ESPAÑOL | ENGLISH | DEUTSCH | 日本語 |

係争中債権の譲渡について

今回のごく短い記事では、係争中債権の解除請求に関する直近判決、2019年9月13日付スペイン最高裁判所第464/2019号判決を例に係争中債権の取扱いに関し考察することにしようと思う。 債権譲渡に関しスペイン民法第1535条は、以下を規定する。 「債務者は、係争中の債権を売却すること、つまり、支払金額、発生した費用及び、 支払日からの利息債務を譲受人に払い戻すことにより、本債権に対する解除権を有する。 債権は、同債権にかかる係争が提訴され被告によって受理され時から係争中債権とみなされることとなり、債務者は、譲受人の支払請求日より9日以内に解除権を行使することができる」 本件は、2011年法人Aが原告ら(自然人)に対し、結果として未回収となったローンの貸付けを実行したことに発端する。2013年法人Aは本件債権回収裁判を提訴し、両者は数年間にわたる分割 (月) 払いする判決執行に合意した。 2014年法人Aは、本件債権を法人Bに譲渡した。2015年原告らは法人Bに対し、本件債権は係争中債権であるとして債権解除請求を提起した。 第一審、第二審においては、原告の請求が認められた。法人Bが法人Aから購入した債権を原告は取戻す権利を有することに言及し、法人Aに対し価格を払い戻すことで債権は解除されるとの判断を示した。 法人Bは、民法第1535号の解釈に関する最高裁判所判例(1991年2月28日付最高裁第149/1991号判決、2006年2月28日付第192/2006号判決及び、2008年10月31日付第976/2008号判決)を例に、係争中債権のコンセプトに関する判例法主義に反するとして、本件を上告した。 上告人である法人Bは、具体的には、譲渡時には本件譲渡債権に関する判決は確定しており、債務支払い合意に沿って回収が実行されていた。故に、本債権を係争中債権とはみなすことはできないと主張した。 最高裁判所は、民法第1535条は、係争中債権とみなされる起算日(被告による訴状受理日、本件の場合、答弁書提出期間が経過した日)を規定しているものの、完了日を規定しない、と直近の判決にて言及した。そして、係争中債権の完了日を決定するために、1969年12月16日付最高裁判決第690/1969号を引用し、確定判決、若しくは、下級審判決を支持する上級裁判所判決及び債権執行、または当該ケースのように他の取引の合意に至ったことによる債権執行手続きが停止した場合を挙げた。 即ち本件の債権譲渡時には、本件債権は、確定判決によってその存在、執行可能性、金額が確定されていたことから係争中債権としての性質を有していなかったとし、係争中債権としての解除権請求を却下した。     より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es   バルセロナ、2019年10月31日

パラソーシャル合意:コンセプトと限界

パラソーシャル合意とはある会社の社員(株主)間における合意であり、内部関係を捕捉する目的で、定款に定められていない問題について定めるものである。パラソーシャル協定は、署名した社員の自主性に基づく会社自治の最大限の表現であり、その根底を確認することができるものである。 会社資本法(LSC)第28条において以下の通り定められている。「第28条 自主的自治。法に反せず、選択した会社の種類の構成原則に矛盾することがない限り、公正証書および定款には、発起人が適切であると判断した全ての合意及び条件を含むことができる。」 また、スペイン民法(以下「民法」)第1225条では以下の通り規定されている。「第1255条 法や道徳に反し、また治安を乱すことがない限り、契約当事者は適当と判断した合意、条項及び条件を定めることができる。」 パラソーシャル合意は、民法に根拠を求めることで商法の厳格性を回避することを可能としている。パラソーシャル合意は民法上の義務及び契約の一般理論を適用することで、契約の性質を有している。同様に、民法第1091条「契約によって生じた義務は、当事者間において法的拘束力を有し、当該定めのとおり履行されなければならない。」の規定に従い、パラソーシャル合意に署名した株主間において法的拘束力を有する。 しかし、LSC第29条が以下のとおり規定するとおり、パラソーシャル合意はそれに署名した株主が属する会社に対して対抗することはできず、また従って、第三者に対しても対抗することはできない。「LSC第29条 限定協定 株主間に限定された合意は会社に対して対抗することができない。」 パラソーシャル合意の有効性に関し、民法第1261条に定める契約の有効性に関する必要条件(1)合意(2)目的(3)原因の他に、法、道徳、及び公共の利益のを尊重することが義務付けられている(民法第6条に関連して民法第1255条)。 同様に、前述のLSC第28条は、「会社の種類原則」に反しないことという必要条件を追加している。この原則は、立法者により明確にされていない不確定な法的コンセプトではあるが、学説の大半は、予め明記されているか解釈によるものであるかを問わず(例を挙げると、株式会社は必ず公開会社であり、責任限定会社は非公開である)、ある種の会社に限定的に適用可能であるような必須の規定のように定義している。逆説的に言えば、パラソーシャル合意はLSCの規定や、会社定款にすら反することも可能と言えるかもしれない。 つまり、パラソーシャル合意の有効性を決定するには、会社の種類及び矛盾する命令的規定(該当する場合)に配慮するとともに、各条項を分析しなければならない。       より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es   2019年9月20日 バルセロナ

不当競争による「デザインスタイル」の保護 (MR. WONDERFUL 対 CIAL LAMA/DCASA のケース)

スペインのEUデザイン裁判所第一法廷における直近の判決(アリカンテ商事裁判所第1法廷2019年5月6日付判決第106号)において、工業デザインの保護と不正競争の分野に関する問題が提示された。なお、アリカンテ裁判所には欧州連合知的財産庁(EUIPO)の本部事務所が所在する。 EU意匠及び工業デザインを保護する規則は、登録から生じる主観的権利を保護している。一方、不正競争に関する法令は、商標権ではなく、市場の適切な機能を保護し、消費者の誤解を防止することを目的としているため、保護の対象は商標の所有者ではなく、市場に参加する全ての人々と市場そのものにある。 工業所有権の違反行為と不当行為の関係は、最高裁判所で認められている、いわゆる「同心円理論」および「相対的相補性の理論または原則」を通じた科学的教義によって説明される。 本稿で言及する具体的なケースでは、グラフィックデザインスタジオのMr. WonderfulがCial Lama y DCasaに対し、被告がいくつかの問題の中でもとりわけ、以下に示す不当競争法第11条2項で定められた不当な模倣行為を行っているとして、訴訟を提起した。 (…)第三者のサービスの模倣は、それがサービスに関して消費者側に関連性を生み出したり、他人の評判や努力を過度に悪用する場合には、不当とみなされる。 前述の関連性のリスクや他人の評判を悪用する必然性は慣行の不公平さを除外する。 具体的には、Mr. Wonderfulは侵害された疑いのある登録EU意匠および工業デザインを特定せずに、独占権でなく既存の登録から推測されるようなMr. Wonderfulのデザインスタイルを特徴付ける要素を比較することを求めた。 前述の要求は、Mr. Wonderfulは市場に強く根付いており、テキスト的、グラフィック的、および色彩的の3つの要素の組み合わせからなる独自のデザインスタイルを作り出し、それが商品化されている製品に取り入れられることで、消費者はそれらの製品をMr. Wonderfulの製品として識別できるオリジナリティをもつという理解のもと裁判所により認められた。 したがって、判決では被告は不当競争法第11条2項の不当な模倣行為を犯しており、その結果Mr. Wonderfulに損失と損害を与えたと結論づけている。最終的に、判決はCial Lama y DCasa に対しMr. Wonderfulのデザインスタイルを特徴付ける要素の使用を停止し、取引の過程から撤退し、前述の要素を複製または模倣するデザインを取り入れた全ての製品を破棄し、Mr. Wonderfulが被った損失と損害に対し賠償することを命じた。     詳細を知りたい方はCarla Villavicencio (va@vila.es)までご連絡下さい。   2019年7月5日バルセロナにて

つかの間の住居賃貸借法改正

I. 導入 2018年12月19日、2018年12月14日付勅令法第21/2018号「住宅及び賃貸借に関する緊急措置法」が施行されたが、2019年1月22日のスペイン国会下院総会での承認手続きを通過せず、議院の合意によって廃止された。 II. 廃止された法令で導入されていた措置 当該勅令法が有効であった35日の間、勅令法第1章により、1994年11月24日法律29/1994号「都市住宅賃貸借契約に関する法律」(以後「LAU 1994」とする)の様々な規定が改正され、いくつもの措置が適用可能となっていた。その中でも以下の内容は言及するに値する。 a) 賃貸借契約の義務的更新期間について、賃貸人が自然人である場合は5年、法人である場合は7年とした。 b) 黙示の契約更新について、契約期間の満了日又は契約更新期間の満了日で、かつ、義務的更新期間が経過した時点において、当事者のいずれからも賃貸借契約の更新を行わない旨の意思表示がされなかった場合、さらに3年間契約期間が更新されると規定した(2013年に導入され毎年更新に代わるもの)。 これにより、2013年6月4日法第4/2013号「住居の賃貸借マーケットの柔軟化及び推進に関する措置法」による自由化の前に規定されていた期間が回復されることとなっていた。 c) さらに、長期の賃貸借である場合を除き、賃貸人が要求することができる1ヶ月の保証金以外の敷金の上限を2ヶ月分の賃料と固定していた。この敷金は預け金又は銀行保証のいずれかによって提供される。 d) 不動産業者の手数料や契約作成にかかる費用は、賃貸人が法人の場合には賃貸人が負担するものとされていた。ただし、賃借人の直接の指示によってそれらのサービスが契約された場合は除く。 III.  2019年1月24日以降有効な規定 勅令法が廃止されたことに伴い、住居の賃貸借契約は、2013年の自由化により施された改正がされたLAU1994によって再び規定されることになった。 とりわけ、以下について言及する。 a) 賃貸借契約の義務的更新期間は3年に戻ることとなった。 b) 黙示の契約更新については、契約期間の満了日又は契約更新期間の満了日において、当事者のいずれからも賃貸借契約の更新を行わない旨の意思表示がされなかった場合の契約更新期間は1年間に戻された。 賃貸人が要求することができる1ヶ月分の賃料の保証金以外の敷金については、当事者の合意によるものとし、上限がなくなった。 c) 不動産業者の手数料や契約作成にかかる費用は、当事者の合意によって負担する者を定めることとなった(実務においては賃借人とされることが通常である)。 IV. まとめ 賃貸借契約に関する規制がスペインの政治家の議題として予定されている問題であることは疑いようがなく、賃貸人と賃借人の法的地位のバランスを定める短期又は中期の改正を待たざるを得ないだろう。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2019年2月1日

フランチャイザー登録: 2018年12月付にて廃止

スペインにおけるフランチャイズ制度とは、合意又は契約に基づき、フランチャイザーと呼ばれる会社がフランチャイジーと呼ばれる別の会社に、製品やサービスを商品化する独自のシステムを運営する権利を譲渡する事業活動と理解される。 2018年12月8日以前は、自然人又は法人(スペインで設立されていない第三国の会社を含む。)がスペイン国内でフランチャイザーとして事業活動を行う場合には、その事業活動開始より3か月以内に、フランチャイザー登録に届け出なければならなかった。1996年1月15日付法第7/1996号小売業に関する命令(以後「LOCM」という。)及び2010年2月26日付勅令第201/2010号フランチャイズ事業及びフランチャイザー登録簿へのデータ届出に関する規則(以後「RD 201/2010」という。)に規定される、データの届出及びフランチャイザーとしての登録の義務を遵守しなかった場合、LOCM第63条第1項により、重大な法律違反とされた。 しかしながら、2018年12月8日付スペイン官報(B.O.E.)にて2018年12月7日付勅令法第20/2018号スペイン産業と商業部門の競争力の強化のための緊急措置 (以後「RD 20/2018」という。)が公布・施行され、スペイン産業と商業部門の競争力強化を目的に、一連の措置が講じられた。それには損失を伴う販売(仕入れ価格以下の販売)の制限、フランチャイザー登録及び遠隔販売登録の廃止等が含まれていた。 したがって、商事のセクターについては、RD 20/2018により、これまでLOCM第62条で定められ、RD 201/2010によって規定されていたフランチャイザー登録が廃止された。 フランチャイザーのオンライン登録は2016年に開始されたが、基盤となるアプリケーションに重大な欠点があり、ユーザーにとっては複雑かつ操作しづらい仕様になっていたため、登録義務者が克服したはずの障害と要求を生み出すこととなった。 また、フランチャイズ登録所が唯一確認をしていたのは、フランチャイザーである会社が商標権の所有者又は商標を使用する権利を保有していることであり、この点は既にスペイン特許商標庁によってカバーがされていた。他方、フランチャイズ登録所の職員は、フランチャイザーより提出された商標以外のデータについて裏付けを取っていなかった。 上記を鑑み、会社に対する障害を排除し、経済活動を促進し、資源を合理化するために、RD20/2018第1条a)及びc)は、フランチャイズ事業の開始をフランチャイザー登録所に通知し、毎年のデータ更新義務規定違反に関するLOCM第65条第1項r)及びフランチャイザー登録に関するRD 201/2010のいくつかの条項を明確に廃止した 。 代わりに、*フランチャイザーが将来のフランチャイジーに対し、フランチャイズ契約又は事前合意書の締結、あるいは将来のフランチャイザーからフランチャイジーに対するいかなる支払いが行われる最低20日前には、書面にて、フランチャイズ網に加盟する意義を認識した上で加盟を自由に決定するために必要な情報を開示する義務は維持される。契約前に開示される上記情報には、特に、フランチャイザーの主要識別データ、事業活動内容の説明、フランチャイズ事業の目的 フランチャイズ事業の内容と特徴、運営状態、フランチャイズ網の構造と展開、その他フランチャイズ契約締結にあたって重要な要素となる情報が含まれる。当該義務に関しては、2018年11月2日付Hugo Ester氏の記事に詳述があるので、参照されたい。 *1996年1月15日付法第7/1996号小売業に関する命令 (LOCM)第62条第1項  Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年12月28日

重度の危険性のある特定の電気及び電子機器の使用制限に関する新勅令

去る2018年11月20日、2018年11月2日付勅令第1364/2018号が施行された。この勅令は2017年11月15日付欧州指令第2017/2012号を国内法制に導入するためのものであり、本勅令によって重度の危険のある特定電気機器及び電磁的機器の使用制限に関する2013年3月22日付勅令第219/2013号の一部改正がなされた。 I. 規則の目的 本勅令は、重度な危険性のある電気及び電子機器(以下「AEE」という。)の使用制限についての基準を設けることを目的としている。 基本的には、金属(鉄及び非鉄)、プラスティック、ガラス及びその他の材料(木材、ゴム、厚紙等)で廃棄物となった時にリサイクルや価値評価によって再利用しやすいものについての取り扱いを規定し、環境保護の効率を改善し、新しい資源の消費を抑えることを目的としている。 II. 適用対象者 本規則は、AEEの製造業者、輸入業者及びディストリビューターといった、その処理を行う業者に対して適用がされる。 III. 適用対象となるAEE 2013年勅令第219/2013号(及びその後の改正勅令第1364/2018号で改正がされていない)で網羅されているAEEの分類は以下の通りである。 大型家電 小型家電 情報機器及び通信機器 消費機器 照明器具 電気及び電子器具 遊具、スポーツ器具、趣味道具 衛生商品 監視及び管理用機器(産業用監視及び管理機器も含む) 自動販売機 上記のいずれにも含まれないその他のAEE IV. 「その他のAEE」の適用に関する経過規定 上記の最後の、その他一切を含めるような分類は、2005年2月25日付勅令第208/2005号「電気及び電子機器及びその廃棄処理に関する規則」には含まれていなかった(この勅令は2005年から2013年まで施行されていた[1])。勅令第219/2013号はそれらを含んでいたが、他方で、経過規定において、規則の完全な施行を念頭に、その「商流に入れること」を2019年7月22日まで認めている。 EUマーケットにおけるAEEの最初の取引と理解される、より広く一貫性のある「マーケットへの導入」とは対照的に、「商流に入れる」という用語の使用は、EUマーケット内で商事行為として行われるディストリビューション、消費又は使用のためのAEEが無償となると解釈され、注意を引いた。 これは、2019年7月22日以降は、勅令第219/2013号の基準を満たさないAEEのマーケットへの初回の導入及び商事取引でのそれらの供給、消費又は使用が禁止されることを意味する。 V. 「取引」から「マーケットへの導入」へ基準の変更 しかしながら、上述の勅令第219/2013号の経過規定第1条は、勅令第1364/2018号によって削除されたため、2019年7月22日以降に禁止がされるのは、廃止された勅令第208/2005号で適用範囲に入っていなかったAEEの「市場への導入」ということになり、その「取引」ではなくなった。 このことは、規則の適用を受けるマーケットのプレイヤーが、2019年7月以降に勅令第219/2013号の技術標準を満たしていない在庫を売るためのマージンを与えることになるだろう。ただし、当該在庫は当該期日以前にEUマーケット内に導入されていなければならない。 [1] 廃止された勅令第208/2005号は、2003年1月27日付欧州議会及び欧州委員会指令第2002/95/CE号「重度の危険性のある電気及び電子機器の使用制限に関する指令」及び2003年1月27日付欧州議会及び欧州委員会指令第2002/96/CE号「電気及び電子機器の処分に関する指令」を国内法制化するためのものだった。勅令第219/2013号は2011年6月8日付欧州議会及び欧州委員会指令第2011/65/EU号「重度の危険性のある電気及び電子機器の使用制限に関する指令」を国内法制化するためのものだった。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年11月23日

賃貸借契約の黙示の更新後の賃借人の権利放棄

I. 序文 スペイン最高裁判所は2018年9月26日付直近の判決にて、契約内で毎月又は毎年の賃借料が定められているかに応じて、賃借人による新契約の放棄の効果をもたらす結果を伴う賃貸借契約の黙示の更新が毎月又は毎年行われると理解されるべきかどうかについての見解を示した。 II. 本件の経緯及び適用法令 前提となる事実は、2009年に店舗賃貸借契約が終了したにもかかわらず、黙示的更新がされていたおかげで、賃借人側から一方的に契約破棄をするまで店舗を経営し続けたことに始まる。 スペイン民法第1566条及び第1581条の両条項を合わせて解釈すると、契約終了後も賃借人が賃貸人の同意のもとに15日以上賃貸物件の占有を継続した場合、黙示的な更新がなされたとみなされ、先に期間について同意がない場合は、契約上の固定賃料が年額表示であれば年毎に、月額表示であれば月毎に、日払い表示であれば日毎に黙示的に更新されると理解される。 本件に関し最高裁判所判決は、「民法第1566条にある黙示的更新とは、実際には契約の両当事者の黙示の合意による新規賃貸借契約締結とみなすことができる。現行の賃貸借契約が終了した後も賃貸物を享受するために15日間以上保留し続けることにより、そこに合意が発生すると理解されるもので、賃貸借契約の終了から前述の15日間が経過しているにもかかわらず、賃貸人が、所有する賃貸物件の返却を賃借人に請求しなかったことにより、賃貸人も合意したとみなされる」とした。 また、1994年11月24日付「都市部賃貸借に関する法律」第29号第11条には、「賃借人は賃貸借契約開始後少なくとも6か月の期間が経過した後、30日以上前に賃貸人に通知をすることで、中途解約をすることができる」という規定が存在する。 本件では賃貸人は、上記規定にある6カ月の経過要件を満たしていないとして、当該6カ月に相当する賃料を賃借人に対し請求していた。 これに対し賃借人は、本件の元となる賃貸借契約は2009年の時点で終了しており、契約上は年間賃貸料で契約があったものの、月払いでの賃料支払いがあったことの事実により、月毎の自動更新が行われている状態にあったと反論していた。 III. 判決 地方高等裁判所レベルでは、当該論点に関し統一した見解を示していなかった。ある裁判所は、更新の目安を実際の賃料の支払い頻度に求め、他の裁判所は、最高裁判所がとった立場と同様に、黙示的更新によって締結されたとみなす新規契約の期間を全体的な賃料の期間と規定する方針に沿う。最高裁判所判決は「年額賃料の支払いが月払いで行われていたことを理由に契約期間も月毎更新とみなすことは論拠に欠け、契約書においてあえて賃料を年額で規定することの意義を失うこととなる」とした。 IV. 実務的結論 結論として本最高裁判決は、賃貸借契約が終了してからも賃貸物件を引き続き占拠する場合賃借人は、契約書の賃貸料が年額で固定されている場合には、元の賃貸借契約が年毎に黙示的に更新されると理解し、新規に有効期間一年の契約が開始した時点から最初の6ヶ月は契約を放棄できず、放棄の際も、最低30日前には通知することが要件となることに留意すべきである。 不動産オーナー/賃貸人には、本最高裁判決により、賃貸借契約の賃貸料が年額で固定されている場合は、元の賃貸契約が年毎に黙示的に更新されると理解し、新規に有効期間一年の契約が開始した時点から最初の6ヶ月の間に賃借人側からの契約解除があった場合は、相応する賃貸料を請求することが可能となったと言える。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月19日

会社の資金調達方法

時に会社は、財務上の問題解決のため、ビジネス上の投資やプロジェクトの実現のために、資金調達を行う必要がある場合に直面する。そのような必要性をカバーするためのオプションの一つに、株主による資金調達がある。 株主による会社の資金調達方法には多様な選択肢があるが、以下に、資金調達の結果自己資本が増加するのか、負債と計上されるのかに応じて、会計上の強制力が低い順から高い順にその内容を説明する。 増資という形での株主からの資金提供 増資を伴わない株主からの資金供与 資本性ローン(劣後ローン) 1)資本金増資による自己(株主)資本増強(プレミアムの有無を問わず) 増資という形での自己(株主)資本への株主からの資金供与は、その呼び名が示す通り、全て資本金として計上される。この方法は、他に比べて多くの手続きを要する。増資を行うには株主総会の承認決議が必要であり、同総会決議は、定款の変更のために定められた要件を満たす必要があるからである(スペイン会社資本法第296条規定)。その後、当該承認決議にかかる公正証書を作成し、管轄自治体の税務当局に、公証役場及び商業登記所の費用とともに税金の精算を行うための600様式を事前に提出した後、商業登記所にて本公正証書の登記申請をする必要がある。 会計上の観点からみると、会社の増資は、「資産移転及び法的文書税に関する法律」第19条第1項の1により会社取引と規定されており、同法の第45条B)第11項により、「会社取引」にかかる税から免除される。  2)増資を伴わない株主からの資金提供 株主による資金提供が、増資を伴わない場合は、会計上、純資産として計上され負債とはみなされず、株主の債権も発生しない。これは資産と負債の間のハイブリッドの役割を果たし、埋没費用(サンクコスト)として処理される。当該資金提供の返済に関しては、商法上の規制が欠如しており、通常、資本準備金と同様の扱いがされ、配当金分配に関する規定と同様の規制が適用される。 株主による自己資本への資金提供は、特定の状況を除いて株主総会の決議を要しない。しかし、損失を相殺するために行うのか、自己資本の増強のために行うのかを記録しておくことが推奨される。当該手続きについて公正証書を作成する必要も、商業登記所に登記をする必要もない。したがって、公証人や登記の費用も発生しない。 会計上の観点では、株主による自己資本への資金提供は、「資産移転及び法的文書税に関する法律」第19条第1項の2により会社取引と規定されており、同法の第45条B)第11項により、「会社取引」にかかる税から免除される。 3)資本性ローン(劣後ローン) 事業活動のための他の資金調達方法に、株主向けの資本性ローン(劣後ローン)がある。通常のローンと異なる点は、この形による借入れは会計上負債の部ではなく会社の純資産の部に計上されることにある。 資本性ローンに関する規定は、1996年6月7日付勅令法第7/1996号、緊急財政措置及び経済活動の促進と自由化に関する法律の第20条に以下のように記載がある。 「第20条 資本性ローン 資本性ローンとは以下のような性質を持つもののことを指す。 a) 貸主は、融資先企業の事業活動の業績に基づいて定められる変動利息を受領する。本業績を決定する基準は、純利益、売上高、総資本金額、もしくは契約当事者間において自由に合意された他の基準であっても良い。また、会社の業績から独立した形で、固定金利を定めることもできる。 b) 契約当事者は、早期弁済の際の罰則条項を定めることができる。いずれにせよ借主は、資本性ローンの弁済額と同額分だけ自己資本を補填する場合、かつ、これが資産の状態に変更を生じさせない場合にのみ、早期弁済が認められる。 c) 資産性ローンは、共通の債権者との弁済順位において、一般債権者の後になる。  d) 資本性ローンは、商業法規に規定されている会社の資本減少及び清算の際に、純資産とみなされる。 上記の条項は、以下のように追記される。 a) 資本性ローンは、借主である企業が事業の業績に応じ変動利息を支払うことを可能にし、同時に、固定金利を合意することも認めている。 b) 他のローンと同様に、資本性ローンも民法第1740条の規定にあるように、融資金額を一定の期間で返済する条件を定めなければならない。早期弁済は一応認められてはいるが、自由裁量では行えず、償却額と同額の増資を行わなければならない。当該制限の理由は、同額の自己資本を維持することによって、債権者を保護することにある。 c) 資産性ローンは、倒産手続きにおける普通債権の債権者への弁済がされた後にその債権の弁済がされる、劣後債である。 d) 純資産と資本金のバランスが崩れた場合、資本性ローンは、純資産として計上される。 手続きにおいて資本性ローンは商業契約として扱い、公正証書作成も商業登記所への登記も要さない。したがって、公証人や登記の費用も発生しない。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月14日

「強い」コンフォート・レターの要件

I. 導入 いわゆる「コンフォート・レター」と呼ばれるレターは、保証の代替手段であり、主債務者に企業融資を行う債権者又は将来の債権者に対して人的保証としての機能を果たすものである。結果についての義務を取り扱い、当該レターにおいてスポンサーは、計画された融資オペレーションが問題なく終了することを保証する。保証する額を負債として正式に計上することはない。 最高裁は「弱い」コンフォートレターと「強い」コンフォートレターを区別した(2007年2月13日付最高裁判決)。「弱い」コンフォート・レターとは単に信頼性について推薦又は宣誓を行うものである一方、「強い」コンフォートレターとはスポンサーと利益享受者との間の義務関係を発生させる片務的法律行為を構成する。 II.「強い」コンフォートレター 「強い」コンフォートレターに関して、最高裁判例の見解は2016年6月27日付判決第424号において述べられている。 a) 事件の経緯 本事件において、主債務者の支配的立場を有していた2つの会社が「強い」コンフォートレターを差し入れたことのおかげで、銀行が会社に資金貸付を実施した。 当該貸付の弁済及び人的保証が実行されなかったので、銀行はスポンサーに対して、主債務者が負っている弁済期日を迎えた、精算可能で存在する残金について、連帯して支払う旨の判決を求めた。 被告は、当該主たる訴訟物について、当該コンフォートレターは意思の宣誓を内容としており、義務等を引き受ける約束をするものではないとして、認めなかった。また、スポンサーである2社のいずれも主債務者の親会社ではなかったことを付け加え、いかなる場合においても主債務者株式の保有割合に応じた金額についてのみの負担に限られるとした。 b) 最高裁による検証 前述のとおり、最高裁はコンフォートレターによる義務の有効性についての検証、すなわち、義務的関係を構築又は発生するための適切さを備えているかについて検証し、以下のように述べた(2015年7月28日付最高裁判決第440号)。 コンフォートレターとは、その本来の意味において、強いものと評価する場合には、片務的な自由意思に基づく宣誓と同様、宣誓義務の波及を伴う、非公式な片務的法的行為を構成するものと言える。そして、以下の前提又は要件を満たす場合には、義務的関係を構築又は発生させるものと言える。 (i) まず第1に、自身に義務を課すことについてのスポンサーの明確かつ明白な意思が認められること。つまり、義務的拘束力の発生について現実の意思をもって宣誓をしていること。 (ii) 次に、債権者による受け入れが存在すること。この受け入れは黙示又は推定によることができる。また、コンフォートレターの発行と実施された融資との間に因果関係が推定されること。 (iii) スポンサーと主債務者との間に具体的な関係が存在すべきかという点について最高裁は、当該関係が必ずしも親子会社の関係である必要はなく、計画された金融オペレーションの実行をスポンサーが代理できるような自身の利益、権限、又はメリットが正当化されるような、あらゆる関係の枠内でその信用のために行われた(causa credendi)という事実が必要であるとした。したがって、親子会社の関係の場合もあるし、債権者又は株主の立場に基づく場合もある(2007年2月13日付最高裁判決)。 c) 最高裁の結論 上述にもとづき、最高裁は、レター内の約束は融資実行のための決定要素であったため、コンフォートレターはスポンサーの義務的結びつきを構築するために適切であると結論づけた。 続けて最高裁は、コンフォートレターを特徴付ける義務的効果の及ぶ範囲を検証し、スポンサー会社によって受け持たれた義務の約束の連帯性を認めた。なぜなら、当該コンフォートレターは、スポンサー及びその主債務者(本債務の主保有者はスポンサーである)の持つ債務のリファイナンスを実行する際、新たな資金貸付を受ける際の、両当事者が一体となって保証を同意する手段として位置付けられたからである。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年8月3日  

MASDAR事件とANTIN事件: 再生可能エネルギーへの助成金カットを行なったスペイン政府に対する新裁定

  外国投資家がスペイン王国を相手として、世界銀行の傘下組織である投資紛争解決国際センター(ICSID)を通じて申立てを行なっている27の国際投資仲裁のうち2つの申立てについて、最近裁定が出された。当該紛争は、2013年にスペインが再生可能エネルギー発電システムに対する助成金をカットしたことに端を発する。 ・Masdar とスペイン王国間のケース(ICSID仲裁裁定 事件番号ARB/14/1号) Masdar Solar社 及びWind Cooperatief U.A.社の申立てにより、スペイン王国に対して起こされた仲裁申立て 2018 年5月18日、John Beechey氏、Gary Born氏及び Brigitte Stern教授によって構成された仲裁法廷は、スペイン王国に対し、6450万ユーロにのぼる額を損害賠償金として申立て人に対し支払う旨の判断を下した(申立人の請求額は1億6500万ユーロだった)。また、2014年6月20日より仲裁裁定日までの上記損害賠償額に対する利子(年利0.906%)及び、仲裁裁定日から実際の支払日までの上記損害賠償額に対する年利1.60%の支払いも義務付けた。 ・Antin とスペイン王国間のケース(ICSID仲裁裁定 事件番号ARB/13/31号), Antin Infrastructure Services Luxembourg S.à.r.l社 及びWind Antin Energia Termosolar B.V.社の申立てにより、スペイン王国に対して起こされた仲裁申立て 2018 年5月18日、Eduardo Zuleta氏、Francisco Orrego Vicuña氏及び J. Christopher Thomas 氏によって構成された仲裁法廷は、スペイン王国に1億1200万ユーロを損害賠償金として申立人に対し支払うように裁定した(申立人の請求額は2億1800万ユーロだった)。また、上記損害賠償額に対する年利2.07%の支払い及び2,07%の累積利息の支払いも義務付けた。 現時点においては、まだ上記直近の2つの裁定に関する内容の詳細が公表されてはいないが、両裁定ともに、2017年5月4日に裁定されたEiser社 とスペイン王国の間のケースの仲裁裁定(ISCID仲裁裁定 事件番号ARB/13/36号)を支持するものだと言えよう。上記仲裁裁判はJohn R. Crook教授、Stanimir A. Alexandrov 博士及びCampbell McLachlan QC教授によって構成された仲裁法廷で行われ、スペイン王国に対し1億2800万ユーロにのぼる額を損害賠償金として申立人に対し支払う(申立人の請求額は2億9800万ユーロだった)旨の裁定を下した。当該仲裁裁定については、2017年5月19日付の当事務所の記事で触れている。https://vila.es/jpn/2017/05/19/2210/ より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es 2018年6月29日