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取締役の会社債務に対する連帯責任

2018年4月11日付スペイン最高裁判所判決は、会社の債務に対する取締役の連帯責任に関して、それまでの原則を支持する判断を示した。具体的には、会社が融資を受けた時に債権者が本会社の債務不履行のリスクを認識していたという状況下における取締役の責任に関しての判断である。 本件は、一見通常通りに経営されているように見受けられていたが、実は法定解散事由に該当する状態にあったある会社に対する判決である。そのような状態であったにもかかわらず、当該会社の二人の取締役は、会社解散を行わず、また、法の定める資産のバランスを回復させるための措置もとらずにいた。加えて取締役は、おそらくは会社の純資産が実際にはネガティブであることを隠匿するために、商業登記所に毎年の会計書類を提出する義務を数年間怠っていた。 本件の債権者は、債務者である会社に対し、二年の間支払いが滞りがちでありながら、材料を供給し続けた。上記取引関係の過程で、債権者によって承諾されなかったものの、債務者が債権者に対し債務整理合意のための事前調整を行う意思を表示したことは、言及するに値する。 最終的に債権者は、会社及びその取締役に対して、債務の支払いを求める訴訟を起こした。原告側は、取締役の連帯責任を追及する事実要因として、解散事由の存在を認識してから2か月以内に株主総会を開催する義務を怠ったことを挙げた。法的根拠としては、旧有限会社法第105条第5項(現資本会社法第367条)解散事由を認識してから2か月以内に株主総会を開催し、解散の決議を採決しなかった場合、取締役が債務に対し連帯責任を負う、という規定を示した。 第一審判決は債権者の論拠を認め、会社及び二人の取締役たちの会社に対する責任に基づき、その債務返済を求めた。法的根拠としては、有限会社法第105条第5項を引用した。債務会社の取締役の一人は本判決を不服として、これを控訴した。 サラゴサ県の上級裁判所は控訴人の主張を支持し、取締役を会社債務の連帯責任から解放した。本判決の根拠は、債権者が債務者の経済状況を認識していたにもかかわらず、取締役の連帯保証を求めなかったこと、債権者が債務不履行のリスクを予見できたこと、という事実にあるとした。加えて、債権者の取締役と、債務会社の取締役の一人はいとこ・友人関係にあることを指摘した。控訴審判決は、その見解の根拠として2011年11月23日付および2013年4月14日付の二つの最高裁判所判決を引用した。 控訴審判決を不服として、債権者はこれを最高裁判所に上告した。 最高裁判所は、その判決の中で以下に挙げる事実関係を示した。 1)本件の債務は解散事由が生じる以前に発生したものであることは証明されている。 2)状況を把握しながら、取締役達は会社の解散を回避するための措置を取らなかったことは証明されている。 3)債権者が本会社の危機的状況を把握していたことは証明されている。 上記は全て事実であり、特に「債権者が債務者の経済状況を把握していた」という事実要素は一致していた。しかしながら最高裁判所は、債権者が債務者の経済的リスクを把握していたにもかかわらず債務者とのビジネス取引を続けていた場合は、債務会社の取締役は本債務の連帯責任を問われないとし、債権者が破産状態にあったという事実を単に把握していたのみでは、取締役の責任を免除する理由として不十分であるとし、第二審の主張を退けた。 最高裁は、債務者である会社が破産、もしくは財政が悪化している状態に加えて、債権者が不法行為を行った場合は、債務会社の取締役を免責にする可能性を示した2013年12月4日付の最高裁判所判決に言及し、これらのすべての事実関係は、取締役を免責にするために必要な条件であるが、それだけでは十分ではなく、債権者が、債務会社の債務不履行のリスクを認識していていたことを証明でき、債務会社の内実を知った上で管理できるような別の条件も考慮する必要がある(例えば、債権者が債務会社の支配的、もしくは関連のある株主である場合のように)とし、本件に適用する判例の要件の定義を明確にすることで結論づけた。 最高裁判所は、取締役の会社に対する責任の原則の例外の解釈において、一般的な規則を変性させるような例外規定を自動的に適用することを避け、分析中のケースを取り巻く個別の事実関係を照らし合わせて判断すべきという立場をとっている。これは、商業取引において優先すべき法的安全性に影響を及ぼす可能性がある。 Eduardo Vilá 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月27日

企業秘密に関する法律

去る2018年2月8日、法務省は2018年の年次規制計画に含まれる予定である、企業秘密に関する法の法案を提出した。当該法案は、未公開の技術・ビジネス情報の保護に関する2016年6月8日の欧州議会および理事会の指令第2016/943号を、スペイン国内法に適用したものである。 本法案制定の理由によれば、企業の競争力は、技術革新の適用・実施、および企業秘密の安全な保持に基づいている。後者の保護が確かであることは、企業の技術革新の価値を高め、不正流用の危険を軽減することに貢献する。この状況において、企業の競争力を管理し、企業秘密の違法な取得、使用、開示から確実に保護することは、国の競争力を高めるための重要課題である、としている。 本法案第1条によると、本法律の目的は企業秘密の保護とされ、企業秘密には「技術・産業・商業・組織・財務上、会社に関連するいかなる情報」と言ったような広範な定義がされている。企業秘密に該当するためには、以下の要件を満たしていなければならない。 秘匿であること。つまり、この種の情報を扱う環境において一般的に知らしめられていないこと。あるいは簡単にはアクセスできないこと。 秘匿扱いすることによって、企業の価値が高まること。 情報の保有者が、秘匿にするための措置を設けていること 本法案第2条は、前第1条項を制限するものとして、合法とみなされる情報の取得方法を以下のように規定している。 発見又は独立して創造した場合 一般的にアクセス、もしくは合法的な所有が可能な製品・対象物を元に、観察、研究、分析、実験して得た場合 従業員及び代表者より情報の使用権利を取得している場合 合法的な事業活動により得た場合 同様に、以下に挙げるようなケースの場合は、企業秘密守秘義務違反は民事訴訟の対象にならないとされる。 マスコミの報道及び多元主義の自由への尊重も含めた表現の自由の権利行使を実行する場合 公衆の一般的利益保護の観点で、何らかの違反、不正、非合法的行為を見つけた場合 法律で合法であると理解されている利益保護を目的とする場合 他方、同法律案第3条は、不法的行為として以下を挙げている。 職業上守秘義務があるいかなる媒体の書類、対象物、材料、物質の許可なき取得。状況にもよるが、商慣習に反するとみなされるいかなるその他の行為。同様に、人が不法に使用していたと知りながらも、直接あるいは間接的に職業上守秘義務がある情報を入手することをも含む。 不法に取得、あるいは、守秘義務違反によって取得した企業秘密を使用、公開した場合。 法に違反している製品の製造、供給あるいは商品化、もしくは本商品を輸入、輸出、または仕入れること。 第5条は、企業秘密の守秘義務違反に対して取ることができる民事の行為について規定しており、要約すると、以下のものが挙げられている。企業秘密守秘義務違反の宣言、違反行為の停止命令、商品の押収、不法に取得された企業秘密の除去、違反商品の所有権の帰属(この場合、損害賠償金に上乗せされる)、故意又は過失が存在した場合の損害賠償、判決の全部または一部の公表または頒布。 第7条は、上記民事訴訟請求の時効を、行為が行われた時点から3年としている。第9条は、当事者適格について定めている。当事者適格を有する者は以下の者である。 企業秘密の所有者 情報を開発・利用をする独占的もしくは、非独占的なライセンスを取得していること明示的に証明できる者。 最後に、第16条から第20条は、第5条の措置に基づき、損害賠償に対応するための十分な安全性を確保しなければならない将来的に起こりうる予防措置を規定している。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月20日

マネーロンダリングに関する新規制

スペイン法務省は、マネーロンダリングのための金融システム利用の防止に関連した2015年5月20日付EU指令第849号第IVを国内法令化するための一連の措置をとることを提案した。又、同じく指令第Vに関しても、正式な法案が公示されてはいないものの、対策が取られる。 指令第IVについては2016年6月26日までに国内法令化されていなければならなかったことを、注記しておく。 以下の2点は、指令第IVが制定する基本的な義務である。 会社の実質的所有者に関するデータが各加盟国の中央登記所に保管されることの必要性 2.会社の設立や会社の書記役又は経営機能を担うサービスの提供者について、ライセンス制又は登録制とする必要性 データベースに関しては、会社の実質的所有者の情報について公証人が取り扱う統一データベースに始まり、公証人会は、動産及びサービスの市場において介入できる会社の実質的所有者が誰なのかを把握するために、より効力が強く完全な新しいデータベースを構築した。しかし、これは法的文書によってなされる会社持分譲渡や株式会社の株式譲渡を考慮していないため、網羅的なものとは言えない。 2010年法第10号の資金洗浄防止法の改正が行われる。これにより、商業登記所が商事会社へのサービスプロバイダの登録を取り扱うこととなる。これらのプロバイダには専門職(弁護士等)同様、個人・法人のいずれも含まれなければならない。プロバイダは、商業登記所が処理できるよう、特別登記への登記を申請しなければならない。 第3に、2018年から、そして2017年会計年度の開始から、計算書類に加えて、会社の実質的所有者、つまり、会社の資本の25%を保有する個人又は会社の経営を直接又は間接的に管理している個人に関する文書の提出が義務付けられる。会社の経営の管理が、中間に法人が存在する等、間接的である場合、当該法人についても記載しなければならない。取得された情報は、個人情報保護の条項の効力を受けるものの、申請すれば誰でも閲覧可能となる。 最後に、マネーロンダリング防止にかかるEU指令第Vの国内法令化については、商業登記所への申請をすれば誰でも閲覧ができる会社の実質的所有者に関するデータベースへの情報アクセスが容易になる。加えて、「実質的に所有」しているとみなされる個人の株式保有率が25%から10%へと下げられる。上記を補うものとして、情報交換条約に加盟しているEU加盟国間で開示されたそれらの情報へのアクセスを可能にする目的で、欧州各国の商業登記所間で相互に情報交換が行われる。これにより、加盟国間レベルで事業を行う又は事業を行おうとする会社や専門職の者に対してより大きな安全性と保障を提供し、マーケットにおける透明性を高めることを目指す。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年3月16日

仮想通貨と法規制の展望

政府および法令が対応し得るスピードよりも速く商業的発展や社会的変化が起こることは、しばしば見受けられる現象である。仮想通貨の場合2009年にビットコインが市場に登場し、ユーザによって迅速に受け入れられた結果として数百の仮想通貨が追随してから数年が経過した。同じような形態ではないにしても、今日、約1500の仮想通貨が世界中で使用されている(公式に存在する法定通貨の約7倍の数となる)が、政府の対応は今のところ無いに等しいか、あったとしても非常にゆっくりしたものである。 仮想通貨が非中央集権的な創造と貿易の産物であること、及び仮想通貨の発行に関する責任者が存在しないこと、そして価値の管理の面では、常に信用及びシステムに永続的に接続している個人に基づく状況であることを考慮すると、仮想通貨は法規制とは相容れないと結論付けることができる。基本的に、政府は通常の法定通貨を政府及び従来の権力によって効率的に管理・規制することができるが、仮想通貨の場合、前者とはかけ離れた、企業群と個人の間で共有される分散型元帳技術と呼ばれるデータベースによって効力を付与される。銀行及び規制当局は、仮想通貨取引に帰来する法定通貨の送金は常に停止することができるが、仮に仮想通貨が法定通貨に換金されていない場合は同じようにはいかない。 規制欠如のもう一つの理由は、政府が仮想通貨の規制をすることは法定通貨の一般的な信用を損ねることになり、結果的にシステムの崩壊に繋がる危険があると考える傾向にあるためである。第二に、もしかしたら政府は、この仮想通貨という現象への対処方法も、実際に法規制をする意味があるかどうかさえも分かっていないのではないかという推測も成り立つ。 実際のところ、とりわけ10代や若者を中心に仮想通貨をただの支払い方法としてだけではなく、投資の対象として購入する人は、ますます増加の傾向にある。最近の例では、ある若者はビットコインの購入理由として、自身の貯金では大きな投資は難しいが、仮想通貨は気軽に購入可能である上、支払いに使用することもでき、短期間での価値の増加も望めるためと述べた。おそらくこの若者は一般的に言えばその逆に、この手の投資は短時間で急落する可能性もあるという意識が欠落していたが、事実としては今のところ、この若者は正しいことを示している。 しかしながら、仮想通貨を「金銭」としてみなすべきか、あるいは無形のコモディティや資産とみなすべきか、という問いが存在する。仮想通貨は単なる投機の対象物、かつ、非合法な経済活動の道具となりうるものだという主張は、金及びダイヤモンドのような、他の資産価値が信用に基づくものであるものもまた、非合法的サービスや武器の購入の報酬手段として使用される現実と比較されるべきである。とすると、なぜ他の通常の資産への投資には仮想通貨より多くの貸付が付与されるのだろうかという、疑問も生ずる。 市場のアプローチは、通貨として取り扱うよりも、資産として捉える方向性にある。2017年12月、先物取引所および投資信託取引所において仮想通貨の取引が開始され、その高い価格変動性が素早い収益を促し、顕著な成功を収めている。最近のニュースによると、2017年度の一番収益の高かったファンドの収益の87%が、仮想通貨のエクスポージャーによるものだった。 市場は仮想通貨を、一般的かつ公式に認識されている支払い手段としてではなく、資産として扱っている。仮想通貨は実際には、それだけではないにしても、今の所通常の通貨として機能しているというよりは、物々交換経済の支払い手段とされているのが現状である。仮想通貨が支払い方法の一つとして使用されているのは、特定の商品もしくはサービスの供与の代わりに、同等の価値を有するとみなされる他の資産を売主が受け取るといった物々交換経済における同様の基盤のように支払い者と受領者の間の相互信用に支えられているためである。つまり、仮想通貨の価値の認識とその将来の価値への信用である。しかし、仮想通貨を「金銭」と呼ぶのは難しい。なぜなら、この概念は法概念を具体化しており、交換可能な単位として認められるためには名目上の力によって一定の法の承認を満たさなければならない。仮想通貨は同じ骨格を共有している。それらは分散された「金銭」だが、果たして正式に政府や中央銀行によって保証される従来型の金銭に等しい法定通貨と考えるべきだろうか? 少なくとも現状においては、そうすべきではないだろう。ほとんどの国が仮想通貨の法的性質についての考えをまとめられていない一方で、インドは仮想通貨を法定通貨と考えることを否定した。その代わり、それらを仮装「資産」と呼ぶことで、不法行為への資金提供のための使用を厳重に取り締まる対策を公表した。 スペインの財務大臣は2015年、仮想通貨は支払い手段として機能し、その特殊な性質から「その他所得」と考えるべきであり、したがって、その送信は付加価値税の課税対象となるが免税がされる、との結論を示した。 最近では、通貨当局は、紙幣の発行と並行して、デジタル通貨創設に対して門戸を開くべきとの提案がされている。つまり、中央銀行がデジタル通貨を公共に対して発行するということであり、個人又は法人はクラウドに設置される仮想通貨口座の所有者になるということであり、当該口座を取り扱うためのプライベートキーは中央銀行によって補完されるということである。この方法によれば、中央銀行は仮想通貨によって行われる取引に介入することができるようになり、同時に、預金保有者に対して合法的に責任可能となる。しかし、まずは、そのようなスキームを設ける利益及びそのようなコンセプトが一般に受け入れられるかについて、仮想通貨への投資は匿名で行われることを念頭に、自問すべきである。次に、もし仮想通貨がクラッシュしたら、政府は、多額の利益を求めて非常に乱高下することに賭けて仮想通貨に投資をした人を救済するべきだろうか。政府は先物に多額の投資をした者を助けるだろうか。もし答えがNOであるなら、なぜ仮想通貨については政府が救済すべきなのだろうか。 ロシアや中国といった一部の国が独自の仮想通貨を開発している一方、日本やベラルーシといった国では、仮想通貨を禁じたり妨げたりする代わりに、仮想通貨交換業を規制する法令を整備した。さらには、既に「仮装通貨国家」となる考えを述べているスイスのように、仮想通貨の世界資本となるようなアプローチをする政府もある。税の透明性に欠けていることで有名な他の国々や地域が短期間でそのようにならなければ、それは驚くべきことだろう。 銀行はどうだろう。銀行は、ブロックチェーン技術が金融取引の状況を変えていることを知ってはいるが、そのアプローチは、規制の枠組みがないことから、非常に慎重である。例えば、もし多くの銀行によってブロックチェーンが使用されたら、ブロックチェーンはSWIFT支払いに取って代わる結果となるだろう。つまり、仮想通貨の価値はネットワークへのシームレスコネクションにリンクしており、もしこれが失敗すると、彼らの現在の価値には大きな疑問符がつけられることとなるだろう。激しい乱高下は銀行にとって仮想通貨マーケットから当面は距離を置く、さらなる理由となる。しかし、銀行はその根底にある技術に深い興味を抱いているように思われる。リップル(Ripple)のケースでは、ブロックチェーン技術から生じるビジネスチャンスを逃したくないため、100以上の銀行及び金融機関が彼らの商品の一つを採用した。 仮想通貨は安全といえるだろうか。先週、この件についてマーケットと投資家に関するショッキングなニュースが飛び込んできた。1月26日のほんの数時間のうちに、500百万アメリカドル以上の価値のあるXEMコインの仮想通貨ユニットが、日本企業のコインチェックから盗まれた。ハッカーが同会社のセキュリティを破り、インターネットに接続されたコンピューターにあったホットウォレット内のバウンティを見つけたことにより生じた盗難だった。この盗難は約260,000人の投資家に影響を及ぼし、そのうちのほとんどが日本の投資家であったが、被害に遭った投資家に対して同会社は、420百万USドルを財源の上限とした部分補償を提案した。     2017年の4月、日本は世界で初めて仮想通貨交換業に関する法令を施行したことに言及するのは適切だろう。当該法令は、信頼でき、かつ、安全な仮想通貨取引のための確固たる基礎を構築することを目的として、財務及び技術の両面において将来の交換業者に非常に多くの要件を制定した。マーケットのプレイヤーとして参加するにあたっての規制を設ける方法での行政によるフィルターを持つことは、仮想通貨システムに対する公共の信用性を与える効果があった。日本の金融庁は2017年9月下旬に最初の仮想通貨交換業者の登録を12の業者に出した(今日における登録業者数は16)。以降、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格の爆発的な上昇を私たちは目撃した。これは、一部には仮想通貨を用いた取引を行う日本の小数投資家が多く参入したことによると言える。コインチェックは金融庁の登録を受けずに仮想通貨取引所の業務を行なっていたが、法の施行前から当該業務を行なっていたため、みなし業者として、業務の継続が認められていたためである。XEMコインの購入を決めた投資家のほとんどはミレニアル世代で、経済力に限りがあるが、彼らはシステム(そのセキュリティも含めて)を信用し、短期で大きな利益を得る期待を抱いていた。2014年にマウントゴックスで同様のケースが発生していたため、リスクがないと言うものはいなかった。アメリカの規制当局によれば、2009年から2015年の間、取引の約3分の1がハックされていたが、一般投資家はこの事実や仮想通貨取引のリスクにかかるその他の要素に気づかない場合が多い。コインチェックのケースで言えば、規制はハッキング予防には不十分であることが判明したため、日本の金融庁によって設けられた法的枠組みが十分といえるのか、といった疑問が投げかけられている。しかし、金融庁の立場から言えば、ブロックチェーン技術が未だ開発途上であるが、そのテクノロジーそのものにあるため、犯罪予防の解決策が金融規制当局の十分な管理下になかったということは、不公平ではないだろう。いずれにせよ、必要なものは、潜在的投資家に仮想通貨取引の基礎及びそれを支える技術、さらには、この種の資産とそれに関する取引に固有のセキュリティリスクを説明するための基本的かつ不可避的なルールであろう。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2018年2月9日

ブロックチェーンとスマートコントラクト

技術の進歩とそれがビジネスや社会へ適応していくリズムは、立法者が法制度の枠組みを制定するよりも早い速度で進んでいることは明らかである。仮装通貨の管理および仮想通貨に深く関わる「ブロックチェーン」は、そのような状況を表す二つの明確な例である。 ブロックチェーン(分散型ネットワーク)システムは、膨大な量のデータベースを管理するコンピュータネットワークによって生成される信頼および合意に基づいている。 ブロックチェーンは誰にでも開かれているパブリック型の場合もあれば、特定の人物にのみアクセスが限定されるクローズド型の場合もある。いずれにせよ、本システムの特質は、一元的管理者によってコントロールされているのではなく、接続されたすべてのコンピュータはシステム管理に同等に参加する、その非中央集権化にある。本システムは全てのユーザー間で、互換可能なコミュニケーション言語を使用する共通のソフトウェアによって管理される。 オペレーションシステムは暗号化、あるいはアルゴリズムの使用によって保護されている。この使用によりデータの改ざんを妨ぐことができ、ブロックチェーン内において妨害的あるいは不正確な情報が存在しないことを保証する。データベースには、ユーザーが各自実行する取引や登録情報が蓄積され、常に横断的かつ非階層的な変更および拡張にさらされている。同じシステムに接続された全てのコンピュータに共通した手順規定書(プロトコル)が、ブロックチェーン内で実行される取引の不可逆性、ひいては理論上の不可侵性を確立する。 データベースに保管されるブロック台帳は連続的に繋がり合い、仲介がなく、かつ、暗号化されていることに伴い改ざん不可能な条件を持つことにより、本システムは取引を検証する仲介者を要せず、ひいては、法制度上およびビジネス制度上、重要な結果をもたらすことになる。 なぜブロックチェーンの重要性がこんなにも謳われるのか?マス市場におけるブロックチェーンの使用によるダイレクトな結果のひとつは、多様な商取引分野における仲介者の消滅であろう。例えば、金融取引においてブロックチェーンを共有することによって、個人の間で直接支払い、受領が行われるようになると次の二つの事象が起こることが推測される。第一に、支払者の口座に資金があるかどうかを検証する仲介者が排除されること。次に、本取引がほぼ即時に成立するようになること。これは、SWIFT送金の終了さらにはクレジットカードによる支払仲介の終了を意味する。同様のことが信用取引にも言えよう。システムの敏捷性が従来とは異なる業者がこのような取引に参加することを可能にし、従来の金融機関と競合することができるようになるからである。したがって、銀行業界では伝統的なビジネスに並行して、ブロックチェーンをビジネス手段として活用している新しい業者と競い合うために、新しいブランドの立ち上げが待望されている。 ブロックチェーンのアプリケーションの一つに「スマートコントラクト」がある。これは一連の明確に定義された要因が満たされること(以下「条件」という。)で結果が生成されることにより、自動的な実行を可能とする当事者間のデジタル契約のことである。具体的なサービス契約をしたい等の特定のデータをアプリケーションに導入すると、アプリケーションシステムには契約者によって託された条件が登録され、契約者が同意したデータを使用して契約を実行する。一定の条件が発生するとシステムは、合意された内容を実行した結果である処理を自動的に実行するものとする。そこには、賠償金や和解金の支払いなども含まれるだろう。しかし、IT技術者には一見単純に見えることが、当事者間契約の状況や事実関係が曖昧である場合やシステムに導入された確立された要因が正確に一致しない場合などには、法的問題を生じさせることがある。例えば、小包の遅配は賠償の支払いに値するかもしれないが、遅れの理由が明確でない場合や運送会社に明確な非がない場合にも、賠償金を一律に払う必要があるのか、という疑問が生じる。コンピュータシステムはこの場合、たとえ法的に不公平だとしても、一律に実行する事になるであろう。 スマートコントラクトは、契約当事者の意思形成及び意思表示の場面において技術的な第三者の介在を許可することを意味する。我々はこれを、契約者が拘束力を持つ媒体として受け入れ合意した意志をコンピュータコード形式で明示した「デジタル」表現と呼ぶことができよう。コンピュータプログラムは、契約両当事者によって供給されたデータによって成立し、各当事者が合意に達した内容を与える仲介人として機能し、自動的に契約を実行する。しかし、システムが作動するには、法律用語をコンピュータ言語に正確に置き換えなければならず、契約実行システムのコンピュータ化あるいはロボット化は契約当事者の本来の意思の調節を促し、コンピュータ言語の欠如のために、偏向化あるいは単純化を招きかねない。両言語の間には非常に大きなズレが存在することは、すでに周知の通りである。 契約条項のシステム化とは別に、スマートコントラクトは、契約書を法的に特徴付ける最低限の要件である、目的、合意及び原因を持たなければならない。 分散化されたシステムは、契約の目的という点で法律問題の原因になりうる。しかし、少なくとも比較的単純な取引においては、システム自身が、契約目的が合法的なビシネスに属するか否かどうかを特定する能力があると考えるのが理論的である。 他方、スマートコントラクトにおいて停止条件あるいは解除条件は有効かという疑問がある。その答えはNO であるべきである。誰がシステムを管理しているのか、また、契約両当事者が裁判管轄に関する合意を交わしていない場合の裁判管轄はどうなるのか、という疑問は残る。 なりすまし詐欺を避けるために契約両当事者の本人確認の必要性、あるいは、取引に登録されたデータの実証の必要性といった、別の問題も生じている。並行して、コンピュータ間の契約、つまり取引成立に人の介入を要しない契約の場合の法的有効性の問題がある。法的安全性の観点において、とりわけスマートコントラクトがパブリック型ブロックチェーン内で使用される場合に、非常に重要な問題である。これらの問題に対する解決策は、登録データをフィルターに通し、本登録データが変更不可能なステータスを得る前に真性かどうかの検証を可能にするアプリケーションの開発といった技術革新の中にこそ存在する。 スマートコントラクトを商取引に使用する先行事例は存在するが、将来的に大量使用されることでシステムの欠陥が露見した際に、市場の参加者がこの種の契約形態を信頼できるよう、技術リソースの調整が求められることとなるだろう。 また、適切に処理され分析された何百万ものデータの蓄積を持つスマートコントラクトのシステムそのものが、人工知能によって生み出された分析システムに則り判断する、契約当事者に認められたデジタル仲裁人のもと、特定の契約上の紛争をロボット化された形式で解決する未来へと我々を導いていく可能性を、否定することはできない。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年12月22日

選択的ディストリビューション契約: 非正規の第三者サイトにおける販売の禁止

2017年12月6日、欧州連合司法裁判所は、オンライン販売に関する契約上の制限に関して、非常に重要な判断を示した(事件番号第230/16号)。 本事件は、Coty Germany GmbH(高級化粧品製造会社)とParfümerieAkzente GmbH(販売代理店)との間の紛争に関して、フランクフルト高等裁判所(ドイツ)から欧州連合司法裁判所に照会がなされたため審理がされた。Cotyは、ディストリビューターがCotyによって認められていないインターネット・プラットフォームを使用して同社の商品を販売することを禁止する条項を、既存の選択的ディストリビューション契約に加える修正をしようとした。これに対しAkzenteは、当該契約の修正を拒否し、Amazon.de(ドイツアマゾン)を通じてCoty商品の販売を行った。その結果としてCotyは、当該販売行為の差し止めを求めてAkzenteを訴えたが、ドイツの第一審はこの訴えを退けた。Cotyはこれを不服としてフランクフルト高等裁判所に控訴し、同裁判所は、本契約修正条項がEU法制度およびEU判例法に沿っているかを判断する予備判決を欧州連合司法裁判所に求めた。 本件に関連して4つの質問が提起され、欧州連合司法裁判所の判断は、以下に述べる3つの重要な論点に集約される。 (1)   欧州連合機能条約(Treaty on the Functioning of the European Union “TFUE”)第101条第1項によれば、高級品の選択的流通網は、以下の条件を満たす限り、禁止されない。 販売業者は質に関する特性及び選択的な流通ルールの客観的基準に基づいて選択され、当該基準はすべての潜在的な販売業者に一律に課されること 製品の性質上、品質保持及び適切な使用を確保するために、上記のような選択的な流通ネットワークを要すること 規定される基準が、必要限度を超えないこと 欧州連合司法裁判所は、製品(この場合は化粧品)の威信と高級イメージを保持する必要性は、選択的 ディストリビューション契約の枠組みにおける販売制限の存在を正当化するとし、当該見解は2011年10月13日付ピエール・ファーブル判決に矛盾しないとみなした。 (2)   本件で問題となっている条項は、製品が認可された販売業者へ販売、関連付けられることを保証し、それによって、製品自体の品質イメージ及び高級イメージが保持されることを保証する。上記はさらに、ディストリビューション契約に定められた合意された販売条件に沿った適切な販売環境の保証をも含むものである。仮に製造業者との契約及び商業的な関係に拘束を受けない非認可の第三者サイトを通して製品販売がされた場合、適切な販売環境は保証されない。 このような条項は消費者が同製品に対して持つ高級イメージの保持に一貫して貢献し、ひいては同製品の主要な特性の保持にも貢献する。 同様に、2011年10月13日付ピエール・ファーブル判決とは異なり、本条項はインターネット上の販売を絶対的に禁止するものではないことは、強調されるべきである。すなわち、本条項は、高級イメージ保持のために必要限度を越えない、との判断を示した。 また、欧州連合司法裁判所は、約90%の電子商取引が、流通業者自身のオンラインショップにおいて行われているという最近の調査結果も考慮した。 上述を鑑み、問題となった契約条項は、(i) 商品の高級イメージを保持することを目的とし、(ii) 一律に適用され(差別的に適用されてはならない)、(iii)追及される目的に照らして相当であることから、欧州連合機能条約(TFUE)第101条第1項の観点において合法であると判断されるべきであるとした。 (3)   第三の問題は、当該契約条項が、 EU規則第330/2010号に定められる特に重要な制限の一つに該当し、欧州連合機能条約(TFUE)第101条第3項を理由として、当該EU規則に基づく一括適用免除の規定の恩恵を受けられるのかという点であった。 欧州連合司法裁判所は、当事者間で合意された選択的ディストリビューション契約は、ディストリビューターが第三者のサイト上及びネット上の検索エンジンで商品の広告をすることを許可し、消費者が公式の「オンライン」ディストリビューターが販売する製品を容易に見つけることができることを認めているとの見解を示した。 したがい、当該契約条項が特定の種類のインターネット販売を制限したとしても、それは(i)EU規則第330/2010号 第4条 b におけるディストリビューターの顧客の制限や(ii)同規則第4条 cにおける最終消費者への受動的販売の制限には該当しないとした。   欧州連合司法裁判所は、本判決によって、製造業者が、自社製品の高級感及び品質イメージを維持する重要性及び権利を強調し、選択的流通契約の枠組みにおける制限的措置の合法性を認めたといっていいだろう。これは、前述の製品が非公式の第三者サイト上で販売されることによって、製品の重要な特質が危険にさらされないようにすることを保証することを意味する。 現時点で明確に言えないのは、第三者サイトが製品の品質と高級イメージ保持の期待基準を満たしている場合には、当該契約条項は法的根拠を失い、販売差し止めを強制できなくなるのか、という点であろう。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2017年12月8日

カタルーニャ: 憲法155条の適用と実務的側面

去る2017年10月27日、スペインの上院議会は、憲法で定める義務の遵守を目的として、憲法第155条の適用を過半数で採決し, スペイン中央政府がカタルーニャにおいて一連の措置をとることを承認した。カタルーニャ州知事への要求に対する返答がなかったため、スペイン中央政府は上記措置を数日前(10月21日)に上院議会に提案していた。本条項適用は例外的な措置にあたり、1978年憲法が採択されて以降、適用されたことがない。それ故に、今回の措置を採るにあたっては、その実行方法及び手段について多くの疑問が未解決のままとなっている。 しかしながら、スペイン中央政府は、法的および政治的な問題に関連して非常に重要な決定を下した。10月27日の上院議会において憲法155条の適用が採択されると、同日、スペイン政府は臨時閣議を開き、一連の解決措置について閣議決定を行った。その中には、カタルーニャ自治州州知事及び州政府閣僚の即時解任、州議会の解散及び州議会議員の総選挙を2017年12月21日に実施することが含まれていた。したがって、現時点において、以下に述べるように、カタルーニャ州には自治政府は存在せず、その機能は中央政府が担っている状態にある。 前述の上院議会による決議は、8つの留保と細かい点を除き、中央政府が提案した措置の大部分を承認するものだった。 最終的に承認された措置は10月27日に発効されている。当該措置は5つのブロックに分かれている。 a) カタルーニャ州知事、副知事及び州政府閣僚に対する措置 前述したように、10月27日をもって、州知事、副知事を含むカタルーニャ自治州政府のすべての閣僚が解任された。彼らの機能は、現在、スペイン中央政府又はこの目的のために中央政府によって設置された機関 によって担われている。  b) 州政府の行政機関に対する措置 カタルーニャ州政府は行政組織として引き続き機能する。行政機関は解散せず、機能の停止も生じない。しかしながら、スペイン政府が設置した機関が作成した、権限行使のための規定を定める指針の下に行動する。また、行政機関の行動は常に事前連絡又は事前承認の対象とされ、連絡や承認なしで行われた決定や行動は無効となる。同時に、いかなる州政府の役職者、責任者及び一般公務員の解任、並びに、州政府の公的団体及び公的機関の解散が可能となる。  c) 行政機関の活動に関する措置 自治州警察は、スペイン政府の指揮下に置かれることとなる。 国家治安部隊(スペイン国家警察及びグアルディア・シビル)のカタルーニャ配置が可能になり、必要であれば自治州警察を置き換えることができる。 経済および財政面では、スペイン政府は、税金及び予算の面で必要な権限を行使することができる。つまり、中央政府が予算を決定し、地方税の回収を管理する。 これらの措置は、独立分離主義のプロセスのために公的資金が回収・使用されることを回避するための措置である。 電気通信およびデジタル・サービスに関するカタルーニャ州政府の機能はスペイン政府に属することとなる。同措置は、スペイン政府によるカタルーニャ公共放送及び公共ラジオ放送のコントロール又は保護の獲得を意味する。また、 カタルーニャ州政府に属していた 電気通信フレームワーク、データベースおよび情報のコントロールもスペイン政府が行うことになる。   d) カタルーニャ州議会への措置 上記の措置の有効期間、かつ、2017年12月の選挙によって誕生する新しい州議会が開催されるまで、州議会議長は州知事候補者の提案や、州知事選任の審議及び投票を行うことはできない。  e) クロスセクター的措置 法的観点から見ると、上院議会が承認した措置に反して施行、実行される規定、行為および決定の無効性を宣言する条項は、特に興味深い。ここで疑問となるのは、 そのような行為及び決定がスペイン政府によって採択された措置に反することを、誰がどのように宣言するのかである。いずれにせよ、そのように宣言された行為及び決定は無効であり、何らの効力も生じない。 他方、事前に承認がされていない条項や、これら例外的措置の適用のためにスペイン政府によって設置された機関に同意されたところを満たさない条項は、カタルーニャ州政府官報(カタルーニャ自治州政府及び州議会の規則及び決定を公示する発行物)において公示することができない。規則や法規定の公示は、法の有効性が導入されるための必須条件として知られている。カタルーニャ州政府官報を管理することにより、国の上院議会の承認した措置に反する法規定が意図せず公示されることを防ぐことを目的としている。 カタルーニャ州知事及び副知事に与えられている自治州政府の組織形成の機能は、スペイン政府又はその代理のために設置される組織又は役職者が担うこととなる。したがって、これらの措置を遵守するために、スペイン政府によって設置される組織等は、カタルーニャ内に組織を設置し役職者を任命することができる。また、同じように見えるかもしれないが、本件措置が遵守されることを保証するために、分離独立プロセスにおいて重要な役割を果たした部署の責任者は解任される。 また、 カタルーニャ州政府が、憲法の遵守又は本件措置に基づいた行動を行う公務員又は職員に対して懲戒処分を課す場合、それらは法的無効であり効力を有しないことは特筆に値する。したがって、スペイン政府が採択した措置に反する又は矛盾するような命令に従わなければならないと考えた公務員は、保護されることとなる。 また、スペイン政府は、このような案件の関係者に対して、行政、刑事又は財産上の責任を課すことができる。 本件措置の効果的な適用のために、スペイン政府又はスペイン政府によって設置された機関や責任者は、国または自治州の懲戒規定に基づいて、カタルーニャ議会及びカタルーニャ州行政機関の責任者、公務員、職員に対する懲戒権限を行使することができる。   本件措置の適用期間は、新しくカタルーニャ州政府が組閣されるまでとされているが、スペイン政府は上院議会に修正を要求できる。当該修正は事の成り行きによっては、政府の締め付けが緩くなったとも厳しくなったとも理解されるだろう。他方、現在の状況を引き起こした原因が終了した場合、スペイン政府は本件措置の終了時期を早める可能性がある。 スペイン上院議会は、スペイン政府が提案した措置に細かく色分けを施した。つまり、状況がどのように発展するかに応じて適用を調整する、本件措置の「適切かつ責任ある」適用を促し、現状のような例外的な局面に対処するにあたって節度と慎重さを呼びかけている。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年11月3日

商標権:  同一の起源を持つ並行商標の自発的分割による商標権の消尽

1994年の「IHT Internationale 事件」欧州裁判所判決によって収束したとみなされていた、同一の起源をもつ商標権が分割されることで生じる並行輸入の問題について、ある商標にかかる権利の消滅に関する問題が再燃した。バルセロナ商事裁判所第8法廷は、商標に関する2008 年付欧州議会及び欧州理事会の指令第2008/95/EC号(以下、EU指令2008/95/EC)第7条第1項の解釈に関する先行的判決を欧州司法裁判所に最近照会した。 実質上、「SCHWEPPES」の商標はCoca Cola社とORANGINA SCHWEPPES HOLDING BV(日系企業SUNTORYに属する会社)が所有している。1999年CADBURY SCHWEPPES社は13のEU加盟国における商標権をCoca Cola社に売却した。2009年SUNTORY社はCADBURY SCHWEPPES社を買収することで18のEU加盟国における商標権を獲得した。 2014年5月、スペインの会社であるSCHWEPPES, S.A.(イギリスの会社CHWEPPES INTERNATIONAL LTD. の子会社)は、スペインの清涼飲料の流通会社RED PARALELA BCN, S.L.に対し以下の理由に基づき訴訟を提起した。 SCHWEPPES, S.A. は「SCHWEPPES」のスペインにおける唯一のディストリビューターである。 RED PARALELA社は「SCHWEPPES」ブランドのトニックウォーターのボトルを輸入している。 SCHWEPPES, S.A.は、同社の同意なしにCoca Cola社がスペイン市場に「SCHWEPPES」を流通させることは、違法行為に当たると主張する。 RED PARALELA社は、当該商品が、元来Coca Cola社が商標権を所有するEU加盟国で生産されたものであり、したがって黙示の同意が存在するとして、商標権の消滅を主張した。また、Coca Cola社及びSCHWEPPES INTERNATIONAL LTD間の経済的リンクの存在を主張し、商標を共同利用するものであるとした。 バルセロナ商事裁判所は多数の照会状を欧州司法裁判所に送付しており、その照会の多くは、 欧州連合競争法(TFEU)第36条と、一つの商標権を複数のEU加盟国で保有する商標権者に第三者が同一商標権を所有する他の加盟国からの商品の並行輸入を阻止することを認める、EU 指令 2008/95/EC第7条第1項及び2015年付EU指令2015/2436第15条第1項が、両立可能か否かの判断を仰ぐものであった。 つまり、SCHWEPPESはCoca Cola社が「SCHWEPPES」の商標権を保有するイギリスからの同製品の並行輸入を合法的に阻止できるのかが今回の争点となった。 EU法務官Mengozzi氏は、2017年9月12日付で当該案件に関する拘束力のない見解を公示した。以下に同氏の見解を示す。 a) 1994年6月22日付「IHT INTERNATIONALE事件 」に関する欧州司法裁判所判決は、商標権が自発的に分割された場合、譲渡人である商標権者は商標が 有する排他的機能が弱体化することについて容認したものと理解されるが、これは、欧州経済領域の他の加盟国において商標の譲受人によって販売されている商品が、譲渡人が商標権を保有する領土へ輸入されることを譲渡人が阻止する権利の放棄を伴うものではない。したがって、商標権が譲渡された時点で権利が消滅するという原則は適用されない。というのも、当時、商品は市場に流通しておらず、上記原則を適用するための基本的な要件の一つが満たされていないためであるとした。 b) すなわち、欧州委員会は、権利消滅の原則は、同一の商標権を有する商品の製造と販売が、商標権者の一元的政策および商業戦略の一部として実行される場合にも起こりうる、との判断を示したと言えよう。上記見解を法務官自身も支持している。ポイントは、輸入国における商標権者と当該商標を冠する商品を輸出国に流通させた者との間に「経済的リンク」が存在するか否かであるかどうか、又は、同一人物であるかどうかである。 「経済的リンク」とは、当事者間で商標の一元的管理が存在する関係と理解されている。当該理解は、二つの別々の当事者がそれぞれに、輸入国と輸出国において同一の商標権者であると国内において認識されている場合の商標使用時の合同管理をも含む。一元的管理が存在するならば、当該商品の流通を制限するために当該国の法律を頼ることはできなくなる。 c)「一元的管理」とは、商品の流通に関する戦略的決定を負う根拠とみなされる。たとえそれが異なる会社、同一商標を並行して所有者する両者間であっても、それぞれの商標の使用を共同管理することによって共有されている 。しかしながら、ここで再度、上記のような状況の存在を証明する証拠を規定するルールの不在を指摘している。加えて、法務官は、証明の負担(一見したところ、並行輸入者に掛かる負担)は、 特定の場合においては裁判所によって別の当事者に移すこともできる、とした。   結論として、商標の一元的管理があるかどうか、商標権者が輸入国において権利消滅状態にあるといえるための要件を満たしているかどうか判断するための状況の分析及び譲渡契約を含む適切な書類の当事者への請求は、各国の裁判所に一任する、とされている。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年9月22日

第三者サイトにおける高級ブランド品の販売

通常、高級ブランド品の製造元は、自社製品の高級感を損なわないよう、一連の要件を満たした正規の販売店によって構成される精選された販売店ルートを通して販売する。 第三者のサイトでのインターネット販売がブームとなり、今日、次に述べるような問題が製造元と販売者の間で生じている。2017年7月末、欧州連合裁判所は、第三者のサイト経由の高級ブランド品販売を契約上禁ずることに関するWahl法務官の見解を発表した。 前述のプレスリリースは、ドイツの高級化粧品会社の一つであるCoty Germany及びその認可販売店の一つParfümerie Akzenteの案件に関し、法的効力のない意見を表明したものである。 2012年以降Coty Germanyは、自社の販売店契約に、ネット上での製品販売に関して、認可済み販売店の「電子ショウウィンドウ」のみを通しての販売、つまり、正規販売店のウェブサイトを通してのみの販売、更には、販売時には製品の高級感を尊重することという条項を新しく加えた。その結果、Coty Germanyは、上記の新契約条項により、未認可の第三者のサイトにおける製品の販売を明示的に禁止したことになる。 Coty Germanyは、Parfümerie AkzenteがアマゾンにおいてCoty Germanyの製品を販売していることを認識し、2012年に導入した販売店契約の修正条項の受け入れを拒否されたことを受け、第三者のサイトにおけるCoty Germanyの製品販売停止を求めて、ドイツの裁判所に提訴した。 ドイツの法廷は、この種の案件は十全に議論されるべきであるとみなし、当該禁止がEU各加盟国の独占禁止法に適合するかどうかの明確な判断を求めて、本案件を欧州連合裁判所に移転した。 欧州連合裁判所にはすでに前例として、高級ブランド製品の「ラグジュアリーなイメージ」を守るために精選された販売網を選択することは、原則として、競争を防止、制限、あるいは歪める(カルテル行為)ような禁止行為にあたるものではないとした2011年10月13日付判決C439/09が存在する。 Wahl法務官は、第三者のサイトにおける製品の販売禁止契約条項もまた、以下のような条件を満たせば、カルテル行為には該当しないとの見解を示した。 製品の性質による。 統一的に設定される。つまり、精選された販売店ネットワークの構成店全てに対して設定される。 区別なく適用する 必要以上に制約しない Wahl法務官は、当該条項は合法であるだけではなく、本案件のように製品の品質とイメージの向上のために、製造業者や他の認可販売業者によって費やされた投資及び企業努力を他の販売業者が享受するのを妨げるようにすることによって、販売業者間の寄生問題を解決し、競争促進にもつながる、と続けた。 当該措置を比例原則の側面から考慮しても、Wahl法務官は、アマゾンのようなサイトでの販売を禁止するのは、インターネット上での販売を完全に禁止にしたのではなく、高級品にふさわしいような環境の保証がないサイトでの販売を禁止しているのみであり、行き過ぎとはいえないとの見解を示した。 最終的にWahl法務官は、製造元Coty Germanyが契約書上で前述のような販売制限条項を設けることはカルテル行為にあたるかどうかについて、 同氏の意見では同禁止条項が(i)小売業者の顧客の制限、あるいは(ii)エンドユーザーへの受動的販売の制限、にはあたらないことを理由に、2010年付欧州委員会規則第330/2010号に規定されている複雑な免除制度の対象となる、との見解を示した。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年8月11日    

デジタルコンテンツの供給

2015年12月9日付けで、デジタルコンテンツ供給契約の一定の部分に関する欧州議会及び欧州理事会指令第634/2015号の草案が公示された。ソフトウェアやアプリケーション、その他のデジタル的性質を持つ商品が、一般的かつ頻繁に取引されるようになり、企業及び個人の生活が急速なデジタル化のプロセスに直面していることを考慮すると、当該指令の重要性は非常に高いものである。当該指令は、企業と消費者との間の、プログラム、動画、音楽コンテンツ等を含むデジタルコンテンツ及びサービスの提供にかかる契約に適用される。また、ソーシャルネットワークプラットフォームなどの特定のデータの共有を可能にするデジタルサービスの提供に関する契約だけでなく、 「クラウド」と呼ばれるデジタルデータ処理サービスまたはストレージサービス契約にも影響を及ぼす。 当該指令草案は、デジタル分野での国境を越えた事業取引をする上で、障害または障壁となるようなEU加盟国間の法的規制の相違を縮小することを目的としている。つまりは、デジタル単一市場の発展を目指しているといえよう。 同時に、供給側と顧客との間のその場その場で作られる契約によって、市場動向の定型化が困難あるいは不可能になる前に、この種の契約の法的取引を規制することを目指している。 2017年6月8日、欧州理事会は、当該指令草案について以下のような立場を採択した。 当該指令によって、デジタルコンテンツ及びサービスの使用料を支払うための契約条項のみならず、デジタルコンテンツの供給者が取り扱う個人情報を提供する場合における消費者救済に関する契約の条項も設けるべきである 。ただし、供給者が個人情報を専有的、及び排他的にサービスを向上させるために扱う場合、あるいは特定のデジタルコンテンツ提供、または特定の強行的な準則の遵守を目的とした場合は、例外とされる。 顧客と供給者の間で矛盾または不一致が生じた場合、当該指令草案によれば、供給契約の解除に先立ち、供給者側に第2の機会を与えるための権利が与えられる。 供給者の責任の期間に関して、当該指令はEU加盟国間の相違を完全になくすことまでには至っていないものの、一般的な期間として、提供されるコンテンツまたはサービスに適合しない場合の供給者の責任期間について、いかなる場合においても2年を下回ってはならないと定め、デジタルコンテンツの提供または取引の対象となるデジタルコンテンツにおいて紛争の可能性が生じた場合には、当該期間内に供給者への立証責任の転換が行われる。 当該指令は、会社規模によってサービス供給者を区別することは消費者の信頼を損なうとの理解のもと、大企業と中小企業の両方をその適用対象とすることを目指しいることは言及に値する。欧州議会が目指すのは、国境を越えて統一化された規制を備えたビジネス環境の提供であり、特定の契約条件を用意するための費用を負担する必要がなくなることにより中小企業、特に小規模企業にとって有益であるべきと考える。しかし、いくつかのケースにおいては、当該指令に基づいてEU加盟国が各国において制定する法律が、供給者又は顧客の規模や両当事者間に存在する特別な関係に応じて、補完または修正される可能性があるだろうと考える。唯一の要件は、前述の修正が消費者に損害を与えないことである。 本指令草案は、消費に関する契約法の強行法規的な性質を有し、指令に定める要件の逸脱が消費者に損害を与えるのであるならば、当該逸脱は消費者を拘束しないことを明確にする。 欧州議会によれば、当該指令で定められる措置が施行されれば、この種のビジネスにおいて10億ユーロの売上増加に貢献し、また、価格の下落をもたらすはずであり、したがって、消費の成長効果を生むだろうと期待される。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年6月30日