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商業登記所における株主総会決議の無効、提訴期間及び登記

登記・公証局は2018年5月30日付けの決定第8053号にて、株主総会決議に瑕疵がある場合には、たとえ決議無効確認の訴えの提訴期間を経過していたとしても、商業登記所はその登記を拒否するとの判断を示した。 2017年4月11日、マドリード商業登記所に以下の株主総会決議が記載されている公正証書が登記のために提出された。 (1)株主総会開催地はバレンシアであった。 (2)本株主総会には行使できる議決権の54.32%の株主が参加した。 (3)本株主総会において、会社の解散及び清算貸借対照表が、満場一致で決議された。 2017年4月27日マドリード商業登記所は、以下の記載事項に瑕疵があるとして、前述の公正証書の登記を拒否する決定を通知した。 本件会社の定款第11条で、解散決議の採択と清算貸借対照表の決議に必要な定足数は株主の70%と定めるのに対し、本株主総会の出席株主数はわずか54,32%に過ぎなかった。 本会社の定款では、本店所在地以外での株主総会の開催の可能性を規定しておらず、バレンシアにおける株主総会の開催は認められるとは言えない。 したがって、本会社株主総会のバレンシア開催は、資本会社法第175条に違反する。 当該公正証書の適正な審査のためには、株主総会の全議事録の提出を要する 本件決議証明書には、発行日の記載がない。 同公正証書は、2018年1月25日、マドリードの商業登記所に改めて登記申請のために提出された。登記申請時に、2018年1月8日付の清算人の一筆が添付され、そこには以下に述べる理由に基づき本件決議の定足数は株主の70%という定めに従う必要はないと記載されていた。 本会社は解散事由に該当する状態にあった 株主総会決議から既に一年が経過しており、決議無効確認の提えの期間を過ぎていることから、当該瑕疵は補正されたと理解できる。 2018年2月15日商業登記官は二度目の審査通知を発行し、本株主総会議事録の全文を提出したことによりその部分の瑕疵は補正されたが、本決議証明書には発行日が未記載であること、定足数および株主総会開催地に関する瑕疵は引き続き存在するとし、本公正証書の登記を拒否した。 2018年3月14日、公証人Joaquín Borrell García氏は2018年2月15日付け却下決定通知に異議を申し立てた。García氏の論拠を以下に挙げる。 本件株主総会決議は、決議無効確認の訴えの提訴期間が満了していることにより、すでに有効性が確認されたとみなされる。これにより本決議は撤回不能となり、あらゆる面で法的有効性を保有することとなる。商業登記所は新たな法的現実を受け入れるべきである。 本件事実は公の秩序に関するものではなく、ゆえに資本会社法第205条第1項の違反に当たらない 提出された決議証明書は、会社の取締役の証明者としての権限により、決議に異議申し立てがなかったという十分な証拠となりうる。 最終的に2018年3月15日に登記官は自身の審査を再確認し、本件を登記・公証局に公示した。以下に登記官の説明を記す。 本件決議の無効性に関し異議の申し立てがなかったとしても、ここで問題となるのは、異議申立人であるGarcía氏が論拠としているように、決議無効確認の訴えの提訴期間満了をもって商業登記所での登記を行うことができるとして良いのかという点である。 決議無効確認の訴え提訴期間満了が存在したかどうかは、公正証書の提出によっては明確にはならない。また登記官は権限の性質上確認することができず、その確認は裁判所に属するものである。 本件株主総会決議は、公の秩序に関するものではないと判断することはできない。当該判断も裁判所に属するものである。2007年最高裁判所判決第596号は「株主総会決議の分野における公の秩序という概念は不確定であると言え (…)当該決議が株主総会に不参加の株主及び少数株主保護への攻撃と推測される場合に適用される、としている。 本件異議申立書は、決議の無効性確認の提訴期限満了と、決議の有効性を混同している。決議の無効性確認の提訴期限満了はすなわち無効性を取り消し、有効に取り変わるものではなく、無効性の確認請求という形では異議申し立てができなくなるだけである。 決議の無効性が確認された場合、取締役は法の遵守を要求され、株主総会にて決議を取り消す、あるいは必要な場合には、法に沿うように、該当する決議に代わるような決議を採択するなどの必要なアクションを取る必要がある。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Pedro Blanco va@vila.es 2018年7月6日

MASDAR事件とANTIN事件: 再生可能エネルギーへの助成金カットを行なったスペイン政府に対する新裁定

  外国投資家がスペイン王国を相手として、世界銀行の傘下組織である投資紛争解決国際センター(ICSID)を通じて申立てを行なっている27の国際投資仲裁のうち2つの申立てについて、最近裁定が出された。当該紛争は、2013年にスペインが再生可能エネルギー発電システムに対する助成金をカットしたことに端を発する。 ・Masdar とスペイン王国間のケース(ICSID仲裁裁定 事件番号ARB/14/1号) Masdar Solar社 及びWind Cooperatief U.A.社の申立てにより、スペイン王国に対して起こされた仲裁申立て 2018 年5月18日、John Beechey氏、Gary Born氏及び Brigitte Stern教授によって構成された仲裁法廷は、スペイン王国に対し、6450万ユーロにのぼる額を損害賠償金として申立て人に対し支払う旨の判断を下した(申立人の請求額は1億6500万ユーロだった)。また、2014年6月20日より仲裁裁定日までの上記損害賠償額に対する利子(年利0.906%)及び、仲裁裁定日から実際の支払日までの上記損害賠償額に対する年利1.60%の支払いも義務付けた。 ・Antin とスペイン王国間のケース(ICSID仲裁裁定 事件番号ARB/13/31号), Antin Infrastructure Services Luxembourg S.à.r.l社 及びWind Antin Energia Termosolar B.V.社の申立てにより、スペイン王国に対して起こされた仲裁申立て 2018 年5月18日、Eduardo Zuleta氏、Francisco Orrego Vicuña氏及び J. Christopher Thomas 氏によって構成された仲裁法廷は、スペイン王国に1億1200万ユーロを損害賠償金として申立人に対し支払うように裁定した(申立人の請求額は2億1800万ユーロだった)。また、上記損害賠償額に対する年利2.07%の支払い及び2,07%の累積利息の支払いも義務付けた。 現時点においては、まだ上記直近の2つの裁定に関する内容の詳細が公表されてはいないが、両裁定ともに、2017年5月4日に裁定されたEiser社 とスペイン王国の間のケースの仲裁裁定(ISCID仲裁裁定 事件番号ARB/13/36号)を支持するものだと言えよう。上記仲裁裁判はJohn R. Crook教授、Stanimir A. Alexandrov 博士及びCampbell McLachlan QC教授によって構成された仲裁法廷で行われ、スペイン王国に対し1億2800万ユーロにのぼる額を損害賠償金として申立人に対し支払う(申立人の請求額は2億9800万ユーロだった)旨の裁定を下した。当該仲裁裁定については、2017年5月19日付の当事務所の記事で触れている。https://vila.es/jpn/2017/05/19/2210/ より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es 2018年6月29日

減資の際の債権者保護手続き

スペイン資本会社法(以下「資本会社法」という。)第317条によると、資本の減少(減資)は以下の目的の場合に可能とされる。 1) 会社の資本額と累積欠損の結果として減少した純資産とのバランス回復(貸借対照表の正常化)のため 2) 法定準備金や任意積立金の設定又は増額のため 3) 株主からの資金供与の返還のため 4) 株式会社(Sociedad Anónima)の場合は、上記のほか、未了部分の株式引受け義務を解消するため。 有限責任会社(Sociedad Limitada)の場合は、資本会社法第78条の条の規定により、会社設立(又は増資)の公正証書作成時に資本の全部について払込みがされていなければならないが、資本会社法は一方で、株式会社については、会社設立時点で株式額面価額の25%の払込みがされていることが要求されるのみである(資本会社法第79条以降)。 減資の方法は以下のいずれかによる。 a) 株式額面価額の減額 b) 株式消却 c) 株式の集約 上記には3つの共通点がある。 (i) 減資は、会社定款変更の場合と同様、特別決議(資本会社法第318条)による株主総会決議で承認されなければならないこと。 (ii) 債権者保護。債権者は減資に異議を申し立てる権利を有すること。 しかし減資の理由が下記のいずれかである場合には、債権者は異議申し立て権を有さない。 (会社の資本金と、累積欠損の結果として減少した純資産とのバランス回復を目的とする場合 – 法定準備金の積立や増額を目的とする場合(任意積立金は含まれない) – 利益準備金や資本準備金の減額、又は自己株式の無償消却によって実施される場合 (iii) 減資のための要件と前提条件(資本会社法第318条以降の条項および商業登録規則第170条)が満たされていること。 2018年5月22日付登記・公証局(DGRN)の決定では、「会社は、登記簿上公示されている資本金額を、第三者保護のためにも、法によって規定される要件を満たすことなく減少することはできない」とした。(資本会社法第331条から第337条)  当該ケースでは、ある有限会社(Sociedad Limitada)が、以前に株主総会で決議された減資を実施することを目的に、その対象となる自己株式を取得した(事前に自社株を取得し、その後株式消却による減資決議を行うのとは逆の順番。)。 株式の取得価額は額面価額よりはるかに低く、通常それは、会社に損失が存在することを意味する。 取締役は、減資の効力発生日に会社の負債はなかったとの証明を行った。したがって、準備金の引当を行う必要はないとした(資本会社法第141条及び第332条)。 しかし、商業登記官は、債権者保護の効力発生日が減資の決議がされた日の後であることを考慮すると、任意積立金や法廷準備金の設定又は損失に基づく減資の実施とすることが適切であるとして、本登記申請を拒否した。 登記・公証局は、登記官の拒否理由を支持することを確認した。 登記・公証局は、会社株式の価値の回復が減資決議の前後のいずれであるかにかかわらず、減資を実施することにより利益を享受する株主の共同責任(資本会社法第331条)の適用が可能であることを特に言及した。 また、各株主の共同責任は会社への投資額(保有株式の価値)に限定されていることから、出資の返還が会社株式の額面価額を下回る金額で実施され、その金額に減資額が含まれている場合には、その差額は、債権者保護がないがしろにされることを避けるために、(i)損失の補填(ⅱ)任意準備金の積立開始または増額(iii)消却された資本準備金の積立又は又は増額、のいずれかの方法によって整合されなければならない、と登記・公証局は結論づけた。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月22日

株主の退社権行使と株主総会による事前承認の要否

ある合同会社(Sociedad Limitada)の取締役は、会社に生じた利益の全てを資本準備金にするとの利益処分案を株主総会に提案した。当該提案は承認可決されたが、株主の一人が、当該利益について配当に回し、資本準備金に回す金額は多くても利益の半分にしたいとして、反対票を投じた。当該株主は会社に対して資本会社法第348条に従って少数株主の退社権の行使の通知をし、当該通知において、自身が保有する株式の価値評価を目的とする株主総会の開催を要請した。当該株主は上記通知を繰り返し行ったが会社から回答を得られなかったため、資本会社法に定められている商業登記所を通じた手続きを開始すると告げた。 このことが会社に通知されると、会社の取締役は当該株主の要請に対して異議を申し立てたが、商業登記官は会社の異議を認めず、商業登記規則第363条に従って、株式の価値評価のための鑑定人を選任する旨の決定を行った。 上記商業登記官の決定について、会社は登記・公証局(DGRN)に対し不服申立てを提出した。 DGRNは2018年3月13日付の決定において、会社の主張内容を以下の3つに分類した。 株主の退社権の根拠について管轄を有するのは裁判所であり、商業登記官ではない。 株主の退社権について株主総会は何の宣告も行なっていない。 本件株主の退社権行使は脱法行為であるのではないかとの疑念を抱いている。 そのうえで、DGRNは各主張についての見解を述べ、最終的には会社の主張を認めなかった。 上記主張のうち株主総会の事前の宣告についてDGRNは、最高裁判所判例によれば、株主の退社権の行使は、法がその行使の可能性を認めている株主に独占的に帰属するものであるとした。そして、株主による退社権の行使に先立って、株主総会や取締役会からの承認をする必要がなく、当該権利の行使について会社に通知がされれば、資本会社法第353条及びそれに続く条項の定めるところに従い、その効力が発生すると示した。つまり、株主の退社権行使は、株主総会や経営組織の事前の決定や審議に条件付けられるものではなく、株主総会が合意したところに従わなければならないものでもないと結論づけた。 大友美加 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月15日

外国会社のスペイン支店と会計書類

スペインにおける支店の法的概念は商業登記規則第295条に以下のように規定される。 「支店とは、会社の営業活動の一部、もしくは全部を実行するために設置される、永続的な代表権を持つ、一定の自治管理機能を有する本店の二次的な営業拠点である」 恒久的施設との相違点は、支店は独自の法人格を有しないにもかかわらず、スペインにおいて商事性を有する会社と同様な義務を負うとの規定が、前述の条項にあることである。 したがって、支店には本店所在地の管轄の商業登記所への登記義務がある。支店が属する会社の本店所在地が外国にある場合、商業登記規則第375条の規定によると、年次会計書類の提出義務がある。 スペインでは、国内の商事性を有する資本会社に商業登記所への計算書類の提出・登記を義務付けない法律は考えられない。しかしながら、そのような国は存在し、その場合、商業登記法第376法に以下のような規定が存在する。 「外国会社の本店が準拠する法律が、スペイン法のように計算書類作成を義務付けていない場合(…)会社はスペイン支店の商業活動に関して計算書類を作成し、 商業登記所に提出しなければならない」 これに反する場合、つまり会社本店所在地の準拠法が年次計算書類の提出を義務付けている場合、スペインに支店を有する外国会社は、支店の商業登記所に、親会社の年次会計書類を提出しなければならない。該当する法規定によって求められる場合には、連結決算報告書の作成を要する。 既に外国会社の本店所在地の商業登記所に会計書類が提出されている場合、 登記官の判断は当該登記の確認にとどまる。 本件に関し照会したスペイン国内の異なる登記所の情報によると、いかなる形で年次会計書を提出するかについての統一した見解は存在しないとしている。しかしながら、スペインの商業登記所がスペインに支社を有する親会社の年次会計書類の内容を把握していないとしても、少なくとも年次会計書類提出の提出期限の統一見解は存在し、会社の会計年度終了後、翌年の12月31日までとしている。 実際には、前述の義務の不履行の結果として、年次会計書類を規定された期限内に提出していない場合、支店の活動に大きな支障をきたす可能性があり、ひいては親会社にも問題をもたらすこととなる。年次会計書類が提出されていない場合、商業登記所は支店の登記簿を閉鎖する。登記簿が閉鎖されている状態にあると、例えば、委任の登記を妨げることとなる。支店代表者の辞任、新たに代表者を選任しなければならないような場合、権限付与しなければならないような場合、登録簿が閉鎖されているとこれらの手続きを実行することはできない。 Hugo Ester   詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月8日

仮想通貨とデジタル経済

欧州司法裁判所2015年の判決を受けて、ドイツ財務省は2018年2月22日、仮想通貨による決済の法的扱いに関する見解を発表した。当該見解によれば、仮想通貨は商品又はサービスに対する即時的・契約的な決済方式・手段として受け入れられつつあり、法定通貨による決済手段と同等の扱いを認める、としている。仮想通貨から通常の法定通貨に交換する際に利益が発生する場合は、当該利益は課税対象となる。また、交換業者が仲介名目で行う取引自体は課税免除されるが、交換プラットフォームは課税対象となるとした。同様に、仮想通貨のマイニングに対する報酬は任意的サービスとみなすため課税対象にはならないが、仮想通貨を保管するウォレットと呼ばれる仮想通貨口座の所有者が得る手数料は課税対象となるとした。 仮想通貨を決済手段として認めるとすると、次のステップは、その法的領域を具体的な方法によって規制する法制度の整備、又は法定通貨に適用されるような法的枠組みが同様の形で仮想通貨に適用可能かの判断であろう。後者の場合は、仮想通貨の性質を考慮すると非常に難しいと言わざるを得ない。すなわち、仮想通貨は中央当局の枠外で取引されるデジタル資産であり、単純な禁止以外、金融当局その他の行政の介入の可能性がない浮動的な金融市場システムを持つため、通常の法定通貨と同様の扱いは合理的とも現実的とも言えない。 他方、欧州委員会関係者のこれまでメッセージは、一貫性に欠けるものであると言わざるを得ない。2017年12月モスコビッチ委員は、EUは仮想通貨を規制する予定はないと発表したが、当該発言に関して欧州委員会副議長は、競争力を維持するためには仮想通貨を受け入れるべきだとしながら、部分的にはモスコビッチ委員を支持しない発言をしている。今年1月、フランスは自国に規制委員会を設置する旨を発表し、ドイツは世界レベルで規制する必要性を述べた。これらの声明は、2017年12月から2018年2月までの3か月間に行われた。それは仮想通貨の急激な投機的動向が世界規模で見受けられたこと、仮想通貨取引所にて盗難が発生したことに由来することに留意すべきである。 この流れからすると、仮想通貨を「決済手段」とカタログ化することは、「仮想通貨」というコンセプトへの深い法的扱いを回避するための中立的な処方であるとの結論付けができよう。これはつまり、仮想通貨市場における取引が、通常の市場取引のように当局もしくは中央政府の信用付与によって決定される客観的価値に基づくのではなく、本事業に関わる人々の間でのみ認識されている価値を有するデジタル性質を持つ資産の取引であるという事実が明白であるということを、確認するに過ぎない。これを念頭に置くと、仮想通貨というコンセプトは現在、通貨の基本的な機能を有しながらも、従来の法定通貨という用語には適合しないと判断すべきであろう。 本稿においては、「仮想通貨」及び「仮想資産」という表現を同じものを指す言葉として区別なく使用する。法的性質上のコンセンサスは存在しないが、「仮想資産」とういう用語はより現実に即した表現であるという印象を受ける。 次に、各国における仮想資産に対する立場について言及する。アジアでは日本とシンガポールが、デジタル資産投資誘致のために、あいまいな部分を保ちながらもオープンな立場をとっている。日本が、仮想通貨取引メカニズムの性質に対する公式見解を発表することなく規制を行うことに焦点を当てていることに対し、シンガポールは仮想通貨による決済、通常の通貨による決済、あるいは他の有価証券による取引の法的扱いと差異はないと表明しており、消費者保護の必要性を認識している。カナダにおいては仮想通貨を「通貨」として定義することを(本質的な価値が実装されていないため)否定し、これを金融資産のひとつであるとみなし、金融投資や金融商品に対するのと同様の金融市場関連の法律を適用する可能性を警告している。一方でオーストラリア国税局は、仮想通貨を通貨または貨幣として定義することはせず、これを使用しての経済活動の結果としてスワップ取引可能な資産とみなし、課税の対象とすると最近表明している。 国家による管理という伝統的な観点から仮想通貨を規制する際の問題の1つは、取引の匿名性とその分散化された性質にある。したがって国家としては、例えば仮想通貨取引所開設に対する事前許可の必要性のように、伝統的な外貨両替所開設時と同様に遵守すべき一定の条件と規制を設けといった外堀的な局面からから規制を始めることは、論理的である。同様に、資金洗浄対策として、経済活動のトレーサビリティシステムの設置の義務化や、管轄当局への報告義務化を試行することも可能である。 取引所機能の規制は2017年5月に日本が採用した方法そのものであり、その主な目的は仲介プラットフォームに公的な信用性を付与することにあった。しかし、当該分野の規制をする国に拠点を置いて交換取引をするのは、ごく一部の業者のみであることは明白である。さらに、トレーサビリティシステムの設置を余儀なくすると、プライバシーを優先させる顧客の大部分を失うことにもなりかねない。最後に、分散型デジタル資産取引所の場合、国内規制を迂回して、規制を設けていない国や地域にサーバーを設置してプラットフォームを構築し、業務を実行することが可能であることもまた、明白である。 仮想通貨に対する立場を各国は、種々の要因を考慮して採用するが、主に以下に挙げる3つの立場に分類することができる。1)政治的もしくは経済的環境を重視する立場。(EUはここに分類される)2)自国経済に与えるその潜在的な可能性のために、デジタル資産取引所を招致しようとする戦略的な立場。3)経済的および政治的要請(ベネズエラ) 簡単にではあるが、ベネズエラのケースを検証する。ベネズエラは現在、深刻な経済危機に陥っている。2018年1月からの5か月間でインフレ率900%以上を記録し、更には強力な政治的圧力をかけるための国際的な経済封鎖の対象となってもいる。2018年2月、現状打開策としてベネズエラ政府は仮想通貨「ペトロ」のプレセールを開始した(53億バレル相当の石油によって裏付されている)が、市民及び企業のペトロに対する信頼の欠如により政府が期待したような実績を出せなかった。2018年3月15日には、ペトロおよびその他の「仮想資産」(「仮想通貨」という用語の代わりに使用される適切な総称)の規制に関する法案が提出された。本法案は、決済手段として仮想資産の使用及び、仮想資産の交換に法的認知を与えるものとするものだった。限定的なペトロに対する関心とは別に、仮想通貨の共有団体に属する市民は、ダッシュコイン(DASH)のようなマイニング作業が不要かつ、即時決済が可能であり、他の仮想通貨と比較して低い交換手数料をうたっている仮想通貨を使用しての支払い・請求決済行為を行っている。さらにビットコインのマイニングを行ったとの理由から技術者が拘束されたことを受け、DASHを決済方式として認める制作会社やサービス提供者が経済界に登場している。本現象が社会・経済的に興味深いのは、当該環境下にて行われている取引は自主的な性質である。特に、一連の取引が法定通貨への最終的な交換なしで完全に仮想通貨のみにて行われている場合は、国家からの直接的な管理のメカニズムの外にある。今日ベネズエラやナイジェリアで起こっていることを考慮すると、仮想通貨の本当の意味においての発展は、仮想通貨を投資プロジェクトや投機機会のひとつとしてとらえている先進国においてではなく、新興国や、国際的な経済封鎖の対象国において必要性の結果として起こる可能性があるといえよう。 しかしながら、仮想通貨は依然として投機の手段として認識されており、購入者は仮想通貨を保有し、通常の経済活動の中で使用する意図はなく、急激かつ相当な価値上昇の機会があればこれを法定通貨に交換することを視野に入れて購入している。イギリスではよく知られているスポーツのブックメーカーは顧客に対し、金融派生商品の一種として仮想通貨を提供している。このように顕著な投機的な利用は、予期しない急激な市場価格の変動や短期間での巨大損失や利益をもたらすことになり、更に、仮想通貨に対する不信感を植え付けることになりかねない。2018年第1四半期に起こったことは、通常の通貨であれば通貨危機が生じた時には中央政府が市場介入するが、仮想通貨は中央政府の支配を受けないことを前提としている以上、価値の乱高下が生じたとしても、それを抑制できるのは仮想通貨の取引市場のみであることを示した。価格の変動性の高さは仮想通貨の特徴の一つであり、客観的に安定した価格を保つことができない価値に、数年にわたって償却を生み出す重要な投資を行うことは困難であり、一般的な経済活動におけるその利用と発展を妨げる要因でもある。 しかしながら、仮想通貨を投機対象としてではなく決済方法として、通常の経済的活動に利用可能な手段とみなすならば、多くの仮想通貨が使用されることにより、通常の法定通貨のレベルに匹敵する程度まで価格変動性の幅が狭まる可能性は高い。仮想通貨が大きなシェアを獲得しデジタル資産マーケットが発展するためには、法令はその使用を限定することに焦点を置くのではなく、不正使用や消費者保護に関して、特に仮想通貨交換業者に関する分野に関しての規制に注力すべきである。しかしながら、仮想通貨は中央政府の介在しない分散型の性質を有する製品であり、それゆえに、間接的な規制のみが可能であることを忘れてはならない。つまり、立法者の役割は、デジタル経済の発展を妨げることなく、仮想通貨が法定通貨とともにマーケットで共存できるように、その大規模な使用によって発生するであろう問題も含めて、経済活動における比重が大きくなるまで、慎重かつ段階的に介入することが望ましいと言えるだろう。 Eduardo Vilá 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月1日

会社の目的はどのように決まるか。定款変更なく会社の事業を変更できるか。

 I. 会社の目的とCNAEコード 会社を新しく設立するとき、会社の目的となる具体的な事業を定めなければならない。設立当初より非常に具体的な事業内容を有している場合もあるが、一般的には、中長期的に行う可能性のある事業を含める形である程度の幅を持たせた目的とすることが多い。 こうすることにより、将来、会社が定款に含まれる事業を行いたいと考えたときに、株主総会の承認や公証人の面前で公的効力を持たせるための手続き、商業登記所への登記をする必要がなくなり、それに伴う時間と費用を抑えることができる。 また、設立時において会社の目的に含まれる事業のうち、主たる事業が特定されなければならない。これは、2013年9月27日付法第14号起業家及び国際化支援法第20条に従い、国の経済活動分類コード(CNAE)を参照したうえでなされる。 CNAEコードを表示する義務は、統計上の目的のみでなされるものであり、会社が複数の 事業を行う可能性がある場合であっても、主たる事業活動の1つについて宣誓すれば足りる。このことは、登記・公証局2015年2月13日付決定においても確認がされている。 しかしながら、商業登記官が会社設立の公正証書に記載されたCNAEコードが、現行のコードに記載された内容と十分一致しているかを検証するため、会社の目的に含まれる事業が当該コードと一致することは重要である。 このことから、会社の目的に事業活動を記載するにあたってCNAEコードさらには事業税(IAE)のコードは軽視するべきではない。 会社の目的が複数の事業を含める形で幅広く定められ、CNAEコードが宣誓されると、以下の疑問が生じる。 定款変更せずに会社の事業を変更することの可否 複数の事業活動をその目的に含めている資本会社で、それら事業活動のうちの1つのみ、つまり「主たる」事業活動のみを長年行ってきたような場合を考えてみる。 経営組織が、株主総会の同意を得ることなく、自身の決定で、主たる事業活動を止め、会社の目的に含まれるその他の事業を開始すると定めるような場合を想定する。 出資持分保有者又は株主は、経営組織から一方的に当該変更を知らされた場合、実際の事業活動の変更に同意を与えておらず、会社の解散事由、具体的には資本会社法第363条第1項(a)及び(c)に定める解散事由が存在することを理由に、解散を決議するための株主総会の開催を要求する。 会社法第363条 解散事由 a) 資本会社は以下の場合には解散しなければならない。 b) 会社の目的を構成する事業を止めたとき。特に、1年以上事業を行っていない場合には事業を止めたとみなされる。 c) 会社の目的を達成することが不可能となったとき。 しかしながら、経営組織は「新しく」始める事業は会社の目的に含まれていること、さらには、会社の収益に資することを理由に反論するだろう。したがって、主たる会社の事業はさておき、「会社の目的を構成する事業を止め」ていないし、会社の目的は経済活動を行うことで利益を得ることだと考えれば、会社の目的の達成が不可能となっていないと主張する。 この状態を前に、会社の目的は株主の特有の利益と考える(契約論的見解)べきか、株主の私的利益を上回る(組織論的見解)と考えるべきかの議論に入らなければならない。 Carla Villavicencio 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年5月18日

EUのフェイクニュース対策

2018年4月26日、欧州委員会はオンライン上のフェイクニュース対策にかかる一連の措置を公表した。FacebookやCambridge Analyticaが最近公表した内容で、選挙の状況においてどのように個人情報を取得することができるかが判明し、民主主義の過程を保証するために適切な方法を考える良い契機となった。欧州委員会はヨーロッパの価値とセキュリティを保護するためにフェイクニュース対策のための第一歩を講ずる。 フェイクニュース対策の一連措置 欧州委員会が提案した一連のフェイクニュース対策のうち、以下のものは言及に値するだろう。 (1) フェイクニュースに関する行動規範   7月までに、第一歩として、オンライン・プラットフォームは、以下を目的とした共通の行動規範を作成し、採用しなければならない。 (i) 提供された内容、特に政治色のある広告の透明性の確保。例えばこの種の広告提供の目的の範囲を制限し、フェイクニュースのベクトルが入り込むのを減らす。 (ii) アルゴリズム機能についてより大きな透明性を提供し、第三者による確認が可能なものとする。 (iii) ユーザーが、他の観点から書かれた記事を見つけやすく、かつ、アクセスしやすい環境を作る。 (iv) フェイクアカウントを特定し、クローズさせるための対策を講じ、「ゾンビ」アカウントの問題に対処する。 (v) 情報の検証・調査を行う者及び公的機関が永続的にフェイクニュースをコントロールできる権限を与える。 (2) 情報の検証のためのヨーロッパ独立ネット 共通の業務メソッドを制定し、より良い行為についての情報交換をしEU全域のデータの確認を可能な限り行うために努力する。情報検証者は「情報検証ネットワーク(International Factchecking Network)」のメンバーから選ばれ、国際情報検証行為規範に従う。 (3) フェイクニュースについてセキュリティが施されたオンライン・プラットフォーム 情報検証者や関連した学術研究者が国際データの収集や分析を行うためのネットワーク及びEU域内のアクセスをサポートするためのプラットフォームの構築を行う。 (4) メディア・リテラシーの促進 メディア・リテラシーが高いレベルにあることは、すなわち、EU市民がオンライン上のフェイクニュースを見抜き、インターネットの内容について批判的な視点で見ることができることを意味する。この目的で、欧州委員会は情報検証者及び民間団体が教育機関や教育者向けの教材を作成し、「メディア・リテラシー週間」を制定することを助成する。 (5) 選挙の弾力性を保証するためのEU加盟国の支援 日増しに複雑になるサイバーの脅威、特にオンライン上のフェイクニュースやサイバー・アタックからEU加盟国を保護する。 (6) オンラインの自主的な個人特定システムの促進 トレーサビリティ及び情報提供者の特定を改善し、オンラインの交流や情報及び情報源の信用性を高める。 (7) 情報の質及び多様性の支援 欧州委員会は、多元的、多様性かつ持続可能なメディアの環境を保証するためにジャーナリズムの質を維持する支援を高めることを加盟国に伝えた。欧州委員会は2018年に、データを取り扱うニュース・メディアを通じたEU関連事案にかかる質が確保されたニュースの作成及び拡散のための提案のための会議を招集する予定である。 (8) 調和された戦略コミュニケーション方針 この方針は、欧州委員会によって作成がされ、オンラインのフェイクニュースに関する現在及び将来のイニシアチブと各加盟国のイニシアチブとが組み合わされる予定である。この方針は、ヨーロッパに関する偽情報に対峙しEU内外のフェイクニュースに抵抗するためになされる流布行為を含む。 次のステップ 欧州委員会は、近日中に複数の関係者で構成されるフォーラムを招集し、オンライン・プラットフォームや広告業、大手広告会社を含む関係者間の有効な協力のための枠組みを作成し、フェイクニュース対策への努力について協調して高めていくことを保証する。このフォーラムの最初の成果物は2018年7月までに公表され、同年10月までにその効果が測られる「フェイクニュースに対する行為規範」となる予定である。 2018年12月までに欧州委員会はそれまでの進展についてのレポートを発行する。当該レポートでは継続したモニタリングと予定された活動の評価を保証するための更なる対策が必要かどうかについても検証する。 大友美加 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年5月11日

会社・株主間の書面のない貸付け

本稿では、2008年にある有限会社が会社の株主の一人かつ共同取締役でもある者に合計で10万ユーロに上る二度の役員貸付を実行した件に関する2018年4月5日付け最高裁判所判決について考察する。本貸付は書面の作成がされることなく実行されており、したがって、弁済期日、つまり、本貸付金についての会社へ返済すべき日が存在しなかった。 会社が株主に貸付を実行してから4年後の2012年8月20日、会社は株主総会を招集した。会社は、本件の債務者である株主に対し当該株主総会招集をスペインにおける内容証明郵便システムであるBurofaxを使用して通知した。株主総会の議題その2は「株主の債務の現状及び弁済請求」であるという記載が本通知にて確認できる。 本件の債務者である株主が不参加であった株主総会にて、現在、会社と株主間に存在する債務は同株主に対する貸付のみであり、元本にこれまでの利息額も合わせると、総額108.111,67ユーロに上ることが確認された。 それから一年後の2013年9月4日、会社は債務者である株主に対し貸付金全額及びこの元本に対する同日までの利息の合計119.371,92ユーロの弁済を請求する裁判を起こした。第一審判決は、本貸付金の存在を認めたものの、利息の金額には認めなかった。しかし、本件債務者に対し、元本の他に、当該訴訟の申立てが提出された日以降に発生した利息及び当該訴訟費用の支払いを求める内容であった。 第一審判決は、本件の対象となっている融資はビジネスローンの性格を持つもので、弁済期限が設けられておらず、よって、弁済請求のためにはスペイン商法第313条規定に基づき、通知受領日より30日後を弁済期限と設定する公証人通知を要するとし、これを理由に前述のような判決を言い渡した。 株主は、上記判決は弁済期限について以下のように規定する民法第1128条に反するとして、高等裁判所に控訴した。 「債務の弁済期限が定められていない場合、債務の性質もしくは状況によっては債務者にとって期限を付与された方が良いと予測される場合は、裁判所がこれを定めることができる」 上記条項を根拠として、株主は、弁済期限の定めがない貸付の場合は、弁済請求を実行するに先立って、裁判所主導ではなく契約当事者のいずれかの要請により、裁判において決定する必要がある、と主張した。 第二審法廷は上記論拠を退け第一審を支持し、貸付金の返済義務、加えて当該弁済請求が提出された日からの利息の支払い義務を認めた。しかしながら訴訟費用に関しては、債務者である株主に負担させるためには会社の債務弁済請求額が全額認められなければならないとし、一審判決を取り消した。第一審では、当該訴訟の申立てが提出された日からの利息の支払い義務を認めたが、原告である会社が請求した利息額については否定がされたからである。 控訴人である株主の観点からすると、第二審判決は要求していない弁済請求訴訟申立てがされてからの遅延利息の支払いを認めており、それは不適切であるとし、最高裁判所に上告した。 最高裁判所は、すべての状況を以下に挙げる論拠により明確にした。 本件は、その事実の性質と状況を鑑みると、返済の期限を設けたくない種類の債務であることは明確であり、よって民法第1128条規定の対象とはならない。 既にいくつかの最高裁判例として存在しているように、公証人通知要件は、広い意味において解釈されるべきであり、結果として、債務の存在及び、弁済請求が行われた時期を証明することのできる他のいかなる形態における通知方法も認めるべきである。よって上記通知日を起点とし、債務返済義務を履行するために30日間という期間を定める。 本件では、上記要件に当てはまるような支払い請求通知は存在せず、単に株主の一人として会社の株主総会招集通知であるBurofaxを受領したのみであった。そして本通知には、株主総会の議題の一つとして株主の債務の弁済請求という議案が含まれていた。最高裁の判決では、株主総会によって株主に対する債務弁済請求を実行することが決議された場合、その後、正式な通知を送付しなければならないとされた。正式通知の送付がなされていない場合は、債務の弁済請求を行うことはできないと理解すべきである、とした。 しかしながら上記の要件は、訴訟手続きの開始となる訴訟申立てにかかる通知の受領日を支払い請求がされた日と捉え、その日から起算して一か月後を返済期限とすることを、排除しなかった。 前述の見解は、利息発生日の判断に影響する。同見解によると訴訟申立て日からではなく、通知が受領されてから30日後に利息が発生することになる。同見解を理由として最高裁は、債務弁済請求訴訟手続きの開始日を起点として30日後に利息が発生するとしたとしても、債務者に利息の支払いを請求した第二審判決に矛盾はないとした。 Hugo Ester 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es   2018年5月4日

取締役の会社債務に対する連帯責任

2018年4月11日付スペイン最高裁判所判決は、会社の債務に対する取締役の連帯責任に関して、それまでの原則を支持する判断を示した。具体的には、会社が融資を受けた時に債権者が本会社の債務不履行のリスクを認識していたという状況下における取締役の責任に関しての判断である。 本件は、一見通常通りに経営されているように見受けられていたが、実は法定解散事由に該当する状態にあったある会社に対する判決である。そのような状態であったにもかかわらず、当該会社の二人の取締役は、会社解散を行わず、また、法の定める資産のバランスを回復させるための措置もとらずにいた。加えて取締役は、おそらくは会社の純資産が実際にはネガティブであることを隠匿するために、商業登記所に毎年の会計書類を提出する義務を数年間怠っていた。 本件の債権者は、債務者である会社に対し、二年の間支払いが滞りがちでありながら、材料を供給し続けた。上記取引関係の過程で、債権者によって承諾されなかったものの、債務者が債権者に対し債務整理合意のための事前調整を行う意思を表示したことは、言及するに値する。 最終的に債権者は、会社及びその取締役に対して、債務の支払いを求める訴訟を起こした。原告側は、取締役の連帯責任を追及する事実要因として、解散事由の存在を認識してから2か月以内に株主総会を開催する義務を怠ったことを挙げた。法的根拠としては、旧有限会社法第105条第5項(現資本会社法第367条)解散事由を認識してから2か月以内に株主総会を開催し、解散の決議を採決しなかった場合、取締役が債務に対し連帯責任を負う、という規定を示した。 第一審判決は債権者の論拠を認め、会社及び二人の取締役たちの会社に対する責任に基づき、その債務返済を求めた。法的根拠としては、有限会社法第105条第5項を引用した。債務会社の取締役の一人は本判決を不服として、これを控訴した。 サラゴサ県の上級裁判所は控訴人の主張を支持し、取締役を会社債務の連帯責任から解放した。本判決の根拠は、債権者が債務者の経済状況を認識していたにもかかわらず、取締役の連帯保証を求めなかったこと、債権者が債務不履行のリスクを予見できたこと、という事実にあるとした。加えて、債権者の取締役と、債務会社の取締役の一人はいとこ・友人関係にあることを指摘した。控訴審判決は、その見解の根拠として2011年11月23日付および2013年4月14日付の二つの最高裁判所判決を引用した。 控訴審判決を不服として、債権者はこれを最高裁判所に上告した。 最高裁判所は、その判決の中で以下に挙げる事実関係を示した。 1)本件の債務は解散事由が生じる以前に発生したものであることは証明されている。 2)状況を把握しながら、取締役達は会社の解散を回避するための措置を取らなかったことは証明されている。 3)債権者が本会社の危機的状況を把握していたことは証明されている。 上記は全て事実であり、特に「債権者が債務者の経済状況を把握していた」という事実要素は一致していた。しかしながら最高裁判所は、債権者が債務者の経済的リスクを把握していたにもかかわらず債務者とのビジネス取引を続けていた場合は、債務会社の取締役は本債務の連帯責任を問われないとし、債権者が破産状態にあったという事実を単に把握していたのみでは、取締役の責任を免除する理由として不十分であるとし、第二審の主張を退けた。 最高裁は、債務者である会社が破産、もしくは財政が悪化している状態に加えて、債権者が不法行為を行った場合は、債務会社の取締役を免責にする可能性を示した2013年12月4日付の最高裁判所判決に言及し、これらのすべての事実関係は、取締役を免責にするために必要な条件であるが、それだけでは十分ではなく、債権者が、債務会社の債務不履行のリスクを認識していていたことを証明でき、債務会社の内実を知った上で管理できるような別の条件も考慮する必要がある(例えば、債権者が債務会社の支配的、もしくは関連のある株主である場合のように)とし、本件に適用する判例の要件の定義を明確にすることで結論づけた。 最高裁判所は、取締役の会社に対する責任の原則の例外の解釈において、一般的な規則を変性させるような例外規定を自動的に適用することを避け、分析中のケースを取り巻く個別の事実関係を照らし合わせて判断すべきという立場をとっている。これは、商業取引において優先すべき法的安全性に影響を及ぼす可能性がある。 Eduardo Vilá 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月27日