ESPAÑOL | ENGLISH | DEUTSCH | 日本語 |

1 of 29 Pages

商標の識別性 (Mondelez vs Nestlé事件)

2018年7月25日欧州司法裁判所第3法廷は、ベルギー、アイルランド、ギリシャ及びポルトガルの4ヶ国において識別性を具備していたと示すことができなかったとして、Kit Kat 4本入りの三次元商標の登録を取り消した。当該商標は2006年にSociete des produits Nestlé, S.A.が登録したものである。 上記判決はその法的根拠を2009年2月26日付の欧州商号に関する欧州評議会規則第207/2009号の第7条第1項、2項及び3項に求めた。 商標は以下の場合に登録が拒否される。 b) 識別性を欠く商標   上記第1項は、登録拒否事由が欧州の一部において存在する場合も含めて適用がされる。   第1項b)は、商品またはサービスのために登録申請された商標が、それが使用された結果として識別性を有することとなった場合には、適用されない。 本件は2002年にNestléがKit Kat 4本入りの三次元商標の登録を申請したときにまで遡る。欧州知的財産事務所(EUIPO)によって2006年に最終的に登録が認められた。 2007年、Mondelz UK Holdings & Services(Mondelez)はEUIPOにNestléの商標を取り消すように申請したが、EUIPOは、欧州内で使用されてきたという事実によって欧州商標に関する規則第7条第3項の定めるところにより、当該三次元商標は識別性を備えているとして、当該商標登録取消し要請を認めなかった。 Mondelezは上記決定を不服とし、欧州第一審裁判所に異議を申し立てた。当該裁判所は2016年12月15日に、識別性の具備はEUの一部の地域においてのみなされていることが証明されたとして2007年のEUIPOの決定を取り消す判決を出した。 Nestlé及びEUIPOを一方当事者とし、Mondelezを他方当事者として、当該判決に対して以下の議論をするため控訴がされた。 Nestlé及びEUIPOは、欧州加盟各国で使用されることにより、当該商標は識別性を具備していると主張した。 Mondelezは、欧州のいくつかの国において識別性の具備を証明できていないと主張した。 欧州司法裁判所は本事件を精査し、双方の控訴について以下の理由に基づいて認めなかった。 Mondelezの控訴については、控訴された判決には取り消す理由がなく、判決の法的根拠についていくつかの修正が必要である。 Nestlé及びEUIPOの控訴に関して、ある表象について固有の識別性が欠ける場合、それを商標として登録できるのは欧州全域において識別性を具備したと認められる場合である、と示した。 また、表象が識別性を具備したことを示す証拠は、各加盟国について具備したことの証明が必要というのではなく、例えば、各市場について一つの証拠を揃えれば良いとした。 最後に、欧州司法裁判所は、欧州第一審裁判所の判決について、当該商標の登録はベルギー、アイルランド、ギリシャ及びポルトガルの、識別性の具備が証明されていない他の地域及び加盟国については識別性具備について宣言しない形でなされたと結論づけ、同判決を認めた。 本判決の結果、EUIPOは使用の結果として識別性を具備した表象の登録について、欧州商標として維持することができるか、その登録を取り消すべきかを、再調査しなければならない。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月26日

賃貸借契約の黙示の更新後の賃借人の権利放棄

I. 序文 スペイン最高裁判所は2018年9月26日付直近の判決にて、契約内で毎月又は毎年の賃借料が定められているかに応じて、賃借人による新契約の放棄の効果をもたらす結果を伴う賃貸借契約の黙示の更新が毎月又は毎年行われると理解されるべきかどうかについての見解を示した。 II. 本件の経緯及び適用法令 前提となる事実は、2009年に店舗賃貸借契約が終了したにもかかわらず、黙示的更新がされていたおかげで、賃借人側から一方的に契約破棄をするまで店舗を経営し続けたことに始まる。 スペイン民法第1566条及び第1581条の両条項を合わせて解釈すると、契約終了後も賃借人が賃貸人の同意のもとに15日以上賃貸物件の占有を継続した場合、黙示的な更新がなされたとみなされ、先に期間について同意がない場合は、契約上の固定賃料が年額表示であれば年毎に、月額表示であれば月毎に、日払い表示であれば日毎に黙示的に更新されると理解される。 本件に関し最高裁判所判決は、「民法第1566条にある黙示的更新とは、実際には契約の両当事者の黙示の合意による新規賃貸借契約締結とみなすことができる。現行の賃貸借契約が終了した後も賃貸物を享受するために15日間以上保留し続けることにより、そこに合意が発生すると理解されるもので、賃貸借契約の終了から前述の15日間が経過しているにもかかわらず、賃貸人が、所有する賃貸物件の返却を賃借人に請求しなかったことにより、賃貸人も合意したとみなされる」とした。 また、1994年11月24日付「都市部賃貸借に関する法律」第29号第11条には、「賃借人は賃貸借契約開始後少なくとも6か月の期間が経過した後、30日以上前に賃貸人に通知をすることで、中途解約をすることができる」という規定が存在する。 本件では賃貸人は、上記規定にある6カ月の経過要件を満たしていないとして、当該6カ月に相当する賃料を賃借人に対し請求していた。 これに対し賃借人は、本件の元となる賃貸借契約は2009年の時点で終了しており、契約上は年間賃貸料で契約があったものの、月払いでの賃料支払いがあったことの事実により、月毎の自動更新が行われている状態にあったと反論していた。 III. 判決 地方高等裁判所レベルでは、当該論点に関し統一した見解を示していなかった。ある裁判所は、更新の目安を実際の賃料の支払い頻度に求め、他の裁判所は、最高裁判所がとった立場と同様に、黙示的更新によって締結されたとみなす新規契約の期間を全体的な賃料の期間と規定する方針に沿う。最高裁判所判決は「年額賃料の支払いが月払いで行われていたことを理由に契約期間も月毎更新とみなすことは論拠に欠け、契約書においてあえて賃料を年額で規定することの意義を失うこととなる」とした。 IV. 実務的結論 結論として本最高裁判決は、賃貸借契約が終了してからも賃貸物件を引き続き占拠する場合賃借人は、契約書の賃貸料が年額で固定されている場合には、元の賃貸借契約が年毎に黙示的に更新されると理解し、新規に有効期間一年の契約が開始した時点から最初の6ヶ月は契約を放棄できず、放棄の際も、最低30日前には通知することが要件となることに留意すべきである。 不動産オーナー/賃貸人には、本最高裁判決により、賃貸借契約の賃貸料が年額で固定されている場合は、元の賃貸契約が年毎に黙示的に更新されると理解し、新規に有効期間一年の契約が開始した時点から最初の6ヶ月の間に賃借人側からの契約解除があった場合は、相応する賃貸料を請求することが可能となったと言える。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月19日

スペイン有限会社の持分譲渡の制限

スペイン登記公証局は、2018年7月31日付け決定にて、ドラッグアロング(強制売却権)及び タグアロング(共同売却権)に関する定款規定の合法性に関し、有限会社の会社持分譲渡の自由に制限を課すことへの株主の自主性尊重の限界を指摘する見解を示した。 具体的には、ある会社が以下の内容のタグアロング規定を定款に含めるための定款変更登記をしようとしていた。 会社持分の50パーセント以上を保有する株主が、第三者に対しその持分の全て又は一部を譲渡しようとする場合は、他の株主もその保有する持分を、当該譲渡と同じ条件で同一の譲受人に譲渡する権利を保証する、いわゆるタグアロングを付与する。 また、ドラッグアロング規定は、会社設立より5年が経過した後に、株主又は第三者が会社持分の全部について買い取る提案をした場合、譲渡人である株主は他の株主に対し同条件で同一の譲受人に持分を譲渡することを強制することができる、としていた。 商業登記所登記官は、上記2規定の登記を以下の理由により拒否した。 これら2規定は、持分の譲受人が他のすべての持分を取得したくない場合、もしくは他の株主が、タグアロング権を行使したくないケースを予見していない。同様に、持分譲渡を検討している株主自身が、当該譲渡を断念した場合に起こる事象に対する予見もされていない。 したがって、本件の登記却下理由は規定の違法性に基づくものではなく、特定の起こりうる事象を未然に防止するような配慮が規定起草時にかけていたことによる。 登記公証局(DGRN)は最終的に、商業登記官の決定を覆し、以下の見解に基づいて、本件のドラッグアロング(強制売却権)及び タグアロング(共同売却権)規定にかかる定款変更の登記申請を受理する決定を下した。 1) 一般的に、有限責任会社は非常に「非公開」的性質を有しているとみなすことができる。したがって、株主間の相互取引、あるいは配偶者間、株主の親族間、グループ会社間の持分譲渡以外は、会社の定款規定の要件に従って譲渡が制限される。しかしながら、いかなる場合においても定款が株式の自由譲渡について完全に認めないことはできない。定款が上記点にかかる予見をしていない場合は、補足的な性質を持つ資本会社法第107条および第108条の規定がこれを補う。 2) この点における資本会社法の補足原則を考慮すると、持分譲渡の合理的な可能性又は持分に囚われることを回避するための退社の可能性が株主に保証される場合には、株主は持分譲渡を制限する代替案を規定する権利を有すると言える。そうでなければ、民法第348条に規定される資産の取引を認める基本原則に反することとなる。 3) 定款規定による持分譲渡の制限は、上記原則に違反せず、合法的な禁止を尊重するものであり、法的に認められていると理解されるべきものである。 最終的に登記公証局は、登記官は持分の自由譲渡に関する制限を規定する定款規定の合法性を検証することはできるが、規定の細部までに入ることはない。そして、法的枠組みの中で、株主は有限責任会社の特徴である非公開性を維持するために適切であると考える措置を決定する自由を享受する、との見解を述べた。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月12日

インターネット及び情報システムの安全に関する新勅令法

2018年9月8日付官報にて新しい勅令法の2018年9月7日勅令法第12号インターネット及び情報システムの安全に関する勅令法が公布され、翌日から施行された。この勅令法は、全面的な視点から、国内とEUとの本分野についての協力体制を容易にし、インターネットや情報システムに影響を与えるような脅威に対する防御策を強化することができるような枠組みを定めることを目的としている。 なお、本勅令法は2016年7月6日付欧州議会及び欧州評議会指令第1148号をスペイン国内法制に置換するものである。 本勅令法の適用対象となるのは、EU域内で事業活動のためにネットワークや情報システムに依存し、かつ、重要なサービスを提供している会社である。また、本勅令法のグローバルな適用を行うために、適用範囲は指令に明白に含まれていない事業分野(特別法制があるにもかかわらず)にも及ぶ。 また、本勅令法は、オンライン・マーケット、サーチエンジン、クラウドサービスといった特定のデジタルサービス業者にも適用がされる。 欧州指令に沿って、本勅令法はネットワーク及び情報システムの保護を保証する必要がある事業分野を特定し、また、当該事業分野における重要なサービスの特定のための手続きや、重要なサービスを提供する主要なオペレーターを定めている。これらは本勅令法の適用対象となる。 重要なサービスのオペレーター及びデジタルサービスのプロバイダは、適切かつネットワーク及び情報システムの安全にとって考えうるリスクに応じた技術対策及び組織対策を採用しなければならない。当該対策を外注することは可能である。 重要サービスのオペレーターは情報安全責任者として個人、団体又は組織を任命し、管轄当局に対して届け出なければならない。情報安全責任者は管轄当局との連絡窓口や技術協力を担う。 デジタルサービスプロバイダは、少なくとも技術の発展と以下の事項を考慮に入れたセキュリティ対策を定めなければならない。 システム及び設備の安全 事故時の対応 継続的対応 監督、監査及び試作 国際的な規則の遵守 本勅令法は、重要サービスオペレーターとデジタルサービスプロバイダに、それらが提供するサービスのために利用されるネットワーク及び情報サービスに生じた事故で、それらサービスに重大な混乱を生じさせるようなものについて、重要サービスに影響を及ぼす可能性のある事象又は事故の届出が予見された時に、届け出ることを要求する。 届出の必要性の判断のため、事故の重要性は少なくとも以下の要素を考慮して判断される。 重要なサービスの混乱により影響を受けたユーザーの数 事故が生じた期間 当該事故の拡大範囲又は地理的範囲 サービスの機能が妨害された程度 経済活動及び重要な会社への影響の範囲 重要サービスの提供における被害を受けたシステム又は情報の重要性 風評被害 この届出義務を怠った場合は、最高で1,000,000ユーロの罰金が課せられる。 露木美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月5日

スペインにおける会社解散理由

スペインにおいて会社は、スペイン資本会社法第363条に定める事由に該当する場合には、解散をしなければならない。以下が法定解散事由である。 資本会社は、以下の場合には解散しなければならない。 a) (定款の) 会社の目的を構成する事業活動を停止する場合。具体的には、一年以上の事業活動を行なっていない場合には、事業停止状態とみなされる。 b) 会社の目的である事業が終了した場合 c) 会社目的の達成が不可能である場合 d) 会社の経営組織が機能停止し、その役割を果たすことができない場合 e) 純資産の額が資本金の額の半分以下となる損失がある場合。ただし、本損失の増加又は減少のための十分な措置を採っていない場合を除き、また、民事再生手続をすることが適切でない場合でなければならない。 f) 資本金の額が法定金額を下回る場合。ただし、なんらかの法を遵守した結果である場合は除く。 g) 議決権のない出資持分(S.L.の場合)又は議決権のない株式(S.A.の場合)の額面価格が、払込資本の額の半額を超過しており、その状態が2年以内に回復しなかった場合。 h) 定款に定められた他のいかなる解散事由に該当する場合。 株主総会は解散の決議を採択できる。又は、会社の解散が議案として提出された場合は、解散理由を撤回するための措置を取る必要がある。最もよくある解散事由は、上記e)にあたる状態である。本状態を改善するための方法については、当事務所Calra Villavicencio弁護士の9月14日付の記事「会社の資金調達方法」を参照されたい。 他方、取締役は、解散決議を採択するため、また、会社が倒産状態にある場合には民事再生手続きをとるために、2ヶ月以内に株主総会を招集しなければならない。しかしながら、いかなる株主も、会社の解散事由又は会社が破産状態であると認識できるような事由が存在すると判断する場合には、取締役に株主総会の招集を申請することができる。 取締役が2か月以内に株主総会を招集する義務を果たさない場合、取締役は法定解散事由の事実以降に生じる会社の債務について連帯して責任を負う。 ここ(2017年4月7日の筆者の記事)で以前に説明したように、取締役の責任は裁判所の判断に委ねられる場合もあるため、個々のケースにおいて具体的な事実に基づき対応するべきである。   Hugo Ester より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月28日

EUデジタル単一市場における著作権保護

デジタル単一市場における著作権保護に関するEU理事会及び欧州議会指令案は、2018年7月の否決を経て、9月12日付にてようやく承認された。当該新指令の名称が示す通り、オンライン上における著作権の使用を規制するもので、ライセンス及び電子出版プラットフォーム上にて尊重すべきコンテンツ・フィルタリング・システムの確立を定めるものである。 改正指令案の中でとりわけ議論となったのは、第11条及び13条に関するものである。 前指令法案第11条には、EU加盟国内でニュース配信及び新聞を発行する出版社に著作権を認め、第三者が発行物をネット上にて直接又は間接的に再利用する場合、許可又は禁止を可能とする規定があった。同様に、出版物の著作権は、発行翌年の1月1日から起算され20年間保護されると規定されていた。 しかしながら改正指令案は、以下のような案を導入した。 (1) EU該加盟国は、出版社及び著者が、「情報化社会におけるサービスプロバイダ」から「公平」かつ「適切な」報酬を受領することを保証しなければならないとした。当該新要件は、著作権者(コンテンツの出版社及び著作者の両方を含む)が、コンテンツを収集するオペレーター及びニュース・アグリゲータから「手数料」を受領しなければならないことを意味する。 (2) 著作権保護期間は20年間から5年間に短縮される。 (3) 本条にて規定される権利は、遡及適用されない。 これに対し13条の内容は、YouTube、 Facebook、Twitterといった大企業に影響を及ぼす規定であったため、さらに大きな議論対象となった。改正後指令案において以下の内容とされた。 (4) 大量の作品やユーザーの既読機能を保存するオンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、著作権者と公正かつ十分なライセンス契約を結ぶ必要がある。 (5) 上記サービスプロバイダは、「臨機応変かつ効果的な」苦情、異議申立てシステムを確立する必要がある。 本条項は、ビデオ及び著作権保護の対象となるようなコンテンツを配信する巨大プラットフォームに多大な影響を及ぼすが、適用されるのはプラットフォームそのものに対してではなく、配信を行うユーザーに対してである。また、コンテンツフィルタリングシステムは不十分であり、配信後にそれが実施される。 最後に、全ての情報拡散、ニュースのアグリゲータープラットフォームに当該条項が影響を及ぼすわけではなく、小さなプラットフォーム及び、小企業には影響しないことは特記に値する。 他方、ウィキペディアのような保護されていないコンテンツの百科事典や、保護出版物の教材として使用は、適切に出典元が示されている限り、本条項は影響しない。その際、コンテンツの発行元の事務所、会社の名前を示すだけではなく、容易に取得可能な場合は著者名も出典元として記載する必要がある。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月21日 Pedro Blanco

会社の資金調達方法

時に会社は、財務上の問題解決のため、ビジネス上の投資やプロジェクトの実現のために、資金調達を行う必要がある場合に直面する。そのような必要性をカバーするためのオプションの一つに、株主による資金調達がある。 株主による会社の資金調達方法には多様な選択肢があるが、以下に、資金調達の結果自己資本が増加するのか、負債と計上されるのかに応じて、会計上の強制力が低い順から高い順にその内容を説明する。 増資という形での株主からの資金提供 増資を伴わない株主からの資金供与 資本性ローン(劣後ローン) 1)資本金増資による自己(株主)資本増強(プレミアムの有無を問わず) 増資という形での自己(株主)資本への株主からの資金供与は、その呼び名が示す通り、全て資本金として計上される。この方法は、他に比べて多くの手続きを要する。増資を行うには株主総会の承認決議が必要であり、同総会決議は、定款の変更のために定められた要件を満たす必要があるからである(スペイン会社資本法第296条規定)。その後、当該承認決議にかかる公正証書を作成し、管轄自治体の税務当局に、公証役場及び商業登記所の費用とともに税金の精算を行うための600様式を事前に提出した後、商業登記所にて本公正証書の登記申請をする必要がある。 会計上の観点からみると、会社の増資は、「資産移転及び法的文書税に関する法律」第19条第1項の1により会社取引と規定されており、同法の第45条B)第11項により、「会社取引」にかかる税から免除される。  2)増資を伴わない株主からの資金提供 株主による資金提供が、増資を伴わない場合は、会計上、純資産として計上され負債とはみなされず、株主の債権も発生しない。これは資産と負債の間のハイブリッドの役割を果たし、埋没費用(サンクコスト)として処理される。当該資金提供の返済に関しては、商法上の規制が欠如しており、通常、資本準備金と同様の扱いがされ、配当金分配に関する規定と同様の規制が適用される。 株主による自己資本への資金提供は、特定の状況を除いて株主総会の決議を要しない。しかし、損失を相殺するために行うのか、自己資本の増強のために行うのかを記録しておくことが推奨される。当該手続きについて公正証書を作成する必要も、商業登記所に登記をする必要もない。したがって、公証人や登記の費用も発生しない。 会計上の観点では、株主による自己資本への資金提供は、「資産移転及び法的文書税に関する法律」第19条第1項の2により会社取引と規定されており、同法の第45条B)第11項により、「会社取引」にかかる税から免除される。 3)資本性ローン(劣後ローン) 事業活動のための他の資金調達方法に、株主向けの資本性ローン(劣後ローン)がある。通常のローンと異なる点は、この形による借入れは会計上負債の部ではなく会社の純資産の部に計上されることにある。 資本性ローンに関する規定は、1996年6月7日付勅令法第7/1996号、緊急財政措置及び経済活動の促進と自由化に関する法律の第20条に以下のように記載がある。 「第20条 資本性ローン 資本性ローンとは以下のような性質を持つもののことを指す。 a) 貸主は、融資先企業の事業活動の業績に基づいて定められる変動利息を受領する。本業績を決定する基準は、純利益、売上高、総資本金額、もしくは契約当事者間において自由に合意された他の基準であっても良い。また、会社の業績から独立した形で、固定金利を定めることもできる。 b) 契約当事者は、早期弁済の際の罰則条項を定めることができる。いずれにせよ借主は、資本性ローンの弁済額と同額分だけ自己資本を補填する場合、かつ、これが資産の状態に変更を生じさせない場合にのみ、早期弁済が認められる。 c) 資産性ローンは、共通の債権者との弁済順位において、一般債権者の後になる。  d) 資本性ローンは、商業法規に規定されている会社の資本減少及び清算の際に、純資産とみなされる。 上記の条項は、以下のように追記される。 a) 資本性ローンは、借主である企業が事業の業績に応じ変動利息を支払うことを可能にし、同時に、固定金利を合意することも認めている。 b) 他のローンと同様に、資本性ローンも民法第1740条の規定にあるように、融資金額を一定の期間で返済する条件を定めなければならない。早期弁済は一応認められてはいるが、自由裁量では行えず、償却額と同額の増資を行わなければならない。当該制限の理由は、同額の自己資本を維持することによって、債権者を保護することにある。 c) 資産性ローンは、倒産手続きにおける普通債権の債権者への弁済がされた後にその債権の弁済がされる、劣後債である。 d) 純資産と資本金のバランスが崩れた場合、資本性ローンは、純資産として計上される。 手続きにおいて資本性ローンは商業契約として扱い、公正証書作成も商業登記所への登記も要さない。したがって、公証人や登記の費用も発生しない。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月14日

マネーロンダリング EU指令第2015/849号の国内法への置換

2018年8月31日、スペイン政府は閣議でEU指令第2015/849号をスペイン国内法へ置換するための措置として、マネーロンダリングに関するスペイン法第10/2010号を改正する勅令法第11/2018号を承認した。 本勅令法は、主として、企業に対するサービス提供者のライセンス又は登録にかかる新たな義務を制定するものである。また、違反に対する重罰化や疑わしい取引を公的及び私的に届け出るための通報窓口についても規定する。 その中でも特筆すべき点を以下に挙げる。 1. マネーロンダリング規制の対象となる高級官僚、裁判官、中央政府や州政府の閣僚、国際機関の代表者及び執行役員、人口5万人以上の地方政府の首長、政党及びシンジケートの代表機関に属する者を含む、公的責任を持つ者を規定する。本勅令法で規定される義務は、該当者が該当する役職を離れてから2年を経過するまで課される。 2. 業務として資産を取引する自然人又は法人は、非居住者である自然人から、取引額又は関連取引の総額が1万ユーロ(以前は1万5千ユーロ)を越える請求又は支払いが現金でされる場合、スペイン法第10/2010号の規定される義務の対象となる。 3. マネ―ロンダリングに対する罰則は強化され、EUの法令で規定されることとなる。同様に、一定の守秘義務を保証しつつも、違反者の名前を公示する措置もとられる。 4. マネーロンダリングに関連する取引実行の疑いがある、又は、明らかに実行している者の身元について守秘義務を保証しつつ、違反を届け出る制度を設ける必要性を規定する。本法律の適用を受ける者は、従業員及び役員が、法令違反の可能性を報告できる制度があるかを監視する。 5. 企業及び信託に専門的サービスを提供する者の登録制度が創設される。本登録制度には、会社設立時や、執行役又は取締役会のメンバーでない書記役、社外監査役としての権限で実務を行う専門的なサービスを提供する者が含まれる。該当する職業に就く者は、商業登記規則の規定に則って、(法人の場合には)実質的保有者の届出とスペイン法第10/2010号に則っていることを宣言したうえで、商業登記所に登録をしなければならない。該当するサービス提供者のうち本勅令法の施行時(2018年9月4日)に商業登記所に未登録の者は、一年の猶予期間の間に登録をする必要がある。 6. 義務の対象者は、顧客が自身または第三者の利益のために取引を実行するのかを調査するために、顧客から実質的保有者の身元に関しても情報を収集しなければならない。顧客が自己の利益のために取引を実行しているのではない疑いがある、又は、自己利益での取引でないことが明白である場合、実質的な取引実行者の身元を確定するために正確な情報を収集しなければならない。 7. 本法律の適用を受ける者は、法人又は保有者や管理者を特定できない法人格を有さない組織と取引関係を持つ、又は、維持することはできない。 8. マネーロンダリング対策システムに欠陥が見受けられる国々(EU指令第2015/849号第9条に規定)は、対策のための強化措置を採らねばならない。送金取引、通貨取引にも同様に適用される。 9. 前述の義務に関連する書類の保存期間は10年とする。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月7日

破産財産として競売された不動産の担保抹消登記

2018年7月20日付の登記・公証局の決定は、破産手続きの一環として裁判所による競売で落札された破産財団に属する不動産に担保登記がされていた場合、当該担保の登記を抹消するための要件を明確に示した。 担保の抹消登記は商事裁判所書記官によって作成された裁判所の命令を付して申請されたが、登記官は以下の理由により当該申請を却下した。 担保登記の抹消を行うには、担保権者が破産計画に同意したこと及び当該担保の被保証債権が特別優先債権として弁済されることに関してなされた措置が明確に示されなければならない。提出された当該不動産の競売時の書類には、破産管財人は当該不動産について「担保の設定なし」としており、当該不動産について担保が付されていたことは言及されていない。したがって、被保証債権の債権者宛に当該担保不動産の競売に関する具体的な通知がされた事実が確認できない。 上記の却下理由に対して会社側は、当該不動産の競売は債権者集会で承認された破産計画に従って実施がされ、それについて官報に公示がされており、担保権者はそれらについて特段の異議申し立てを行なっていないことを理由に、担保権者は当該不動産の担保が抹消されることについて認識をしていたと主張し、異議を申し立てた。 登記・公証局は、担保登記の抹消の要件について、以下の見解を述べた。 不動産担保が付された債権が破産手続きの前又は手続き中に消滅した場合には、破産管財人は当該不動産を「担保設定なし」として競売にかけることができると言えるだろう。しかし、公示の原則から、債権者と債務者との間で民法の定める原因に基づき担保が消滅していたとしても、担保の登記が抹消されない限り、担保は対第三者に対して有効に存在し続ける。 また、破産手続きにおいて物権(担保権)が正しく認識されていなかった場合、破産手続きにおいて債権者リストを作成するにあたっては、債権者の届出を元に行われるが、法は届出がされない債権であっても強制的に債権者リストに含めるべき債権を定めており、その中のひとつが登記された担保によって保証された債権である。そして、破産財団において、実際には担保が設定されているにもかかわらず担保の設定なしとされた財産について、それだけをもって当該担保が消滅したことを意味するのではない。 結論として、破産手続きにおいて財産または権利が、実際には担保が設定されているにもかかわらず担保なしとして競売された場合、当該競売は根本的に無効であり、登記官は担保登記の抹消申請を却下しなければならない。登記官は裁判所における手続きが適切に行われたかを評価することはできないが、担保登記の抹消を命じる裁判所の命令において、担保による保証がされている債権の債権者の権利を守るための法的要件を充たしているかを確認することはできる。 本件では、裁判所による担保登記抹消命令において、被保証債権の債権者が破産手続きに個人的に出頭したことも、破産計画が承認された際に被保証債権の債権者に通知がされた事実も、当該債権が特別優先債権として取り扱われたことに関する事項も、当該不動産にかかる競売の結果が当該債権者に通知がされた事実も、記載されていない。したがって、法的要件が満たされていると評価することはできない、として、異議申立てを却下した。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年8月31日

日EU戦略的パートナーシップ協定及び経済連携協定

2018年8月24日付の欧州連合(EU)官報(オフィシャルジャーナル)において、欧州連合(EU)と日本の戦略協定の調印に関する欧州連合理事会の決定が発表された。 この協定の第1条では、両締約者が政治的な協力及び分野別の協力並びに共同行動を促進することにより、両締約者間の全般的なパートナーシップの強化、両締約者間の協力並びに国際機関及び地域機関並びに国際的な場及び地域的な場における協力、国際の平和及び安定への共同貢献、共通の価値及び原則、具体的には、民主主義、法の支配、人権及び基本的自由の促進に共同で貢献することを目的とする、とされている。 各条項の合意は、上記の目的の非常に多様なトピックに渡るものであり、以下に司法及び立法分野での協力に関連するものを紹介する。 (1) 司法協力 EU及び日本は、司法協力関連でこれまでに締結された条約に関連して、民事及び商事に関する司法協力を強化することを約する。 また、刑事に関する共助に関する日本とEUとの協定を強化促進する。 (2) 資金洗浄及びテロリズムに対する資金供与との戦い 両締約者は、普遍的に認められた基準を考慮しつつ、犯罪収益の洗浄のため又はテロリズムに対する資金供与のために利用されることを防止するに当たり、情報の交換等により、協力を促進する また、EU加盟国及び日本の双方が属している国際金融活動作業部会の規定についても言及している。 (3) 租税 租税に関する良い統治を促進するため、国際的に確立された租税基準を遵守し、両締約者は本分野での協力の範囲を広げる。特に、第三国に対し、透明性を高め、情報の交換を確保し、及び有害な租税上の慣行を撤廃するよう奨励する。 (4) 両締約者は、国際刑事裁判所及び適当な場合には国際連合の関連する決議に従って設置される裁判所を 通ずること等により、国際重大犯罪の捜査及び訴追を促進するために協力する。 また、この協定には、危機管理、不拡散と軍縮体制の強化、開発政策、災害管理と人道援助、科学、技術とイノベーションにおける協力、産業協力、 環境、観光、気候変動、及び農業と漁業が含まれる。 これまでの合意に加えて、2018年7月17日に、欧州連合(EU)と日本は経済協定(EPA)に署名した。 この協定は、欧州議会と日本国会によって批准された後、2019年に発効する予定であり、ヨーロッパ地域と日本の間の貿易関係に非常にプラスの影響を与えるものと思われる。 この協定により、両当事者間の貿易障壁と商業的関税障壁が軽減される。 当初は、製品の関税の約85%が免除され、その後一定期間が経ったのち、ほぼ100%の関税が免除される。欧州委員会のデータによると、最大1,000億ユーロにも及ぶコスト削減となる。 この協定より最も影響を受ける商業分野は、医薬品、健康製品、農産食品、自動車、輸送機器である。 欧州委員会によると、同協定のおかげで、欧州生産率は0.76%まで増加すると予想されており、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの調査によると、欧州連合(EU)の対日輸出への影響は3分の1まで増加する可能性があり、欧州連合(EU)の雇用と失業率にも非常にプラスの効果があるだろう。 同協定によって欧州連合(EU)と日本が、経済的及び政治的関係の新たなステージに突入したことは間違いない。 欧州連合(EU)と日本政府間の和解、経済関係の強化、相互投資の増加、司法レベルでの協力の強化などが今後期待できそうだ。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年8月24日