ESPAÑOL | ENGLISH | DEUTSCH | 日本語 |


株主の退社権行使と株主総会による事前承認の要否

ある合同会社(Sociedad Limitada)の取締役は、会社に生じた利益の全てを資本準備金にするとの利益処分案を株主総会に提案した。当該提案は承認可決されたが、株主の一人が、当該利益について配当に回し、資本準備金に回す金額は多くても利益の半分にしたいとして、反対票を投じた。当該株主は会社に対して資本会社法第348条に従って少数株主の退社権の行使の通知をし、当該通知において、自身が保有する株式の価値評価を目的とする株主総会の開催を要請した。当該株主は上記通知を繰り返し行ったが会社から回答を得られなかったため、資本会社法に定められている商業登記所を通じた手続きを開始すると告げた。 このことが会社に通知されると、会社の取締役は当該株主の要請に対して異議を申し立てたが、商業登記官は会社の異議を認めず、商業登記規則第363条に従って、株式の価値評価のための鑑定人を選任する旨の決定を行った。 上記商業登記官の決定について、会社は登記・公証局(DGRN)に対し不服申立てを提出した。 DGRNは2018年3月13日付の決定において、会社の主張内容を以下の3つに分類した。 株主の退社権の根拠について管轄を有するのは裁判所であり、商業登記官ではない。 株主の退社権について株主総会は何の宣告も行なっていない。 本件株主の退社権行使は脱法行為であるのではないかとの疑念を抱いている。 そのうえで、DGRNは各主張についての見解を述べ、最終的には会社の主張を認めなかった。 上記主張のうち株主総会の事前の宣告についてDGRNは、最高裁判所判例によれば、株主の退社権の行使は、法がその行使の可能性を認めている株主に独占的に帰属するものであるとした。そして、株主による退社権の行使に先立って、株主総会や取締役会からの承認をする必要がなく、当該権利の行使について会社に通知がされれば、資本会社法第353条及びそれに続く条項の定めるところに従い、その効力が発生すると示した。つまり、株主の退社権行使は、株主総会や経営組織の事前の決定や審議に条件付けられるものではなく、株主総会が合意したところに従わなければならないものでもないと結論づけた。 大友美加 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月15日

EUのフェイクニュース対策

2018年4月26日、欧州委員会はオンライン上のフェイクニュース対策にかかる一連の措置を公表した。FacebookやCambridge Analyticaが最近公表した内容で、選挙の状況においてどのように個人情報を取得することができるかが判明し、民主主義の過程を保証するために適切な方法を考える良い契機となった。欧州委員会はヨーロッパの価値とセキュリティを保護するためにフェイクニュース対策のための第一歩を講ずる。 フェイクニュース対策の一連措置 欧州委員会が提案した一連のフェイクニュース対策のうち、以下のものは言及に値するだろう。 (1) フェイクニュースに関する行動規範   7月までに、第一歩として、オンライン・プラットフォームは、以下を目的とした共通の行動規範を作成し、採用しなければならない。 (i) 提供された内容、特に政治色のある広告の透明性の確保。例えばこの種の広告提供の目的の範囲を制限し、フェイクニュースのベクトルが入り込むのを減らす。 (ii) アルゴリズム機能についてより大きな透明性を提供し、第三者による確認が可能なものとする。 (iii) ユーザーが、他の観点から書かれた記事を見つけやすく、かつ、アクセスしやすい環境を作る。 (iv) フェイクアカウントを特定し、クローズさせるための対策を講じ、「ゾンビ」アカウントの問題に対処する。 (v) 情報の検証・調査を行う者及び公的機関が永続的にフェイクニュースをコントロールできる権限を与える。 (2) 情報の検証のためのヨーロッパ独立ネット 共通の業務メソッドを制定し、より良い行為についての情報交換をしEU全域のデータの確認を可能な限り行うために努力する。情報検証者は「情報検証ネットワーク(International Factchecking Network)」のメンバーから選ばれ、国際情報検証行為規範に従う。 (3) フェイクニュースについてセキュリティが施されたオンライン・プラットフォーム 情報検証者や関連した学術研究者が国際データの収集や分析を行うためのネットワーク及びEU域内のアクセスをサポートするためのプラットフォームの構築を行う。 (4) メディア・リテラシーの促進 メディア・リテラシーが高いレベルにあることは、すなわち、EU市民がオンライン上のフェイクニュースを見抜き、インターネットの内容について批判的な視点で見ることができることを意味する。この目的で、欧州委員会は情報検証者及び民間団体が教育機関や教育者向けの教材を作成し、「メディア・リテラシー週間」を制定することを助成する。 (5) 選挙の弾力性を保証するためのEU加盟国の支援 日増しに複雑になるサイバーの脅威、特にオンライン上のフェイクニュースやサイバー・アタックからEU加盟国を保護する。 (6) オンラインの自主的な個人特定システムの促進 トレーサビリティ及び情報提供者の特定を改善し、オンラインの交流や情報及び情報源の信用性を高める。 (7) 情報の質及び多様性の支援 欧州委員会は、多元的、多様性かつ持続可能なメディアの環境を保証するためにジャーナリズムの質を維持する支援を高めることを加盟国に伝えた。欧州委員会は2018年に、データを取り扱うニュース・メディアを通じたEU関連事案にかかる質が確保されたニュースの作成及び拡散のための提案のための会議を招集する予定である。 (8) 調和された戦略コミュニケーション方針 この方針は、欧州委員会によって作成がされ、オンラインのフェイクニュースに関する現在及び将来のイニシアチブと各加盟国のイニシアチブとが組み合わされる予定である。この方針は、ヨーロッパに関する偽情報に対峙しEU内外のフェイクニュースに抵抗するためになされる流布行為を含む。 次のステップ 欧州委員会は、近日中に複数の関係者で構成されるフォーラムを招集し、オンライン・プラットフォームや広告業、大手広告会社を含む関係者間の有効な協力のための枠組みを作成し、フェイクニュース対策への努力について協調して高めていくことを保証する。このフォーラムの最初の成果物は2018年7月までに公表され、同年10月までにその効果が測られる「フェイクニュースに対する行為規範」となる予定である。 2018年12月までに欧州委員会はそれまでの進展についてのレポートを発行する。当該レポートでは継続したモニタリングと予定された活動の評価を保証するための更なる対策が必要かどうかについても検証する。 大友美加 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年5月11日

少数株主の監査人選任申請権

スペイン資本会社法第265条第2項は、計算書類の監査が義務付けられていない会社について、その発行済株式の5%以上を有する少数株主は、会社の本店所在地を管轄する商業登記官に、事業年度終了日から3ヶ月を経過する前であればいつでも、当該事業年度に係る計算書類の監査をするための監査人の選任を要請することができると定めている。 この少数株主の監査人選任要請の権利と会社の自主的に選任した監査人とで競合した場合について2018年2月20日付け決定において登記・公証局が見解を示した。 本事案では、計算書類への監査が義務付けられていない会社が自主的に監査人を選任し、その登記がされていた。しかしながら、当該監査人は定年により退任することとなったため、結果として2014事業年度の計算書類の監査を行うことができなかった。 他方、会社の少数株主は2014事業年度の計算書類について監査人選任の申請を商業登記所に提出したが、既に会社によって監査人が選任されその登記がされており、少数株主の利益は保護されているとして、当該申請は却下された。 2017年11月6日、会社は2014事業年度計算書類の監査のため新たに監査人を選任したが、当該選任にかかる登記申請が商業登記所によって却下された。 商業登記所は、少数株主の権利を守るため、会社による監査人の選任が認められる要件として、(i) 会社による監査人の選任が少数株主の監査人選任申請よりも前であること、及び(ii) 監査人の登記がされ、又は少数株主に監査報告書の提出がされる等、少数株主の権利が保証されていることが必要として、会社による新たな監査人の選任は上記の(i)を満たさないため、少数株主の権利を害し、認められないと判断した。また、既に選任された監査人が監査を行うことができない場合には、新たな監査人を選任する管轄は商業登記官にあるとした。 これに対し会社から異議が申し立てられたため、登記・公証局へと判断が送られた。 登記・公証局は、少数株主の監査人選任申請の権利について、以下の見解を示した。 (i) 法は少数株主に対して商業登記官によって選任される監査人による計算書類の監査請求権を与えているが、この権利は絶対的なものではなく、それ自身の規定により、申請期間や行使の法的適格において、制限が課せられている。 (ii) 少数株主について保護法益が存在しない場合には、資本会社法第265条第2項の前提が損なわれる。 (iii) 資本会社法第265条第2項の目的は、会社から独立した専門家による会計監査を請求する権利を少数株主に与えることで、会社の組織内における少数株主の地位の強化を図ることにある。監査人が登記官によって選任されていようと、会社によって選任されていようと、会計監査登記がされた監査人が、監査規程やその他の監査活動を規定する規則に基づいて監査をするのであれば、少数株主の監査人選任請求権を認める法の目的を害することにはならない。 そして、本事案では会社による監査人の選任は少数株主の監査人選任申請がされるよりも前になされ、登記もされていることから、この時点以降、少数株主の利益は保護されているとした。また、選任されていた監査人が定年退職し、会社がその後任として新たな監査役を選任したとしても、上記結論に何ら変わりはないとした。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月6日

株主総会の招集後の議案変更−取締役会決議の要否-

資本会社法第166条によれば、株主総会の招集決定権は、清算中の会社を除き、法により会社の取締役に独占的に属する。 本稿で取り扱うテーマの事案は次のとおりである。 株式会社(Sociedad Anónima)で、取締役会の決議に基づき招集が決定された株主総会について、招集通知が官報に公示された後、少数株主から議案について補足要請があった場合、当該招集内容の変更に関して取締役会決議を行う必要があるのかが問題となった。 この点につき、登記・公証局(DGRN)の2018年1月31日付決定は、株式会社が株主総会を招集した場合、資本会社法第172条のいうところの招集内容の変更について、資本会社法は、取締役会の事前の決議を求めているかどうかの検証が不可欠であるとし、次のとおり検証している。 – 資本会社法第166条により、株主総会の招集権限は、法によって独占的に取締役に与えられている。 – 株主総会の招集権、議案の作成及び議案の提出権は委譲することができない。 – 法はこの権限を共同体としての取締役に与えており、各人に与えているのではない、したがい、取締役会が経営組織である会社においては、取締役会の決議という形で招集を決定しなければならない。 – 株主総会決議は、法の定める定足数を充たしていることのみならず、議案を含む事前の招集手続きが合法に行われていることを条件として有効に成立する。 – 株主総会招集権限が取締役会にあるということは、もし取締役会が開催されない場合、その意思は取締役会議長や取締役のうちの一人によって補われることはできず、法的手続きによる株主総会の招集を行わなければならない。そうでない場合、招集無効として、当該招集に基づいて開催された株主総会で行われた決議も無効となる。 – この取締役会の独占的な株主総会招集権は、資本会社法第172条に定める株主による招集内容の補足要請がある場合にまで拡大される。2013年10月1日付登記・公証局の決定は類似の案件について、以下のように述べている。「経営組織は法により株主総会招集権を独占的に与えられている。これは、5%以上の株式を保有する少数株主の要請がある場合にも同様である。」したがって、本件においても、取締役会の一員の資格で単独で招集を行う余地はなく、常に取締役会として定款の定める定足数に従った決議により招集を行わなければならない。 結論として、株主総会の招集手続きに不備が見受けられる場合または株主総会決意が無効であるような場合には、登記官は当該会社の決議内容の登記を却下せざるを得ないと示した。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2018年2月23日  

商号の同一性の判断基準

スペインにおいて商事会社を設立する際にまずしなければならないことは、新設の会社のための商号が既存の会社の商号と同じものでないことの証明書の申請である。 スペイン資本会社法及び商業登記規則は、会社の商号は、既に登記がされている既存の会社の商号と同一であってはならないと定めている。 2017年11月27日付登記・公証局決定が出された本件事案において、「Tu Gestoría en Línea」という商号の申請に際し、既に「Gestión de Líneas」という商号の会社が存在し、これらの商号は相当程度一致することから、登記官が当該商号申請についての使用を認めなかった。これに対し、申請者は、申請した商号を使用する予定の会社は既存の会社とその目的を異にし、発音も異なることを主張し、異議を申し立てた。 登記・公証局(DGRN)は本件に関し、商号が唯一かつ新しいものであり、錯誤を生じさせない限り、会社は商号を自由に選択することができることを確認した。そして、商号の同一性といった場合には、法がそれを禁止する目的、すなわち、商事会社間の商号の混乱を避けるという目的に基づいて解釈するべきであり、したがって、完全一致の場合に限るのではなく、商号に用いられる言葉の目的、意味、概念、発音の類似といった商号間の混乱を生じさせるような諸要素を考慮し、「ほぼ一致」又は「相当程度一致」場合には、商号の同一性を認めるべきであると述べた。 ただし、商号が完全に一致又は相当程度一致することを禁止するのであって、単に類似性がある商号を禁止するものではないと説明した。 上述を鑑み、登記・公証局は、商号のテキストに合致が存在しない場合には、登記済み商号に加えられた又は除かれた、商号間で異なる記号又は要素によって、商号に混乱を生じさせ得る類似性の感覚を破壊しないような状態が認められることを同一性の判断基準とすることが合理的であると示した。 本件においては、申請された商号と既存商号との間に、異なる商号であるというに足りる十分な要素(文法的な使用法の違いや発音の違い等)が存在することが認められ、結果として商号申請者の異議が認められた。 Mika Otomo より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2018年1月19日  

個人情報保護法案

11月10日、スペイン政府は閣議において個人情報保護にかかる組織法案を下院に提出することを承認した。この法案は、2016年4月27日付欧州議会及び欧州理事会規則第679/2016号の規定をスペイン法制に適用するためのものである。当該規則は、2018年5月25日に施行予定である。2017年3月24日付当事務所の記事においても当該規則について述べている。 当該欧州規則はその主たる目的の一つとして、欧州各国の規則の間に存在する取り扱いの齟齬を取り除くこととしている。また、情報技術の急速な発展及び情報化・グローバリゼーション社会の急速な発展に伴い生じている現象に対応する 個人情報保護規定の適用を目的としている。 スペインにおいては、個人情報の保護は憲法で守られている基本的人権の一つであることから、本法案は、本人による同意の制度及び個人情報の取扱いや手続きの面でいくつかの新しい規定を導入している。 未成年及び故人の情報 他の欧州諸国の規定に合わせる形で、個人情報取り扱いの同意が必要となる年齢を13歳まで引き下げる。 故人の個人情報の取り扱いについては、その相続人の申請に従う。黙示の同意という形式は排除され、影響を受ける側による明白かつ同意に肯定的な行為がなされなければならない。また、秘密保持義務についての表明もされなければならない。 直接的に得た個人情報が不正確であった場合、個人情報取扱主任者が当該情報の修正又は削除のために合理的な方法をとったのであれば、当該個人情報取扱責任者は責任を免れる。 個人情報取扱いに関連する問題は、影響を受ける者の情報取り扱いに関する情報を受ける権利に関して透明性の原則を採用しており、アクセス権、修正要求権、削除要請権、取り扱い制限権、データ・ポータビリティの権利及び異議申立て権について明確に考慮に入れられている。 差別的状況の回避 差別的な状況が生じることを回避するため、イデオロギー、支持組合、宗教、性的指向、人種または民族、及び信条といった特別な保護に値する情報の保持が禁じられることは変わらない。これらのカテゴリーにおいては、取り扱いを行うための条件として関係者の同意のみでは十分とされない。 また、新しい個人情報保護法は、立法者が、個人情報取扱主任者が定められた要件を満たすという法的利益の優先や信用情報システムを推定したと見られる規定を採用している。 同時に、新個人情報保護法は、監視カメラや広告排除システム(ロビンソン・リスト。広告統計機能)に関連した、公共の利益の存在が考慮される状況にかかる規定やプライベート・セクターでの内部告発制度にかかる規定を設けている。 その他の新しい点 その他の新しい点のうち、特筆すべきは個人情報保護責任者の強化だろう。個人情報保護責任者は個人または法人であり、指名された者の情報を管轄当局であるスペイン個人情報保護局(AEPD)に届け出なければならない。 手続きに関しては、パブリック・セクター、プライベート・セクターともに自己制御メカニズムの存在が促進され、個人情報の取扱いから生じる潜在的な責任追及に備え、それらが不履行の隠蔽のために消去されることを予防し、個人情報が裁判所、検察その他AEPDのような管轄機関によって利用可能な状態であることを保証するようなブロック義務を導入する。 国際間の個人情報のやり取り 欧州規則は、EU域内市場における活動の結果である国境をまたいだ個人情報の流通の増加によって生じている状況について、急速な情報技術の発展とグローバリゼーションにより、個人情報が情報取扱会社にとって重要なリソースとなっていることを考慮した対応をするものである。 この状況に面し、個人情報が複製され、よりアクセスしやすく、より容易に処理されやすくなった一方、その使用や使用目的の管理がより難しくなったことによるリスクが増加した。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年11月17日

会社の本店移転の容易化― 2017年10月6日勅令法第15号

2017年10月7日付の官報にて、2017年10月6日勅令法第15号「企業の国内における移転に関する緊急措置」(以下「勅令法」)が公布された。この勅令法により、改正資本会社法第285条第2項の修正がされる。 改正資本会社法第285条第2項は、会社が国内で本店移転を行う場合、会社の定款に異なる規定が設けられていない場合に限り、その決定権限は経営組織(取締役や取締役会)にあると規定している。 この条文の解釈において、二つの解釈の見解が存在していた。そのうちの一つによれば、経営組織が本店移転の権限を有することについて「異なる定款の規定」とは、株主総会が本店移転について決める権限を有していると定款に規定があることである、と解釈された。他方の見解によれば、会社の定款で単に補足規定を複製さえすれば、国内の本店移転の決定権限が経営組織に属することに関する株主のその時々の自主性が示されているといえる、と解釈された。この解釈に従えば、「異なる定款の規定」は、改正資本会社法の施行後に、改めて経営組織に本店移転決定権限を与えない旨の明確な意思表表示をする定款変更がされた場合にのみ、存在することになる。 今般の勅令法は、(i) 改正資本会社法第285条第2項は、原則として会社が国内で行う本店移転の決定権限は経営組織に属するとしていること、そして、(ii) もし株主が会社の本店移転の決定権限は株主総会が持つべきだと考える場合には、経営組織に権限が属することを明白に否定する定款変更を行わなければならないことを目的としている。 本勅令法が施行される結果、改正資本会社法第285条第2項の規定は以下のとおり修正される。 「前項の例外として、経営組織は国内で行う本店移転の決定権限を有するものとする。ただし、定款にそれと異なる規定がある場合を除く。経営組織が本店移転の決定権限を有さないことを定款で明確に定めている場合のみ、定款にそれと異なる規定がある場合と解される。」 さらに、本勅令法は経過規定として、以下の定めを置いている。 国内での本店移転にかかる決定権限が経営組織に属さない旨を明確に宣言した定款変更が、本勅令法の施行後に承認された場合のみ、定款に異なる規定があるものとみなされる。 つまり、現行の定款で本店移転の権限は株主総会に属する旨の規定を置いている会社であったとしても、当該定款の規定が本勅令法の施行後に定款に盛り込まれたのでない限り、当該定款の規定は国内における本店移転については効力を有さず、したがって、経営組織が決定権限を有することになる。 本勅令法は官報での公布日の翌日、10月7日から施行された。 Mika Otomo より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年10月20日

様式232: 関連会社との取引及びタックス・ヘイブンに関する状況の報告書

2017年8月30日付の官報にて、関連会社との取引及びタックス・ヘイブンと評価される国や地域との状況にかかる報告書となる様式232を承認する命令HFP/816/2017号が公布された。 2015年1月以降に始まった事業年度について、大々的な法人税法の改正がされ、関連会社との取引に関しては、新しい文書の作成が義務付けられた。しかしながら、本命令が目的とするのは報告義務であり、上記文書作成義務とは異なるものである。 本報告義務の根拠となる条文は、法人税法規則第13.4条である。従来は、この義務は法人税申告時の様式200内に含まれる表への記載によって履行されてきた。しかし、2016年1月以降に始まる税年度からは、当該義務は法人税申告用様式から新しい専用様式へと移される。この変更の理由は以下の2つである。 内容が単なる報告にとどまる表については、関係を有する者又は会社との取引を報告する義務がある会社にのみ提出が求められる報告書に含めるのが適切であること。 法人税申告様式から報告用の表を削除することは法人税申告提出に間接的に伴う税務負担を軽減することにつながること。 上記と同様の理由から、タックス・ヘイブンと評価される国や地域に関連する取引及びその状況に関する報告も、これまでは様式200に含まれていたが、新たな様式232へと移される。 様式のフォーマット 様式232はデジタルフォーマットでのみ利用可能である。 報告義務者 1)様式232及び「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載 以下の者が義務付けられる。 同一関係人又は同一関係会社と、一税年度内の総取引金額が、マーケットの価値に従い250,000ユーロを超える場合 下記a)又はb)の取引を関係人又は関係会社と行う法人税納税者及び恒久的施設を通じて活動を行う非居住者所得税の納税者 a) 同一関係人又は同一関係会社と、一税年度内の総取引金額が、マーケットの価値に従い250,000ユーロを超える場合 b) 法人法第3条及び法人税規則第16.5条の定める特定の取引が行われる場合には、当該取引個別の取引高が一税年度で100,000ユーロを超える場合。 しかしながら、以下の取引については「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載は義務付けられない。 税務上連結している同一グループに属する会社間で行われた取引 経済的利益のグループ化により税務上連結している同一グループに属するメンバー又は会社と行われた取引 有価証券の売却又は取得にかかる公的オファーの範囲で行われた取引 なお、同一の関係人又は同一の関係会社との総取引金額のいかんによらず、同一の種類かつ同一の評価方法を用いている取引で、それらの総取引額が当該税務年度における当該会社の取引高の50%以上である場合には、常に様式232及び「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載が義務付けられる。 2)様式232及び特定の無形資産から生じた収入の減額適用がされる場合の「関係人又は関係会社との取引にかかる報告」欄への記載 納税者が関係者又は関係会社へ特定の無形資産の譲渡を行った結果としての収入を得たことを理由に当該減額の適用を申請した場合にのみ、記載が義務付けられる。 3)様式232及び「タックス・ヘイブンと評価される国又は地域に関連した取引及びその状況」欄への記載 納税者がタックス・ヘイブンと評価される国又は地域において取引を行った場合又は有価証券を保有した場合には、その金額に関係なく報告が義務付けられる。   提出期限 様式232の提出は、提供する情報が含まれる税務年度終了後10ヶ月以内に提出しなければならない。 2016年内に始まり2016年12月31日以前に終了した税務年度については、提供する情報が含まれる税務年度終了後に訪れる11月1日から11月30日までを提出期間とする。 大友美加 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年9月15日

会社の吸収合併と公告

会社が吸収合併を行う際、官報及び会社所在地で発行されている日刊紙に、吸収合併が株主総会によって承認された旨の公告を、吸収会社・消滅会社とも掲載しなければならない(2009年4月3日法第3号会社再編法第43条第1項)。なお、すべての株主及び債権者に個別通知を行う場合、公告を省略することが認められている(同法同条第2項)。 この公告において株主総会による合併承認の日の記載に誤りがあった場合、当該記載の誤りは、単なる記載ミスとして処理され得るものなのか、それとも、株主及び債権者の権利保護の観点から、重要な誤りとみなされるものなのかが争われるケースがビスカヤ県(スペイン、バスク地方)の商業登記所で発生し、2017年6月19日付で公証・登記局は以下のような判断を示した。 当該事案における吸収合併は、100%親子会社間の合併であり、(親会社が存続会社、子会社が消滅会社)親会社における株主総会による合併承認は、実際には2016年7月23日に開催された株主総会でなされた。当該吸収合併の公正証書が商業登記所に提出された日は2016年5月30日だった。 しかしながら、官報及び日刊紙(エルムンド紙)に掲載された公告には、吸収合併の株主総会による承認日が2016年2月8日と表示されていた。 登記官は、株主総会による合併承認の日付が実際は2016年2月8日ではなく2016年7月23日であり、当該吸収合併が2016年5月30日まで登記所に公示されなかったと、公告された日付に相違があることを理由に、本件合併の登記申請を却下した。 これに対して会社側は、日付の記載の相違は単なるミスであり、株主や債権者の権利を制限したり、阻害したりするようなものではないと主張し、当該却下決定に異議を申し立てた。 2017年6月19日付公証・登記局の決定では、公告内の日付の記載が間違っているという事実が、株主や債権者の権利の制限や妨害といった観点からどの程度の重要性をもち、単なる記載ミスとして処理され得るものかについての判断が示された。本決定は、当該誤記が単なる表記ミスとなるかどうかを検討するにあたって、吸収合併において債権者に与えられている異議を述べる権利(derecho de oposición、会社再編法第44条第2項)及び情報を請求する権利(derecho de información)の保護を考慮しなければならないとした。前提として、これらの権利が適切に保護されていない場合には明白な法令違反であることを確認し、異議申述権と情報請求権が相関関係にあり、密接に絡みあっていることから、公告又は債権者宛の異議申述権に関する個別通知が正しく行われていることが、債権者の権利保護のための必要条件であると述べた。 また、本決定は、公告の内容を定める会社再編法第43条は、公告又は債権者への個別通知の内容には吸収合併合意の全文を記載することを求めていないため、もし本件の公告において吸収合併承認株主総会の日が記載されていなければ、本件吸収合併の登記はなんの問題もなくされていたであろうと示した。 しかしながら本件においては、誤った日付が吸収合併承認株主総会の日として公告されており、実際にはその日に株主総会による承認はされていない。このことは債権者の異議申述権の行使の可能性に関して債権者に錯誤を生じさせる可能性がある。なぜなら、本件吸収合併が登記所に届出されたのは2016年5月30日であり、当該日よりも前に発生した債権を有する債権者は、それが公告に記載された合併承認株主総会の日(2016年2月8日)よりも後に生じたものであったとしても、異議申述権を有する。しかし、上記公告で誤った日付が掲載されたことで、債権者の異議申述権を妨げる結果を招きかねないことから、本件の日付の記載ミスは単なるミスとして処理することはできないとの見解を示した。 当事者にとっては単なる記載ミスであったとしても、債権者の権利保護といった観点に立つと大きな影響を及ぼす可能性がある。合併承認株主総会の日付の変更が生じる可能性があるのであれば、公告に承認株主総会の日付をあえて記載する必要はないことが、本決定から理解できる。 Mika Otomo   より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年8月4日

日本・スペイン間のワーキング・ホリデー・ビザに関する協定の署名

去る4月5日、日本とスペインとの間でのワーキング・ホリデー・ビザに関する協定に署名がされた。本協定は2017年5月11日付官報でも公示がされた。 現時点においてその効力発生日は具体的になっていないが、当該協定によれば、協定の効力発生のために必要な国内手続きが完了し次第、スペイン・日本の両政府は相手国の政府に対して通報し、双方の通報が受領された日のうち、いずれか遅い方の日から30日目に、当該協定は効力を生ずるとされる。   ワーキング・ホリデー・ビザ申請の要件 協定第1条によれば、ワーキング・ホリデー・ビザの申請のための要件は主として以下の内容である。 主として休暇を過ごすために相手国に入国する意図を有していること(就労を主たる目的としない。)。 ワーキング・ホリデー・ビザ申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること。 被扶養者を同伴しないこと(被扶養者も一緒に渡航する場合には個別にワーキング・ホリデー・ビザまたはその他のビザを取得しなければならない。)。 有効なパスポート及び帰国のための航空券又はそれを購入するための十分な資金を所持すること。 相手国における滞在の当初の期間に生計を維持するための相当な資金を所持すること。 滞在終了時に相手国を出国する意図を有し、かつ、滞在中に在留資格を変更しないこと。 以前にワーキング・ホリデー・ビザの発給を相手国から受けていないこと。 健康であることが医療診断書により確認されること。 犯罪経歴を有しないことを申告すること 相手国に滞在する間に、相手国において効力を有する法令を遵守する意図を有すること 上記要件のうち、(v)に定める「当初期間の生計を維持するための相当な資金」について、今後、各国政府内で物価や消費者物価指数、賃料等を考慮し、その基準となる具体的な金額が定められるものと考える。6月20日に在スペイン日本国大使館は、具体的な要件を含むワーキング・ホリデー・ビザに関する情報を公表した。当該情報によれば、スペイン人の若者が日本向けワーキング・ホリデー・ビザを申請するにあたって、上記要件(iv)に関しては、往復航空券を有していない場合には 2,000ユーロ、日本行きの航空券のみを有している場合にはスペインへの帰国用航空券相当額として1,000ユーロを所持していることが必要とされた。また、(v)に関しては、日本の初期滞在費用として十分と認められる額は2,000ユーロと定められた。   滞在可能期間 ワーキング・ホリデー・ビザによって滞在できる期間は入国した日から1年間であり、その間、旅行資金を補うために必要な限りにおいて、相手国の法令に従って就労することが認められる。   発給数 協定によれば、ワーキング・ホリデー・ビザの発給件数は毎年定められるとされており、発給件数には上限が設けられることとなるものと思われる。なお、上述の日本大使館の情報によれば、2017年はスペイン人に対するワーキング・ホリデー・ビザの発給数は250となるとのことである。 Mika Otomo より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年6月23日