の代替とならないことに明示的に同意することを契約書に規定することが推奨される。 前記の措置をとることにより、法廷での守秘義務違反の証明がかなり容易化され、罰金条項の適用によって、実際に引き起こされた損害の事実証明と金額確定からの負担も回避されることとなる。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es   2019年11月29日 バルセロナ

連帯貢献メカニズムにおける 「転売条項」問題の発生

連帯貢献メカニズムとは、ある選手の契約が終了する前に(国際的な)移籍が実行される際、育成に貢献したクラブに該当選手の移籍補償金支払い手続きに関し、国際サッカー連盟(FIFA)の選手の地位と譲渡に関する規則(Regulations on the Status and Transfer of Players)に規定されたメカニズムを指す。当該移籍金は、選手がかつて所属したクラブチームに対し一定の補償金受領を保証するもので、具体的には、「育成補償金 (Training compensation 今後の記事にて言及予定)以外のあらゆる補償金の5%」との規定があり、「本補償金額は、移籍金から控除され、新しい所属先のクラブが、長期の間該当選手育成に尽力したクラブに対し連帯貢献として支払われるべきものである」とし、12歳から23歳の間所属したクラブが対象となる。 今回本メカニズムは、「転売条項」のような条項の存在により新たな問題抱えることとなった。転売条項とは、ある選手の移籍の際に、旧所属クラブが、選手の将来の移籍時にも移籍金の一定のパーセンテージの金額を受領可能とする契約条項を指す。([筆者の前回の記事]を参照) 上記2つの法制度に基づき、FIFAの紛争解決室とも言えるDRC(Dispute Resolution Chamber)は、移籍金800万ユーロにて合意したある選手の移籍に関し、旧所属クラブが以下の i) 移籍金全額 (800万ユーロ)及び ii) 転売条項による金額 (300万ユーロ) 2つの支払いに対し連帯貢献金を受領する権利があると主張した、二種類の支払い義務 (2種類の補償金)に関する興味深い紛争の判断を示した。 選手の地位と譲渡に関する規則別紙5には、既に記述したように、選手の契約期間中の移籍の場合「あらゆる補償金」全額の5%を控除しなければならないとある。 本規則を誠実に理解すれば、育成にあたった旧所属クラブの意図は本規則の歪曲理解とみなされるべきである。つまり当該移籍は一定の金額(本件の場合800万ユーロ)を、選手が現在所属するクラブ(500万ユーロ)と転売条項の権利を有するクラブ(300万ユーロ)で分配されるとし、結果として、連帯補償金として徴収されるべきは、800万ユーロの5%にあたる金額と理解されるべきである。 しかしながらFIFA規則の該当文言に関し、DRC法廷は、連帯貢献金は、移籍に関連する各補償金にかかるべきであり、この場合は移籍金額及び、転売条項にかかる金額がこれに該当するとの判断を示した。 上記判断は、連帯貢献メカニズムにおいて2重請求にあたる状況を生み出すこととなる。というのも、「転売条項」に関する請求は、移籍金である800万ユーロにかかることは議論の余地がないからである。 しかしながら今回の判断は上記に矛盾し、育成クラブが800万ユーロの5%に、更に300万ユーロの5%を加えた、800万ユーロをベース金額とすると6,87%にあたる金額が連帯公献金として支払われることを義務付けた。 当該判断は、制度制定時の精神からの乖離を意味し、今後の選手移籍への連帯貢献のメカニズムに、移籍金の遅延支払い及び/または規定された条件の理解変動の対象となるといった、明白な影響を及ぼすこととなる。そして、DRC法廷への将来申立てに興味深い先例を残すこととなった。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Andreas Terán va@vila.es   2019年11月22日 バルセロナ

デジタルID: 不完全なコンセプト

商業上の関係、個人的な人間関係、行政機関と市民間のコミュニケーションの過去20年間における急速な進化は、個人の認証(ID)の概念の変革をもたらした。伝統的に個人IDは、個人と特徴的な行為、またはアナロジカルな性質の署名との関連付けに基づいている。 当該方法では、個人は自分自身が何者であるかを、自身の写真及び個人情報、イニシャルまたは署名の表示がある公的文書とその持主を関連付ける明確で特徴的な記号とを対比することで証明する。特定の行為実行のためには、身分証明書及び署名の提示は、個人が出頭する際に本人確認が行われるため、不可避な要件となる。 しかしながら今日では、電子的手段を利用して遠隔的に実行される行為や法的取引が、主流を占めるようになった。銀行との相互関係を例に本件を検証してみよう。今日取引のために銀行を実際に訪問する必要はなく、大抵の操作が、携帯やタブレット、コンピューターに設置されたアプリを通して実行される。この場合操作を有効とするために利用者は、デジタル署名ではなく英数字の識別コードを使用し、その後個人のパスワードを使用する。他のケースでは、デジタル署名が個人または法人が電子的手段を介して相互操作することを許可するために許容された確認方法であり、行政機関によってすでに使用されている。いずれにせよ経済のデジタル化は、テクノロジーが、意思決定を可能にする迅速な取引とプロセス単純化といった二つの発展要因であることからも、論理的かつ主流トレンドであることは間違いない。 「オンライン経済」とも呼ばれるデジタル経済の発展には、その発展を妨害するいくつかの問題がある。まず各国に、異なるデジタル署名作成に関する特定の法律と技術要件が存在することが挙げられる。これらは他国では認識されず、当該相互認識の欠如は、オンライン上での使用を妨げることとなる。第二にオンライン取引は、サイバー攻撃や個人情報の盗難にさらされており、法的安全性が欠如するという認識がある。 EU規則第910/2014号は、「オンライン」上で取引を実行する人物の電子的な本人識別(デジタルID)の使用要件を規定し、上記問題に解決策を与えるために承認された。デジタル署名の作成・管理のために、各加盟国の国内法に含まれるべき技術要件を同一化することで、全てのEU加盟国にて認識されるデジタル署名適格性のコンセプトを確立した。本規則は重要な意義を有しているが、目的達成のためには十分ではなく、デジタル認証のコンセプトの完成のために、自然人・法人とデジタル署名とを安全に関連づける形式の確立が欠如している。例えば、デジタル署名用適格証明書は、電子的手段によって操作・盗難の上、本人の認識がない、もしくは同意のない不正利用につながる可能性があるというのもその一例である。同意なき、もしくは同意を無視したデジタル署名利用は、不正取引の完了、及び不正デジタル人格の作成を招き、被害者に甚大な被害をもたらす事につながりうる。 人物のデジタル人格は、実際の人物にではなく、オンライン上で実行される取引によって残されるデジタルフットプリントによって形成されるので、デジタル署名の不正使用は、利用者の虚偽のイメージを形成することとなり、実際、信用情報機関への登録、特定求人からの除外、医療保険その他の保険料の増額、その他の実害をもたらす可能性がある。デジタル署名保有者とその行為の間に関連性が確認できないことは、本人認証はデジタル機器を使用して実行される取引を容認することで成立していると一般に認識・受容されている状態でありながら、当該デジタル機器の利用者が正当な権限を持つ利用者であることを確認できる媒体が存在しないとなると、深刻なリスクとなる。デジタル署名を保存する電子的手段、もしくはデジタル機器の管理が各利用者に委ねられていることに意義を唱えることは可能であり、一理あるが、操作人物と、デジタル署名を保存し、オンライン上の取引を実行するデジタル機器間の同意の不在、若しくは同意不在の無視が起こり得る危険の回避や、解決策の提供には至らない。法的に有効なデジタル証明書を使用して、ある者によって取引が実行された場合、責任はデジタル署名所有者にある、といった三段論法を受け入れることは、個人情報漏洩の問題を無視するための危険な半真実手法である。 要するに、EU加盟国内で認識可能となるような適正デジタル署名作成のために法的・技術的な枠組みを確立するだけでは、不十分であるという事を認識する必要がある。デジタル機器を使用してオンライン取引を実行する人物がデジタル署名の保有者である、もしくは保有者によって委任された人物であることを合理的に保証する技術的手段の確立は必須要件であり、そうすることで、個人情報漏洩のリスクは制限されるが、そうでない限り、本問題は常にそこに存在することとなろう。上記が可能とならない限り、オンライン取引の法的安全性を適切に議論するには及ばず、ひいては、デジタル経済システムや当該システムへの転換プロセスの減速に関する疑問をもたらすこととなる。 デジタル網を使用した取引実行の汎用は、今後そのような取引の法的重要性と経済ボリュームが増大することを意味し、その結果として、ここで指摘した問題の重要性も増大することとなろう。現在、オンライン認証の使用は、承認をクリックするだけで完了する。そのため、認証者に属する法的および経済的な関連行為と、意志の表明とそれを表明する人物認証の真正性推定の確立は二の次とされている。このような状態は受容されるべきでなく、また、公証人の介入は不動産の売買、金融商品取引の等の特定行為の遂行に必要不可欠な条件であることからも、しばしば法制度に適合しない。その一方で、上記の推定が満たされるように要求することは論理的かつ合理的であると思われ、適正デジタル署名所有者は、該当署名の所有者であることを証明し、取引を実行する意志を証明する目的で、該当する特定の式、アルゴリズム、もしくは該当者と密接に関連する別のタイプの技術要素を適用する必要がある。デジタル署名利用者とその所有者間の本人認証を保証するシステム確立は、デジタルID概念の完成につながり、法的安全性を提供する。そしてそれにより、金融商品取引などのデリケートな市場の発展を可能にするが、重要性を考慮すると、現在のところ、オンライン上ではなく、従来のアナログ方式に依存せざるをえない。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2019年11月15日 バルセロナ

不当な当座貸越条項

当該記事では、スペインのKutxa銀行が有担保ローン契約に規定していた、当座貸越利用の際、若しくは、支払遅延債務にかかる30ユーロの手数料が不当条項であるかの判断を示した2019年10月25日付スペイン最高裁判所の直近の判決(第566/19号)の内容を検証しようと思う。 上記手数料を理解するには、スペイン中央銀行によって規定された以下に挙げる要件を満たす場合、スペインの銀行関連の法令は、前述のような条項をローン契約書に含むことを各銀行に許可していることに留意する必要がある。 -手数料発生は、銀行が、債務者たる顧客に実際に債務の支払請求を実行しているかに係る。 -一つの債務残高に対し、銀行が追加支払い請求を実行したとしても、再度手数料を請求することはできない。例え弁済期日までに弁済がなく、同様のことが何度も連続して起こったとしてもそれは同様である。 -手数料額は定額でなければならず、債務金額の百分率計算であってはならない。 -自動決済の適用は不可。 手数料条項の合法性に基づき上記条件を満たしているケースとして、ここで最高裁判所判決が問題としたのは以下に記載する条文、「(当銀行は)融資若しくはクレジットの各未弁済状況、及び各当座貸越し状況に沿って、顧客に正常化を請求する適切な(正当な記録の存在する)個別措置を実行した場合、延滞債務若しくは当座貸越状態への請求手数料として、30ユーロの手数料を口座決済できる」であった。 本条項の文言を分析した上で、最高裁判所は、「サービス(「適切な措置」)の内容が定義されていないことにより、当座貸越または債務状態が起こった場合に銀行にどのような措置、サービスの提供が義務付けられているのか不明、且つ、当該対応により費用が発生すること、及びその金額も不明である。更には、前述の内容の不明確さは、2つの内容の重複を引き起こす。債務状態であるための遅延利息請求に、当該債務状態であるための手数料を請求することは、改正スペイン消費者・利用者法第85条第5項及び第87条第5項”不均衡な補償及び未提供サービスに対する請求条項”違反に相当する。」と結論付けた。 同様に、銀行による措置の不在、及び措置に係る費用の契約書不記載に関する借主の立証責任にも言及し、これを改正スペイン消費者・利用者法第88条第2項違反であるとし、当該義務は、銀行が負うべきものであるとした。 最後に当該判決は、有担保ローン契約に限らず他のクレジット及び当座預金口座にも適用されることから、無効とされた条項の革新的な性質には注目する価値がある。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Jaime Madero va@vila.es   2019年11月8日 バルセロナ

係争中債権の譲渡について

今回のごく短い記事では、係争中債権の解除請求に関する直近判決、2019年9月13日付スペイン最高裁判所第464/2019号判決を例に係争中債権の取扱いに関し考察することにしようと思う。 債権譲渡に関しスペイン民法第1535条は、以下を規定する。 「債務者は、係争中の債権を売却すること、つまり、支払金額、発生した費用及び、 支払日からの利息債務を譲受人に払い戻すことにより、本債権に対する解除権を有する。 債権は、同債権にかかる係争が提訴され被告によって受理され時から係争中債権とみなされることとなり、債務者は、譲受人の支払請求日より9日以内に解除権を行使することができる」 本件は、2011年法人Aが原告ら(自然人)に対し、結果として未回収となったローンの貸付けを実行したことに発端する。2013年法人Aは本件債権回収裁判を提訴し、両者は数年間にわたる分割 (月) 払いする判決執行に合意した。 2014年法人Aは、本件債権を法人Bに譲渡した。2015年原告らは法人Bに対し、本件債権は係争中債権であるとして債権解除請求を提起した。 第一審、第二審においては、原告の請求が認められた。法人Bが法人Aから購入した債権を原告は取戻す権利を有することに言及し、法人Aに対し価格を払い戻すことで債権は解除されるとの判断を示した。 法人Bは、民法第1535号の解釈に関する最高裁判所判例(1991年2月28日付最高裁第149/1991号判決、2006年2月28日付第192/2006号判決及び、2008年10月31日付第976/2008号判決)を例に、係争中債権のコンセプトに関する判例法主義に反するとして、本件を上告した。 上告人である法人Bは、具体的には、譲渡時には本件譲渡債権に関する判決は確定しており、債務支払い合意に沿って回収が実行されていた。故に、本債権を係争中債権とはみなすことはできないと主張した。 最高裁判所は、民法第1535条は、係争中債権とみなされる起算日(被告による訴状受理日、本件の場合、答弁書提出期間が経過した日)を規定しているものの、完了日を規定しない、と直近の判決にて言及した。そして、係争中債権の完了日を決定するために、1969年12月16日付最高裁判決第690/1969号を引用し、確定判決、若しくは、下級審判決を支持する上級裁判所判決及び債権執行、または当該ケースのように他の取引の合意に至ったことによる債権執行手続きが停止した場合を挙げた。 即ち本件の債権譲渡時には、本件債権は、確定判決によってその存在、執行可能性、金額が確定されていたことから係争中債権としての性質を有していなかったとし、係争中債権としての解除権請求を却下した。     より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es   バルセロナ、2019年10月31日