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会社の資金調達方法

時に会社は、財務上の問題解決のため、ビジネス上の投資やプロジェクトの実現のために、資金調達を行う必要がある場合に直面する。そのような必要性をカバーするためのオプションの一つに、株主による資金調達がある。 株主による会社の資金調達方法には多様な選択肢があるが、以下に、資金調達の結果自己資本が増加するのか、負債と計上されるのかに応じて、会計上の強制力が低い順から高い順にその内容を説明する。 増資という形での株主からの資金提供 増資を伴わない株主からの資金供与 資本性ローン(劣後ローン) 1)資本金増資による自己(株主)資本増強(プレミアムの有無を問わず) 増資という形での自己(株主)資本への株主からの資金供与は、その呼び名が示す通り、全て資本金として計上される。この方法は、他に比べて多くの手続きを要する。増資を行うには株主総会の承認決議が必要であり、同総会決議は、定款の変更のために定められた要件を満たす必要があるからである(スペイン会社資本法第296条規定)。その後、当該承認決議にかかる公正証書を作成し、管轄自治体の税務当局に、公証役場及び商業登記所の費用とともに税金の精算を行うための600様式を事前に提出した後、商業登記所にて本公正証書の登記申請をする必要がある。 会計上の観点からみると、会社の増資は、「資産移転及び法的文書税に関する法律」第19条第1項の1により会社取引と規定されており、同法の第45条B)第11項により、「会社取引」にかかる税から免除される。  2)増資を伴わない株主からの資金提供 株主による資金提供が、増資を伴わない場合は、会計上、純資産として計上され負債とはみなされず、株主の債権も発生しない。これは資産と負債の間のハイブリッドの役割を果たし、埋没費用(サンクコスト)として処理される。当該資金提供の返済に関しては、商法上の規制が欠如しており、通常、資本準備金と同様の扱いがされ、配当金分配に関する規定と同様の規制が適用される。 株主による自己資本への資金提供は、特定の状況を除いて株主総会の決議を要しない。しかし、損失を相殺するために行うのか、自己資本の増強のために行うのかを記録しておくことが推奨される。当該手続きについて公正証書を作成する必要も、商業登記所に登記をする必要もない。したがって、公証人や登記の費用も発生しない。 会計上の観点では、株主による自己資本への資金提供は、「資産移転及び法的文書税に関する法律」第19条第1項の2により会社取引と規定されており、同法の第45条B)第11項により、「会社取引」にかかる税から免除される。 3)資本性ローン(劣後ローン) 事業活動のための他の資金調達方法に、株主向けの資本性ローン(劣後ローン)がある。通常のローンと異なる点は、この形による借入れは会計上負債の部ではなく会社の純資産の部に計上されることにある。 資本性ローンに関する規定は、1996年6月7日付勅令法第7/1996号、緊急財政措置及び経済活動の促進と自由化に関する法律の第20条に以下のように記載がある。 「第20条 資本性ローン 資本性ローンとは以下のような性質を持つもののことを指す。 a) 貸主は、融資先企業の事業活動の業績に基づいて定められる変動利息を受領する。本業績を決定する基準は、純利益、売上高、総資本金額、もしくは契約当事者間において自由に合意された他の基準であっても良い。また、会社の業績から独立した形で、固定金利を定めることもできる。 b) 契約当事者は、早期弁済の際の罰則条項を定めることができる。いずれにせよ借主は、資本性ローンの弁済額と同額分だけ自己資本を補填する場合、かつ、これが資産の状態に変更を生じさせない場合にのみ、早期弁済が認められる。 c) 資産性ローンは、共通の債権者との弁済順位において、一般債権者の後になる。  d) 資本性ローンは、商業法規に規定されている会社の資本減少及び清算の際に、純資産とみなされる。 上記の条項は、以下のように追記される。 a) 資本性ローンは、借主である企業が事業の業績に応じ変動利息を支払うことを可能にし、同時に、固定金利を合意することも認めている。 b) 他のローンと同様に、資本性ローンも民法第1740条の規定にあるように、融資金額を一定の期間で返済する条件を定めなければならない。早期弁済は一応認められてはいるが、自由裁量では行えず、償却額と同額の増資を行わなければならない。当該制限の理由は、同額の自己資本を維持することによって、債権者を保護することにある。 c) 資産性ローンは、倒産手続きにおける普通債権の債権者への弁済がされた後にその債権の弁済がされる、劣後債である。 d) 純資産と資本金のバランスが崩れた場合、資本性ローンは、純資産として計上される。 手続きにおいて資本性ローンは商業契約として扱い、公正証書作成も商業登記所への登記も要さない。したがって、公証人や登記の費用も発生しない。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月14日

「強い」コンフォート・レターの要件

I. 導入 いわゆる「コンフォート・レター」と呼ばれるレターは、保証の代替手段であり、主債務者に企業融資を行う債権者又は将来の債権者に対して人的保証としての機能を果たすものである。結果についての義務を取り扱い、当該レターにおいてスポンサーは、計画された融資オペレーションが問題なく終了することを保証する。保証する額を負債として正式に計上することはない。 最高裁は「弱い」コンフォートレターと「強い」コンフォートレターを区別した(2007年2月13日付最高裁判決)。「弱い」コンフォート・レターとは単に信頼性について推薦又は宣誓を行うものである一方、「強い」コンフォートレターとはスポンサーと利益享受者との間の義務関係を発生させる片務的法律行為を構成する。 II.「強い」コンフォートレター 「強い」コンフォートレターに関して、最高裁判例の見解は2016年6月27日付判決第424号において述べられている。 a) 事件の経緯 本事件において、主債務者の支配的立場を有していた2つの会社が「強い」コンフォートレターを差し入れたことのおかげで、銀行が会社に資金貸付を実施した。 当該貸付の弁済及び人的保証が実行されなかったので、銀行はスポンサーに対して、主債務者が負っている弁済期日を迎えた、精算可能で存在する残金について、連帯して支払う旨の判決を求めた。 被告は、当該主たる訴訟物について、当該コンフォートレターは意思の宣誓を内容としており、義務等を引き受ける約束をするものではないとして、認めなかった。また、スポンサーである2社のいずれも主債務者の親会社ではなかったことを付け加え、いかなる場合においても主債務者株式の保有割合に応じた金額についてのみの負担に限られるとした。 b) 最高裁による検証 前述のとおり、最高裁はコンフォートレターによる義務の有効性についての検証、すなわち、義務的関係を構築又は発生するための適切さを備えているかについて検証し、以下のように述べた(2015年7月28日付最高裁判決第440号)。 コンフォートレターとは、その本来の意味において、強いものと評価する場合には、片務的な自由意思に基づく宣誓と同様、宣誓義務の波及を伴う、非公式な片務的法的行為を構成するものと言える。そして、以下の前提又は要件を満たす場合には、義務的関係を構築又は発生させるものと言える。 (i) まず第1に、自身に義務を課すことについてのスポンサーの明確かつ明白な意思が認められること。つまり、義務的拘束力の発生について現実の意思をもって宣誓をしていること。 (ii) 次に、債権者による受け入れが存在すること。この受け入れは黙示又は推定によることができる。また、コンフォートレターの発行と実施された融資との間に因果関係が推定されること。 (iii) スポンサーと主債務者との間に具体的な関係が存在すべきかという点について最高裁は、当該関係が必ずしも親子会社の関係である必要はなく、計画された金融オペレーションの実行をスポンサーが代理できるような自身の利益、権限、又はメリットが正当化されるような、あらゆる関係の枠内でその信用のために行われた(causa credendi)という事実が必要であるとした。したがって、親子会社の関係の場合もあるし、債権者又は株主の立場に基づく場合もある(2007年2月13日付最高裁判決)。 c) 最高裁の結論 上述にもとづき、最高裁は、レター内の約束は融資実行のための決定要素であったため、コンフォートレターはスポンサーの義務的結びつきを構築するために適切であると結論づけた。 続けて最高裁は、コンフォートレターを特徴付ける義務的効果の及ぶ範囲を検証し、スポンサー会社によって受け持たれた義務の約束の連帯性を認めた。なぜなら、当該コンフォートレターは、スポンサー及びその主債務者(本債務の主保有者はスポンサーである)の持つ債務のリファイナンスを実行する際、新たな資金貸付を受ける際の、両当事者が一体となって保証を同意する手段として位置付けられたからである。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年8月3日  

MASDAR事件とANTIN事件: 再生可能エネルギーへの助成金カットを行なったスペイン政府に対する新裁定

  外国投資家がスペイン王国を相手として、世界銀行の傘下組織である投資紛争解決国際センター(ICSID)を通じて申立てを行なっている27の国際投資仲裁のうち2つの申立てについて、最近裁定が出された。当該紛争は、2013年にスペインが再生可能エネルギー発電システムに対する助成金をカットしたことに端を発する。 ・Masdar とスペイン王国間のケース(ICSID仲裁裁定 事件番号ARB/14/1号) Masdar Solar社 及びWind Cooperatief U.A.社の申立てにより、スペイン王国に対して起こされた仲裁申立て 2018 年5月18日、John Beechey氏、Gary Born氏及び Brigitte Stern教授によって構成された仲裁法廷は、スペイン王国に対し、6450万ユーロにのぼる額を損害賠償金として申立て人に対し支払う旨の判断を下した(申立人の請求額は1億6500万ユーロだった)。また、2014年6月20日より仲裁裁定日までの上記損害賠償額に対する利子(年利0.906%)及び、仲裁裁定日から実際の支払日までの上記損害賠償額に対する年利1.60%の支払いも義務付けた。 ・Antin とスペイン王国間のケース(ICSID仲裁裁定 事件番号ARB/13/31号), Antin Infrastructure Services Luxembourg S.à.r.l社 及びWind Antin Energia Termosolar B.V.社の申立てにより、スペイン王国に対して起こされた仲裁申立て 2018 年5月18日、Eduardo Zuleta氏、Francisco Orrego Vicuña氏及び J. Christopher Thomas 氏によって構成された仲裁法廷は、スペイン王国に1億1200万ユーロを損害賠償金として申立人に対し支払うように裁定した(申立人の請求額は2億1800万ユーロだった)。また、上記損害賠償額に対する年利2.07%の支払い及び2,07%の累積利息の支払いも義務付けた。 現時点においては、まだ上記直近の2つの裁定に関する内容の詳細が公表されてはいないが、両裁定ともに、2017年5月4日に裁定されたEiser社 とスペイン王国の間のケースの仲裁裁定(ISCID仲裁裁定 事件番号ARB/13/36号)を支持するものだと言えよう。上記仲裁裁判はJohn R. Crook教授、Stanimir A. Alexandrov 博士及びCampbell McLachlan QC教授によって構成された仲裁法廷で行われ、スペイン王国に対し1億2800万ユーロにのぼる額を損害賠償金として申立人に対し支払う(申立人の請求額は2億9800万ユーロだった)旨の裁定を下した。当該仲裁裁定については、2017年5月19日付の当事務所の記事で触れている。https://vila.es/jpn/2017/05/19/2210/ より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Carla Villavicencio va@vila.es 2018年6月29日

減資の際の債権者保護手続き

スペイン資本会社法(以下「資本会社法」という。)第317条によると、資本の減少(減資)は以下の目的の場合に可能とされる。 1) 会社の資本額と累積欠損の結果として減少した純資産とのバランス回復(貸借対照表の正常化)のため 2) 法定準備金や任意積立金の設定又は増額のため 3) 株主からの資金供与の返還のため 4) 株式会社(Sociedad Anónima)の場合は、上記のほか、未了部分の株式引受け義務を解消するため。 有限責任会社(Sociedad Limitada)の場合は、資本会社法第78条の条の規定により、会社設立(又は増資)の公正証書作成時に資本の全部について払込みがされていなければならないが、資本会社法は一方で、株式会社については、会社設立時点で株式額面価額の25%の払込みがされていることが要求されるのみである(資本会社法第79条以降)。 減資の方法は以下のいずれかによる。 a) 株式額面価額の減額 b) 株式消却 c) 株式の集約 上記には3つの共通点がある。 (i) 減資は、会社定款変更の場合と同様、特別決議(資本会社法第318条)による株主総会決議で承認されなければならないこと。 (ii) 債権者保護。債権者は減資に異議を申し立てる権利を有すること。 しかし減資の理由が下記のいずれかである場合には、債権者は異議申し立て権を有さない。 (会社の資本金と、累積欠損の結果として減少した純資産とのバランス回復を目的とする場合 – 法定準備金の積立や増額を目的とする場合(任意積立金は含まれない) – 利益準備金や資本準備金の減額、又は自己株式の無償消却によって実施される場合 (iii) 減資のための要件と前提条件(資本会社法第318条以降の条項および商業登録規則第170条)が満たされていること。 2018年5月22日付登記・公証局(DGRN)の決定では、「会社は、登記簿上公示されている資本金額を、第三者保護のためにも、法によって規定される要件を満たすことなく減少することはできない」とした。(資本会社法第331条から第337条)  当該ケースでは、ある有限会社(Sociedad Limitada)が、以前に株主総会で決議された減資を実施することを目的に、その対象となる自己株式を取得した(事前に自社株を取得し、その後株式消却による減資決議を行うのとは逆の順番。)。 株式の取得価額は額面価額よりはるかに低く、通常それは、会社に損失が存在することを意味する。 取締役は、減資の効力発生日に会社の負債はなかったとの証明を行った。したがって、準備金の引当を行う必要はないとした(資本会社法第141条及び第332条)。 しかし、商業登記官は、債権者保護の効力発生日が減資の決議がされた日の後であることを考慮すると、任意積立金や法廷準備金の設定又は損失に基づく減資の実施とすることが適切であるとして、本登記申請を拒否した。 登記・公証局は、登記官の拒否理由を支持することを確認した。 登記・公証局は、会社株式の価値の回復が減資決議の前後のいずれであるかにかかわらず、減資を実施することにより利益を享受する株主の共同責任(資本会社法第331条)の適用が可能であることを特に言及した。 また、各株主の共同責任は会社への投資額(保有株式の価値)に限定されていることから、出資の返還が会社株式の額面価額を下回る金額で実施され、その金額に減資額が含まれている場合には、その差額は、債権者保護がないがしろにされることを避けるために、(i)損失の補填(ⅱ)任意準備金の積立開始または増額(iii)消却された資本準備金の積立又は又は増額、のいずれかの方法によって整合されなければならない、と登記・公証局は結論づけた。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月22日

会社の目的はどのように決まるか。定款変更なく会社の事業を変更できるか。

 I. 会社の目的とCNAEコード 会社を新しく設立するとき、会社の目的となる具体的な事業を定めなければならない。設立当初より非常に具体的な事業内容を有している場合もあるが、一般的には、中長期的に行う可能性のある事業を含める形である程度の幅を持たせた目的とすることが多い。 こうすることにより、将来、会社が定款に含まれる事業を行いたいと考えたときに、株主総会の承認や公証人の面前で公的効力を持たせるための手続き、商業登記所への登記をする必要がなくなり、それに伴う時間と費用を抑えることができる。 また、設立時において会社の目的に含まれる事業のうち、主たる事業が特定されなければならない。これは、2013年9月27日付法第14号起業家及び国際化支援法第20条に従い、国の経済活動分類コード(CNAE)を参照したうえでなされる。 CNAEコードを表示する義務は、統計上の目的のみでなされるものであり、会社が複数の 事業を行う可能性がある場合であっても、主たる事業活動の1つについて宣誓すれば足りる。このことは、登記・公証局2015年2月13日付決定においても確認がされている。 しかしながら、商業登記官が会社設立の公正証書に記載されたCNAEコードが、現行のコードに記載された内容と十分一致しているかを検証するため、会社の目的に含まれる事業が当該コードと一致することは重要である。 このことから、会社の目的に事業活動を記載するにあたってCNAEコードさらには事業税(IAE)のコードは軽視するべきではない。 会社の目的が複数の事業を含める形で幅広く定められ、CNAEコードが宣誓されると、以下の疑問が生じる。 定款変更せずに会社の事業を変更することの可否 複数の事業活動をその目的に含めている資本会社で、それら事業活動のうちの1つのみ、つまり「主たる」事業活動のみを長年行ってきたような場合を考えてみる。 経営組織が、株主総会の同意を得ることなく、自身の決定で、主たる事業活動を止め、会社の目的に含まれるその他の事業を開始すると定めるような場合を想定する。 出資持分保有者又は株主は、経営組織から一方的に当該変更を知らされた場合、実際の事業活動の変更に同意を与えておらず、会社の解散事由、具体的には資本会社法第363条第1項(a)及び(c)に定める解散事由が存在することを理由に、解散を決議するための株主総会の開催を要求する。 会社法第363条 解散事由 a) 資本会社は以下の場合には解散しなければならない。 b) 会社の目的を構成する事業を止めたとき。特に、1年以上事業を行っていない場合には事業を止めたとみなされる。 c) 会社の目的を達成することが不可能となったとき。 しかしながら、経営組織は「新しく」始める事業は会社の目的に含まれていること、さらには、会社の収益に資することを理由に反論するだろう。したがって、主たる会社の事業はさておき、「会社の目的を構成する事業を止め」ていないし、会社の目的は経済活動を行うことで利益を得ることだと考えれば、会社の目的の達成が不可能となっていないと主張する。 この状態を前に、会社の目的は株主の特有の利益と考える(契約論的見解)べきか、株主の私的利益を上回る(組織論的見解)と考えるべきかの議論に入らなければならない。 Carla Villavicencio 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年5月18日

ビデオ会議システムによる株主総会への 出席・投票

スペイン会社の株主や取締役が外国籍である、又は、会社の本店所在地から離れた場所に居住している、といった状況は、しばしば見受けられる。 これらのケースの場合、定款にて、株主総会及び取締役会に出席する可能性を規定することは、特に重要となる。これは遠隔地からの出席を可能とする、あるいは同様に遠隔地からの決議投票を可能とする書面の郵送又はインターネット通信による送付等のいかなるコミュニケーション手段を含めることを意味する。 この種の定款規定は、海外又は会社の本店所在地から離れた場所に居住する株主が、移動や代理人への権利委任を要せず直接株主総会の経過を把握することを可能にし、それは移動・通信等にかかる時間及び費用の節約につながると予想される。 しかしながら資本会社法(LSC)は、有限会社(S.L.)に対しビデオ会議システム、もしくは、これに類似した情報通信技術(以下「ICT」とする)を利用した株主総会開催の可能性の規定しておらず、そのために公証人と登記官の間でこの点の見解の相違が、しばしば議論の的となってきた。2012年12月19日付、2017年4月25,26日付及び2018年1月8日付け登記・公証局の決定はその例の一部である。 a)ビデオ会議システム、もしくは、ICTを利用した株主総会への出席・投票 ビデオ会議システム、もしくは、ICTを利用した株主総会への出席・投票に関連して2012年12月19日付登記・公証局の決定は、資本会社法第175条規定を以下のように引用し、見解を示した。 「定款に異なる規定がない限り、株主総会は本店所在地が存在する自治体において開催される」と規定する資本会社法第175条は、株主が株主総会に直接参加できるように、物理的な場所での開催を要求するが、同法第182条は株式会社への言及ではあるが、総会へのICT利用による参加を認めている、とその使用を肯定した。 同様に登記・公証局は資本会社法第189条第2項においても、株式会社のみを対象とした言及ではあるが、以下のように規定する。 「定款に規定されているところに従い、いかなる種類の株主総会の議案の決議事項への投票は、郵便、電子通信その他の遠隔コミュニケーション手段を通じて株主により委任、若しくは本人によって行使されることがある。 ただし、投票権を行使する主体の身分が正当に証明されていることを条件とする」 これに関連して登記・公証局は、資本会社法第182,189条は株式会社にのみ言及しているが、同法が有限会社へのビデオ会議システム、もしくは、ICTを利用した株主総会への出席・投票を禁じていると理解するべきではない、との判断を示している。 故に、株主が直接参加できるような物理的な場所での株主総会開催が決定した後、有限会社へのデオ会議システム、もしくは、ICTを利用した株主総会への出席・投票を、遠隔地の出席者に他の出席者の意見が同時に伝わり、株主が適時に介入できることが保証されているのであれば、有限会社にも認めるべきであると結論付けた。 b)ICTを利用した議決権の代理行使 他方、同2012年12月19日付登記・公証局の決定は、有限会社のビデオ会議システム、もしくは、ICTを利用した株主総会への出席・投票のみならず、議決権の代理行使にも言及した。そのためにはまず、資本会社法第183条第2項が有限会社に関して 「代理権限は書面(委任状)によって授与されなければならない。委任状が公正証書化されていない場合、株主総会毎に作成する必要がある」と、規定している事に留意が必要である。 同条項を文字通りに理解すると、「書面によって」とは、手紙、書類、若しくは手書き、入力あるいは印刷によるあらゆる用紙類を意味する。しかしながら2012年12月19日付登記・公証局の決定は、上記のような文字通りの理解を拒否し、電子署名法(法律59/2003第19条)および情報社会および電子商取引法(2002年7月11日施行、法律第34/2002号)に基づいて、「書面によって」とは他の形式における、例えば、ICTを利用、あるいはオーディオビジュアルを利用した代理権限の授与の表現・証明を排除するものではないと結論付けた。 従って、上記決定により、会社の定款にも代理権限授与のためにビデオ会議システム、もしくは、他のいかなる遠隔コミュニケーション手段を用いる可能性を、証拠資料として裁判所で認められる何らかの電子的フォーマットとして登録されている場合に限り、規定できることとなった。 c)本人認証のない署名があるICT利用による書類、もしくは、デジタル署名なしで電子的に送信された書類による議決権の行使 前述のa)、b)のケースを変更することなく、定款に以下の規定をすることができる。 「株主による議決権の行使は、本人認証のある署名(公証人によっての認証)を有する書類、あるいはデジタル署名付きの電子的投票によっても有効とする。ただし、株主総会においては、本人認証のない署名もしくは、デジタル署名なしでの議決権の行使を受け入れることができる。いずれの場合も、株主総会の開始時刻の最低24時間前に、会社が投票を受領する必要がある」 登記官は、資本会社法第189条第2項及び、これに類似する同法第522条に基づき、いかなる遠隔コミュニケーションシステムによる議決権の行使を、投票権を行使する主体の身分が正当に証明されている場合のみ可能であるとみなし、「本人認証のない署名もしくは、デジタル署名なしでの議決権の行使を受け入れる」を否定した。 しかしながら、2017年4月25,26日付登記・公証局の決定は、株主主権、若しくは自由行為に基づく株主総会の観点から、本人認証のない署名、またはデジタル署名なしで電子的に送付された書類によって、株主が行使した議決権を受領できるとし、これを定款に規定することを有効であるとの判断を示した。 さらに、登記・公証局はその決定の最後に「株主総会の開始時刻の最低24時間前に、会社が投票を受領する必要がある」と、会社が事前に議決権を行使する主体の本人確認の慎重な管理を助ける防止策としての一文を加えた。 d)株主総会における遠隔からの議決権の事前行使 直近の登記・公証局の2018年1月8日付決定は、有限会社設立の公正証書に、株主総会において議決権を遠隔地より事前に行使するための定款条項を含んだ登記申請についての判断を示した。 登記官は、株主総会における議決権の遠隔地からの事前行使は、資本会社法第521条第2項c)に規定されているように上場公開会社のみに適用可能な条項であるとして、有限会社及び通常の株式会社には適用されないとし、上記定款条項の登記を拒否した。 しかしながら登記・公証局は、株主総会における議決権の遠隔地からの事前行使は、定款にて規定されている場合は、資本会社法にこれを禁ずる規定がないため有限会社にも認められると、結論付けた。さらに、定款にて定められている場合には上記の決定は、直接出席型の取締役会招集における取締役の議決権行使にも適用される、との判断を示した。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月13日

剰余金の配当に関する実務的問題

I. 導入 例年のように、12月末決算の会社が年次会計報告書を作成・承認を求める時期になったが、それに伴って決算結果の適用に関し、新たな疑問が生じている。 本稿では、会社が決算結果の適用方法として行う剰余金の配当に関して生ずる実務的問題を取り扱う。 II. 剰余金配当の上限額 スペインの資本会社法(LSC: Ley de Sociedades de Capital)第273条は配当可能額の上限について以下のように規定している。 a) 法定準備金を備えていること。 法定準備金の額が少なくとも資本金の20%に到達するまで、当該事業年度における利益の少なくとも10%を法定準備金として積み立てなければならない。 b) 定款に定められている任意準備金を備えていること。この場合、以下に挙げる要件を満たさなければならない。 剰余金配当の結果、純資産の価値が資本金額を下回らないこと。 準備金の総額が、貸借対照表の資産の部に記載される研究開発費の額と同額以上であること。 上記に挙げる要件を満たしていれば、株主に対し利益を還元する方法として、剰余金の配当を行うことに支障はない。 III. 前年度までに累積損失がある場合における配当可能額の制限 会社が累積損失を有しているという事実自体が、剰余金の配当を妨げることはない。 資本会社法第273条第2項によれば、剰余金配当の結果、純資産の額が資本金の額を下回らない限り、剰余金配当は可能であると規定する。 しかしながら、過去の事業年度からの累積損失の存在により会社の純資産額が資本金の額をすでに下回っている場合、利益を同損失の補填にあてなければならない。 したがって、累積損失が存在する場合、剰余金配当の前後ともにおいて、純資産額が資本金と同額又は上回っていることを確認する必要がある。 IV. 債務超過であっても、剰余金配当は可能か 原則としては会社の決算で利益が出でいる場合のみ、剰余金の配当は行われると理解すべきであるが、(II)で示したように、資本会社法第273条第2項においての一定の制限はあるものの、自由に用いることができる準備金から配当金を拠出することが認められている。 実際には、株主総会で任意準備金を用いた配当と、任意準備金の制限に関する定款条項の修正に合意すれば、任意準備金を用いた配当を行うことは可能である。 V. 剰余金配当に関する義務が存在するか 資本会社法第93条a)によると、株主は会社の利益配当を受ける権利を有するとしている。しかしながら、同法は決算値の適用時の株主総会の決定権限に、何らの規定を設けてはいない。(同法第160条a, 及び第273条第1項) 非上場株式会社の場合、同法第348条bisは、商業登記所に登記がされてから5年目の事業年度以降、法による剰余金の配当が可能な利益のうち少なくとも3分の1についての剰余金配当の実施を株式総会が承認しない場合、当該剰余金配当に賛成票を投じた株主の退社権を認めている(当事務所2017年1月の記事参照)。 VI. 年次計算書類を承認する前に、剰余金配当を実施することは可能か 可能である。当該事業年度における利益を剰余金配当という形で分配するほか、当該事業年度の決算が確定する前に株主に剰余金を配当することも可能である。子会社が、債務超過状態にありながらも流動性があるとされ、その100%親会社に対して剰余金配当が認められた興味深い事例がある。 なお、資本会社法第277条は以下の点を要件としている。 a) 取締役が中間配当を行うための十分な流動性があることの宣言を含む計算書を作成すること(上記計算書はその後当該事業年度の計算書類注記表に含まれなければならない。) b) 中間配当金の金額が、直近事業年度終了時以降の結果、直近事業年度で生じた損失、法定準備金又は任意準備金に組み込まなければならない金額、及び当該事業年度の結果にかかる見込み課税額を超えないこと。 VII. 剰余金配当又は中間配当の決定権及び配当金額の決定権は誰が有するか 承認がされた貸借対照表に従って事業年度の結果の適用として剰余金配当について決定する権限を有するのは、株主総会のみである(資本会社法第273条第1項)。 他方、中間配当については、株主総会又は上述VIに記載の要件を満たした場合には取締役によって決定されることができる(資本会社法第277条)。 VIII. 剰余金配当又は中間配当の時期及び方法 剰余金配当に関する株主総会の合意は、(i)計算書類承認及び(ii)決算結果の適用に関する決議が行われる株主総会の議事録に記録される。 資本会社法第276条の定めるところに従い、当該株主総会決議において株主総会は配当の時期及び配当の支払い方法について定める。この決定が欠ける場合、配当金は、株主総会決議がされた翌日以降、会社の本店所在地において、現金で支払われると理解される。 また、中間配当が決定された場合で、株主総会議事録又は取締役会議事録において時期や支払い方法が明らかにされていない場合もまた、上記の類推適用により、当該決議がされた翌日以降、会社の本店所在地において現金で支払われる。 Carla Villavicencio より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2018年3月2日

定款条項『ドラッグ・アロング・ライト/強制売却権』:多数決、あるいは満場一致?

I. 導入部 本稿では、有限責任会社(S.L.)における株式譲渡制限の定款規定について、ドラッグ・アロング・ライトとも呼ばれる株式の強制売却権を設ける変更を行うことに関する2017年12月4日付公証・登記局の決定を検証する。 II. 強制売却権: 「ドラッグ・アロング・ライト」 「ドラッグ・アロング・ライト」条項とは、第三者から会社の過半数又は全ての株式を取得する旨のオファーがあり、一人又は複数の株主が当該オファーを受諾したい場合、他の株主に対して、会社の株式を第三者に同様に売却することを請求し強制できる権利を認める条項のことである。 この条項についてスペインの法制度において明示的な規定は存在しないが、資本会社法第28条で規定される私的自治の原則に則り、株主間契約(内部的に有効)及び会社の定款(全ての当事者に対して有効)に含めることができる。 簡単に言えば、強制売却権とは、効率的な株式取引の成功を妨げるような行為による少数株主の権利濫用を防止し、多数派の株主の権利保護機能として働くものである。 III. 株主総会の定足数 本事案では、株主総会において株主の過半数によって可決された有限責任会社の株式譲渡制度に関する定款規定の変更の商業登記申請が却下された。 商業登記官は申請却下理由として、強制売却に従わなければならない株主の排除(同資本会社法第291条及び第351条にて規定)を惹起する可能性があるため、会社の定款に強制売却権を設けるには、資本会社法第199条第a)項に規定されている定款変更のために必要な特殊決議ではなく、株主全員の同意が必要であるとした。 しかしながら公証・登記局の決定において、以下の内容が加えられている。「全ての株主の同意は、必ずしもすべての株主又は株主の代理人が出席している株主総会で満場一致で採択された決議の形式でなければならないというわけではなく、他のすべての株主が株主総会又は株主総会後に個別に同意している場合には、過半数による株主総会決議があれば十分である」(商業登記規則第207条第2項に則る) IV. 結論 したがって、株主総会は、ドラッグ・アロング・ライトを会社定款に加える定款変更を、過半数による決議で採択することができる。しかしながら、当該定款変更を登記するには、すべての株主が総会時又は総会後に当該定款変更に個別に同意することが必要である。 Carla Villavicencio Goula より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2018年1月26日

専門職法人制度 : 場合と理由

専門職法人とは、大学卒業資格や専門資格が必要とされる専門的活動を共同で行うことを事業目的とする法人をいい、当該事業を行うには、事業内容に応じた大学の卒業資格および専門家協会への登録(エンジニア、医師、建築家、弁護士、会計監査人等の専門職がこれに該当する)が必要とされる。 専門職法人は、法の定めるいかなる種類の会社の形態を備えることができるが、特別法として2007年3月15日のスペイン法第2/2007号(以下、「専門職法人法」)の適用を受ける。 前述の専門家の集団が専門職法人を形成すべきどうかを判断するためには、事業目的と専門職法人の構成を考慮しなければならない。 (a)専門職法人法第1条第1項及び第2項によれば、専門職法人の事業目的は、共同で 専門的事業を遂行することのみでなければならない。 したがって、事業目的を定義する際には、具体的な活動の羅列、詳述あるいは要約を避け、特定の専門職を共同で遂行することのみの記載に限ることを推奨する。前提として、専門職法人は専門的な性質を持たない事業活動を目的とすることはできないからである。2017年10月31日付、公証・登記局の直近の判断においても、上記見解を支持している。 (b) 専門職法人の構成に関して、専門職法人法第4条は、最低条件として、資本および議決権の過半数、又は純資産及び非営利法人の社員数の過半数は、専門資格を有する社員で構成されなければならないと定める。同様に、専門職法人の代表機関の構成員の少なくとも過半数以上は専門資格を有する社員でなければならない。上記条件を満たさない場合、この専門職法人は解散されなければならない。 他方、専門職法人に関する特別法の存在は、専門的なサービスを必要とする第三者に対し有利な追加的保証を提供する。 したがって、専門職法人に関する問題の中で最も注意を払うべきものの一つは、専門的サービスの提供に介入した法人及び専門家の両者に、社員か否かにかかわらず、対外的に連帯責任を負わせる特殊な体制にある。専門職法人法第11条は、専門職法人に対し民事上の責任に対応する保険への加入義務を規定している。 また、付随条項第2条は、前述の責任に関する特殊な体制を拡大適用するもので、2名以上の専門家が専門職法人法による専門職法人を組織することなく専門的職業の遂行を共同で行った場合にも適用される。これにより、万が一責任が追及されるような場合に不正があってはならない活動について、連帯責任があることで、サービスを要する者に特別の信頼を与えることとなる。 Carla Villavicencio Goula より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年12月1日

事業承継時の労働者への影響

スペイン労働者憲章第44条第3項によると、生産ユニットの譲渡が見受けられる場合、そこには事業継承があるとみなされる。その結果、譲渡会社と譲受会社の両者ともに、譲渡前に発生し且つ遂行されていない労働債務については3年間をめどに、連帯で責任を負うものとする。(譲渡後に発生した労働債務についても、これに対し違反宣告がなされた場合には、連帯して責任を負わなければならない) 倒産手続きの局面においても同様に、倒産法第149条第4項(以前は第2項)において、労働権と社会保障の保護の観点から、生産ユニットが譲渡された場合は事業承継がなされたとみなすと規定されている。当該概念は、2014年10月29日付けの最高裁判所判決に(労働審判)よって、倒産手続きの過程における集団的整理解雇の承認後、清算会社の資産全体が移転された場合は事業承継があったと認めると結論づけたことによって裏付けられている。 上記判決は、清算時において、事業を継続することから派生する責任、例えば社会保障費のコスト等の免除を条件とした生産部門購入に関する提案がなされた場合、労働審判において事業承継が存在するとみなされ、上記記載の条件は生産ユニットの取得者、つまり譲受会社が負担すべきであるとの見解から、倒産手続きを行う商業裁判所の承認を得たこの種の免除は無効になる可能性があるとした。 またここで留意すべきは、スペイン労働者憲章第44条の適用範囲を決定する所轄機関及び、第三者が倒産手続きの清算段階で機能する生産ユニットを取得した場合、そこに事業承継が存在するのかどうかの判断を審理するのは、倒産手続きを扱う裁判所(商事裁判所)ではなく、労働審判であることである。2017年5月18日付の直近の判決第442号においても、上記の判断の正当性を支持している。 同様の概念は、通常の商行為における生産ユニットの取得の場合(倒産手続内でのM&A)にも適用される。この場合、ユニット取得者に保証あるいは、生産ユニットの移転前に生じた労働債務と同額程度の価値の担保を要求することができる。これらすべては、契約範囲において、義務に対して連帯責任を負う必要はなく、売り手すなわち譲渡会社が負うものとする。 Carla Villavicencio Goula より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年7月7日