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破産管財人の会計書類承認義務

2019年6月13日付の決定において、登記・公証局(DGRN)は、破産管財人の前事業年度の計算書類を提出する義務に関する非常に興味深いケースについての判断を下した。当該事案にて決定が出された前提事実は以下の通りである。 破産手続き中のDPÑANA TURÍSTICA, S.L.の管財人は、2017事業年度の計算書類を作成し2019年1月4日に商業登記所への登録のために提出した。提出された一件書類を精査の後、マドリード商業登記所登記官Jesús María Del Campo Ramírez氏は以下の理由に基づき、計算書類の登録を却下した。 「商業登記規則第112条、第8条及び第366条及び登記・公証局決定12/03/06号が要請する、計算書類を承認する株主総会議事録の決議証明書が提出されていない。」 上記商業登記所の却下通知について、2019年3月15日、倒産法第46条第1項の規定によれば、会社が破産・清算中である場合には株主総会による会社の計算書類の承認がされた旨の証明書の提出は不要であり、破産管財人が計算書類の作成を行い、必要な場合には計算書類の監査を受けるとされているだけで、計算書類の登録に先立って株主総会の承認がされなければならないという必要性に関する規定はない、との主張のもと、異議申し立てがなされた。 会社が破産中である場合に計算書類が承認されなければならない義務が残るのかと言った問題は学説の議論で何度も取り上げられてきたが、登記・公証局は、提出された異議申し立てを却下し、資本会社法第272条、第371条第3項及び第388条第2項の適用がされる旨を確認した。 しかし、本事案とは関係ないとしたうえで、登記・公証局は、その決定において、会社が破産手続き中の場合に、破産管財人がその報告書において記載した情報によってすべての利害関係人の保護が保証されるのであれば、当該手続きの担当裁判官は「事件の具体的な状況(株主と破産管財人間での紛争やオーバーコストの発生等)に即して」会社の計算書類承認義務を免除することができる可能性があると付け加えた。   より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Pedro Blanco Guardado va@vila.es   バルセロナ、2019年7月25日

社員持分(株式)の強制譲渡

スペイン資本会社法の第109条は、社員持分の強制譲渡関し、以下の様々な条項を規定する。 (1) 第一に、ある社員の保有する社員持分または株式の差し押さえ(強制執行)に関し決定を下した裁判所または行政当局より通知を受けた場合、会社は商業登記簿に当該差押えを登記し、他の社員に直ちに前記通知受領を通知する義務がある。 (2) 第二に、債務者の競売が実行後、若しくは法的に決定された強制譲渡実行の事前に、管轄当局は本件競売売却承認および所有権移行を一時中止しなければならないと規定する。裁判所あるいは行政当局は、株式もしくは強制譲渡対象の持分の状況を会社通知すると同時に、最大5日以内に同状況を他の社員へ通知する義務を有する、とする。 (3) 最後に、前述の競売売却承認もしくは所有権譲渡は、会社の定款に定められている場合において社員もしくは会社自身が優先的取得権を行使しない限り、会社が前述の通知を受けた日から1カ月後に成立すると規定する。 しかしながら、スペイン有限会社であるLORCLIMA社は社員持分の強制譲渡において、前述の(2)に当たる手続きの停止に先立ち、持分優先的取得権に関しまず会社の権利を、その次に社員の権利についてスペイン資本会社法の第109条の内容から逸脱するようなシステムを確立する定款の変更を、マドリッド商業登記所に登記申請した。 登記官は、スペイン資本会社法の第109条は遵守義務条項であり、「手続きの開始時に優先的取得権を付与することは司法または行政手続き規則の変更を意味する」と主張し、両手続きは公の秩序にかかる問題として前述の会社定款変更登記を拒否した。 前述の登記拒否に対する上訴の後、最終的に登記・公証局は2019年5月23日付にて問題となった定款条項の登記を許可する決定を下した。スペイン資本会社法第109条によって確立された司法制度はすでに説明したような他の制度に変更可能な修正対象条項であるとし、その全てはスペイン資本会社法の第28条に規定する自由の原理に基づくとした。   詳細を知りたい方はPedro Blanco(va@vila.es)までご連絡下さい。   バルセロナ、6月14日2019年

競争法において会社の経営管理組織のメンバーが代表権限を所有していなくても制裁金が科せられることについて。

2016年6月30日、スペイン競争委員会は取引条件および、市場シェアや価格を修正したとする管理組織を構成する様々な会社及び個人を制裁した鉄道インフラに関する決議(S/0519/14)を発表した。 同行為は競争法の違反である。スペインにおいては、同行為は7月3日、競争保護法15/2007および欧州連合の機能に関する条約第101条以降で規制されている。 具体的には、スペイン競争委員会の決定に従い、違反を行なった行為は競争保護法第1条a)およびc)、また欧州連合の機能に関する条約の第101条で明記されている。第一に以下のように規制されている: 「国内市場の全部又は一部における競争を阻害し、制限し、または歪曲することを目的として有し、またはそのような効果を生じさせ、または生じさせるおそれのある全ての合意、集団的決定または勧告、協調的または意識的並行行為を禁止している。同項は、特に次のものを挙げている: a) 直接または間接的に価格その他の取引またはサービスの条件を決定すること。 b) (…) c) 市場または供給源の割り当てを行うこ と」 競争保護法第62条第4項に従い、採用されている違反行為には「非常に重大な違反行為」と分類されるものが含まれる。 「以下に挙げるものが非常に重大な違反行為と規定されている。 a) カルテルまたはその他の合意、決定または集団的勧告、実際のまたは潜在的な競合企業間の協調的または意識的な並行行為からなる当該法第1条に定義される共謀行為の展開(…)」 違反行為を犯した結果として、スペイン競争委員会は関連する全ての会社に対する制裁を第63条第1項c)の規定に従い進めた。 「管轄機関は、故意または過失により、本法の規定に違反する経済主体、企業、団体、組合またはグループに制裁を課すことができる: (…) c) 非常に重大な違反行為については真近の事業年度おける総売上高の10%以下の制裁金が課せられる。」 また第63条第2項で規定されていることに続き、決議は法定代理人および合意または決定に介入した経営管理組織のメンバーに制裁金を課し、制裁された者の名前を含めて全体としての決議を発表した。同第2項では以下のように言及されている。 「前項の制裁金に加えて、違反行為者が法人である場合は、その各代表者または合意または決定に介入した経営管理組織のメンバーに6万ユーロ以下の制裁金を課すことができる。」 特に興味深いことは、制裁が個人である会社の法定代理人だけでなく、代表権限を持たない行政組織のメンバー、例えば経営管理組織を構成するある会社の取締役会の副事務局長にも及んだことである。」 よって上記の取締役会の副事務局長は最初に州裁判所に訴え、のち3月28日最終的に最高裁判所において判決(STS430/2019)が下され、最高裁判所はスペイン競争委員会による訴えを認め、該当する上訴を却下し、提起された問題に対して以下の議論を提示した。 (1) 上訴人を含めることは、取締役会の副事務局長として当会社の経営管理組織の一部を形成しており、同様に、合意が採択された会議に出席したため適切である。同判決は「合義体の行政組織の一員として会議に出席しなかった、または合意に反対を表明した、または異議を表明した者は、制裁を受けない」と述べた。 (2) 制裁の全面公開は、禁止された行為が私的範囲で行われていないため、スペイン憲法第18条によって保証されたプライバシーの権利を侵害するものでなく、代わりにそれは自発的に行われた職業上の行為の問題である。     詳細については以下のアドレスまでご連絡下さい。 ペドロ・ブランコ va@vila.es   バルセロナ, 2019年5月10日

EU加盟国間で一定の公文書のアポスティーユ証明・翻訳の必要を廃止

2019年2月16日、EU加盟国間の官僚的な業務の削減を目的とした欧州規則第2016/1191号(以下「本規則」という。)が施行された。具体的には、本規則は、他の加盟国において効力を有するために必要とされていたハーグ条約に基づくアポスティーユ証明によるアポスティーユやいくつかの公文書についての翻訳の必要性を排除するものである。 本規則の施行前、欧州市民が、自国が発行した公文書を他の加盟国に提出する場合、アポスティーユと呼ばれる証明書を取得し、当該文書の提出先加盟国の公式言語の翻訳を添付しなければならなかった。 本規則により、以下の手続きが簡略化される。 (1) ハーグ条約に基づくアポスティーユ証明による公文書のアポスティーユ要件の廃止 (2) 公文書の提出時における原本及び真正コピーの提出義務を廃止。加盟国は原本還付手続きを受け入れなければならない。 (3) いくつかの公文書の翻訳提出義務を廃止。公文書を発行する国はEUのすべての公式言語による多言語の文書によらなければならず、文書の提出先国は、特別な状況がない限り、翻訳を要請することはできない。 (4) 公文書の公正翻訳が要請される場合には、いかなる加盟国で作成された公正翻訳を受け入れなければならない。 上述にかかわらず、加盟国の行政機関は、提出された文書が本物であるかどうかに疑いがある場合には、当該公文書の真正性を発行国の行政機関と確認することができる。 しかしながら、本規則は以下の制限を置いている。 (a) 下記の文書は限定的に「公文書」と理解される。 裁判所が発行した文書 行政機関が発行した文書 公正証書 私文書に付された正式な証明書 外交文書及び領事文書 (b) 適用領域については、下記のように大きな制限が設けられている。 多言語形式での書類を発行する義務がある領域:出生、生存、死亡、婚姻、事実婚登録、住民登録、犯罪歴の有無の証明書 多言語形式での書類を発行する義務がないその他の領域:名前、離婚、法的別居又は婚姻事実の抹消、事実婚登録の取消し、別居、及び抹消。子供の認知、養子縁組、国籍、自治体選挙における選挙権・被選挙権登録及び欧州議会への選挙件登録の解消の証明書 本規則の課す義務が、すべての種類の文書、全ての領域に適用されないことは事実だが、本規則の発効によって官僚仕事が簡素化され、EU内における真正性の厳格なコントロールに大きく貢献することとなるだろう。 それはすなわち公的文書を扱う法律・行政書士事務所、より具体的には欧州市民の負担軽減に繋がることとなろう。 より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Pedro Blanco va@vila.es 2019年3月15日

企業秘密に関する法律が成立

2018年2月8日に、未公開の技術・ビジネス情報の保護に関する2016年6月8日の欧州議会および理事会の指令第2016/943号を、スペイン国内法に適用するための「企業秘密に関する法」の法案が法務省から提出された後、1年が経過した2019年2月6日、当該法案は上院にて可決され、成立した。 本法律の重要な点を再度確認するために本稿を作成する。法案からいくつか修正がされた点については、言及する。 法案の第1条によると、本法律の目的は企業秘密の保護とされ、企業秘密には「技術・産業・商業・組織・財務上、会社に関連するいかなる情報」と言ったような広範な定義がされている。企業秘密に該当するためには、以下の要件を満たしていなければならない。 秘匿であること。つまり、この種の情報を扱う環境において一般的に知らしめられていないこと、又は、簡単にはアクセスできないこと。 秘匿扱いすることによって、企業の実際の又は潜在的な価値が高まること。 情報の保有者が、秘匿にするための措置を設けていること 本法案第2条は、前第1条項を制限するものとして、合法とみなされる情報の取得方法を以下のように規定している。 発見又は独立して創造した場合 一般的にアクセス又は合法的な所有が可能な製品や対象物を元に、観察、研究、分析、実験して得た場合 従業員及び代表者より情報の使用権利を取得している場合 合法的な事業活動により得た場合 同様に、以下に挙げるようなケースの場合は、企業秘密守秘義務違反は民事訴訟の対象にならないとされる。 マスコミの報道及び多元主義の自由への尊重も含めた表現の自由の権利行使を実行する場合 一般公衆の利益保護の観点で、何らかの違反、不正、非合法的行為を見つけた場合 従業員がその代表者に知らせた場合。ただし、当該代表者がEU又はスペインの法令において認められている合法的な機能の行使の範囲内である場合に限る。 法律で合法であると理解されている利益保護を目的とする場合 他方、同法律案第3条は、不法行為として以下を挙げている。 職業上守秘義務を含むいかなる書類、物体、材料、物質その他の媒体を許可なく取得すること。状況にもよるが、商慣習に反するとみなされるいかなるその他の行為。同様に、人が不法に使用していたと知りながらも、直接又は間接的に職業上守秘義務がある情報を入手することを含む。 不法に取得、あるいは、守秘義務違反によって取得した企業秘密を使用又は公開した場合。 法に違反している製品の製造、供給又は商品化や、当該製品を輸入、輸出、又は仕入れること。 第4条及び第6条は企業秘密の権利保持者に対して当該権利の譲渡又は独占又は非独占的な使用許可の付与の可能性を開いた。 法案第5条では、企業秘密の守秘義務違反に対して取ることができる民事の行為について規定されていた(企業秘密守秘義務違反の宣言、違反行為の停止命令、商品の押収、不法に取得された企業秘密の除去、違反商品の所有権の帰属(この場合、損害賠償金に上乗せされる)、故意又は過失が存在した場合の損害賠償、判決の全部又は一部の公表又は頒布)。しかしながら、この点については第9条に移され、法律第5条は職業上の秘密の共有制度を定めている。 法案の第7条は、上記民事訴訟請求の時効を、行為が行われた時点から3年とする時効について定めていた。しかし、この点は法律では第11条に移され、法律第7条は権利又は権限のない者から、悪意にて職業上の秘密を譲受けた者又は使用許可を受けた者の責任について定めている。 第9条は、当事者適格について定めている。当事者適格を有する者は以下の者である。 企業秘密の所有者 情報を開発・利用をする独占的もしくは、非独占的なライセンスを取得していること明示的に証明できる者。 法律第3章、つまり第20条以降は、第9条の措置に基づき、損害賠償に対応するための十分な安全性を確保しなければならない将来的に起こりうる予防措置を規定している。 最後に、付随条項第5に従い、本法律は近日中になされるであろうスペイン官報での公布がされてから20日後に施行される。 Pedro Blanco Guardado より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2019年2月15日

配当不足に基づく株主の退社権の条文改正

参照記事 特定ブランド名の下でなされる排他的ガソリン供給契約の価格操作 最高裁判例 配当金の分配及び株主の会社離脱権 (II) 2011年に資本会社法第348条bisが導入された。当該条文は、商業登記所に会社の登記がされてから5年目以降、株主への配当が、会社の目的の実施による前事業年度の利益の3分の1以下である場合、株主の退社権を認めるものである。 財務のサステナビリティ(持続可能性)と株主の利益追及の要求にある種の不均衡を生み出すだろうと多くの会社は考えたため、本bis条項は論争を招いたが、2017年1月1日付で施行されることとなり、決して少なくない数の紛争を引き起こす結果となった。 失われた均衡を再構築することを目的とした本件第348条bis条項改正法案がスペイン官報に掲載された後、最終的に、2018年12月28日付法律第11/2018号資本会社法を改正する法律が公布された。以下の表は、当該条文の主要な変更をまとめたものである。 改正後 改正前   会社の定款に本条に反する規定を設けることが可能。           定款で本条に反する規定を設けることの可否について言及なし     配当は、前事業年度の法的に配当可能な利益の少なくとも25%以上でなければならない。ただし、これは、過去3年間に遡って黒字を出している場合に限る。     配当は、全事業年度の会社目的の事業の遂行により得、法的に配当可能な利益の少なくとも3分の1以上でなければならない。   直近5年間の配当が、当該期間における法的に配当可能な利益の少なくとも25%相当である場合には、株主の退社権は生じない。   本項に定める内容は、当該株主に属する、株主の決議及び責任にかかる異議申し立て権に影響を及ぼすものではないものと理解される。         特段の言及なし   第348条bis第1項に含まれる株主の退社権の要件の廃止又は修正は全株主による同意が必要となる。ただし、当該株主決議に賛成をしていない株主の退社権が認められている場合は除く。       特段の言及なし   連結決算が義務付けられている会社間の場合、支配会社の退社権に条件が設けられる。     特段の言及なし   本条の規定は、以下の場合には適用されない。(1) 上場会社又はセカンダリーマーケットでの取引が認められている株式の発行会社 (2) 民事再生中の会社、再融資の合意又は事前の再生計画の提案に基づく支援に向けた交渉が始められた会社、又は、裁判外の支払い合意にかかる交渉が始められた会社、(3) 民事再生手続きにおいて取消し不能となる条件を満たすような再融資合意に至った会社、(4) スポーツ株式会社     本条の規定は上場会社には適用されない。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Pedro Blanco va@vila.es 2019年1月11日

取締役報酬制度と新観点

2018年2月26日スペイン最高裁判所判決98/2018号以前は、登記公証局(DGRN)及び地方裁判所では会社の取締役の報酬に関しては、以下に示す二重のシステムが存在するという見解が主流であった。 資本会社法(LSC)第217条は取締役の報酬に関して言及し、管理者としての権限、つまり審議、監督権限の実行に対する報酬に関し規定している。   資本会社法第249条は取締役会役員の権限委任に言及し、特に業務執行取締役、つまり会社の通常の経営責任者の報酬に関し規定している。 上記の区分に基づいて、取締役の報酬を区別し、いかなる場合も、定款の中に株主総会で承認された年間報酬額の上限を規定する必要があるとしていた。これに対し取締役の中でも業務を執る取締役の報酬額に関しては定款規定の対象ではないし、年間報酬額の上限を株主総会で承認する必要もないとしていた。 しかしながら2018年2月26日付最高裁判所判決98/2018号は、長い間判断基準とされてきた上記システムを否定し、業務執行取締役の報酬額に関しても定款規定の対象であるとし、本年度の株主総会で承認される最高限度年間報酬額を遵守する必要があるとした。 同様に、登記公証局の2018年10月31日の決定は、一人株主によって決断された株式会社の定款の修正の登記に関し、ある登記官が多岐にわたる条文を検閲し、「業務執行に関する取締役報酬制度が規定されていない」ことを理由に登記拒否決定をしたことに対する異議申し立てを認めた。しかしながら、登記公証局の決定は登記官が例証として挙げた登記拒否理由をはねつけ、「通常、慣例として知覚される方法とは一致しないが」報酬制度は定款に規定されているとし、取締役の中でも業務執行者の報酬はフレキシブルであるべきであるとした。 当該決定の興味深い点は、本件の法的根拠第5点目に最高裁判所判決98/2018号第23番の根拠を引用し、定款規定の必要性はある種の柔軟性をもって解釈されるべきであることを反復したことにある。業務執行取締役の報酬額の決定権が取締役会へ帰属するのは、定款の枠組みの中で自治の範囲を認識するためのものと解釈されるべきであると示し、「取締役あるいは業務執行役員の報酬額を常に変化する会社や一般的経済活動の需要に適応することを可能にする」とした。しかしそのためには、法外な報酬額を提示することなく、常に株主の権利を保証することを尊重しなければならないとした。 今後を考えるには本件に続く決定や判決を待たなければならないが、登記公証局の決定は最高裁判所判決第98/2018号の本質から逸脱しておらず、業務執行取締役の報酬は、常に定款の枠組みの中において、柔軟性と自治性が優先されるべきであるという見解が主流になってゆくであろう。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年11月30日

商標の識別性 (Mondelez vs Nestlé事件)

2018年7月25日欧州司法裁判所第3法廷は、ベルギー、アイルランド、ギリシャ及びポルトガルの4ヶ国において識別性を具備していたと示すことができなかったとして、Kit Kat 4本入りの三次元商標の登録を取り消した。当該商標は2006年にSociete des produits Nestlé, S.A.が登録したものである。 上記判決はその法的根拠を2009年2月26日付の欧州商号に関する欧州評議会規則第207/2009号の第7条第1項、2項及び3項に求めた。 商標は以下の場合に登録が拒否される。 b) 識別性を欠く商標   上記第1項は、登録拒否事由が欧州の一部において存在する場合も含めて適用がされる。   第1項b)は、商品またはサービスのために登録申請された商標が、それが使用された結果として識別性を有することとなった場合には、適用されない。 本件は2002年にNestléがKit Kat 4本入りの三次元商標の登録を申請したときにまで遡る。欧州知的財産事務所(EUIPO)によって2006年に最終的に登録が認められた。 2007年、Mondelz UK Holdings & Services(Mondelez)はEUIPOにNestléの商標を取り消すように申請したが、EUIPOは、欧州内で使用されてきたという事実によって欧州商標に関する規則第7条第3項の定めるところにより、当該三次元商標は識別性を備えているとして、当該商標登録取消し要請を認めなかった。 Mondelezは上記決定を不服とし、欧州第一審裁判所に異議を申し立てた。当該裁判所は2016年12月15日に、識別性の具備はEUの一部の地域においてのみなされていることが証明されたとして2007年のEUIPOの決定を取り消す判決を出した。 Nestlé及びEUIPOを一方当事者とし、Mondelezを他方当事者として、当該判決に対して以下の議論をするため控訴がされた。 Nestlé及びEUIPOは、欧州加盟各国で使用されることにより、当該商標は識別性を具備していると主張した。 Mondelezは、欧州のいくつかの国において識別性の具備を証明できていないと主張した。 欧州司法裁判所は本事件を精査し、双方の控訴について以下の理由に基づいて認めなかった。 Mondelezの控訴については、控訴された判決には取り消す理由がなく、判決の法的根拠についていくつかの修正が必要である。 Nestlé及びEUIPOの控訴に関して、ある表象について固有の識別性が欠ける場合、それを商標として登録できるのは欧州全域において識別性を具備したと認められる場合である、と示した。 また、表象が識別性を具備したことを示す証拠は、各加盟国について具備したことの証明が必要というのではなく、例えば、各市場について一つの証拠を揃えれば良いとした。 最後に、欧州司法裁判所は、欧州第一審裁判所の判決について、当該商標の登録はベルギー、アイルランド、ギリシャ及びポルトガルの、識別性の具備が証明されていない他の地域及び加盟国については識別性具備について宣言しない形でなされたと結論づけ、同判決を認めた。 本判決の結果、EUIPOは使用の結果として識別性を具備した表象の登録について、欧州商標として維持することができるか、その登録を取り消すべきかを、再調査しなければならない。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月26日

EUデジタル単一市場における著作権保護

デジタル単一市場における著作権保護に関するEU理事会及び欧州議会指令案は、2018年7月の否決を経て、9月12日付にてようやく承認された。当該新指令の名称が示す通り、オンライン上における著作権の使用を規制するもので、ライセンス及び電子出版プラットフォーム上にて尊重すべきコンテンツ・フィルタリング・システムの確立を定めるものである。 改正指令案の中でとりわけ議論となったのは、第11条及び13条に関するものである。 前指令法案第11条には、EU加盟国内でニュース配信及び新聞を発行する出版社に著作権を認め、第三者が発行物をネット上にて直接又は間接的に再利用する場合、許可又は禁止を可能とする規定があった。同様に、出版物の著作権は、発行翌年の1月1日から起算され20年間保護されると規定されていた。 しかしながら改正指令案は、以下のような案を導入した。 (1) EU該加盟国は、出版社及び著者が、「情報化社会におけるサービスプロバイダ」から「公平」かつ「適切な」報酬を受領することを保証しなければならないとした。当該新要件は、著作権者(コンテンツの出版社及び著作者の両方を含む)が、コンテンツを収集するオペレーター及びニュース・アグリゲータから「手数料」を受領しなければならないことを意味する。 (2) 著作権保護期間は20年間から5年間に短縮される。 (3) 本条にて規定される権利は、遡及適用されない。 これに対し13条の内容は、YouTube、 Facebook、Twitterといった大企業に影響を及ぼす規定であったため、さらに大きな議論対象となった。改正後指令案において以下の内容とされた。 (4) 大量の作品やユーザーの既読機能を保存するオンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、著作権者と公正かつ十分なライセンス契約を結ぶ必要がある。 (5) 上記サービスプロバイダは、「臨機応変かつ効果的な」苦情、異議申立てシステムを確立する必要がある。 本条項は、ビデオ及び著作権保護の対象となるようなコンテンツを配信する巨大プラットフォームに多大な影響を及ぼすが、適用されるのはプラットフォームそのものに対してではなく、配信を行うユーザーに対してである。また、コンテンツフィルタリングシステムは不十分であり、配信後にそれが実施される。 最後に、全ての情報拡散、ニュースのアグリゲータープラットフォームに当該条項が影響を及ぼすわけではなく、小さなプラットフォーム及び、小企業には影響しないことは特記に値する。 他方、ウィキペディアのような保護されていないコンテンツの百科事典や、保護出版物の教材として使用は、適切に出典元が示されている限り、本条項は影響しない。その際、コンテンツの発行元の事務所、会社の名前を示すだけではなく、容易に取得可能な場合は著者名も出典元として記載する必要がある。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月21日 Pedro Blanco

日EU戦略的パートナーシップ協定及び経済連携協定

2018年8月24日付の欧州連合(EU)官報(オフィシャルジャーナル)において、欧州連合(EU)と日本の戦略協定の調印に関する欧州連合理事会の決定が発表された。 この協定の第1条では、両締約者が政治的な協力及び分野別の協力並びに共同行動を促進することにより、両締約者間の全般的なパートナーシップの強化、両締約者間の協力並びに国際機関及び地域機関並びに国際的な場及び地域的な場における協力、国際の平和及び安定への共同貢献、共通の価値及び原則、具体的には、民主主義、法の支配、人権及び基本的自由の促進に共同で貢献することを目的とする、とされている。 各条項の合意は、上記の目的の非常に多様なトピックに渡るものであり、以下に司法及び立法分野での協力に関連するものを紹介する。 (1) 司法協力 EU及び日本は、司法協力関連でこれまでに締結された条約に関連して、民事及び商事に関する司法協力を強化することを約する。 また、刑事に関する共助に関する日本とEUとの協定を強化促進する。 (2) 資金洗浄及びテロリズムに対する資金供与との戦い 両締約者は、普遍的に認められた基準を考慮しつつ、犯罪収益の洗浄のため又はテロリズムに対する資金供与のために利用されることを防止するに当たり、情報の交換等により、協力を促進する また、EU加盟国及び日本の双方が属している国際金融活動作業部会の規定についても言及している。 (3) 租税 租税に関する良い統治を促進するため、国際的に確立された租税基準を遵守し、両締約者は本分野での協力の範囲を広げる。特に、第三国に対し、透明性を高め、情報の交換を確保し、及び有害な租税上の慣行を撤廃するよう奨励する。 (4) 両締約者は、国際刑事裁判所及び適当な場合には国際連合の関連する決議に従って設置される裁判所を 通ずること等により、国際重大犯罪の捜査及び訴追を促進するために協力する。 また、この協定には、危機管理、不拡散と軍縮体制の強化、開発政策、災害管理と人道援助、科学、技術とイノベーションにおける協力、産業協力、 環境、観光、気候変動、及び農業と漁業が含まれる。 これまでの合意に加えて、2018年7月17日に、欧州連合(EU)と日本は経済協定(EPA)に署名した。 この協定は、欧州議会と日本国会によって批准された後、2019年に発効する予定であり、ヨーロッパ地域と日本の間の貿易関係に非常にプラスの影響を与えるものと思われる。 この協定により、両当事者間の貿易障壁と商業的関税障壁が軽減される。 当初は、製品の関税の約85%が免除され、その後一定期間が経ったのち、ほぼ100%の関税が免除される。欧州委員会のデータによると、最大1,000億ユーロにも及ぶコスト削減となる。 この協定より最も影響を受ける商業分野は、医薬品、健康製品、農産食品、自動車、輸送機器である。 欧州委員会によると、同協定のおかげで、欧州生産率は0.76%まで増加すると予想されており、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの調査によると、欧州連合(EU)の対日輸出への影響は3分の1まで増加する可能性があり、欧州連合(EU)の雇用と失業率にも非常にプラスの効果があるだろう。 同協定によって欧州連合(EU)と日本が、経済的及び政治的関係の新たなステージに突入したことは間違いない。 欧州連合(EU)と日本政府間の和解、経済関係の強化、相互投資の増加、司法レベルでの協力の強化などが今後期待できそうだ。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年8月24日