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ブロックチェーンとスマートコントラクト

技術の進歩とそれがビジネスや社会へ適応していくリズムは、立法者が法制度の枠組みを制定するよりも早い速度で進んでいることは明らかである。仮装通貨の管理および仮想通貨に深く関わる「ブロックチェーン」は、そのような状況を表す二つの明確な例である。 ブロックチェーン(分散型ネットワーク)システムは、膨大な量のデータベースを管理するコンピュータネットワークによって生成される信頼および合意に基づいている。 ブロックチェーンは誰にでも開かれているパブリック型の場合もあれば、特定の人物にのみアクセスが限定されるクローズド型の場合もある。いずれにせよ、本システムの特質は、一元的管理者によってコントロールされているのではなく、接続されたすべてのコンピュータはシステム管理に同等に参加する、その非中央集権化にある。本システムは全てのユーザー間で、互換可能なコミュニケーション言語を使用する共通のソフトウェアによって管理される。 オペレーションシステムは暗号化、あるいはアルゴリズムの使用によって保護されている。この使用によりデータの改ざんを妨ぐことができ、ブロックチェーン内において妨害的あるいは不正確な情報が存在しないことを保証する。データベースには、ユーザーが各自実行する取引や登録情報が蓄積され、常に横断的かつ非階層的な変更および拡張にさらされている。同じシステムに接続された全てのコンピュータに共通した手順規定書(プロトコル)が、ブロックチェーン内で実行される取引の不可逆性、ひいては理論上の不可侵性を確立する。 データベースに保管されるブロック台帳は連続的に繋がり合い、仲介がなく、かつ、暗号化されていることに伴い改ざん不可能な条件を持つことにより、本システムは取引を検証する仲介者を要せず、ひいては、法制度上およびビジネス制度上、重要な結果をもたらすことになる。 なぜブロックチェーンの重要性がこんなにも謳われるのか?マス市場におけるブロックチェーンの使用によるダイレクトな結果のひとつは、多様な商取引分野における仲介者の消滅であろう。例えば、金融取引においてブロックチェーンを共有することによって、個人の間で直接支払い、受領が行われるようになると次の二つの事象が起こることが推測される。第一に、支払者の口座に資金があるかどうかを検証する仲介者が排除されること。次に、本取引がほぼ即時に成立するようになること。これは、SWIFT送金の終了さらにはクレジットカードによる支払仲介の終了を意味する。同様のことが信用取引にも言えよう。システムの敏捷性が従来とは異なる業者がこのような取引に参加することを可能にし、従来の金融機関と競合することができるようになるからである。したがって、銀行業界では伝統的なビジネスに並行して、ブロックチェーンをビジネス手段として活用している新しい業者と競い合うために、新しいブランドの立ち上げが待望されている。 ブロックチェーンのアプリケーションの一つに「スマートコントラクト」がある。これは一連の明確に定義された要因が満たされること(以下「条件」という。)で結果が生成されることにより、自動的な実行を可能とする当事者間のデジタル契約のことである。具体的なサービス契約をしたい等の特定のデータをアプリケーションに導入すると、アプリケーションシステムには契約者によって託された条件が登録され、契約者が同意したデータを使用して契約を実行する。一定の条件が発生するとシステムは、合意された内容を実行した結果である処理を自動的に実行するものとする。そこには、賠償金や和解金の支払いなども含まれるだろう。しかし、IT技術者には一見単純に見えることが、当事者間契約の状況や事実関係が曖昧である場合やシステムに導入された確立された要因が正確に一致しない場合などには、法的問題を生じさせることがある。例えば、小包の遅配は賠償の支払いに値するかもしれないが、遅れの理由が明確でない場合や運送会社に明確な非がない場合にも、賠償金を一律に払う必要があるのか、という疑問が生じる。コンピュータシステムはこの場合、たとえ法的に不公平だとしても、一律に実行する事になるであろう。 スマートコントラクトは、契約当事者の意思形成及び意思表示の場面において技術的な第三者の介在を許可することを意味する。我々はこれを、契約者が拘束力を持つ媒体として受け入れ合意した意志をコンピュータコード形式で明示した「デジタル」表現と呼ぶことができよう。コンピュータプログラムは、契約両当事者によって供給されたデータによって成立し、各当事者が合意に達した内容を与える仲介人として機能し、自動的に契約を実行する。しかし、システムが作動するには、法律用語をコンピュータ言語に正確に置き換えなければならず、契約実行システムのコンピュータ化あるいはロボット化は契約当事者の本来の意思の調節を促し、コンピュータ言語の欠如のために、偏向化あるいは単純化を招きかねない。両言語の間には非常に大きなズレが存在することは、すでに周知の通りである。 契約条項のシステム化とは別に、スマートコントラクトは、契約書を法的に特徴付ける最低限の要件である、目的、合意及び原因を持たなければならない。 分散化されたシステムは、契約の目的という点で法律問題の原因になりうる。しかし、少なくとも比較的単純な取引においては、システム自身が、契約目的が合法的なビシネスに属するか否かどうかを特定する能力があると考えるのが理論的である。 他方、スマートコントラクトにおいて停止条件あるいは解除条件は有効かという疑問がある。その答えはNO であるべきである。誰がシステムを管理しているのか、また、契約両当事者が裁判管轄に関する合意を交わしていない場合の裁判管轄はどうなるのか、という疑問は残る。 なりすまし詐欺を避けるために契約両当事者の本人確認の必要性、あるいは、取引に登録されたデータの実証の必要性といった、別の問題も生じている。並行して、コンピュータ間の契約、つまり取引成立に人の介入を要しない契約の場合の法的有効性の問題がある。法的安全性の観点において、とりわけスマートコントラクトがパブリック型ブロックチェーン内で使用される場合に、非常に重要な問題である。これらの問題に対する解決策は、登録データをフィルターに通し、本登録データが変更不可能なステータスを得る前に真性かどうかの検証を可能にするアプリケーションの開発といった技術革新の中にこそ存在する。 スマートコントラクトを商取引に使用する先行事例は存在するが、将来的に大量使用されることでシステムの欠陥が露見した際に、市場の参加者がこの種の契約形態を信頼できるよう、技術リソースの調整が求められることとなるだろう。 また、適切に処理され分析された何百万ものデータの蓄積を持つスマートコントラクトのシステムそのものが、人工知能によって生み出された分析システムに則り判断する、契約当事者に認められたデジタル仲裁人のもと、特定の契約上の紛争をロボット化された形式で解決する未来へと我々を導いていく可能性を、否定することはできない。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年12月22日

選択的ディストリビューション契約: 非正規の第三者サイトにおける販売の禁止

2017年12月6日、欧州連合司法裁判所は、オンライン販売に関する契約上の制限に関して、非常に重要な判断を示した(事件番号第230/16号)。 本事件は、Coty Germany GmbH(高級化粧品製造会社)とParfümerieAkzente GmbH(販売代理店)との間の紛争に関して、フランクフルト高等裁判所(ドイツ)から欧州連合司法裁判所に照会がなされたため審理がされた。Cotyは、ディストリビューターがCotyによって認められていないインターネット・プラットフォームを使用して同社の商品を販売することを禁止する条項を、既存の選択的ディストリビューション契約に加える修正をしようとした。これに対しAkzenteは、当該契約の修正を拒否し、Amazon.de(ドイツアマゾン)を通じてCoty商品の販売を行った。その結果としてCotyは、当該販売行為の差し止めを求めてAkzenteを訴えたが、ドイツの第一審はこの訴えを退けた。Cotyはこれを不服としてフランクフルト高等裁判所に控訴し、同裁判所は、本契約修正条項がEU法制度およびEU判例法に沿っているかを判断する予備判決を欧州連合司法裁判所に求めた。 本件に関連して4つの質問が提起され、欧州連合司法裁判所の判断は、以下に述べる3つの重要な論点に集約される。 (1)   欧州連合機能条約(Treaty on the Functioning of the European Union “TFUE”)第101条第1項によれば、高級品の選択的流通網は、以下の条件を満たす限り、禁止されない。 販売業者は質に関する特性及び選択的な流通ルールの客観的基準に基づいて選択され、当該基準はすべての潜在的な販売業者に一律に課されること 製品の性質上、品質保持及び適切な使用を確保するために、上記のような選択的な流通ネットワークを要すること 規定される基準が、必要限度を超えないこと 欧州連合司法裁判所は、製品(この場合は化粧品)の威信と高級イメージを保持する必要性は、選択的 ディストリビューション契約の枠組みにおける販売制限の存在を正当化するとし、当該見解は2011年10月13日付ピエール・ファーブル判決に矛盾しないとみなした。 (2)   本件で問題となっている条項は、製品が認可された販売業者へ販売、関連付けられることを保証し、それによって、製品自体の品質イメージ及び高級イメージが保持されることを保証する。上記はさらに、ディストリビューション契約に定められた合意された販売条件に沿った適切な販売環境の保証をも含むものである。仮に製造業者との契約及び商業的な関係に拘束を受けない非認可の第三者サイトを通して製品販売がされた場合、適切な販売環境は保証されない。 このような条項は消費者が同製品に対して持つ高級イメージの保持に一貫して貢献し、ひいては同製品の主要な特性の保持にも貢献する。 同様に、2011年10月13日付ピエール・ファーブル判決とは異なり、本条項はインターネット上の販売を絶対的に禁止するものではないことは、強調されるべきである。すなわち、本条項は、高級イメージ保持のために必要限度を越えない、との判断を示した。 また、欧州連合司法裁判所は、約90%の電子商取引が、流通業者自身のオンラインショップにおいて行われているという最近の調査結果も考慮した。 上述を鑑み、問題となった契約条項は、(i) 商品の高級イメージを保持することを目的とし、(ii) 一律に適用され(差別的に適用されてはならない)、(iii)追及される目的に照らして相当であることから、欧州連合機能条約(TFUE)第101条第1項の観点において合法であると判断されるべきであるとした。 (3)   第三の問題は、当該契約条項が、 EU規則第330/2010号に定められる特に重要な制限の一つに該当し、欧州連合機能条約(TFUE)第101条第3項を理由として、当該EU規則に基づく一括適用免除の規定の恩恵を受けられるのかという点であった。 欧州連合司法裁判所は、当事者間で合意された選択的ディストリビューション契約は、ディストリビューターが第三者のサイト上及びネット上の検索エンジンで商品の広告をすることを許可し、消費者が公式の「オンライン」ディストリビューターが販売する製品を容易に見つけることができることを認めているとの見解を示した。 したがい、当該契約条項が特定の種類のインターネット販売を制限したとしても、それは(i)EU規則第330/2010号 第4条 b におけるディストリビューターの顧客の制限や(ii)同規則第4条 cにおける最終消費者への受動的販売の制限には該当しないとした。   欧州連合司法裁判所は、本判決によって、製造業者が、自社製品の高級感及び品質イメージを維持する重要性及び権利を強調し、選択的流通契約の枠組みにおける制限的措置の合法性を認めたといっていいだろう。これは、前述の製品が非公式の第三者サイト上で販売されることによって、製品の重要な特質が危険にさらされないようにすることを保証することを意味する。 現時点で明確に言えないのは、第三者サイトが製品の品質と高級イメージ保持の期待基準を満たしている場合には、当該契約条項は法的根拠を失い、販売差し止めを強制できなくなるのか、という点であろう。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2017年12月8日

カタルーニャ: 憲法155条の適用と実務的側面

去る2017年10月27日、スペインの上院議会は、憲法で定める義務の遵守を目的として、憲法第155条の適用を過半数で採決し, スペイン中央政府がカタルーニャにおいて一連の措置をとることを承認した。カタルーニャ州知事への要求に対する返答がなかったため、スペイン中央政府は上記措置を数日前(10月21日)に上院議会に提案していた。本条項適用は例外的な措置にあたり、1978年憲法が採択されて以降、適用されたことがない。それ故に、今回の措置を採るにあたっては、その実行方法及び手段について多くの疑問が未解決のままとなっている。 しかしながら、スペイン中央政府は、法的および政治的な問題に関連して非常に重要な決定を下した。10月27日の上院議会において憲法155条の適用が採択されると、同日、スペイン政府は臨時閣議を開き、一連の解決措置について閣議決定を行った。その中には、カタルーニャ自治州州知事及び州政府閣僚の即時解任、州議会の解散及び州議会議員の総選挙を2017年12月21日に実施することが含まれていた。したがって、現時点において、以下に述べるように、カタルーニャ州には自治政府は存在せず、その機能は中央政府が担っている状態にある。 前述の上院議会による決議は、8つの留保と細かい点を除き、中央政府が提案した措置の大部分を承認するものだった。 最終的に承認された措置は10月27日に発効されている。当該措置は5つのブロックに分かれている。 a) カタルーニャ州知事、副知事及び州政府閣僚に対する措置 前述したように、10月27日をもって、州知事、副知事を含むカタルーニャ自治州政府のすべての閣僚が解任された。彼らの機能は、現在、スペイン中央政府又はこの目的のために中央政府によって設置された機関 によって担われている。  b) 州政府の行政機関に対する措置 カタルーニャ州政府は行政組織として引き続き機能する。行政機関は解散せず、機能の停止も生じない。しかしながら、スペイン政府が設置した機関が作成した、権限行使のための規定を定める指針の下に行動する。また、行政機関の行動は常に事前連絡又は事前承認の対象とされ、連絡や承認なしで行われた決定や行動は無効となる。同時に、いかなる州政府の役職者、責任者及び一般公務員の解任、並びに、州政府の公的団体及び公的機関の解散が可能となる。  c) 行政機関の活動に関する措置 自治州警察は、スペイン政府の指揮下に置かれることとなる。 国家治安部隊(スペイン国家警察及びグアルディア・シビル)のカタルーニャ配置が可能になり、必要であれば自治州警察を置き換えることができる。 経済および財政面では、スペイン政府は、税金及び予算の面で必要な権限を行使することができる。つまり、中央政府が予算を決定し、地方税の回収を管理する。 これらの措置は、独立分離主義のプロセスのために公的資金が回収・使用されることを回避するための措置である。 電気通信およびデジタル・サービスに関するカタルーニャ州政府の機能はスペイン政府に属することとなる。同措置は、スペイン政府によるカタルーニャ公共放送及び公共ラジオ放送のコントロール又は保護の獲得を意味する。また、 カタルーニャ州政府に属していた 電気通信フレームワーク、データベースおよび情報のコントロールもスペイン政府が行うことになる。   d) カタルーニャ州議会への措置 上記の措置の有効期間、かつ、2017年12月の選挙によって誕生する新しい州議会が開催されるまで、州議会議長は州知事候補者の提案や、州知事選任の審議及び投票を行うことはできない。  e) クロスセクター的措置 法的観点から見ると、上院議会が承認した措置に反して施行、実行される規定、行為および決定の無効性を宣言する条項は、特に興味深い。ここで疑問となるのは、 そのような行為及び決定がスペイン政府によって採択された措置に反することを、誰がどのように宣言するのかである。いずれにせよ、そのように宣言された行為及び決定は無効であり、何らの効力も生じない。 他方、事前に承認がされていない条項や、これら例外的措置の適用のためにスペイン政府によって設置された機関に同意されたところを満たさない条項は、カタルーニャ州政府官報(カタルーニャ自治州政府及び州議会の規則及び決定を公示する発行物)において公示することができない。規則や法規定の公示は、法の有効性が導入されるための必須条件として知られている。カタルーニャ州政府官報を管理することにより、国の上院議会の承認した措置に反する法規定が意図せず公示されることを防ぐことを目的としている。 カタルーニャ州知事及び副知事に与えられている自治州政府の組織形成の機能は、スペイン政府又はその代理のために設置される組織又は役職者が担うこととなる。したがって、これらの措置を遵守するために、スペイン政府によって設置される組織等は、カタルーニャ内に組織を設置し役職者を任命することができる。また、同じように見えるかもしれないが、本件措置が遵守されることを保証するために、分離独立プロセスにおいて重要な役割を果たした部署の責任者は解任される。 また、 カタルーニャ州政府が、憲法の遵守又は本件措置に基づいた行動を行う公務員又は職員に対して懲戒処分を課す場合、それらは法的無効であり効力を有しないことは特筆に値する。したがって、スペイン政府が採択した措置に反する又は矛盾するような命令に従わなければならないと考えた公務員は、保護されることとなる。 また、スペイン政府は、このような案件の関係者に対して、行政、刑事又は財産上の責任を課すことができる。 本件措置の効果的な適用のために、スペイン政府又はスペイン政府によって設置された機関や責任者は、国または自治州の懲戒規定に基づいて、カタルーニャ議会及びカタルーニャ州行政機関の責任者、公務員、職員に対する懲戒権限を行使することができる。   本件措置の適用期間は、新しくカタルーニャ州政府が組閣されるまでとされているが、スペイン政府は上院議会に修正を要求できる。当該修正は事の成り行きによっては、政府の締め付けが緩くなったとも厳しくなったとも理解されるだろう。他方、現在の状況を引き起こした原因が終了した場合、スペイン政府は本件措置の終了時期を早める可能性がある。 スペイン上院議会は、スペイン政府が提案した措置に細かく色分けを施した。つまり、状況がどのように発展するかに応じて適用を調整する、本件措置の「適切かつ責任ある」適用を促し、現状のような例外的な局面に対処するにあたって節度と慎重さを呼びかけている。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年11月3日

商標権:  同一の起源を持つ並行商標の自発的分割による商標権の消尽

1994年の「IHT Internationale 事件」欧州裁判所判決によって収束したとみなされていた、同一の起源をもつ商標権が分割されることで生じる並行輸入の問題について、ある商標にかかる権利の消滅に関する問題が再燃した。バルセロナ商事裁判所第8法廷は、商標に関する2008 年付欧州議会及び欧州理事会の指令第2008/95/EC号(以下、EU指令2008/95/EC)第7条第1項の解釈に関する先行的判決を欧州司法裁判所に最近照会した。 実質上、「SCHWEPPES」の商標はCoca Cola社とORANGINA SCHWEPPES HOLDING BV(日系企業SUNTORYに属する会社)が所有している。1999年CADBURY SCHWEPPES社は13のEU加盟国における商標権をCoca Cola社に売却した。2009年SUNTORY社はCADBURY SCHWEPPES社を買収することで18のEU加盟国における商標権を獲得した。 2014年5月、スペインの会社であるSCHWEPPES, S.A.(イギリスの会社CHWEPPES INTERNATIONAL LTD. の子会社)は、スペインの清涼飲料の流通会社RED PARALELA BCN, S.L.に対し以下の理由に基づき訴訟を提起した。 SCHWEPPES, S.A. は「SCHWEPPES」のスペインにおける唯一のディストリビューターである。 RED PARALELA社は「SCHWEPPES」ブランドのトニックウォーターのボトルを輸入している。 SCHWEPPES, S.A.は、同社の同意なしにCoca Cola社がスペイン市場に「SCHWEPPES」を流通させることは、違法行為に当たると主張する。 RED PARALELA社は、当該商品が、元来Coca Cola社が商標権を所有するEU加盟国で生産されたものであり、したがって黙示の同意が存在するとして、商標権の消滅を主張した。また、Coca Cola社及びSCHWEPPES INTERNATIONAL LTD間の経済的リンクの存在を主張し、商標を共同利用するものであるとした。 バルセロナ商事裁判所は多数の照会状を欧州司法裁判所に送付しており、その照会の多くは、 欧州連合競争法(TFEU)第36条と、一つの商標権を複数のEU加盟国で保有する商標権者に第三者が同一商標権を所有する他の加盟国からの商品の並行輸入を阻止することを認める、EU 指令 2008/95/EC第7条第1項及び2015年付EU指令2015/2436第15条第1項が、両立可能か否かの判断を仰ぐものであった。 つまり、SCHWEPPESはCoca Cola社が「SCHWEPPES」の商標権を保有するイギリスからの同製品の並行輸入を合法的に阻止できるのかが今回の争点となった。 EU法務官Mengozzi氏は、2017年9月12日付で当該案件に関する拘束力のない見解を公示した。以下に同氏の見解を示す。 a) 1994年6月22日付「IHT INTERNATIONALE事件 」に関する欧州司法裁判所判決は、商標権が自発的に分割された場合、譲渡人である商標権者は商標が 有する排他的機能が弱体化することについて容認したものと理解されるが、これは、欧州経済領域の他の加盟国において商標の譲受人によって販売されている商品が、譲渡人が商標権を保有する領土へ輸入されることを譲渡人が阻止する権利の放棄を伴うものではない。したがって、商標権が譲渡された時点で権利が消滅するという原則は適用されない。というのも、当時、商品は市場に流通しておらず、上記原則を適用するための基本的な要件の一つが満たされていないためであるとした。 b) すなわち、欧州委員会は、権利消滅の原則は、同一の商標権を有する商品の製造と販売が、商標権者の一元的政策および商業戦略の一部として実行される場合にも起こりうる、との判断を示したと言えよう。上記見解を法務官自身も支持している。ポイントは、輸入国における商標権者と当該商標を冠する商品を輸出国に流通させた者との間に「経済的リンク」が存在するか否かであるかどうか、又は、同一人物であるかどうかである。 「経済的リンク」とは、当事者間で商標の一元的管理が存在する関係と理解されている。当該理解は、二つの別々の当事者がそれぞれに、輸入国と輸出国において同一の商標権者であると国内において認識されている場合の商標使用時の合同管理をも含む。一元的管理が存在するならば、当該商品の流通を制限するために当該国の法律を頼ることはできなくなる。 c)「一元的管理」とは、商品の流通に関する戦略的決定を負う根拠とみなされる。たとえそれが異なる会社、同一商標を並行して所有者する両者間であっても、それぞれの商標の使用を共同管理することによって共有されている 。しかしながら、ここで再度、上記のような状況の存在を証明する証拠を規定するルールの不在を指摘している。加えて、法務官は、証明の負担(一見したところ、並行輸入者に掛かる負担)は、 特定の場合においては裁判所によって別の当事者に移すこともできる、とした。   結論として、商標の一元的管理があるかどうか、商標権者が輸入国において権利消滅状態にあるといえるための要件を満たしているかどうか判断するための状況の分析及び譲渡契約を含む適切な書類の当事者への請求は、各国の裁判所に一任する、とされている。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年9月22日

第三者サイトにおける高級ブランド品の販売

通常、高級ブランド品の製造元は、自社製品の高級感を損なわないよう、一連の要件を満たした正規の販売店によって構成される精選された販売店ルートを通して販売する。 第三者のサイトでのインターネット販売がブームとなり、今日、次に述べるような問題が製造元と販売者の間で生じている。2017年7月末、欧州連合裁判所は、第三者のサイト経由の高級ブランド品販売を契約上禁ずることに関するWahl法務官の見解を発表した。 前述のプレスリリースは、ドイツの高級化粧品会社の一つであるCoty Germany及びその認可販売店の一つParfümerie Akzenteの案件に関し、法的効力のない意見を表明したものである。 2012年以降Coty Germanyは、自社の販売店契約に、ネット上での製品販売に関して、認可済み販売店の「電子ショウウィンドウ」のみを通しての販売、つまり、正規販売店のウェブサイトを通してのみの販売、更には、販売時には製品の高級感を尊重することという条項を新しく加えた。その結果、Coty Germanyは、上記の新契約条項により、未認可の第三者のサイトにおける製品の販売を明示的に禁止したことになる。 Coty Germanyは、Parfümerie AkzenteがアマゾンにおいてCoty Germanyの製品を販売していることを認識し、2012年に導入した販売店契約の修正条項の受け入れを拒否されたことを受け、第三者のサイトにおけるCoty Germanyの製品販売停止を求めて、ドイツの裁判所に提訴した。 ドイツの法廷は、この種の案件は十全に議論されるべきであるとみなし、当該禁止がEU各加盟国の独占禁止法に適合するかどうかの明確な判断を求めて、本案件を欧州連合裁判所に移転した。 欧州連合裁判所にはすでに前例として、高級ブランド製品の「ラグジュアリーなイメージ」を守るために精選された販売網を選択することは、原則として、競争を防止、制限、あるいは歪める(カルテル行為)ような禁止行為にあたるものではないとした2011年10月13日付判決C439/09が存在する。 Wahl法務官は、第三者のサイトにおける製品の販売禁止契約条項もまた、以下のような条件を満たせば、カルテル行為には該当しないとの見解を示した。 製品の性質による。 統一的に設定される。つまり、精選された販売店ネットワークの構成店全てに対して設定される。 区別なく適用する 必要以上に制約しない Wahl法務官は、当該条項は合法であるだけではなく、本案件のように製品の品質とイメージの向上のために、製造業者や他の認可販売業者によって費やされた投資及び企業努力を他の販売業者が享受するのを妨げるようにすることによって、販売業者間の寄生問題を解決し、競争促進にもつながる、と続けた。 当該措置を比例原則の側面から考慮しても、Wahl法務官は、アマゾンのようなサイトでの販売を禁止するのは、インターネット上での販売を完全に禁止にしたのではなく、高級品にふさわしいような環境の保証がないサイトでの販売を禁止しているのみであり、行き過ぎとはいえないとの見解を示した。 最終的にWahl法務官は、製造元Coty Germanyが契約書上で前述のような販売制限条項を設けることはカルテル行為にあたるかどうかについて、 同氏の意見では同禁止条項が(i)小売業者の顧客の制限、あるいは(ii)エンドユーザーへの受動的販売の制限、にはあたらないことを理由に、2010年付欧州委員会規則第330/2010号に規定されている複雑な免除制度の対象となる、との見解を示した。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年8月11日    

デジタルコンテンツの供給

2015年12月9日付けで、デジタルコンテンツ供給契約の一定の部分に関する欧州議会及び欧州理事会指令第634/2015号の草案が公示された。ソフトウェアやアプリケーション、その他のデジタル的性質を持つ商品が、一般的かつ頻繁に取引されるようになり、企業及び個人の生活が急速なデジタル化のプロセスに直面していることを考慮すると、当該指令の重要性は非常に高いものである。当該指令は、企業と消費者との間の、プログラム、動画、音楽コンテンツ等を含むデジタルコンテンツ及びサービスの提供にかかる契約に適用される。また、ソーシャルネットワークプラットフォームなどの特定のデータの共有を可能にするデジタルサービスの提供に関する契約だけでなく、 「クラウド」と呼ばれるデジタルデータ処理サービスまたはストレージサービス契約にも影響を及ぼす。 当該指令草案は、デジタル分野での国境を越えた事業取引をする上で、障害または障壁となるようなEU加盟国間の法的規制の相違を縮小することを目的としている。つまりは、デジタル単一市場の発展を目指しているといえよう。 同時に、供給側と顧客との間のその場その場で作られる契約によって、市場動向の定型化が困難あるいは不可能になる前に、この種の契約の法的取引を規制することを目指している。 2017年6月8日、欧州理事会は、当該指令草案について以下のような立場を採択した。 当該指令によって、デジタルコンテンツ及びサービスの使用料を支払うための契約条項のみならず、デジタルコンテンツの供給者が取り扱う個人情報を提供する場合における消費者救済に関する契約の条項も設けるべきである 。ただし、供給者が個人情報を専有的、及び排他的にサービスを向上させるために扱う場合、あるいは特定のデジタルコンテンツ提供、または特定の強行的な準則の遵守を目的とした場合は、例外とされる。 顧客と供給者の間で矛盾または不一致が生じた場合、当該指令草案によれば、供給契約の解除に先立ち、供給者側に第2の機会を与えるための権利が与えられる。 供給者の責任の期間に関して、当該指令はEU加盟国間の相違を完全になくすことまでには至っていないものの、一般的な期間として、提供されるコンテンツまたはサービスに適合しない場合の供給者の責任期間について、いかなる場合においても2年を下回ってはならないと定め、デジタルコンテンツの提供または取引の対象となるデジタルコンテンツにおいて紛争の可能性が生じた場合には、当該期間内に供給者への立証責任の転換が行われる。 当該指令は、会社規模によってサービス供給者を区別することは消費者の信頼を損なうとの理解のもと、大企業と中小企業の両方をその適用対象とすることを目指しいることは言及に値する。欧州議会が目指すのは、国境を越えて統一化された規制を備えたビジネス環境の提供であり、特定の契約条件を用意するための費用を負担する必要がなくなることにより中小企業、特に小規模企業にとって有益であるべきと考える。しかし、いくつかのケースにおいては、当該指令に基づいてEU加盟国が各国において制定する法律が、供給者又は顧客の規模や両当事者間に存在する特別な関係に応じて、補完または修正される可能性があるだろうと考える。唯一の要件は、前述の修正が消費者に損害を与えないことである。 本指令草案は、消費に関する契約法の強行法規的な性質を有し、指令に定める要件の逸脱が消費者に損害を与えるのであるならば、当該逸脱は消費者を拘束しないことを明確にする。 欧州議会によれば、当該指令で定められる措置が施行されれば、この種のビジネスにおいて10億ユーロの売上増加に貢献し、また、価格の下落をもたらすはずであり、したがって、消費の成長効果を生むだろうと期待される。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年6月30日  

EISER事件 投資家の法的安全 vs立法主権

本稿では、2017年5月4日付の国際投資紛争解決センター(ISCID)仲裁裁定 事件番号ARB/13/36号について述べる。 申立人であるEiser Infrastructure Limited社及びEnergía Solar Luxembourg SARL社は、国際投資紛争解決センターに対しスペイン王国を相手として、以下の事実及び論点を根拠とした仲裁を申し立てた。 申立人はスペイン勅令(RD)2007年第661号の規定枠組みによってもたらされる経済的な期待に基づき、太陽光発電所の投資を行った。当該勅令は、政府の予算があてがわれる電力の固定買取価格制度を定めていた。 2007年に引き起こされた経済危機により、 スペイン政府は勅令2007年第661号により設けられた固定買取価格を維持するための予算を継続することができなくなり、一連の立法措置により、申立人の太陽光発電所にかかる経済制度が修正された。さらに、2013年法第24号、勅令2014年第413号及び命令IET2014年第1045号を制定した。 新しい枠組みは固定買取価格の減額を想定しており、結果として、当時存在していた固定買取価格制度を基礎とした第三者の資金でプロジェクトの資金調達をしていた申立人の収入が大きく減少した。このように、新しい枠組みによりもたらされた資金フローでは、既存の債務の返済に足るものとならなくなった。 申立人は、スペインの新しい枠組みは、エネルギー憲章に関する条約(「TCE」)が定める手続き義務、具体的には、同条約第10条及び第13条に違反するとして、訴えた。 仲裁裁定はそのすべての局面において、投資家への「公正かつ衡平な待遇」 の保証に関連した問題について強調して言及していることは興味深い。要約すると、ISCIDは以下の裁定をくだした。 TCE第13条に反する「間接的な収用」の概念及び本件における潜在的な存在について、仲裁裁判所は、2012年のCharanne vs スペイン王国の事件と同様に、法令の改正によって重大な影響が引き起こされたという事実だけでは、重大な収用と評価されるためには不十分であると判断した。2012年のUNCTADのレポートでの収用の定義にもあるように、法令の改正によって被った損害は、名実ともに投資の「価値の損壊」であると評価されなければならない。 法的枠組みが将来的に修正されないことを投資家に保証しているわけではない。TCE第10条のいう「安定性の原則」は、特別に明確な合意が存在しない場合には、法令の改正が不可能であると曲解することはできず、すべきでもない。国家は、日々の問題や、より高度な利益である公共の利益に対応するために、法令を改正する権利を有しているが、それは一定の条件下のもとでのみ可能である。 法令の改正は、非合理的、法外、又は無慈悲なものであってはならない。本件の場合、仲裁裁判所は、太陽光発電所にかかる新しい固定買取価格制度の枠組みは、申立人から実質的に投資の価値のすべてを奪うものであり、「不平等かつ不公平である」と結論付けた。つまり、仲裁裁判所は、投資財産は投資家の手から奪われていないにもかかわらず、国がこれらの投資価値を奪ったとして、本件法令の改正は名実ともに間接的な収用を引き起こしたとみなしたといえる。 また、仲裁裁判所は、法令制度は変化する可能性があること、そして投資家は、あらかじめ投資に関連する法的枠組みに関する知識の習得のみならず、それ自体の修正の可能性についても予想すべきであるが、投資家は投資価値の剥奪を想定すべきでないことを確認した。 したがって、TOTAL社 vs アルゼンチン政府の事件(2010年4月1日ISCID仲裁裁定)やOCCIDENTAL社 vs エクアドル政府の事件(2004年ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA) UN第3467号)において用いられた意味で、投資家に「公平な待遇」を与えることは、国の義務である。 最後にISCIDは、 新しい固定買取価格制度は収益性の計算の基礎となるが、2014年以前の典型的な太陽光発電所の費用見積もり時には現実的な数字ではなかったことから、2014年命令IET/1045号による2014年の新しい法令制度は、申立人から実質的にすべての投資価値を奪うものであり、申立人への公平な待遇を奪ったと評価した。当該命令は、新規の太陽光発電設備と既存のもののいずれにも適用されるものであるところ、その経済的持続性の基礎を2007年勅令第661号の定める固定買取価格とし、新しい制度における固定買取価格では持続することが難しい既存の設備にとって、極めて有害なものである。   上述により、仲裁裁判所は申立人に対して128百万ユーロの損害を認めた。この金額は、申立人の投資額の総額と一致するが、申立人の主張のうちのいくつかについては認められなかったため、申立人の請求額には遠く及ばないものであった。 公正な待遇と不公正な待遇の境界線、及び、公共の利益に資するが私的投資にはネガティブな影響を及ぼすような法令改正が間接的な収用に該当するかの判断基準は、あまり明確であるようには思えない。TCE 第2条にいう安定した法的枠組みの原則は、特に国と投資家との間に特別な同意が存在しない場合、及び法的枠組みの改正が緊急を要するような状況においてもなお、不変の原則として国家を拘束することはできない。 法的枠組みの一時的な改正の影響を評価することは適切である。国がある特定の緊急事態において公共の利益を保護するために私的利益に反する規則を設けた場合には、危機を乗り切った時点において元の状況に戻すことができるのと同様である。また、ある会社が一定の経済危機の状況を乗り切るために 労働者の一時的な損失において、集団の利益のために雇用の規制を実施することができる。国においても同様の権利があると考えることはできるはずであり、その理由は公共の利益の保護である。 では、公共の利益保護を理由とした一時的な枠組みの変更の場合であったなら、間接的な収用に等しい投資価値の剥奪とみなされただろうか。 国の対応で非難されるべき点は、2007年の制度枠組みを定める時点に見るべきだろう。まず、現実的な提案とは言いがたく、外国からの巨額投資を惹きつけた投資家への約束を長期にわたって維持することへの責任が欠けており、中長期的に固定買取価格制度の資金をどのように維持すべきかについての知識を有していなかったこと。次に、2007年の規制枠組みに基づいたプロジェクトを有する投資家にとって不公正で有害な状況となることを避けることができるような、前進的な規制枠組みや新規投資と既存投資とを区別するような経過措置を考えなかったこと。この点からすれば、申立人への経済的補償は結果として公正なものとなるだろう。 要するに、国の立法権は投資家の公正な待遇原則に優位するが、これは、経済状況がそれを必要とし公共の利益に応えるために、たとえそれが私的利益を害する可能性があったとしても、国がその法的枠組みを変更できる、もしくは変更すべき、ということを意味すると結論づけることができるだろう。仲裁裁判所は、法的枠組みは安定かつ透明性を有することが重要であり、そうあるべきであるとし、そうでなければ外国からの投資を誘致することができず、法改正がされる場合には合理的でなければならず、投資がから投資の価値を剥奪するような無慈悲なものであってはならないと示した。しばしば、法令改正は投資家にネガティブな影響を与えることがあるが、これが投資価値の破壊に該当しなければ補償問題は生じない。さらに、国が私的利益に反した法令を制定することはできるし、その方法によっては、公共の利益を重んじる結果、投資家から強制収用するような効果を生むこともある。しかし、当該効果は国の法的自治を制限するのではなく、単に、国が影響を受ける者への公正な補償を行うことを義務付けるものである。   より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es 2017年5月19日

債権回収: EU内の銀行口座保全差押え命令

2014年5月15日付欧州規則第655号が2017年1月18日付で施行され、国境をまたいだ債権回収の簡易化を目的とした保全手続きに関する規定が設けられた。 本規則により、債権者は延滞債務者の銀行口座への差押え命令の発令をEU各加盟国の裁判所で請求することが可能となる。債務者の口座が債権者とは別個のEU加盟国に所在するために、債務逃れを容易にしているという事態の防止を目的とする。この請求について、二つの異なったシナリオが用意されている。 a)本件の債務者に対する強制執行手続きの開始前及びその手続き中に保全措置として請求された場合 b)当該請求が強制力を持つ時、すなわち、裁判所の決定や司法取引、あるいは債権者への債務支払いを義務付ける強制力を持つ公文書に基づいた請求である場合 適用範囲 当該規則は、国境をまたいだ民事及び商事上の金銭債務に適用される。「国境をまたぐ」とは、差押えの申立てを受理した司法機関が属するEU加盟国(当該案件について深い考察をした裁判所が存在する加盟国)及び債務者が住所を有するEU加盟国のいずれとも異なるEU加盟国内に保全差押えの対象となる銀行口座が存在する場合と理解される。 税金、関税、行政上の問題又はその権限の行使により生じた国の責任には適用がされない。  例外的に、その民事、商事的性格にもかかわらず、結婚、遺言、仲裁、社会保険や倒産の債務は当該規約の適用範囲から除外される。 差押え命令を取得するための要件 管轄権を有する裁判所は、以下の場合に差押え命令を発する。 債権者が緊急に保全措置をとる必要性があることについて十分な証拠を提出している場合。つまり、差し迫った危険があるため緊急に保全措置をとる必要性があるという状態であり、もし保全措置が取られなければ、後から債務者を相手取って債権の回収を実施することが不可能もしくは非常に困難となることを証明しなければならない。「十分な証拠」という用語は不明確ではあるが、管轄裁判所は証拠資料及び「periculum in mora」の判例解釈に基づき判断をするものと考えるべきだろう。 すでに債権回収にかかる司法手続きが開始されているものの未だ解決には至っていないような場合に、差押え命令の申立人が「Fumus boni iuris」、つまり、債務者を相手取った訴訟が、その主たる部分において自身に有利な結果となる可能性があることを証明しなければならない。 主たる訴えが提起される前の保全差押え命令の請求の場合 この可能性は、本規則第5条から第10条第1項の規定から推測することができる。命令が発せられる要件において、第7条第2項は、主たる訴えが提起される前の保全差押え命令の請求について明確には言及していないが、主たる訴えが係属中である場合と同様の要件が適用されると考えるべきだろう。したがって、申立人は、差押え命令請求が認められるために「periculum in mora」と「Fumus boni iuris」の存在を証明しなければならない。これらの場合において、債権者は当該事件の主たる訴えを開始しなければならず、差押え命令請求の提出後30日以内に管轄裁判所に対し主たる訴えの申し立てを行わなければならない。本規則第10条第1項は、上記期間について自然日なのか営業日なのかは明らかにしていないが、本規則のその他の条項において定められる期間と同様、営業日と考えるべきだろう。 特異性: 「in auditada parte」手続き 本規則第11条は、管轄裁判所が債務者に差押え命令請求が提出された旨の通知を行うことを防いでいるため、裁判所は命令の発令前に債務者の弁論を聞くことができない。これにより、差押え命令の効率性が強化される。管轄司法機関が命令請求の判断を行うに先立って相手方の主張を聞く機会を設けると、その時間で債務者が差押えの対象となる銀行口座の閉鎖や、口座内の資金の全部または一部を別の場所へ移動又は消費する等、債務者保全措置の危険を避けるための時間を与えることになり、結果として保全措置の効率性が失われかねないからである。 保証 申請中の案件が、主たる訴えが提起される前の予防措置としての請求の場合、裁判所は差押え命令を発令する前に請求者に担保の提供を要求することができる。強制執行の裁判所決定及び司法取引、あるいは強制力を持つ公文書に基づいた請求である場合も同様である。担保提供請求は任意であり、案件の状況に関する裁判所の認識に依存する。 当該措置は、その請求時のタイミングに関して批判を受けている。というのも差押え命令発令されるまでの手続きにかかる時間と、申し立ての存在が債務者に漏れる回復不能なリスクを考慮すると、命令が実際に発令される前に債務者側の防御を可能にすると推測できるからである。命令発令後非常に短い期間内での担保預託を請求し、預託が実行されなかった場合、命令取消の処罰を下した方が有効であっただろう。 情報開示要求。 債権者の現実的な問題は、しばしば債務者の口座の実態を知らないことである。当該規則第14条は、保全差押え命令の申し立てが提出された裁判所に口座情報の入手制度を規定している。情報入手方法は、各加盟国に委ねられている。 発令までの期間 当該案件の管轄裁判所は、債務者に対する強制執行の裁判所決定及び司法取引、あるいは強制力を持つ公文書に基づいた請求である場合、保全差押え命令の申請書が提出されてから5営業日以内に請求を決定しなければならない。それ以外の場合は10営業日以内の決定を義務付けている。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es 2017年4月13日

EU内会社登記情報の相互接続の進展

欧州単一市場は、企業及び個人にとって商的・経済的チャンスの大きな枠組みを形成する。それは日に日に大きな割合を獲得しており、国内企業は国境を超えた商機を探すようになっている。例えば、クロスボーダーのM&Aを通じて他の加盟国に事業所を持つ企業を吸収することで、取引のボリュームを拡大する可能性を探るなどである。 EU加盟国は国ごとに商業登記制度を有しており、登記により国内の会社の主たる情報や変更履歴を確認することができるようになっている。この商業登記制度は、国内レベルの観点では、国内市場の情報、保護、そして法的安全のために非常に有用なツールである。他方、EUレベルに目を向けると、言語の問題やEU内のあらゆる国で設立された会社について情報を収集するための手続きの困難が問題視されている。クロスボーダー取引が活発化する状況において、企業に関する情報へのアクセスの要求へ対応するため、EUの安全及び公正な場所の構築に貢献するために、商業登記の統一化と連携が必要とされていた。 EU加盟国内の設立済みの会社に関する情報を収集するためのEUのインフォメーション・システム 2012年欧州指令第17号はEU域内の商業登記簿間の相互接続システムの構築を定めた。これは「Business Registers Interconnection System」(略称「BRIS」)として知られている。また、欧州委員会施行規則2015年6月8日第884号により、上記登記簿間相互接続システムのための仕様及び技術的な手続きが定められた。 BRISは現在試用運転期間であり、2017年6月に本格的な稼働が予定されている。 当該システムには、主な2つの機能が備えられるとされる。 (1) EU加盟国の商業登記に登記がされている企業の情報へのEU域内からのアクセスを与える。 (2) EUのすべての商業登記簿間の電磁的コミュニケーションを可能にする。これにより在外支店や在外子会社の情報交換が可能となる。 個人にとっての利点とマーケットにとっての利点 M&Aやジョイントベンチャー、商的取引の対象となるような企業を探し始める際に、EU域内企業の特徴や状況の調査が可能となる。 各国の捜査当局が、加盟国に登記がされている情報をやり取りする情報交換のための手段ともなる。 潜在的な合併または加盟国間における企業買収といった場面において、企業グループの観察及び分析が可能となる。 株主の利益は保護されるが、第三者、プロバイダー、債権者、顧客等の利益も保護される。 市場の透明性に寄与し、クロスボーダー取引を容易にする。 国内の登記義務を怠っているような企業を市場から淘汰することにつながる。 上記を補足するものとして、European Business Register(略称EBR)というものが存在する。これは、ヨーロッパの商業登記簿間で情報交換をする共同ネットワークで構成されている。EBRは自国の商業登記所において登録をすれば個人・法人のいずれも利用でき、 EBRを構成する加盟国内に登記がされた企業に関する情報へ国境を超えてアクセスすることが可能である。 3つ目のクロスボーダーの企業情報ソースは、欧州単一市場における商流の安全に非常に有用なものとなるであろう、倒産登録である。現時点においても倒産登録は存在し、8つの加盟国(オーストリア、ドイツ、チェコ、エストニア、ラトビア、オランダ、ルーマニア及びスロベニア)における倒産手続きにかかる情報が取得できるデータベースとなっている。倒産登録の有用性は、地理的な限界により、未だ相対的である。 2015年欧州規則第848号は、加盟国に国内の倒産登録(Insolvency Register)の設置を義務付けた。しかしながら、上述の企業情報の場合でみたとおり、これだけでは不十分であろう。したがって、広範かつ有効な適用をするためには、EUのポータルであるThe European e-Justice Portalを、システム内にあるすべての情報へのアクセスポイントとして、これを通じた各国登記官の情報交換が必要だろう。 スペインや他の加盟国は現在国内データベースを欧州のシステムに統合するための作業を行っており、欧州規則に定めるところによれば、当該作業は2018年6月26日までに完了しなければならない。

金銭によらない出資による増資は一定の条件下に限られる

  2017年1月3日付の登記・公証局決定により、合同会社(S.L.)の増資に際して金銭によらない出資がされるための条件が明らかにされた。 本件において、合同会社は、ビジネス・ユニットの一部を構成する動産の出資による増資を行うことを決議した。当該決議においては、出資に用いられる動産について、その価値についての記載はあるものの、それ以上の詳細にかかる記述はなかった。当該増資に用いられる予定であった資産は、設立前の会社を構成するものであった(当該会社は設立後第三者に売却される予定であった)。 バレンシア商業登記所登記官は、設立前の会社は、法律行為の目的物となり得るものではなく、権利に拘束されたものであり、また、ビジネス・ユニットというものはそれだけで事業を行うに足りる要素の集合体をいうのであるところ、本件において会社が主張するビジネス・ユニットはそのような性質を有するものではないことを理由に、当該出資はまったくもって明確性を欠くものであると主張した。 登記・公証局の決定は、金銭によらない出資である場合、会社の増資決議にかかる公正証書には、登録されたデータ(存在する場合)、ユーロ建てでの資産価値及び株式または出資持分の証券番号が記載されなければならないことの指摘から始まった。それは合同会社が資産価値にかかる報告書の提出が必要でない場合であっても同様であるとされた。また、商業登記規則第190条第1項は、公正証書において出資に用いられる動産または権利を明記する義務を定めている。他方、金銭によらない出資の特定は、出資に用いられた動産ごとに行われなければならず、まとめてされることはできない。ただし、当該動産が「集合で一つの資産を構成する場合」または「会社または商事施設や工業施設」である場合は例外とされる。資産ごとに特定をしなければならない理由は、出資者と出資に用いられた動産または権利との間の、所有権の名義や経済的価値といった責任関係を明確にするためである。 本件においては、設立済みの会社の集合体を「ストック(株式)」のようなものとして後に譲渡することを目的に、出資に用いようとしていた。出資の性質として、商業登記官は「会社は権利主体であって他の会社の増資のための出資財産として用いられることはできない。それら会社の出資持分が他の会社の増資のための出資財産として用いられるのとは結論は異なるべきである。」と強調し、確認した。また、もし完全に特定されたビジネス・ユニットによる出資というオペレーションであったならば、そのオペレーションは可能であることは2016年7月2日付決定によって登記・公証局が示したところである。 最後に、登記・公証局は、増資オペレーションに用いられる資産が、複数の会社(税務情報とそれぞれの会社の商号の特定が詳細になされている)を設立して後から売却するという事業を行うような会社によってつくられたビジネス・ユニットである場合、増資にかかる公正証書において一つのビジネス・ユニットを構成する資産について言及が乏しく、当該出資財産全体の価値のほかに詳細な情報が記載されていない以上、出資財産は正しく特定されているとは言えない、指摘した。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 エドアルド・ヴィラ va@vila.es 2017年1月27日