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会社解散時の取締役責任 既判力の作用

2020年1月8日付、スペイン最高裁判所判決 以下に、本係争案件の事実背景を概説する。 ある二つの会社間で、土地売買予約契約を締結した。本契約書に従い、買主は契約締結時に金額の一部を支払った。その後しばらくして、予約契約で規定された条件が満たされたため、売主は買主に対し売買契約の実行を主張したが、買主は本予約契約の解約を申し入れ、売買金額の一部として支払われた金額の返還を請求した。金額の返還が実行されなかったため、買主は売主会社に対し、返還請求を裁判所に申し立て、裁判所は買主の請求を認め、売主会社に金銭の返還を促したが、売主会社の銀行口座に残高がなかったことに本件は発端する。 従って買主会社はスペイン資本会社法第367条に基づいて、売主会社は解散事由を有していたにもかかわらず解散をしなかったとして、法的義務の不履行を理由に、会社の取締役に対して訴訟をおこした。第一審判決は、原告の請求を認めたが、県裁判所判決で確定した金額は、原告の請求金額をはるかに下回る額に減額されたものだった。 請求金額と確定金額の差額を不服として、原告であった買主会社は売主会社の取締役に対し、売主の買主に対する債務と同等の金額から、前段落言及した判決により回収した金額を差し引いた別の金額の訴訟を起こした。当該申立て時には、スペイン資本会社法第241条に規定される個人の行為の責任と、付随的に同法第236条の会社の行為に関する条文に基づいた。 売主会社の取締役に対する当該第二回目訴訟に関し、第一審商業法廷は、被告である取締役達は株主に配当を行った後、役員全員を解任し、計算書類を作成する義務の履行を遵守しないまま、会社に取締役が存在しない状態としたため共同責任があるとし、原告の言い分を認める判断を示した。 しかしながら第二審では、会社の債務支払いに対する取締役の責任を認め(第二回目訴訟で請求した金額より低額)、一部の支払い責任を認めた第一回目訴訟確定判決の有効性を評価し、売主会社の取締役達の控訴を認める判決を行った。第1回目訴訟で認められず第2回目請求の根拠となった取締役の個人の行為の責任(スペイン資本会社法第241条)の追求が排除されたことにより、判決が確定した。 本件は最高裁判所に上告され、その判決は以下のように結論づけた。 控訴人である売主会社によって提供された全ての事実関係が、県裁判所では検証されなかったということは、重要ではない。第1回目訴訟請求除外の結果として既判力の効果が明確となったことを意味し、本件の判断の根拠として、適用可能、又は関係があると考慮された、もしくはされなかった事実は、本件請求の本質を覆すことない。 上告人によって提出された第1回目訴訟判決の既判力の有効性に関し、最高裁判所は、本作用は確定裁判にて請求した事項に関する判断につき、同じ当事者、相続人や後継者が後の裁判にて同一のさらなる請求を除外することにある、と言及した。その目的は、最初の手順とは異なる申立てと法的根拠により「causa petendi」(訴因)の変更を原告が行うことで、被告人の無防備状態を生み出すことを防ぐことである。他方で、確定判決では信頼できた事実や法的根拠が実はそうではなかったことにより、原告が確定判決と同様の請求を提訴することを回避することにもある。従って、原告が確定案件の請求から除外した同じ内容の請求を、異なる事実、法的根拠、または根拠に基づいて、さらなる訴訟を起こすことはできないとするスペイン訴訟法第400条規定を適用するとした。当該内容は、2018年11月13日、2017年12月13日、2012年2月6日、2011年3月21日付最高裁判所判決文において確認されている。 第一回目訴訟では被告の一人であった者が、第二回目訴訟においては訴訟対象ではなかったのは、資本会社法第367条に規定される取締役の責任に係る訴訟の対象者ではないため問題とはならない。 第二回目の訴訟は、取締役の違法行為に関する民事責任を争ったもので、会社清算義務の不履行を争った第一回目訴訟とは係争点が異なっていた。両訴訟において事実と請求の原因が一致していなかった点は、両訴訟の請求が既に第一回目訴訟にて請求されているという事実ほどは重要ではない。第二回目訴訟での請求は、第一回目訴訟での主張の一部を形成し、訴因のみが異なっていた。例え第2回目訴訟において新事実を主張していたとしても、主要かつ大部分の事実は第一回目訴訟にて既に提示がされていた。最高裁判所は、第一回目訴訟時に提示された主要事実が、第二回目においても提示されていたことを強調した。    結果として、最高裁判所判決は本件上告を、第一回目判決の既判力が作用するとして棄却した。加えて上告人に対し、訴訟費用の負担を命じた。     更なる詳細を知りたい方は以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2020年2月7日 バルセロナにて

通貨でも貨幣でもない 暗号通貨

暗号通貨の性質に関する問いは、特に暗号通貨が通貨あるいは貨幣のいずれかであるとみなす必要がある場合は、学説上の議論及び膠着した姿勢の対象となってきた。スペイン最高裁判所はある刑事事件判決において、この問いに対し暗号通貨は有形物ではなく、また法定通貨とみなすこともできない、との他のヨーロッパ諸国の判例に追随する見解を示した。 上記2019年6月20日付判決は、ある数人の小規模投資家が、各自が保有するビットコインの運用に関しある運営会社との間に高頻度取引契約を締結し、本件会社は手数料を支払う代わりに、配当金がある場合は再投資を行い、全利益を契約満期に支払うとしたケースについての判断を示したものである。高頻度取引契約(HFT)とは、金融市場情報をテクノロジー利用よって獲得しながら、プログラムされたアルゴリズムによって高速、高頻度で自動売買を繰り返す売買取引を指す。本件は、上記契約の終了時に、本運用会社が何かしらの配当金を投資家に分配しなかったことに発する。被害を受けた投資家たちは、これは詐欺及び横領にあたるとして、本運営会社を告発した。 本記事における我々の関心は、本運用会社が意図的に義務を不履行したかではなく、民事的な問題、つまり、本運用会社の投資家に対する資産・負債の所在にある。投資家は、ビットコイン購入のために運営会社に初期投資した法定通貨を損失したため、投資した法定通貨ではなく、ビットコインで賠償するよう請求したのである。注目すべき点は、投資家達はビットコインを運営会社に預入れたのではなく、ビットコインに交換するための法定通貨を預入れたことである。したがって、運営会社が本件高頻度取引契約を遵守せず、契約終了時に預入金が未返金で、投資家が財産的被害を被ったと容易に判断できるとしても、運営会社の詐欺行為の結果として本来返却されるべきビットコインを搾取されたとは主張できないのである。 最高裁判所は暗号通貨の性質に関し、ビットコインは有形物ではなく、また法定通貨とみなされてもいないため、返却不可能であると判断している。それどころか、ビットコインは、非公開ではあるが2100万台の「同名のネットワーク網のアカウント単位」で「確立されたコンピューターネットワークを通して分割可能な方法で取引されている」と定義した。 本最高裁判所判決は、ビットコインとは、「ビットコイン」と名付けられたコンピューター及び暗号化技術により成立するアカウント単位の形をとる無形資産であると結論づけた。アカウント単位の価値はビットコイン取引が実行されるプラットフォームにおける需要と供給により決定されるため、単一的、もしくは統一的な価格を有しない。その結果、ビットコインだけではなく他の暗号通貨に考察を広げてみると、最高裁判所は、契約両当事者により適切に容認された、あらゆる取引時に補償または両替可能な無形資産として扱うが、従来の通貨や貨幣でもなく、ましてや電子マネーでもないとの見解を示した。電子マネーは電子的または磁気的方法により管理される貨幣価値として定義されるが、 (i)発行人に対するクレジットを表象していること、(ii)支払実行を目的とした資金を提供後発行されること、(iii)発行人ではない自然人または法人が受領すること、という条件を満たす必要がある。アナログの通貨でも電子的マネーでもないビットコインは、動産(法定通貨も含む)またはサービスと交換可能な変動価値を有する無形資産として分類するしかなかろう。 先に述べたように最高裁判所は、投資家に対しビットコインによる賠償支払いは不可能であり、投資額(法定通貨による)に本件契約開始から終了時までに受領したであろうビットコインの利益を損害額として加算した総額を支払うことで当該損害を賠償するものと結論づけた。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2020年1月10日 バルセロナ

取締役の責任限定 有限責任会社の解散事由

2019年11月8日付のスペイン最高裁判所判決は、法定期間内に会社解散義務を履行しない有限責任会社の取締役の連帯責任範囲について概説した。 本件は、解散が義務付けられるような状況に至った有限責任会社において、本件の被上告人である取締役が当該会社の取締役に任命される前に生じた債務について、債権者がその支払いを前任の取締役に代わり、本件取締役に対し請求した場合の有限責任会社の取締役の責任限定に言及している。会社解散事由は被上告人である取締役の前任者の任期中に生じている。 まず第一審である商事裁判所は、原告である債権者の訴えを退け、本取締役には本債務の支払義務はないとした。 第二審、サラゴサ県高等裁判所は商事裁判所の判決を破棄し、本取締役に対し、債権者が主張した債務は会社解散事由が生じた後に発生したものであるが、取締役が債務の弁済連帯責任を負うためには、債務の発生前に役員選任を受諾することを要求していないことを挙げ、取締役は本債務の支払いについて連帯責任を負う、との判断を下した。 取締役はこれを不服として本件を最高裁に上告し、上告理由として、第二審判決は以下の2点においてスペイン資本会社法第367条に違反すると主張した。 a) 本件会社債務の発生が、上告人である取締役が本職に選任された日より前であること b) スペイン資本会社法第367条を適用するには、債権者は、債務者である清算会社が債務の一部あるいは全部の支払い能力があったことを証明する必要があること 最高裁は、上記のb)にて陳述された要件はスペイン資本会社法第367条に基づき取締役の責任を追及する場合は適用可能ではなく、同法第241条に基づく個別責任による行動により適用されるものであるとし、これを拒否した。その上で、スペイン資本会社法第367条に基づき取締役の責任を認定するには、会社が解散事由に該当するにもかかわらず解散手続き申立てを行なっていなかった事実、及び会社の負債が会社解散事由の発生日より後に生じた事実で足りるとした。 しかし、a)については上告人である取締役に同意する判断を示した。第一に、会社に解散事由が生じた場合、スペイン資本会社法第367条は以下の取締役の義務を規定する。(a) 2ヶ月以内に株主総会を招集し、解散決議を採択すること、(b)株主総会が成立できなかった場合、同日から2ヶ月以内に裁判所命令解散を申請すること、(c)株主総会で解散決議が採択されなかった場合、または否決された場合、株主総会の開催日から2ヶ月以内に裁判所命令解散を申請すること。 上記の法律上の義務の不履行による一般的な帰結として取締役の連帯責任が生じる、としている。しかし、2013年12月2日付スペイン最高裁判決第731/2013号は、「上記法定義務を履行しない取締役は、会社解散事由が生じた後に発生した債務についても連帯して弁済する義務を負うが、取締役退任後に発生した債務についてはその限りでない。」としていることに留意したい。 本案件は、前任の取締役が会社の解散(破産手続き)を求めたことがなく、債務の発生が会社解散事由発生後、かつ取締役選任前である場合に関し、会社解散事由が発生後に選任された取締役の責任が争点となった。 会社解散または破産申立義務を履行しない取締役に対するスペイン資本会社法第367条が規定する責任の根拠は、「弁済義務の履行に十分な資産保証を享受することなく契約を締結した債権者に対し生じるリスク」にある。しかし本最高裁判決は、会社が解散事由を抱える中で役員変更があった場合、新取締役は解散手続きを開始するまでに2ヶ月間の猶予を有し、上記第367条が規定する義務を履行しない場合に限り、本取締役選任後に発生した会社の債務について連帯責任を負うと判断を示し、選任前及び解任後に発生した債務についてはその責任を負わない、とした。 上記の理由により、債務発生時にすでに会社に解散事由がある状態にあり、かつ取締役が新規に選任された場合でも、訴訟物としての債務が取締役就任前に発生したものである場合、最高裁判所は新取締役には本債務の支払い義務はないと結論付けた。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2019年12月13日 バルセロナ

デジタルID: 不完全なコンセプト

商業上の関係、個人的な人間関係、行政機関と市民間のコミュニケーションの過去20年間における急速な進化は、個人の認証(ID)の概念の変革をもたらした。伝統的に個人IDは、個人と特徴的な行為、またはアナロジカルな性質の署名との関連付けに基づいている。 当該方法では、個人は自分自身が何者であるかを、自身の写真及び個人情報、イニシャルまたは署名の表示がある公的文書とその持主を関連付ける明確で特徴的な記号とを対比することで証明する。特定の行為実行のためには、身分証明書及び署名の提示は、個人が出頭する際に本人確認が行われるため、不可避な要件となる。 しかしながら今日では、電子的手段を利用して遠隔的に実行される行為や法的取引が、主流を占めるようになった。銀行との相互関係を例に本件を検証してみよう。今日取引のために銀行を実際に訪問する必要はなく、大抵の操作が、携帯やタブレット、コンピューターに設置されたアプリを通して実行される。この場合操作を有効とするために利用者は、デジタル署名ではなく英数字の識別コードを使用し、その後個人のパスワードを使用する。他のケースでは、デジタル署名が個人または法人が電子的手段を介して相互操作することを許可するために許容された確認方法であり、行政機関によってすでに使用されている。いずれにせよ経済のデジタル化は、テクノロジーが、意思決定を可能にする迅速な取引とプロセス単純化といった二つの発展要因であることからも、論理的かつ主流トレンドであることは間違いない。 「オンライン経済」とも呼ばれるデジタル経済の発展には、その発展を妨害するいくつかの問題がある。まず各国に、異なるデジタル署名作成に関する特定の法律と技術要件が存在することが挙げられる。これらは他国では認識されず、当該相互認識の欠如は、オンライン上での使用を妨げることとなる。第二にオンライン取引は、サイバー攻撃や個人情報の盗難にさらされており、法的安全性が欠如するという認識がある。 EU規則第910/2014号は、「オンライン」上で取引を実行する人物の電子的な本人識別(デジタルID)の使用要件を規定し、上記問題に解決策を与えるために承認された。デジタル署名の作成・管理のために、各加盟国の国内法に含まれるべき技術要件を同一化することで、全てのEU加盟国にて認識されるデジタル署名適格性のコンセプトを確立した。本規則は重要な意義を有しているが、目的達成のためには十分ではなく、デジタル認証のコンセプトの完成のために、自然人・法人とデジタル署名とを安全に関連づける形式の確立が欠如している。例えば、デジタル署名用適格証明書は、電子的手段によって操作・盗難の上、本人の認識がない、もしくは同意のない不正利用につながる可能性があるというのもその一例である。同意なき、もしくは同意を無視したデジタル署名利用は、不正取引の完了、及び不正デジタル人格の作成を招き、被害者に甚大な被害をもたらす事につながりうる。 人物のデジタル人格は、実際の人物にではなく、オンライン上で実行される取引によって残されるデジタルフットプリントによって形成されるので、デジタル署名の不正使用は、利用者の虚偽のイメージを形成することとなり、実際、信用情報機関への登録、特定求人からの除外、医療保険その他の保険料の増額、その他の実害をもたらす可能性がある。デジタル署名保有者とその行為の間に関連性が確認できないことは、本人認証はデジタル機器を使用して実行される取引を容認することで成立していると一般に認識・受容されている状態でありながら、当該デジタル機器の利用者が正当な権限を持つ利用者であることを確認できる媒体が存在しないとなると、深刻なリスクとなる。デジタル署名を保存する電子的手段、もしくはデジタル機器の管理が各利用者に委ねられていることに意義を唱えることは可能であり、一理あるが、操作人物と、デジタル署名を保存し、オンライン上の取引を実行するデジタル機器間の同意の不在、若しくは同意不在の無視が起こり得る危険の回避や、解決策の提供には至らない。法的に有効なデジタル証明書を使用して、ある者によって取引が実行された場合、責任はデジタル署名所有者にある、といった三段論法を受け入れることは、個人情報漏洩の問題を無視するための危険な半真実手法である。 要するに、EU加盟国内で認識可能となるような適正デジタル署名作成のために法的・技術的な枠組みを確立するだけでは、不十分であるという事を認識する必要がある。デジタル機器を使用してオンライン取引を実行する人物がデジタル署名の保有者である、もしくは保有者によって委任された人物であることを合理的に保証する技術的手段の確立は必須要件であり、そうすることで、個人情報漏洩のリスクは制限されるが、そうでない限り、本問題は常にそこに存在することとなろう。上記が可能とならない限り、オンライン取引の法的安全性を適切に議論するには及ばず、ひいては、デジタル経済システムや当該システムへの転換プロセスの減速に関する疑問をもたらすこととなる。 デジタル網を使用した取引実行の汎用は、今後そのような取引の法的重要性と経済ボリュームが増大することを意味し、その結果として、ここで指摘した問題の重要性も増大することとなろう。現在、オンライン認証の使用は、承認をクリックするだけで完了する。そのため、認証者に属する法的および経済的な関連行為と、意志の表明とそれを表明する人物認証の真正性推定の確立は二の次とされている。このような状態は受容されるべきでなく、また、公証人の介入は不動産の売買、金融商品取引の等の特定行為の遂行に必要不可欠な条件であることからも、しばしば法制度に適合しない。その一方で、上記の推定が満たされるように要求することは論理的かつ合理的であると思われ、適正デジタル署名所有者は、該当署名の所有者であることを証明し、取引を実行する意志を証明する目的で、該当する特定の式、アルゴリズム、もしくは該当者と密接に関連する別のタイプの技術要素を適用する必要がある。デジタル署名利用者とその所有者間の本人認証を保証するシステム確立は、デジタルID概念の完成につながり、法的安全性を提供する。そしてそれにより、金融商品取引などのデリケートな市場の発展を可能にするが、重要性を考慮すると、現在のところ、オンライン上ではなく、従来のアナログ方式に依存せざるをえない。     本文の詳細に関しては以下までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   2019年11月15日 バルセロナ

同意なきCookieの利用

ウェブサイトが、プロバイダーによってウェブサイトを閲覧したユーザーのパソコンに入力されるCookieやファイルを利用し、ネット検索やオンライン取引を促進するために使用していることは知られている。しかし、Cookieは、プロバイダーと協働する会社又はサービスプロバイダーの顧客である会社の広告表示対象になるユーザーの利用態様に関する情報を収集する機能も有している。 一方で、承認を意味する「X」や、その他の隠されたフォーム、同意への誘引フォームが表示されることで、ウェブサイトがユーザーにCookieの利用に関する同意を求めることは、まだ実務上用いられている。 ドイツの民事及び刑事最高裁判所は、欧州司法裁判所に対し、上記のような同意を求める方法が、EUの電気通信産業におけるプライバシー保護法に抵触し得ると解釈するために請願を提出した。本事件はドイツ連邦の消費者団体協議会が原告として申立がなされたものであり、オンラインゲーム会社のPLANET 49を、同社のユーザーのパソコンにCookieを入力することへの同意を表明する欄にあらかじめマークがされた状態で表示していたことを訴えの理由とするものである。 前述の請願に関連して、欧州司法裁判所は、2019年10月1日付判決(C-673/17事件)において、ユーザーの同意はユーザーのパソコンにCookieが置かれるために明示的に表明されなければならないと明らかにした。 さらに、承諾の方法が、既に同意欄にマークがされており、ユーザーが同意を望まない場合はマークを外さないといけないような欠陥があるときは、承諾が適当になされたとは理解されないという判断をした。つまり、ユーザーが欠陥のある同意欄から承諾のマークを消さなかったことをもってユーザーによる承諾とはみなされず、また有効になることはなく、ユーザー自身によって空欄に承諾マークが押されなくてはならない。承諾マークを押すことの必要性は「ユーザーの機器に保管又は参照された情報が個人情報か、個人情報によって構成されているものではないか」とは関係のないものである。求められた情報の種類ではなく、第三者が、ユーザーのパソコンや端末に当該第三者の同意なく、つまり明確で不可欠な同意がないまま、入ることは容認されない。 欧州司法裁判所は、ユーザーによる積極的かつ明確な同意の実施を要求しており、ユーザーの同意が怠慢、混乱、十分な明確性の欠如によってなされた場合、同意とすることはできないとした。なぜなら、もし保護財産が個人のプライバシーであるならば、混乱させ、ユーザーの受動性(又は不安)を利用しようとする意図のあるサービスプロバイダーのメカニズムや罠によって毀損することはできないし、されてはならないからである。(自身又は第三者の)Cookieにパソコンを解放することは、隠されたログイン用パスワードと望まない情報の獲得装置を含む可能性がある。 判決はまた、同意が明示的で特定的でなければならず、オンラインサービスプロバイダーが、Cookieの利用の承諾をすることで特定のゲームやイベントに参加するため(裁判事案のように)や、サービス提供を受けるためなどのために、最初のボタンを押すことをコンピューターデザインソースに組み込むことは禁止しなければならないと確認した。このように黙示的又は間接的であるとみなされる方法は当該裁判所によって否定された。この禁止が、ユーザーが本当の警告を認識していない、又は、ウェブサイト内のマウスポインターのドラッギングが継続するかどうかの動作とみなされるような場合に、Cookieの有効設定への同意が、単に当該サイトを通じた検索を続けることに紐づけられているようなサイトに拡大される可能性があることについて議論の余地はある。我々の見解としては、同意は分離可能性のないサービスの享受と結びつくものであるため、このような実務は受け入れることができない。この障害を解決するために、同意を依頼した後に、明示的な方法で同意が表明されるまでウェブサイト画面は停止されなければいけない。事実、裁判所は、Cookieの有効化のためのユーザーによる同意の表明は不明瞭なもの、誘導されたもの、分かりにくい方法であってはならず、同意を得るために選ばれたシステムはユーザ自身による自発的に同意を行なったことを表示しなければならないとしている。 最後に、ユーザーが基本的決定を行えるためには、Cookie設定を受け入れる決定の結果について、事前に十分な情報を考慮する必要がある。この点、サービスプロバイダーはそのサイトにおいてユーザーに対し、Cookieは当該プロバイダーだけがアクセス可能なのか、第三者もアクセス可能なのかといった、基本的観点を明らかにして知らせなければならない。同様に、Cookieが有効でいる期間も示さなければならないだろう。 判決には含まれなかった追加的な問題は、サイト検索や提供サービスの利用を許可するためにCookieの利用承諾を求める(公的な)サイトの合法性である。このようなケースは、ユーザーに能動的な同意を求めている場合であっても、承諾しない場合は公共サービスを利用できないという点において、ユーザーによる決定は誘導された無効なものであるということができるだろう。     より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   バルセロナ、2019年10月4日

Facebookの「Libra(リブラ)」は通貨か、デジタル資産か?

Facebookは、2020年春にリブラという名称の「仮想通貨」を発行予定であることを発表した。 既にブロックチェーン技術に基づいて開発された多くの仮想通貨(以後デジタル資産のコンセプトにより近いと考える「暗号資産」という名称を用いる。)が市場に流通していることもあり、当該ニュースはさほど目新しくはない。しかしながら、Facebookの発表は、とりわけ、セキュリティシステムの欠如への懸念と国の通貨統制に与えるインパクトへの様々な興味や関心を引き起こした。その主な理由は、当該プロジェクトのスケーラビリティ(拡張可能性)にある。リブラが発行されれば、Facebookの現ユーザーだけではなく、Uber や SportifyといったFacebook関連プラットフォームの顧客を含むと20億人以上がリブラを即時使用可能となる。商品やサービスの即時決済や、従来の銀行に比べて非常に低いコストでの送金を可能とするリブラの市場や社会への浸透は、急速なものとなることが予想される。リブラの持つスピード性及び経済性は、ブロックチェーン技術に依拠しており、おそらく全てではないにしても、多くの取引仲介者が、リブラによって排除されることとなろう。加えて、これまで銀行の取引対象でなかった、または、銀行と取引関係になかった何億もの市民が、リブラを利用することができることになるだろう。 さて、リブラはどのように機能し、いわゆる他の暗号資産との相違はどこにあるのか。 「リブラ」とは、リブラによって実行される取引が、中央集権・プライベート型ネットワークで検証されるDLT環境(共有台帳技術)ブロックチェーン技術によって作成されたデジタルバリュー単位を識別するブランド名称である。ビットコインのように分散・パブリック型DLT環境にて管理し、組織や中央管理者が存在しない形で無限数のノード (NODO: 節点)の一つ一つの価値を検証する他の暗号資産に対して、リブラは、中央集権・プライベート型DLTを使用し、取引価値を検証する役割を担う企業が、選択されたノードとして行動し、運営する。これらの選択されたノードは他のノードよりも高価値を有する可能性があることを示唆する。上記企業には、UBER、VISA、MASTERCARDやPAYPALが名を連ねる。リブラプロジェクトは最大で100社の企業が認可ノードとなることが期待されている。したがい、リブラにおいては、取引を検証する認可ノードが誰なのかを決定するのは管理権者であることから、分散型ではない。ブロックチェーンの所有者が管理者として、ノードの数及びその配列を決定する事になる。 分散型DLTの場合、サイバー攻撃の成功率は非常に低い。対照的にプライベート型の場合、特定数のノードを集中攻撃でき、サイバー攻撃が成功した場合、暗号資産の運営自体が崩壊する可能性があるため、非常に脆弱な状態にある。 リブラの使用は、Facebookユーザーに限られておらず、UBER やEbayといった他のプラットフォームのユーザーにも門戸が開かれており、不換貨幣の代わりに商品やサービスの代金支払いをリブラにて可能にすることは言及に値する。 従来の法定貨幣とリブラ間の交換は、Facebookの設立する「カリブラ」という子会社が管理するデジタルウォレットアプリを使って行われる。当該アプリはFacebookアプリの一部を構築するが、リブラはオープンソースのブロックチェーンに基づいているため、開発者がプラットフォームに統合できるアプリを構築することを妨げず、独立したアプリとして変更システムにアクセス可能となる。カリブラは、リブラ協会と呼ばれるリブラ管理者団体が認可する暗号資産取引所との間で、リブラと従来の通貨の取引を、ユーザーが手数料を支払うことで保証するような合意に至るであろう。しかしながら、システム上、他の暗号通貨との取引を許可するかどうかは不確実である。 リブラが従来の意味における「通貨」のコンセプトに合致するためには、市場価値が適度に安定していることが不可欠である。そのために、リブラの本質的価値は、株券や既存の不換貨幣、株式市場の価値によって裏付けることとなろう。当該メカニズムがどのように機能し、どの通貨や証券がリザーブ資産に含まれるのか、詳細は明らかになっていない。 リブラの統治部門については、Facebookによると、認定された最大100企業が各一票ずつ決定権を有する協会を設立し、スイスに本拠地を設置する。本リブラ協会は、以下の3要件のうち2つを満たす企業が参加可能となる。a)年間500万ドル以上の売上を有する、b)2,000万人以上の顧客を有する、又はc)各業界で世界上位100社に入る評価を有する。例え各参画企業が1票を有するとしても、Facebookはプロジェクトの先導者であることからも、また、他の協会メンバー企業との相互依存や、顧客関係からも常にプロジェクトの中で大きなウェイトを占めることになるだろう。議決権や決裁票、他のメンバーの承認又は解任のための意思決定メカニズムが存在するかどうかは不明である。協会の各メンバー企業は、プライベート型ノードの操作を可能とするために、年1000万ドルの資金を提供する必要がある。加えて、リブラが世界的な暗号資産として認知されるために尽力することを約束しなければならない。 リブラを支える技術としてFacebookは、中央集権・プライベート型ブロックチェーンを選択した。これに対する主な議論は基本的に技術・実用面にある。分散型ブロックチェーンでは、取引を検証するには幾千にも上るノードの合意が必要となり、多くの時間とエネルギーを要するため即時の大規模な取引を実現できない。他方、中央集権的DLTではノード数は限られているため、これが可能となる。しかし、当該暗号資産は、取引を検証するために事前に認定されたノードを管理する組織の管理対象となるというマイナス面も有する。すでに言及したように、分散型ブロックチェーンは管理主体を持たない。中央集権型ブロックチェーンは、ノードは「信頼できる」ものというベースが存在し、不確定数の匿名ノードの取引承認を模索する必要はない。しかし、誰が認定ノードの信頼性を決定するか、どの独立機関が認定ノードを監督するのかを問う必要がある。したがって、将来的に世界的規模な暗号通貨になろうとするリブラの管理が、少数の企業とその監督者の手の上にあることは懸念事項である。別の言い方をすれば、これまで国家は中央銀行を通じて金融政策を統制してきたが、大規模な暗号資産の誕生は本特権を著しく侵害することになろう。また暗号資産リブラ協会が、従来の金融政策に決定的な影響を与える可能性や通貨の管理者として国家を置換する可能性すら否定できない。 リブラの誕生に関連して考慮すべきもう一つの側面は、市場統制への影響及び市場の自由競争を妨げ、制限するような、リブラ協会の一端を担う企業への権力の集中である。つまり、リブラを使用する顧客を獲得・保持するために企業はリブラに関わることを希望し、そのためにリブラが提案する特定のアクセス条件を受諾する必要がある。それは煩わしいことであると同時に、競争の制限をする可能性がある。同様に、Facebookはこれを否定しているが、技術的観点からリブラの貸付を実行することは暗号資産運営の当然の帰結であり、技術的にも可能である。その場合、リブラ及びリブラ参画企業は、銀行的な役割を果たすこととなるが、従来の銀行のような厳密な意味での規制対象とならないことは、市場に深刻な歪みを生むこととなり、無規制状態を正当化するのは相対的に困難となろう。 また、リブラが収集する主に個人機密に属する大量のデータを考慮する必要がある。リブラ取引データとリブラ関連企業のプラットフォームのデータとの交差は、巨大かつ価値の高いデータベースを生成する。本データは、ユーザーの好みや傾向について、非常に詳細かつセンシティブな個人情報で構成されることとなる。我々は、当該データはどのように管理されるのか、誰がアクセスする権利を有するのか、ユーザーはデータの転送に関し正当な報酬を得るのかを問わなければならない。一方、分散型ブロックチェーンの取引が実質的に履歴取り消し不可能であるのに対し、リブラのような中央集権型ブロックチェーンの取引は履歴変更が可能となる。当該可能性はデータ操作及びリブラを利用した詐欺を誘発しかねない。 現時点では、暗号資産を従来の意味における通貨として扱うことは現実的ではなく、デジタル資産としてのみしか議論することはできない。許容価値の安定性が欠如し、一般的に商品やサービスの支払い手段として許容されていない暗号資産は、従来の法定通貨の特徴要件をまだ満たしていない。しかし、立法者がリブラの誕生及びその後の発展を許可するのであれば、近い将来そのような状況になりえると考えない理由もない。その場合、誰が立法者の役割を果たすのだろうか。現在Facebookはアメリカ政府とリブラ発行に関し交渉中であるが、リブラが発行された場合の世界的レベルにおける社会的及び金融政策に与える即時的なインパクトを考慮すると、アメリカ政府の許可のみで十分であるかは大きな疑問である。リブラに対する立法者の介入は、本暗号資産の本質の定義に焦点をあてる:リブラを通貨とするか又は「証券」として扱うかによって、自動的に特定かつ制限的な法律の枠組みに挿入される。直近では暗号通貨による資金調達「ICO」が株式市場の法規制の対象となった時にそのような状態が生じた。これは、その終わりを意味した。なぜなら、ICO募集の開始の手続きが長期かつ高コストの対象となり、スピード性・経済性といったICOの本質的価値を喪失する結果となったからである。しかし、暗号資産が単なるデジタル資産として扱われる場合、証券や従来の意味の通貨ではなくとも(現行の法律では)市場での使用や交換に支障はない。これまでのところ立法者は、暗号資産での取引量が絶対的に少ないこともあり傍観者の立場をとっている。しかしその巨大なスケーラビリティ故に、リブラプロジェクト構想においてリブラは、通貨として誕生するのではなく、特定の商業環境における商品及びサービス決済のデジタル資産として存在し、国家の監督・統制を可能にするフォーマットにコンセプト自体が準拠することを期待する。そしてその最終的な外郭と性質を決定するのは、おそらく市場そのものとなるであろう。     より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   バルセロナ、2019年7月12日

デジタルコンテンツ・サービス供給契約

2019年5月22日、デジタルコンテンツ及びサービス供給契約の一定の側面に関するEU指令第2019/770号が公示された。上記EU指令は、デジタルコンテンツ又はデジタル・サービス供給に関し、会社と消費者間において締結される契約に含まれるべき要件に関する一連の規制を取り扱っている。当該規制は、デジタルコンテンツ・サービス供給する事業者と消費者の間の契約が代金と引き換えに実行される場合に適用される。従って、サービスの提供が有償である場合は、本指令は、事業主と消費者の関係に影響を与える。 さてここでは、当該指令が、消費者が本供給に対して代金と引き換え(典型的な反対給付)ではなく、消費者の個人データ提供による場合にも適用されることについて具体的に言及しようと思う。 本指令の新注目点は、デジタルサービス供給者に対して消費者がほぼ無意識に提供する個人データの価値に重きを置いたことにある。しかしながら、消費者が提供する個人データが、他の目的に利用されることなく、コンテンツの供給又は法要件の遵守を唯一の目的として事業者によって使用される場合には、本指令は適用されない。 当然ながら、事業者がこれらのデータを他の目的のために、例えば商業上の直接又は間接的な使用を目的としていないことをどのように調査するのかを、我々は問う必要がある。 本指令の適用範囲は、消費者の要請に対しカスタムメイドされたデジタルコンテンツの開発契約や、デジタルコンテンツの配信者に排他的に役立つ救済措置にも同様に影響する。 事業者は、別段の取り決めがない限りデジタルコンテンツ又はデジタルサービスを契約締結後直ちに提供しなければならない。 以下に挙げる主観的・客観的な要件を満たしている場合に、デジタルコンテンツ又はデジタルサービスの提供は本指令に適合しているとみなされる。 a) 主観要件: 契約で定められたデジタルコンテンツ・サービスの数量、品質、機能性と、実際に供給されたものが一致していること。使用目的は契約書上消費者によって同意された目的に適合し、契約上定められた全ての付属品、説明書等とともに供給されること。 b) 客観要件: 本指令の規定条項のうち、デジタルコンテンツまたはサービスが契約締結時の要件への適合性が維持されるように、常に消費者に通知・更新しなければならない事業者の義務は言及に値する。デジタルコンテンツまたはサービス提供の契約期間中は当該義務を履行しなければならない。また、本供給が一度の行為(又は何回かに分割された行為)である場合は、コンテンツやサービスのタイプによって消費者が待機可能と「合理的に」判断する期間は、当該義務の履行を要する。同様に、別段の合意がない限り、デジタルコンテンツまたはサービスは、契約締結時に最新のバージョンで提供する義務がある。 「合理的」という文化的要素や、地域の習慣に関連し、普遍的な判断基準を持たず、各EU加盟国によってとらえ方が大きく異なるような用語がここで使用されていることは、特筆すべきであろう。 一度の供給行為又は一連の個別の供給行為を定める契約においては、事業者は契約が不適合となった場合の責任を負うこととなるが、本期間は2年を超えることはない。事業者に対し消費者が契約不適合の是正請求権の時効は、2年の期間内に明らかになった不適合性について本指令に規定する救済措置を請求することを認めるべきである。 一定の期間にわたって供給することを定める契約の場合には、事業者は供給契約期間内に生じる適合性について責任を負うとする。当該ケースでは、EU加盟国は供給契約期間内に発生又は顕在化した不適合性に対する救済措置を請求する権利を、消費者に認めなければならないという原則を適用する。 一般に、消費者のデジタル環境に関し消費者が契約を締結する前に事業者が明確に提供するデジタルコンテンツまたはサービスの技術的要件との互換性を説明しない限り、コンテンツまたはサービスの適合性に関する証明責任は事業者にかかる。 契約が適合していない場合に、本指令は以下の救済措置を定める。 事業者に適合を請求する。(適合性の欠如度合いに比例した)価格の値引き又は契約の解除。 デジタルコンテンツまたはサービスを適合させることが不可能である、又は、適合のためには事業者に過度のコストがかかる場合、消費者は契約を解除した上で、コンテンツ又はサービスが適合している場合に相応した金額での支払いを要求することができる。 契約解除の場合、事業者は、契約締結に関連し支払われた費用を全て返金しなければならない。一定の期間にわたって供給することを定める契約の場合は、供給されたコンテンツ・サービスが適合されていない期間に対応する期間の代金のみを返金する義務がある。 契約解除の場合、消費者は、サービスの提供またはコンテンツの作成のために、事業者に提供したデジタルコンテンツ(個人データ以外)を回復する権利を持つ。 本指令は、加盟国の国内法への置換の期限はを2022年1月1日と規定する。   詳細についてはEduardo Vilá (va@vila.es)までご連絡下さい。   2019年6月7日、バルセロナ

キャピタルゲイン税の登録および清算について

本稿は、2019年4月1日付けの登記・公証局(DGRN)の決定に関連するものである。 本事案の事実は、以下のとおりである。相続による不動産取得の登記に関する申請書がマドリードの不動産登記所に提出され、それにはキャピタルゲイン税支払い免除の申請が添付されていた。 不動産登記官は、キャピタルゲイン税は支払われていないことを理由に登記を却下した。 利害関係者は、この決定に関して登記・公証局に対し異議申し立てを行った。 議論の目的は、キャピタルゲイン税が清算されておらず、代わりに支払い免除を要求する行政宛の文書の写しが提出されている場合、不動産取得に関する公正証書の登記がされるかどうかである。 DGRNは、担保法の第254条に従い、問題となっている手続きに対する既定の税金の支払いがされていることが証明されていない場合には、文書の登記は認められないことをまず言及した。 しかしながら、当該原則の適用は一律のものというわけではなく、地方財政法第110.6条b)に例外がある。当該条項では、登記の対象となる文書と共に、法的に規定された文書、またキャピタルゲイン税支払いの証明を補足する文書を提出することを認めている。当該条項は、前述した支払いを証明するものの代わりに特定の文書の提出を定める規定について自治体の裁量に任せている。実際、DGRNは、上記のような場合において、常に自治体条例が定める要件を満たしていることを前提に、キャピタルゲイン税の対象となる納税義務を決定する行為や契約を含む文書の登記を認める決定を出している(とりわけ2017年11月27日の決定)。 本事案についていえば、キャピタルゲイン税を規制するマドリード市の税条例は、利害関係者が不動産の譲渡を免除、無効、または対象外としてみなす場合には市の税務署に対し申告の提出を認めており、この申告は正当に立証され、市または関連機関の受領印が押印されていなくてはならないとした。同条例では、登記所が当該届出の写しを保管しなければならないと規定しており、登記は申告に対して税務署の決定を害することなく行われる。また、申告が却下された場合、利害関係者は当該決定が通知されてから1カ月以内にキャピタルゲイン税の清算に進む必要があることも理解されなくてはならない。 利害関係者が市条例の規定を満たしていたため、DGRN本事案の異議申し立てを認め、登記簿の解除と相続による不動産取得にかかる文書の登記承認を命じた。   より詳細な情報につきましては、下記までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es   バルセロナ、2019年4月26日

スマート・コントラクト:その性質と限界について

スマート・コントラクト又はインテリジェント契約はブロックチェーンの表れの一つであり、ブロックチェーンのインフラストラクチャ内で機能し発展するアプリケーションである。 したがい、技術的に作られたものであり法的に作られたのではなく、情報科学のコンセプトから生まれたものであるという点から始めたい。実際、Nick Szabo氏は25年前に初めて定義化したと言われており、その定義は「単一のデジタルフォーマット仕様の前提の集合体であり、その中で契約当事者が当該前提に従って行動するというプロトコルを含む」というものであった。スマートコントラクトの本質はその自動的に執行可能な点にあり、「特定された何かが起こった場合にはこの結果が発生する」のであり、当事者がいわゆる「コード化された合意」と呼ばれるであろうコンピュータプログラムに間接的に合意しているとはいえ、このプロセスが契約当事者の直接的な意思とは別のところで歩き回る。インテリジェント契約の構成はコンピュータ言語がベースとなっており、それにより独立かつ自動で機能しその効力を発揮することができるが、常にコード化された枠内においてである。ここから「インテリジェント」という用語に疑いの余地が生じる。なぜなら、インテリジェンスというのは(それが自然であれ人工的であれ)、あらゆる時点での環境(たとえ予測不可能なものであっても)と手段の採用を可能にするものであるからである。他方、インテリジェント契約は、契約を取り囲む環境が変化し契約の履行が不可能となった場合や法の規定に従うと不当になった場合にも、そのストラクチャーや前提を修正することができず、したがって、結果も修正することができないため、この柔軟性に欠ける。 インテリジェント契約の基礎が、多かれ少なかれ複雑なコンピュータライン、前提、指示及び事案の背景を考慮することなく自動的に導き出される結果のシークエンスの集合体であるならば、法的観点において契約と考えることはできない。契約は当事者の意思にその基礎を置くものであり、その有効期間中に変更される可能性があり、環境に応じて契約を無効とし又は修正することができる。反対にインテリジェント契約、周囲の環境を考慮して機能することはしない。にも関わらず、その存在と制限された重要性について、スマートコントラクトを法的契約の一種とみなすことで、状況に当てはめることができる。この場合、スマートコントラクトは、法的契約の当事者によって合意された前提に基づき、定められた結果を自動的に履行又は実行することを許す情報技術の一部と把握される。定期的な売買契約を考えると、前提条件は定められた日付の到来、結果は銀行送金又は各機関に合意された金額の引き落としである。このハイブリッドなモデルにおいて、インテリジェント契約又はコード化された合意それ自体は生命を持っていない。しかし、契約当事者の自由意思に基づく合意の履行の機能を果たすことで、従属的ではあるものの、法的契約の要素として機能する。 インテリジェント契約が認められるには、当事者及びブロックチェーン技術への法的システムから信頼されることが必要であり、それをサポートするプログラムの信用性及びそれの法的環境への適用を証明することによって得られる。ブロックチェーン技術が認知されれば、インテリジェント契約は第三者、仲介人又はある一定の結果をもたらす前提条件の成就を決定する公証人の介入によらずに実行可能であるというその利点を提供することになる。なぜなら、プログラムそれ自体がそれを定め、ノードチェーンが取引を有効化し、一度それが行われてしまえば、取消しやその後の変更は許されないからである。Sillaber及びWaltlは、インテリジェント契約は創造、確定、実行、完了の4つの生命サイクルを持っていると説明している。プログラミング及びその有効化は2番目のフェーズに属している。なぜなら、一連のノードの読み取り及び介入を通じて確定されると契約は「確定」したものとなり、当該フェーズにおいて有効化された前提が到来した時点で自動的に実行されるからである。上記のこと、及び、権限保有者や代理人の有効性確認が必要ないことから、非常に迅速かつ柔軟な技術的解決が可能となると同時に、それ自体のビジネスモデルに使用されるようなコストの抑制に資する。コインの裏側には自動履行の危険が存在する。例えば、契約により特定の日に支払いがされない場合に金銭保証の実行を予定することができるが、この事実が第三者又はプログラムに予定されていない想像を絶するような事象によってなされた場合、契約は実行され保証金とされていた金額は実行者の手に渡る。この結果を元どおりにすることは困難となるだろう。少なくとも、手続きの時間と費用がかかる。 インテリジェント契約は、伝統的な言語で表現された法的契約に内在する疑問とグレーな領域の解釈を避けていると言えるが、インテリジェント契約は、不当な結果や当事者の真意に反することを防ぐために必要な柔軟性が欠けている。契約上の善意や権利濫用といった契約に付随する原則はコンピュータ言語では考慮されていない。したがって、コンピュータプログラミングの方向性が与えられた条件に完全に一致した結果をもたらしたとしても、この契約自体が法律に反する可能性がある。インテリジェント契約を取り巻く状況の準備された無知を伴うプログラムの実行は、「致命的」な結果を招くと言うことができ、故に危険であると言える。インテリジェント契約の「盲目的」な実行を避けるために、何人かの著者は、複数著名とクロス署名のプロトコルを通じて、両当事者間の相互合意により、その実行を活性化する可能性を指摘している。しかし、この方法は、インテリジェント契約の主な特徴、美徳とも言える部分、すなわち「自動履行」を損なうことになる。 インテリジェント契約の性質は実質的に技術的なものであるため、この問題の解決策は、プログラムの独自の設計に求める必要がある。問題は、契約がいつ履行されることができ、いつできないのかを区別できるコンピューターソリューションを採用することにあり、結論に達するために単なる「Yes/No」の2つの定式に基づくものでなく、インテリジェント契約の環境に関係するより複雑で横断的な側面も取り入れるようなものであるべきであろう。そして、そのようなソリューションは人工知能技術により可能となるだろう。また、これと合わせて、インテリジェント契約の技術的提案の法的環境への進歩的な統合を達成するために、コンピュータ及び法的専門家が協力してその準備を行う必要があるだろう。 詳細については下記までお問い合わせください。 エドアルド・ヴィラ va@vila.es 2019年3月1日

商事案件の調停

スペイン政府は調停の促進法の法案を最近公示した。 将来の規定はいくつかの法を改正するものであり、その目的は、特定の紛争について、初期の解決手段として訴訟手続きの枠外で紛争を解決する手段としての調停制度の対象となるような体制を整え、裁判所の負担や過剰な負担を軽減することである。 この新制度は、現行の自主性によるのではなく、紛争当事者に対して調停での解決を義務付けるものである。法案では「軽減された強制」と呼ばれ、強制力を隠すために遠回しの表現がされている。なぜなら、調停は訴訟手続きへアクセスするための必要な手続き費用となるためだ。 予定されている法案では、法第5/2012号民事及び商事事件の調停に関する法が改正される。調停の期間が延長され、30自然日とされる。訴訟手続き過程を開始する前に両当事者間に調停による解決を義務付ける商事案件は、以下となる。 (a) ディストリビューション契約 (b) 代理店契約 (c) フランチャイズ契約 (d) 商品及びサービスの供給契約 しかしながら、これらは「個別交渉の対象である場合に限る」との条件を定めている。 「個別の交渉」として解釈されるべきものが何であるかの規定がなく、当該言及の不明確さには驚かされる。最終的に法案が可決された場合、最終版の条文においては、この点が明確に規定されていると信じたい。 法案では、「調停が試みられた」とみなされるためには、裁判所への訴え提起前の6か月の間に、まず調停人の前で情報交換セッションを実施し、次に解決を模索するセッション(同日開催も可能)がされなければならないとしている。当事者は個人的にセッションに出席しなければならず、当事者が法人の場合は、法定代理人又は代理権限を持つ者が出席しなければならない。 調停人は、法務省又は自治体管轄の場合には自治体の、調停人及び調停機関の登録簿に登録されていなければならない。 当事者のいずれかが合理的な理由なく情報交換セッションを欠席した場合、申請された調停を放棄したものとみなされる。 この法案は、よく考えられてはいるものの、驚くべき無邪気なミスを犯している。第一に、法案作成者が経験と商事実務の見地に足りていないことが明らかである。個人間に生じた小規模な商事事件や、国際企業間、大規模又は中規模企業間の紛争を取り扱うことができない。また、当事者間での友好的な解決に至る道が途絶え、当事者双方が訴訟手続きに訴える場合(すなわち、第三者に当事者間の見解の相違を解決してもらうことを決めた場合)、当事者の意思により解決することができなかったことが第三者(特に資格のある調停人でなければ)によっても達成されないことは明らかである。したがって、少なくとも、この規則は、当事者が裁判所に訴え提起を行う前段階として調停手続きを行わなければならないための金額の範囲を定めなければならないと思われる。 また、この法案は訴訟手続き中の調停についても規定する。つまり、裁判に先立ち調停が行われなかった場合で、裁判官が調停での解決が可能と考える場合、あらゆる民事及び商事事件の裁判の最中に調停が行われることを可能とする規定である。原告及び被告が申請しない限り、調停によって訴訟手続きが中断することはない。裁判官は民事及び商事事件の調停に関する法令の定める手続きに則り、調停人を指名する。 裁判外手続きによる紛争解決の制度は、特に商事事件については、あくまで当事者の自主的な意思による代替手段であり、そうあるべきだと考える。それを義務付けることは調停の性質に反するものである。訴え提起前に、問題となっている事案についての能力及び理解を備えているか疑わしく、かつ、調停が自主的なものである場合に当事者の信用を預けていない第三者に対して主張を提出する義務を当事者に課すことで、当事者の訴訟手続きを利用する権利が損なわれる。他方、相当な金額又は性質の紛争の多くにおいて、調停人は当事者がそれまでに試した解決方法よりも優れた解決策を提案することはできないことは明らかである。加えて、調停人が、裁判官や弁護士よりも当該事件を評価し判断をする能力に長けていると期待するのは、特に案件が複雑である場合には、合理的ではない。 訴訟手続き又は調停人による介入のいずれが当事者間の紛争解決手段として適切であるかは、マーケットで活動する代理店同士の関係を通常規定する常識や実用主義に基づき定まるものである。 義務的な調停は多くのケースにおいて、最終的な判断を得る手続きに、長くうんざりとする遅れを生じさせるものと思われる。この遅れは、その後の回復が難しいだろう損害を生じる可能性があり、また、望む望まないは関係なく、訴訟手続きが始まる前に当事者間に紛争があること及びその主張内容が明らかになってしまう。政府により提案がされた方法は私人間における紛争でそれほど高額に及ばないケースであれば一定の合理性がある。しかし、商事事件全般に調停を義務付けることは、司法行政に死することはなく、費用と複雑さを生じさせることになるだろう。最終的に、訴訟件数の減少や利用可能な保証の強化を予測できる合理性があるかどうか見直す必要があるだろう。ただ単に当てはまらないと考えるだけではなく、さらなる遅れと究極的には訴訟手続きを利用する基本的な権利の制限という障害としてマーケットに受け止められる可能性がある抑止手段となり得ると考える。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2019年1月25日