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個人情報保護法案

11月10日、スペイン政府は閣議において個人情報保護にかかる組織法案を下院に提出することを承認した。この法案は、2016年4月27日付欧州議会及び欧州理事会規則第679/2016号の規定をスペイン法制に適用するためのものである。当該規則は、2018年5月25日に施行予定である。2017年3月24日付当事務所の記事においても当該規則について述べている。 当該欧州規則はその主たる目的の一つとして、欧州各国の規則の間に存在する取り扱いの齟齬を取り除くこととしている。また、情報技術の急速な発展及び情報化・グローバリゼーション社会の急速な発展に伴い生じている現象に対応する 個人情報保護規定の適用を目的としている。 スペインにおいては、個人情報の保護は憲法で守られている基本的人権の一つであることから、本法案は、本人による同意の制度及び個人情報の取扱いや手続きの面でいくつかの新しい規定を導入している。 未成年及び故人の情報 他の欧州諸国の規定に合わせる形で、個人情報取り扱いの同意が必要となる年齢を13歳まで引き下げる。 故人の個人情報の取り扱いについては、その相続人の申請に従う。黙示の同意という形式は排除され、影響を受ける側による明白かつ同意に肯定的な行為がなされなければならない。また、秘密保持義務についての表明もされなければならない。 直接的に得た個人情報が不正確であった場合、個人情報取扱主任者が当該情報の修正又は削除のために合理的な方法をとったのであれば、当該個人情報取扱責任者は責任を免れる。 個人情報取扱いに関連する問題は、影響を受ける者の情報取り扱いに関する情報を受ける権利に関して透明性の原則を採用しており、アクセス権、修正要求権、削除要請権、取り扱い制限権、データ・ポータビリティの権利及び異議申立て権について明確に考慮に入れられている。 差別的状況の回避 差別的な状況が生じることを回避するため、イデオロギー、支持組合、宗教、性的指向、人種または民族、及び信条といった特別な保護に値する情報の保持が禁じられることは変わらない。これらのカテゴリーにおいては、取り扱いを行うための条件として関係者の同意のみでは十分とされない。 また、新しい個人情報保護法は、立法者が、個人情報取扱主任者が定められた要件を満たすという法的利益の優先や信用情報システムを推定したと見られる規定を採用している。 同時に、新個人情報保護法は、監視カメラや広告排除システム(ロビンソン・リスト。広告統計機能)に関連した、公共の利益の存在が考慮される状況にかかる規定やプライベート・セクターでの内部告発制度にかかる規定を設けている。 その他の新しい点 その他の新しい点のうち、特筆すべきは個人情報保護責任者の強化だろう。個人情報保護責任者は個人または法人であり、指名された者の情報を管轄当局であるスペイン個人情報保護局(AEPD)に届け出なければならない。 手続きに関しては、パブリック・セクター、プライベート・セクターともに自己制御メカニズムの存在が促進され、個人情報の取扱いから生じる潜在的な責任追及に備え、それらが不履行の隠蔽のために消去されることを予防し、個人情報が裁判所、検察その他AEPDのような管轄機関によって利用可能な状態であることを保証するようなブロック義務を導入する。 国際間の個人情報のやり取り 欧州規則は、EU域内市場における活動の結果である国境をまたいだ個人情報の流通の増加によって生じている状況について、急速な情報技術の発展とグローバリゼーションにより、個人情報が情報取扱会社にとって重要なリソースとなっていることを考慮した対応をするものである。 この状況に面し、個人情報が複製され、よりアクセスしやすく、より容易に処理されやすくなった一方、その使用や使用目的の管理がより難しくなったことによるリスクが増加した。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年11月17日

会社の本店移転の容易化― 2017年10月6日勅令法第15号

2017年10月7日付の官報にて、2017年10月6日勅令法第15号「企業の国内における移転に関する緊急措置」(以下「勅令法」)が公布された。この勅令法により、改正資本会社法第285条第2項の修正がされる。 改正資本会社法第285条第2項は、会社が国内で本店移転を行う場合、会社の定款に異なる規定が設けられていない場合に限り、その決定権限は経営組織(取締役や取締役会)にあると規定している。 この条文の解釈において、二つの解釈の見解が存在していた。そのうちの一つによれば、経営組織が本店移転の権限を有することについて「異なる定款の規定」とは、株主総会が本店移転について決める権限を有していると定款に規定があることである、と解釈された。他方の見解によれば、会社の定款で単に補足規定を複製さえすれば、国内の本店移転の決定権限が経営組織に属することに関する株主のその時々の自主性が示されているといえる、と解釈された。この解釈に従えば、「異なる定款の規定」は、改正資本会社法の施行後に、改めて経営組織に本店移転決定権限を与えない旨の明確な意思表表示をする定款変更がされた場合にのみ、存在することになる。 今般の勅令法は、(i) 改正資本会社法第285条第2項は、原則として会社が国内で行う本店移転の決定権限は経営組織に属するとしていること、そして、(ii) もし株主が会社の本店移転の決定権限は株主総会が持つべきだと考える場合には、経営組織に権限が属することを明白に否定する定款変更を行わなければならないことを目的としている。 本勅令法が施行される結果、改正資本会社法第285条第2項の規定は以下のとおり修正される。 「前項の例外として、経営組織は国内で行う本店移転の決定権限を有するものとする。ただし、定款にそれと異なる規定がある場合を除く。経営組織が本店移転の決定権限を有さないことを定款で明確に定めている場合のみ、定款にそれと異なる規定がある場合と解される。」 さらに、本勅令法は経過規定として、以下の定めを置いている。 国内での本店移転にかかる決定権限が経営組織に属さない旨を明確に宣言した定款変更が、本勅令法の施行後に承認された場合のみ、定款に異なる規定があるものとみなされる。 つまり、現行の定款で本店移転の権限は株主総会に属する旨の規定を置いている会社であったとしても、当該定款の規定が本勅令法の施行後に定款に盛り込まれたのでない限り、当該定款の規定は国内における本店移転については効力を有さず、したがって、経営組織が決定権限を有することになる。 本勅令法は官報での公布日の翌日、10月7日から施行された。 Mika Otomo より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年10月20日

様式232: 関連会社との取引及びタックス・ヘイブンに関する状況の報告書

2017年8月30日付の官報にて、関連会社との取引及びタックス・ヘイブンと評価される国や地域との状況にかかる報告書となる様式232を承認する命令HFP/816/2017号が公布された。 2015年1月以降に始まった事業年度について、大々的な法人税法の改正がされ、関連会社との取引に関しては、新しい文書の作成が義務付けられた。しかしながら、本命令が目的とするのは報告義務であり、上記文書作成義務とは異なるものである。 本報告義務の根拠となる条文は、法人税法規則第13.4条である。従来は、この義務は法人税申告時の様式200内に含まれる表への記載によって履行されてきた。しかし、2016年1月以降に始まる税年度からは、当該義務は法人税申告用様式から新しい専用様式へと移される。この変更の理由は以下の2つである。 内容が単なる報告にとどまる表については、関係を有する者又は会社との取引を報告する義務がある会社にのみ提出が求められる報告書に含めるのが適切であること。 法人税申告様式から報告用の表を削除することは法人税申告提出に間接的に伴う税務負担を軽減することにつながること。 上記と同様の理由から、タックス・ヘイブンと評価される国や地域に関連する取引及びその状況に関する報告も、これまでは様式200に含まれていたが、新たな様式232へと移される。 様式のフォーマット 様式232はデジタルフォーマットでのみ利用可能である。 報告義務者 1)様式232及び「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載 以下の者が義務付けられる。 同一関係人又は同一関係会社と、一税年度内の総取引金額が、マーケットの価値に従い250,000ユーロを超える場合 下記a)又はb)の取引を関係人又は関係会社と行う法人税納税者及び恒久的施設を通じて活動を行う非居住者所得税の納税者 a) 同一関係人又は同一関係会社と、一税年度内の総取引金額が、マーケットの価値に従い250,000ユーロを超える場合 b) 法人法第3条及び法人税規則第16.5条の定める特定の取引が行われる場合には、当該取引個別の取引高が一税年度で100,000ユーロを超える場合。 しかしながら、以下の取引については「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載は義務付けられない。 税務上連結している同一グループに属する会社間で行われた取引 経済的利益のグループ化により税務上連結している同一グループに属するメンバー又は会社と行われた取引 有価証券の売却又は取得にかかる公的オファーの範囲で行われた取引 なお、同一の関係人又は同一の関係会社との総取引金額のいかんによらず、同一の種類かつ同一の評価方法を用いている取引で、それらの総取引額が当該税務年度における当該会社の取引高の50%以上である場合には、常に様式232及び「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載が義務付けられる。 2)様式232及び特定の無形資産から生じた収入の減額適用がされる場合の「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載 納税者が関係者又は関係会社へ特定の無形資産の譲渡を行った結果としての収入を得たことを理由に当該減額の適用を申請した場合にのみ、記載が義務付けられる。 3)様式232及び「タックス・ヘイブンと評価される国又は地域に関連した取引及びその状況」欄への記載 納税者がタックス・ヘイブンと評価される国又は地域において取引を行った場合又は有価証券を保有した場合には、その金額に関係なく報告が義務付けられる。   提出期限 様式232の提出は、提供する情報が含まれる税務年度終了後10ヶ月以内に提出しなければならない。 2016年内に始まり2016年12月31日以前に終了した税務年度については、提供する情報が含まれる税務年度終了後に訪れる11月1日から11月30日までを提出期間とする。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年9月15日

会社の吸収合併と公告

会社が吸収合併を行う際、官報及び会社所在地で発行されている日刊紙に、吸収合併が株主総会によって承認された旨の公告を、吸収会社・消滅会社とも掲載しなければならない(2009年4月3日法第3号会社再編法第43条第1項)。なお、すべての株主及び債権者に個別通知を行う場合、公告を省略することが認められている(同法同条第2項)。 この公告において株主総会による合併承認の日の記載に誤りがあった場合、当該記載の誤りは、単なる記載ミスとして処理され得るものなのか、それとも、株主及び債権者の権利保護の観点から、重要な誤りとみなされるものなのかが争われるケースがビスカヤ県(スペイン、バスク地方)の商業登記所で発生し、2017年6月19日付で公証・登記局は以下のような判断を示した。 当該事案における吸収合併は、100%親子会社間の合併であり、(親会社が存続会社、子会社が消滅会社)親会社における株主総会による合併承認は、実際には2016年7月23日に開催された株主総会でなされた。当該吸収合併の公正証書が商業登記所に提出された日は2016年5月30日だった。 しかしながら、官報及び日刊紙(エルムンド紙)に掲載された公告には、吸収合併の株主総会による承認日が2016年2月8日と表示されていた。 登記官は、株主総会による合併承認の日付が実際は2016年2月8日ではなく2016年7月23日であり、当該吸収合併が2016年5月30日まで登記所に公示されなかったと、公告された日付に相違があることを理由に、本件合併の登記申請を却下した。 これに対して会社側は、日付の記載の相違は単なるミスであり、株主や債権者の権利を制限したり、阻害したりするようなものではないと主張し、当該却下決定に異議を申し立てた。 2017年6月19日付公証・登記局の決定では、公告内の日付の記載が間違っているという事実が、株主や債権者の権利の制限や妨害といった観点からどの程度の重要性をもち、単なる記載ミスとして処理され得るものかについての判断が示された。本決定は、当該誤記が単なる表記ミスとなるかどうかを検討するにあたって、吸収合併において債権者に与えられている異議を述べる権利(derecho de oposición、会社再編法第44条第2項)及び情報を請求する権利(derecho de información)の保護を考慮しなければならないとした。前提として、これらの権利が適切に保護されていない場合には明白な法令違反であることを確認し、異議申述権と情報請求権が相関関係にあり、密接に絡みあっていることから、公告又は債権者宛の異議申述権に関する個別通知が正しく行われていることが、債権者の権利保護のための必要条件であると述べた。 また、本決定は、公告の内容を定める会社再編法第43条は、公告又は債権者への個別通知の内容には吸収合併合意の全文を記載することを求めていないため、もし本件の公告において吸収合併承認株主総会の日が記載されていなければ、本件吸収合併の登記はなんの問題もなくされていたであろうと示した。 しかしながら本件においては、誤った日付が吸収合併承認株主総会の日として公告されており、実際にはその日に株主総会による承認はされていない。このことは債権者の異議申述権の行使の可能性に関して債権者に錯誤を生じさせる可能性がある。なぜなら、本件吸収合併が登記所に届出されたのは2016年5月30日であり、当該日よりも前に発生した債権を有する債権者は、それが公告に記載された合併承認株主総会の日(2016年2月8日)よりも後に生じたものであったとしても、異議申述権を有する。しかし、上記公告で誤った日付が掲載されたことで、債権者の異議申述権を妨げる結果を招きかねないことから、本件の日付の記載ミスは単なるミスとして処理することはできないとの見解を示した。 当事者にとっては単なる記載ミスであったとしても、債権者の権利保護といった観点に立つと大きな影響を及ぼす可能性がある。合併承認株主総会の日付の変更が生じる可能性があるのであれば、公告に承認株主総会の日付をあえて記載する必要はないことが、本決定から理解できる。 Mika Otomo   より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年8月4日

日本・スペイン間のワーキング・ホリデー・ビザに関する協定の署名

去る4月5日、日本とスペインとの間でのワーキング・ホリデー・ビザに関する協定に署名がされた。本協定は2017年5月11日付官報でも公示がされた。 現時点においてその効力発生日は具体的になっていないが、当該協定によれば、協定の効力発生のために必要な国内手続きが完了し次第、スペイン・日本の両政府は相手国の政府に対して通報し、双方の通報が受領された日のうち、いずれか遅い方の日から30日目に、当該協定は効力を生ずるとされる。   ワーキング・ホリデー・ビザ申請の要件 協定第1条によれば、ワーキング・ホリデー・ビザの申請のための要件は主として以下の内容である。 主として休暇を過ごすために相手国に入国する意図を有していること(就労を主たる目的としない。)。 ワーキング・ホリデー・ビザ申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること。 被扶養者を同伴しないこと(被扶養者も一緒に渡航する場合には個別にワーキング・ホリデー・ビザまたはその他のビザを取得しなければならない。)。 有効なパスポート及び帰国のための航空券又はそれを購入するための十分な資金を所持すること。 相手国における滞在の当初の期間に生計を維持するための相当な資金を所持すること。 滞在終了時に相手国を出国する意図を有し、かつ、滞在中に在留資格を変更しないこと。 以前にワーキング・ホリデー・ビザの発給を相手国から受けていないこと。 健康であることが医療診断書により確認されること。 犯罪経歴を有しないことを申告すること 相手国に滞在する間に、相手国において効力を有する法令を遵守する意図を有すること 上記要件のうち、(v)に定める「当初期間の生計を維持するための相当な資金」について、今後、各国政府内で物価や消費者物価指数、賃料等を考慮し、その基準となる具体的な金額が定められるものと考える。6月20日に在スペイン日本国大使館は、具体的な要件を含むワーキング・ホリデー・ビザに関する情報を公表した。当該情報によれば、スペイン人の若者が日本向けワーキング・ホリデー・ビザを申請するにあたって、上記要件(iv)に関しては、往復航空券を有していない場合には 2,000ユーロ、日本行きの航空券のみを有している場合にはスペインへの帰国用航空券相当額として1,000ユーロを所持していることが必要とされた。また、(v)に関しては、日本の初期滞在費用として十分と認められる額は2,000ユーロと定められた。   滞在可能期間 ワーキング・ホリデー・ビザによって滞在できる期間は入国した日から1年間であり、その間、旅行資金を補うために必要な限りにおいて、相手国の法令に従って就労することが認められる。   発給数 協定によれば、ワーキング・ホリデー・ビザの発給件数は毎年定められるとされており、発給件数には上限が設けられることとなるものと思われる。なお、上述の日本大使館の情報によれば、2017年はスペイン人に対するワーキング・ホリデー・ビザの発給数は250となるとのことである。 Mika Otomo より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年6月23日        

法人登録が一時抹消されている場合における会社解散登記申請

登記・公証局は2017年3月27日付の決定で、会社が税務署の管理する法人登録で一時的に登録抹消されていることに基づき登記簿が閉鎖されている場合には、当該会社の解散登記は受理されることができないことを確認した。 本件決定が出された件では、会社の解散及び清算の登記について保留された。本件では会社の債権者は国税局ただ一人であり、当該税務債権については、会社に十分な資産がないことから弁済されることはできない状態だった。また、債権者が複数人存在しないことから、倒産手続きを申し立てることができない。加えて、国税局の債権については、本件会社が法人登録の一時抹消がされていることから回収不能であることが宣言されており、結果として、法人登録の再登録証明書を取得することが法的には不可能であるという状況であった 本件会社はその異議申立てにおいて、本件における問題は、一人しか債権者がおらず、当該債権について会社の清算によって弁済することができないような会社は、解散することが可能であり、会社の登記簿も閉鎖されることができるというシンプルなものであり、上記と同じ規範は、2016年8月22日付DGRN決定において維持されていること、そして、本件における唯一の相違点は、会社が法人登録の一時抹消をされているという点のみであると主張した。 しかしながら、DGRNは、以下の理由により、会社の異議申し立てを認めなかった。 現行の規定によれば、会社の法人登録の一時抹消が登記所に通知された場合には、以降、再登録がされるまで、当該会社についてはいかなる登記も実施することができない。 計算書類登録の不履行によって登記簿が閉鎖される場合は、明白に例外として会社の解散の登記を実施することが認められている。しかし、法人登録の一時抹消により導かれる結果と、計算書類登録の不履行により導かれる結果を混同することはできない。 法人登録の一時抹消にかかる規定の例外の中に、会社の解散・清算登記は列挙されておらず、したがって、それら登記を実施することはできない。 会社の解散を行うことについて法的には特段の問題がない場合であったとしても、法人登録の一時抹消を原因とした登記簿の閉鎖がされている場合には、明らかに例外として規定されているものを除き、登記所はいかなる登記申請も実施することはないと理解すべきだろう。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Mika Otomo va@vila.es 2017年5月5日  

SAにおける取締役会決議による取締役選任

2017年2月8日付の登記・公証局(DGRN)の決定では、上場している株式会社(SA)において、取締役に欠員が生じた場合における、取締役会決議による取締役の選任が認められる場合についての基準が示された。 同決定においてDGRNは、上場企業の取締役会に欠員が生じた後に株主総会が2回開催されているような場合において、取締役会の決議による選任された者を登記することができるかという点が本件における論点とした。DGRNが本決定内で示した見解の概要は以下のとおりである。 法によって取締役会に与えられている取締役会決議による取締役の選任権限は、取締役に欠員が生じた場合においても取締役会が安定して、完全に機能することを保証する必要性にその基礎をおいており、当該権限は、法が株主総会に与えている権能である取締役の選任の特別な例外として考えなければならない。 取締役会決議による取締役選任権限が与えられるのは、当該辞任による欠員直後の株主総会開催時までの間とすべき。 取締役選任決議を採決した取締役の数が選任された人数の過半数に満たない場合には、当該選任にかかる取締役会決議は登記されることができない。なお、この場合には取締役会は有効に成立しない。 取締役に欠員が生じた場合、株主総会が直ちに新たな取締役を選任しなければならない法的義務は存在しないが、取締役会による取締役の選任がされた場合には直後の株主総会は取締役選任の義務がある。 資本会社法第171条は、取締役の死亡や、大半の取締役の辞任によって取締役の数が員数に満たない状態になった場合にのみ、つまり、取締役会が有効に開催できないような場合に限って、いかなる株主も株主総会招集権限を有すると解すべきである。 定款に特に禁止するような定めがない場合、欠員を補うための取締役会決議による取締役選任については、その直後に開催された株主総会の議案に取締役選任議案が含まれていたにもかかわらず、自主的に選任がされなかったような場合であるならば、認めるべきである。反対に、株主総会で、取締役選任について取り扱う機会がなかった場合には、取締役会決議による取締役選任を認めるべきではない。 上記のとおり、法が取締役の選任権限を株主総会に与えている以上、取締役会決議による取締役の選任が認められる場合は限定的に考えるべきであり、非常に緊急性・必要性が高い場合、もしくは、株主総会自身がその権限を自主的に行使しなかった場合にのみ、例外的に認められると解される。   より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Mika Otomo va@vila.es 2017年3月31日

事実の先後関係と登記簿の状態の優先順位

登記・公証局は2017年1月18日付の決定において、会社が法定の期間内に法により登記が求められている事項についてその登記申請義務を果たさない場合には、その不履行により生じ得るリスクについては当該会社が甘受すべきとの判断を示した。 本件では、合同会社(S.L.)が経営組織の変更、取締役の辞任及び一人取締役の選任についての公正証書について、商業登記所登記官が、該当会社の登記記録に備考欄によれば、法人税法の定める法人登録(税務当局の管理する法人登録簿の登録)が抹消されている(この登録抹消は3税務期間連続して納税しない場合等に行われる)ことが確認できることを理由に、その登記手続きを認めなかった。この備考欄の記載が有効である以上、 裁判所による命令がある場合、または、行政による法人の再登録が行われない限り、新たな登記手続きを行うことができないことは、登記・公証局も認めるところである。 この取扱いに対し、会社の法人取締役2社のそれぞれ代表者は、以下の点を主張し、異議を申し立てた。 税務当局の命令に基づく登記記録の閉鎖とその原因となった納税義務の不履行は一人取締役の辞任よりも後に生じている。 取締役または職務執行者の辞任の登記がされないと、辞任した取締役が無防備な状態となってしまう。 これらの主張に対して、登記・公証局は以下の見解を示した。 まず、登記・公証局の法人税法第131条第2項に関する見解は、ある会社が、税務当局の管理する法人登録簿への登録が一時的に抹消されている場合には、法人登録簿の再登録がされるまでは、当該会社の登記簿は実質的に全体が閉鎖されるとしていることを確認し、この見解は現在においてもなお有効であるとした。 この見解に従えば、税務当局管理の法人登録簿の登録が一時的に抹消されている間は、定められた例外的な場合を除いて、商業登記簿へのアクセスもできないという結論となる。 次に、本件における取締役の辞任が、税務当局管理法人登録簿の登録抹消が商業登記簿の備考欄に記入されるよりも前に生じているとの主張については、以下の理由により、認められないとした。 登記手続きのために公正証書が提出された時点において、既に税務当局管理の法人登録簿の登録抹消がされており、登記官はそれを無視することはできないこと。 資本会社法第215条第2項によれば、取締役の選任については商業登記所への登記申請は就任承諾がされてから10日以内にされなければならない。もし実行されないのであれば、当該義務の不履行から生じる不利益な結果については、当該登記義務を実施すべき者が甘受するべきである。 結果として、登記・公証局は会社による異議の申立てを却下し、登記官の決定を指示した。 上記から、登記実務においては、登記申請が法定期間内にされていない場合は、事実の先後関係ではなく、登記申請がされた時点における登記簿の状態が優先されると理解できる。つまり、登記申請が法の定める期間内に提出されていない結果、会社にとって不利益な取り扱いが生じたとしても、それは会社の責任であるというのがDGRNの見解であると考えてよいだろう。 より詳細な情報につきましては、下記まで御連絡ください。 Mika Otomo va@vila.es 2017年2月24日

自主的な監査役の選任と監査済み年次会計書類の提出義務 (II)

  2016年12月21日付登記・公証局決定は、会社が自主的に選任した監査役の登記が存在する場合には、たとえ株主全員が取締役であっても、監査報告書が計算書類に添付されなければ、計算書類の商業登記所への登録がされることができないことを明らかにした。 本件において、ある合同会社が2015年度の計算書類の商業登記所への登録に際し、監査報告書を付さずに計算書類を提出したところ、商業登記官がその登録を認めないとの判断を行なった。当該会社の登記によれば、2015年12月29日付で取締役が2015年、2016年、2017年の3事業年度について会社が自主的に監査役を選任したことが記録されていた。 この取扱いに対し、共同取締役の一人は、会社を代表して、以下の点を主張し、異議を申し立てた。 商業登記所が計算書類の登録を認めなかった法的根拠として2016年3月15日付公証・登記局決定をあげているが、本件において監査役の自主的選任は株主総会ではなく取締役によってされており、当該決定とは前提事実が異なる。 本件において、会社の株主は全員共同取締役であり、従来の登記・公証局の決定で計算書類への監査報告書の添付を義務付ける根拠とする少数株主の権利侵害は生じ得ない。なぜなら、会社の株主が全員共同取締役である以上、監査報告書がなくとも会社の会計に関する情報のすべてにアクセスをすることができる状態あり、株主の情報取得権を制限することがないからである。 これらの主張に対して、登記・公証局は以下の見解を示した。 登記・公証局は、法律によって監査役による計算書類の監査を義務付けられない会社が自主的に監査役を選任し登記している場合には、適切な監査報告書が添付されていない限り、計算書類の登録はされないという原則をその決定において繰り返し確認している。 本件において会社は、監査役が株主総会ではなく取締役によって選任されているため、従来の原則の適用の前提とは事情が異なると主張するが、本局による決定は少数株主の権利保護にその根拠を置いていることから、前提が異なるから決定の適用がないとする主張は認められない。 また、少数株主の権利を害することはないとの主張については、登記所は、いくつかの例外的場合を除いて、会社の株主について公示することがなく、会社の株主構成を把握することは原則としてない。他方、設立時には現在のように共同取締役の体制ではなく、本件の申立人となっている者のみが一人取締役として就任していた。 これらを鑑み、登記・公証局は会社による異議申立てを却下した。 本決定からわかることは、会社が監査役を自主的に選任している場合には、本件のように実質的には少数株主の権利を害するような状態はなくとも、形式上それを確認できる情報を登記官が有することができない以上は、計算書類への監査報告書の添付義務は免れないということである。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 大友美加 vila@vila.es 2017年1月20日

合同会社における株主の排除 裁判所決定を得るための手続きの期限の解釈

スペイン最高裁は2016年6月29日付判決において、合同会社における株主排除の株主総会決議を有効にするために求められる裁判所の決定を取得する期限の解釈について、自身の立場を確認した。 スペイン合同会社(Sociedad Limitada)の少数株主を排除する合意は株主総会の特別決議(3分の2以上の議決権による賛成)によって承認されなければならない(資本会社法352条第1項)。当該決議には排除の対象となる少数株主は参加できず、決議の定数としても算入されない。したがって、単独で3分の1以上の議決権を保有する株主が排除される可能性はない。 排除される株主が25%以上の出資持分を保有する場合、当該株主を排除する旨の株主総会決議は、それが有効となるために裁判所による確定決定を得なければならない(資本会社法第352条第2項)。そして、裁判所の追認を得るための司法手続きは、原則として会社が行うこととされており、会社が当該司法手続きを株主総会の決議から1ヶ月以内に行わない場合には、株主が会社に代位して当該手続きを行うことができる(資本会社法第352条第3項)。 この1ヶ月の期間の解釈について、上述の最高裁判例にかかる事例において争われた。 本件は、50%の出資持分を保有する株主を排除する株主総会決議が2010年12月10日に行われたものの、会社が当該株主の排除のための手続きを実施しなかったため、2013年5月29日、他方の50%の出資持分を有する株主が、裁判所に対して訴えを提起したという事案である。原告側は、少数株主排除にかかる株主総会決議が有効であり法に適っていることの確認を求めたが、被告は、訴えは却下されるべきであると主張した。第一審では原告の訴えが退けられたが、原告側が控訴し、第二審において、当該株主総会決議は有効であると判示され原告側の主張が認められたため、被告側が上告、本件は最高裁で争われることになった。 最高裁は、資本会社法第352条第3項の解釈について、以下の見解を示した。 「資本会社法第352条第3項は、会社は、同条第2項に定める少数株主の排除のための手続きを実行するための期間として株主総会決議の日から1ヶ月を有し、会社が当該手続きを実行しないまま当該期間が経過した場合には、補助的に、当事者としての資格が当該株主総会決議において賛成に投じた株主に移る。そして、株主は会社が当該手続きを実行していないことを知った、または、知りえた日から1ヶ月以内に当該行為を実行しなければならない。当該期間内に会社も株主も当該行為を実行しない場合には、株主総会決議は効力を失う。」 つまり、株主総会決議から1ヶ月という期間は、株主総会決議に効力を持たせるための司法手続きを会社が行う場合に適用される期間であり、当該期間においては、会社のみが司法手続きを要請する資格を有している。そして、当該期間の経過をもって、株主が会社に代わって司法手続きを行うことができる資格を有するのであり、352条第3項の1ヶ月の期間はそれ以上の意味を持たない。なお、株主による司法手続き実行可能期間は、会社が司法手続きを実行しなかったことを株主が知った日または知りえた日から数えて1ヶ月となる。これは2003年4月9日付最高裁判決第351号において述べられた見解を踏襲しているといえる。すなわち、「会社自身が手続きを行う場合に限られた期間内に行わなければならない一方で、株主が会社に代わって行う場合には期間が拡張されると解するのは合理的ではない。課せられる期間は同一とすべき。」との見解である。 本件において、会社が株主排除にかかる手続きを行わなかったことを原告が知ったのは2011年1月28日であることが第一審で確認されていたため、最高裁は被告による上告を認め、第二審の判決を取り消した。   より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 大友 美加 va@vila.es