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スペイン有限会社の持分譲渡の制限

スペイン登記公証局は、2018年7月31日付け決定にて、ドラッグアロング(強制売却権)及び タグアロング(共同売却権)に関する定款規定の合法性に関し、有限会社の会社持分譲渡の自由に制限を課すことへの株主の自主性尊重の限界を指摘する見解を示した。 具体的には、ある会社が以下の内容のタグアロング規定を定款に含めるための定款変更登記をしようとしていた。 会社持分の50パーセント以上を保有する株主が、第三者に対しその持分の全て又は一部を譲渡しようとする場合は、他の株主もその保有する持分を、当該譲渡と同じ条件で同一の譲受人に譲渡する権利を保証する、いわゆるタグアロングを付与する。 また、ドラッグアロング規定は、会社設立より5年が経過した後に、株主又は第三者が会社持分の全部について買い取る提案をした場合、譲渡人である株主は他の株主に対し同条件で同一の譲受人に持分を譲渡することを強制することができる、としていた。 商業登記所登記官は、上記2規定の登記を以下の理由により拒否した。 これら2規定は、持分の譲受人が他のすべての持分を取得したくない場合、もしくは他の株主が、タグアロング権を行使したくないケースを予見していない。同様に、持分譲渡を検討している株主自身が、当該譲渡を断念した場合に起こる事象に対する予見もされていない。 したがって、本件の登記却下理由は規定の違法性に基づくものではなく、特定の起こりうる事象を未然に防止するような配慮が規定起草時にかけていたことによる。 登記公証局(DGRN)は最終的に、商業登記官の決定を覆し、以下の見解に基づいて、本件のドラッグアロング(強制売却権)及び タグアロング(共同売却権)規定にかかる定款変更の登記申請を受理する決定を下した。 1) 一般的に、有限責任会社は非常に「非公開」的性質を有しているとみなすことができる。したがって、株主間の相互取引、あるいは配偶者間、株主の親族間、グループ会社間の持分譲渡以外は、会社の定款規定の要件に従って譲渡が制限される。しかしながら、いかなる場合においても定款が株式の自由譲渡について完全に認めないことはできない。定款が上記点にかかる予見をしていない場合は、補足的な性質を持つ資本会社法第107条および第108条の規定がこれを補う。 2) この点における資本会社法の補足原則を考慮すると、持分譲渡の合理的な可能性又は持分に囚われることを回避するための退社の可能性が株主に保証される場合には、株主は持分譲渡を制限する代替案を規定する権利を有すると言える。そうでなければ、民法第348条に規定される資産の取引を認める基本原則に反することとなる。 3) 定款規定による持分譲渡の制限は、上記原則に違反せず、合法的な禁止を尊重するものであり、法的に認められていると理解されるべきものである。 最終的に登記公証局は、登記官は持分の自由譲渡に関する制限を規定する定款規定の合法性を検証することはできるが、規定の細部までに入ることはない。そして、法的枠組みの中で、株主は有限責任会社の特徴である非公開性を維持するために適切であると考える措置を決定する自由を享受する、との見解を述べた。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年10月12日

マネーロンダリング EU指令第2015/849号の国内法への置換

2018年8月31日、スペイン政府は閣議でEU指令第2015/849号をスペイン国内法へ置換するための措置として、マネーロンダリングに関するスペイン法第10/2010号を改正する勅令法第11/2018号を承認した。 本勅令法は、主として、企業に対するサービス提供者のライセンス又は登録にかかる新たな義務を制定するものである。また、違反に対する重罰化や疑わしい取引を公的及び私的に届け出るための通報窓口についても規定する。 その中でも特筆すべき点を以下に挙げる。 1. マネーロンダリング規制の対象となる高級官僚、裁判官、中央政府や州政府の閣僚、国際機関の代表者及び執行役員、人口5万人以上の地方政府の首長、政党及びシンジケートの代表機関に属する者を含む、公的責任を持つ者を規定する。本勅令法で規定される義務は、該当者が該当する役職を離れてから2年を経過するまで課される。 2. 業務として資産を取引する自然人又は法人は、非居住者である自然人から、取引額又は関連取引の総額が1万ユーロ(以前は1万5千ユーロ)を越える請求又は支払いが現金でされる場合、スペイン法第10/2010号の規定される義務の対象となる。 3. マネ―ロンダリングに対する罰則は強化され、EUの法令で規定されることとなる。同様に、一定の守秘義務を保証しつつも、違反者の名前を公示する措置もとられる。 4. マネーロンダリングに関連する取引実行の疑いがある、又は、明らかに実行している者の身元について守秘義務を保証しつつ、違反を届け出る制度を設ける必要性を規定する。本法律の適用を受ける者は、従業員及び役員が、法令違反の可能性を報告できる制度があるかを監視する。 5. 企業及び信託に専門的サービスを提供する者の登録制度が創設される。本登録制度には、会社設立時や、執行役又は取締役会のメンバーでない書記役、社外監査役としての権限で実務を行う専門的なサービスを提供する者が含まれる。該当する職業に就く者は、商業登記規則の規定に則って、(法人の場合には)実質的保有者の届出とスペイン法第10/2010号に則っていることを宣言したうえで、商業登記所に登録をしなければならない。該当するサービス提供者のうち本勅令法の施行時(2018年9月4日)に商業登記所に未登録の者は、一年の猶予期間の間に登録をする必要がある。 6. 義務の対象者は、顧客が自身または第三者の利益のために取引を実行するのかを調査するために、顧客から実質的保有者の身元に関しても情報を収集しなければならない。顧客が自己の利益のために取引を実行しているのではない疑いがある、又は、自己利益での取引でないことが明白である場合、実質的な取引実行者の身元を確定するために正確な情報を収集しなければならない。 7. 本法律の適用を受ける者は、法人又は保有者や管理者を特定できない法人格を有さない組織と取引関係を持つ、又は、維持することはできない。 8. マネーロンダリング対策システムに欠陥が見受けられる国々(EU指令第2015/849号第9条に規定)は、対策のための強化措置を採らねばならない。送金取引、通貨取引にも同様に適用される。 9. 前述の義務に関連する書類の保存期間は10年とする。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年9月7日

仮想金融資産の規制「マルタルート」

2018年6月26日マルタ共和国議会は、ブロックチェーン技術を包括的に規制することを目的として、ICO(Initial Coin Offeringデジタルトークンの発行による資金調達方法)の発行から、仮想通貨取引所までをカバーした3法案のパッケージを承認した。本法律は、ブロックチェーン技術及びそれを取り巻く経済生態学に関する法的枠組みを構築するパイオニア的な構想であるといえよう。本法律制定の目的は、上記分野において既に取引を行っている者及び取引を検討している者に対し、投資を奨励し、新規経済活動の発展に貢献するような法的安全性を提供する規制環境を構築することにある。 3つの法律の中から本稿においては、この種の資産に関連する活動を規制する一つの解釈方法として、仮想金融資産法を簡単に分析する。 本法律は、仮想金融資産を広範囲及び対照的に定義している。つまり取引媒体、決算単位、貯蓄方法として利用されるデジタル登録手段で、 電子マネー 金融商品 トークンと一般的に呼ばれる電子代用硬貨 「以外」のものを仮想金融資産とするとしている。 他方で、仮想金融資産を他のデジタル資産と区別するために、DLT資産(Distributed Ledger Technology Asset: 分散型台帳技術資産)という分野を以下のカテゴリーに分類する a) 仮想トークン b) 仮想金融資産 c) 電子マネー(前もってICチップにチャージされた金額を取引決済の支払いのため、当該電子マネーを発行する機関とは異なる個人によって受領されると理解される) d) 金融商品 マルタでは、仮想金融資産の公募又はDLT資産の取引マーケットでの取引開始に先立った管理体制の構築が選択された。したがって本法律は、管轄機関による単なる監督システムに限定されるのではなく、本格的な事前承認を与えるものといえよう。 本法律が、「電子マネー」による取引業務を行う場合、電子マネーの発行者は金融関連の法律を遵守しなければならず本仮想金融法は適用されない、としたことに言及すべきであろう。当該判断により、本法律では電子マネーと仮想通貨の性質を区別した。電子マネーを平易な通貨とみなし、金融機関に対する法律に準拠することを義務付ける一方で、仮想通貨を仮想金融資産とみなし、その発行には当該法律が適用されるとした。 当該法律適用の最初の主な実用の一つは、ICO発行に関するものである。ICO発行及び他の仮想金融資産の公募の際も、発行元は、当局の前で提供する商品・サービスの核を明確に説明する書類を提出する必要がある。これは潜在的な投資家が、本オファーが内包する固有のリスク、発行元の身元、オファーされる仮想金融資産の性質を把握できるようにするためである。 仮想金融資産の公募は発行元が直接行うのではなく、仮想金融資産エージェントを雇うことを義務付けている。当該エージェントの要件は、マルタあるいは他国において特別資格のような形で正当に認識・登録される弁護士、監査役、会計士、企業サービスの提供者のような者でなければならない。当該規制の規定要件を満たさない仮想金融資産及びDLT資産の取引は禁止される。上記条件は、エージェントの費用や取引前の段階での書類の準備に時間がかかることで、仮想金融資産のオファー開始の可能性を制限し、ふるいにかけることになるだろう。 また、マルタ政府は発行者の身元及び連絡先を初期の段階から管理することとなる。本法律によって、仮想金融資産サービスプロバイダになるには、行政が発行するライセンスを所有することが要件とされており、誰もが仮想金融資産を公募できるわけではない。また、本ライセンスの取得申請は、仮想金融資産エージェントを通じてのみ行うことができる。 ライセンス保持者が市場で仮想金融資産の運用を行うには、管理規則の遵守、保全システムの設置、賠償責任保険契約、十分な資本力、適切な金融リソースの確保等を具備していることが義務付けられる。本ライセンスは当局によって取り消し可能であり、毎年一定額のライセンス料の支払いが請求される。 行政機関は規制遵守体制を監視する。これには、ライセンスの取り上げ、検査の開始、違反者への罰金、仮想金融資産の発行元を管理し、本資産を市場から一時取引中止又は取引停止をする権限をも含む。 管理措置としてライセンス保持者は、オペレーターとして引き続き運営することが危険であると判断するような規制及び状況からの逸脱について、管轄機関に報告する義務を持つ監査役を任命する義務を有する。 マルタ当局の立法努力を否定すべきではないが、本法律が仮想金融資産業界の発展の助力となるのかというと、疑問が残ると言わざるを得ない。懐疑的になる理由の一つは、仮想金融資産やプロモーターの本来の精神及び性質からかけ離れた本規制の網羅的性質、硬直した認可システムにある。他方、エージェント及び監査人による介入の義務付けは、IPO及び従来の金融商品の公募のモデルに近づけるものであり、最終的に金融エージェントの存在が永続的なものとなり、この新しいマーケットが法令の要件を遵守するための人とカネのある従来の大手企業の手に収まることに終わる可能性がある。人・カネの裏付けがない新興企業は本サークルより除外されるか、新構想を前進させるためには、構想自体を第三者の手に委ねる必要が出てくる。 要約すると、規制当局の存在は、管理・監督の権限により投資家保護の視点で利益に資するが、規制により仮想金融資産の公募に必要な義務及び条件が金融エージェントの参加の義務化等多岐にわたることによるネガティブな側面も存在する。本法制度は、過度な規制、コスト高、遅い等現在の活発化した市場には不適格であり、ひいては仮想金融資産の健全かつ多様的な発展を妨げる可能性があるといえよう。 より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 Eduardo Vilá va@vila.es 2018年7月13日

仮想通貨とデジタル経済

欧州司法裁判所2015年の判決を受けて、ドイツ財務省は2018年2月22日、仮想通貨による決済の法的扱いに関する見解を発表した。当該見解によれば、仮想通貨は商品又はサービスに対する即時的・契約的な決済方式・手段として受け入れられつつあり、法定通貨による決済手段と同等の扱いを認める、としている。仮想通貨から通常の法定通貨に交換する際に利益が発生する場合は、当該利益は課税対象となる。また、交換業者が仲介名目で行う取引自体は課税免除されるが、交換プラットフォームは課税対象となるとした。同様に、仮想通貨のマイニングに対する報酬は任意的サービスとみなすため課税対象にはならないが、仮想通貨を保管するウォレットと呼ばれる仮想通貨口座の所有者が得る手数料は課税対象となるとした。 仮想通貨を決済手段として認めるとすると、次のステップは、その法的領域を具体的な方法によって規制する法制度の整備、又は法定通貨に適用されるような法的枠組みが同様の形で仮想通貨に適用可能かの判断であろう。後者の場合は、仮想通貨の性質を考慮すると非常に難しいと言わざるを得ない。すなわち、仮想通貨は中央当局の枠外で取引されるデジタル資産であり、単純な禁止以外、金融当局その他の行政の介入の可能性がない浮動的な金融市場システムを持つため、通常の法定通貨と同様の扱いは合理的とも現実的とも言えない。 他方、欧州委員会関係者のこれまでメッセージは、一貫性に欠けるものであると言わざるを得ない。2017年12月モスコビッチ委員は、EUは仮想通貨を規制する予定はないと発表したが、当該発言に関して欧州委員会副議長は、競争力を維持するためには仮想通貨を受け入れるべきだとしながら、部分的にはモスコビッチ委員を支持しない発言をしている。今年1月、フランスは自国に規制委員会を設置する旨を発表し、ドイツは世界レベルで規制する必要性を述べた。これらの声明は、2017年12月から2018年2月までの3か月間に行われた。それは仮想通貨の急激な投機的動向が世界規模で見受けられたこと、仮想通貨取引所にて盗難が発生したことに由来することに留意すべきである。 この流れからすると、仮想通貨を「決済手段」とカタログ化することは、「仮想通貨」というコンセプトへの深い法的扱いを回避するための中立的な処方であるとの結論付けができよう。これはつまり、仮想通貨市場における取引が、通常の市場取引のように当局もしくは中央政府の信用付与によって決定される客観的価値に基づくのではなく、本事業に関わる人々の間でのみ認識されている価値を有するデジタル性質を持つ資産の取引であるという事実が明白であるということを、確認するに過ぎない。これを念頭に置くと、仮想通貨というコンセプトは現在、通貨の基本的な機能を有しながらも、従来の法定通貨という用語には適合しないと判断すべきであろう。 本稿においては、「仮想通貨」及び「仮想資産」という表現を同じものを指す言葉として区別なく使用する。法的性質上のコンセンサスは存在しないが、「仮想資産」とういう用語はより現実に即した表現であるという印象を受ける。 次に、各国における仮想資産に対する立場について言及する。アジアでは日本とシンガポールが、デジタル資産投資誘致のために、あいまいな部分を保ちながらもオープンな立場をとっている。日本が、仮想通貨取引メカニズムの性質に対する公式見解を発表することなく規制を行うことに焦点を当てていることに対し、シンガポールは仮想通貨による決済、通常の通貨による決済、あるいは他の有価証券による取引の法的扱いと差異はないと表明しており、消費者保護の必要性を認識している。カナダにおいては仮想通貨を「通貨」として定義することを(本質的な価値が実装されていないため)否定し、これを金融資産のひとつであるとみなし、金融投資や金融商品に対するのと同様の金融市場関連の法律を適用する可能性を警告している。一方でオーストラリア国税局は、仮想通貨を通貨または貨幣として定義することはせず、これを使用しての経済活動の結果としてスワップ取引可能な資産とみなし、課税の対象とすると最近表明している。 国家による管理という伝統的な観点から仮想通貨を規制する際の問題の1つは、取引の匿名性とその分散化された性質にある。したがって国家としては、例えば仮想通貨取引所開設に対する事前許可の必要性のように、伝統的な外貨両替所開設時と同様に遵守すべき一定の条件と規制を設けといった外堀的な局面からから規制を始めることは、論理的である。同様に、資金洗浄対策として、経済活動のトレーサビリティシステムの設置の義務化や、管轄当局への報告義務化を試行することも可能である。 取引所機能の規制は2017年5月に日本が採用した方法そのものであり、その主な目的は仲介プラットフォームに公的な信用性を付与することにあった。しかし、当該分野の規制をする国に拠点を置いて交換取引をするのは、ごく一部の業者のみであることは明白である。さらに、トレーサビリティシステムの設置を余儀なくすると、プライバシーを優先させる顧客の大部分を失うことにもなりかねない。最後に、分散型デジタル資産取引所の場合、国内規制を迂回して、規制を設けていない国や地域にサーバーを設置してプラットフォームを構築し、業務を実行することが可能であることもまた、明白である。 仮想通貨に対する立場を各国は、種々の要因を考慮して採用するが、主に以下に挙げる3つの立場に分類することができる。1)政治的もしくは経済的環境を重視する立場。(EUはここに分類される)2)自国経済に与えるその潜在的な可能性のために、デジタル資産取引所を招致しようとする戦略的な立場。3)経済的および政治的要請(ベネズエラ) 簡単にではあるが、ベネズエラのケースを検証する。ベネズエラは現在、深刻な経済危機に陥っている。2018年1月からの5か月間でインフレ率900%以上を記録し、更には強力な政治的圧力をかけるための国際的な経済封鎖の対象となってもいる。2018年2月、現状打開策としてベネズエラ政府は仮想通貨「ペトロ」のプレセールを開始した(53億バレル相当の石油によって裏付されている)が、市民及び企業のペトロに対する信頼の欠如により政府が期待したような実績を出せなかった。2018年3月15日には、ペトロおよびその他の「仮想資産」(「仮想通貨」という用語の代わりに使用される適切な総称)の規制に関する法案が提出された。本法案は、決済手段として仮想資産の使用及び、仮想資産の交換に法的認知を与えるものとするものだった。限定的なペトロに対する関心とは別に、仮想通貨の共有団体に属する市民は、ダッシュコイン(DASH)のようなマイニング作業が不要かつ、即時決済が可能であり、他の仮想通貨と比較して低い交換手数料をうたっている仮想通貨を使用しての支払い・請求決済行為を行っている。さらにビットコインのマイニングを行ったとの理由から技術者が拘束されたことを受け、DASHを決済方式として認める制作会社やサービス提供者が経済界に登場している。本現象が社会・経済的に興味深いのは、当該環境下にて行われている取引は自主的な性質である。特に、一連の取引が法定通貨への最終的な交換なしで完全に仮想通貨のみにて行われている場合は、国家からの直接的な管理のメカニズムの外にある。今日ベネズエラやナイジェリアで起こっていることを考慮すると、仮想通貨の本当の意味においての発展は、仮想通貨を投資プロジェクトや投機機会のひとつとしてとらえている先進国においてではなく、新興国や、国際的な経済封鎖の対象国において必要性の結果として起こる可能性があるといえよう。 しかしながら、仮想通貨は依然として投機の手段として認識されており、購入者は仮想通貨を保有し、通常の経済活動の中で使用する意図はなく、急激かつ相当な価値上昇の機会があればこれを法定通貨に交換することを視野に入れて購入している。イギリスではよく知られているスポーツのブックメーカーは顧客に対し、金融派生商品の一種として仮想通貨を提供している。このように顕著な投機的な利用は、予期しない急激な市場価格の変動や短期間での巨大損失や利益をもたらすことになり、更に、仮想通貨に対する不信感を植え付けることになりかねない。2018年第1四半期に起こったことは、通常の通貨であれば通貨危機が生じた時には中央政府が市場介入するが、仮想通貨は中央政府の支配を受けないことを前提としている以上、価値の乱高下が生じたとしても、それを抑制できるのは仮想通貨の取引市場のみであることを示した。価格の変動性の高さは仮想通貨の特徴の一つであり、客観的に安定した価格を保つことができない価値に、数年にわたって償却を生み出す重要な投資を行うことは困難であり、一般的な経済活動におけるその利用と発展を妨げる要因でもある。 しかしながら、仮想通貨を投機対象としてではなく決済方法として、通常の経済的活動に利用可能な手段とみなすならば、多くの仮想通貨が使用されることにより、通常の法定通貨のレベルに匹敵する程度まで価格変動性の幅が狭まる可能性は高い。仮想通貨が大きなシェアを獲得しデジタル資産マーケットが発展するためには、法令はその使用を限定することに焦点を置くのではなく、不正使用や消費者保護に関して、特に仮想通貨交換業者に関する分野に関しての規制に注力すべきである。しかしながら、仮想通貨は中央政府の介在しない分散型の性質を有する製品であり、それゆえに、間接的な規制のみが可能であることを忘れてはならない。つまり、立法者の役割は、デジタル経済の発展を妨げることなく、仮想通貨が法定通貨とともにマーケットで共存できるように、その大規模な使用によって発生するであろう問題も含めて、経済活動における比重が大きくなるまで、慎重かつ段階的に介入することが望ましいと言えるだろう。 Eduardo Vilá 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年6月1日

取締役の会社債務に対する連帯責任

2018年4月11日付スペイン最高裁判所判決は、会社の債務に対する取締役の連帯責任に関して、それまでの原則を支持する判断を示した。具体的には、会社が融資を受けた時に債権者が本会社の債務不履行のリスクを認識していたという状況下における取締役の責任に関しての判断である。 本件は、一見通常通りに経営されているように見受けられていたが、実は法定解散事由に該当する状態にあったある会社に対する判決である。そのような状態であったにもかかわらず、当該会社の二人の取締役は、会社解散を行わず、また、法の定める資産のバランスを回復させるための措置もとらずにいた。加えて取締役は、おそらくは会社の純資産が実際にはネガティブであることを隠匿するために、商業登記所に毎年の会計書類を提出する義務を数年間怠っていた。 本件の債権者は、債務者である会社に対し、二年の間支払いが滞りがちでありながら、材料を供給し続けた。上記取引関係の過程で、債権者によって承諾されなかったものの、債務者が債権者に対し債務整理合意のための事前調整を行う意思を表示したことは、言及するに値する。 最終的に債権者は、会社及びその取締役に対して、債務の支払いを求める訴訟を起こした。原告側は、取締役の連帯責任を追及する事実要因として、解散事由の存在を認識してから2か月以内に株主総会を開催する義務を怠ったことを挙げた。法的根拠としては、旧有限会社法第105条第5項(現資本会社法第367条)解散事由を認識してから2か月以内に株主総会を開催し、解散の決議を採決しなかった場合、取締役が債務に対し連帯責任を負う、という規定を示した。 第一審判決は債権者の論拠を認め、会社及び二人の取締役たちの会社に対する責任に基づき、その債務返済を求めた。法的根拠としては、有限会社法第105条第5項を引用した。債務会社の取締役の一人は本判決を不服として、これを控訴した。 サラゴサ県の上級裁判所は控訴人の主張を支持し、取締役を会社債務の連帯責任から解放した。本判決の根拠は、債権者が債務者の経済状況を認識していたにもかかわらず、取締役の連帯保証を求めなかったこと、債権者が債務不履行のリスクを予見できたこと、という事実にあるとした。加えて、債権者の取締役と、債務会社の取締役の一人はいとこ・友人関係にあることを指摘した。控訴審判決は、その見解の根拠として2011年11月23日付および2013年4月14日付の二つの最高裁判所判決を引用した。 控訴審判決を不服として、債権者はこれを最高裁判所に上告した。 最高裁判所は、その判決の中で以下に挙げる事実関係を示した。 1)本件の債務は解散事由が生じる以前に発生したものであることは証明されている。 2)状況を把握しながら、取締役達は会社の解散を回避するための措置を取らなかったことは証明されている。 3)債権者が本会社の危機的状況を把握していたことは証明されている。 上記は全て事実であり、特に「債権者が債務者の経済状況を把握していた」という事実要素は一致していた。しかしながら最高裁判所は、債権者が債務者の経済的リスクを把握していたにもかかわらず債務者とのビジネス取引を続けていた場合は、債務会社の取締役は本債務の連帯責任を問われないとし、債権者が破産状態にあったという事実を単に把握していたのみでは、取締役の責任を免除する理由として不十分であるとし、第二審の主張を退けた。 最高裁は、債務者である会社が破産、もしくは財政が悪化している状態に加えて、債権者が不法行為を行った場合は、債務会社の取締役を免責にする可能性を示した2013年12月4日付の最高裁判所判決に言及し、これらのすべての事実関係は、取締役を免責にするために必要な条件であるが、それだけでは十分ではなく、債権者が、債務会社の債務不履行のリスクを認識していていたことを証明でき、債務会社の内実を知った上で管理できるような別の条件も考慮する必要がある(例えば、債権者が債務会社の支配的、もしくは関連のある株主である場合のように)とし、本件に適用する判例の要件の定義を明確にすることで結論づけた。 最高裁判所は、取締役の会社に対する責任の原則の例外の解釈において、一般的な規則を変性させるような例外規定を自動的に適用することを避け、分析中のケースを取り巻く個別の事実関係を照らし合わせて判断すべきという立場をとっている。これは、商業取引において優先すべき法的安全性に影響を及ぼす可能性がある。 Eduardo Vilá 詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月27日

企業秘密に関する法律

去る2018年2月8日、法務省は2018年の年次規制計画に含まれる予定である、企業秘密に関する法の法案を提出した。当該法案は、未公開の技術・ビジネス情報の保護に関する2016年6月8日の欧州議会および理事会の指令第2016/943号を、スペイン国内法に適用したものである。 本法案制定の理由によれば、企業の競争力は、技術革新の適用・実施、および企業秘密の安全な保持に基づいている。後者の保護が確かであることは、企業の技術革新の価値を高め、不正流用の危険を軽減することに貢献する。この状況において、企業の競争力を管理し、企業秘密の違法な取得、使用、開示から確実に保護することは、国の競争力を高めるための重要課題である、としている。 本法案第1条によると、本法律の目的は企業秘密の保護とされ、企業秘密には「技術・産業・商業・組織・財務上、会社に関連するいかなる情報」と言ったような広範な定義がされている。企業秘密に該当するためには、以下の要件を満たしていなければならない。 秘匿であること。つまり、この種の情報を扱う環境において一般的に知らしめられていないこと。あるいは簡単にはアクセスできないこと。 秘匿扱いすることによって、企業の価値が高まること。 情報の保有者が、秘匿にするための措置を設けていること 本法案第2条は、前第1条項を制限するものとして、合法とみなされる情報の取得方法を以下のように規定している。 発見又は独立して創造した場合 一般的にアクセス、もしくは合法的な所有が可能な製品・対象物を元に、観察、研究、分析、実験して得た場合 従業員及び代表者より情報の使用権利を取得している場合 合法的な事業活動により得た場合 同様に、以下に挙げるようなケースの場合は、企業秘密守秘義務違反は民事訴訟の対象にならないとされる。 マスコミの報道及び多元主義の自由への尊重も含めた表現の自由の権利行使を実行する場合 公衆の一般的利益保護の観点で、何らかの違反、不正、非合法的行為を見つけた場合 法律で合法であると理解されている利益保護を目的とする場合 他方、同法律案第3条は、不法的行為として以下を挙げている。 職業上守秘義務があるいかなる媒体の書類、対象物、材料、物質の許可なき取得。状況にもよるが、商慣習に反するとみなされるいかなるその他の行為。同様に、人が不法に使用していたと知りながらも、直接あるいは間接的に職業上守秘義務がある情報を入手することをも含む。 不法に取得、あるいは、守秘義務違反によって取得した企業秘密を使用、公開した場合。 法に違反している製品の製造、供給あるいは商品化、もしくは本商品を輸入、輸出、または仕入れること。 第5条は、企業秘密の守秘義務違反に対して取ることができる民事の行為について規定しており、要約すると、以下のものが挙げられている。企業秘密守秘義務違反の宣言、違反行為の停止命令、商品の押収、不法に取得された企業秘密の除去、違反商品の所有権の帰属(この場合、損害賠償金に上乗せされる)、故意又は過失が存在した場合の損害賠償、判決の全部または一部の公表または頒布。 第7条は、上記民事訴訟請求の時効を、行為が行われた時点から3年としている。第9条は、当事者適格について定めている。当事者適格を有する者は以下の者である。 企業秘密の所有者 情報を開発・利用をする独占的もしくは、非独占的なライセンスを取得していること明示的に証明できる者。 最後に、第16条から第20条は、第5条の措置に基づき、損害賠償に対応するための十分な安全性を確保しなければならない将来的に起こりうる予防措置を規定している。 Pedro Blanco より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年4月20日

マネーロンダリングに関する新規制

スペイン法務省は、マネーロンダリングのための金融システム利用の防止に関連した2015年5月20日付EU指令第849号第IVを国内法令化するための一連の措置をとることを提案した。又、同じく指令第Vに関しても、正式な法案が公示されてはいないものの、対策が取られる。 指令第IVについては2016年6月26日までに国内法令化されていなければならなかったことを、注記しておく。 以下の2点は、指令第IVが制定する基本的な義務である。 会社の実質的所有者に関するデータが各加盟国の中央登記所に保管されることの必要性 2.会社の設立や会社の書記役又は経営機能を担うサービスの提供者について、ライセンス制又は登録制とする必要性 データベースに関しては、会社の実質的所有者の情報について公証人が取り扱う統一データベースに始まり、公証人会は、動産及びサービスの市場において介入できる会社の実質的所有者が誰なのかを把握するために、より効力が強く完全な新しいデータベースを構築した。しかし、これは法的文書によってなされる会社持分譲渡や株式会社の株式譲渡を考慮していないため、網羅的なものとは言えない。 2010年法第10号の資金洗浄防止法の改正が行われる。これにより、商業登記所が商事会社へのサービスプロバイダの登録を取り扱うこととなる。これらのプロバイダには専門職(弁護士等)同様、個人・法人のいずれも含まれなければならない。プロバイダは、商業登記所が処理できるよう、特別登記への登記を申請しなければならない。 第3に、2018年から、そして2017年会計年度の開始から、計算書類に加えて、会社の実質的所有者、つまり、会社の資本の25%を保有する個人又は会社の経営を直接又は間接的に管理している個人に関する文書の提出が義務付けられる。会社の経営の管理が、中間に法人が存在する等、間接的である場合、当該法人についても記載しなければならない。取得された情報は、個人情報保護の条項の効力を受けるものの、申請すれば誰でも閲覧可能となる。 最後に、マネーロンダリング防止にかかるEU指令第Vの国内法令化については、商業登記所への申請をすれば誰でも閲覧ができる会社の実質的所有者に関するデータベースへの情報アクセスが容易になる。加えて、「実質的に所有」しているとみなされる個人の株式保有率が25%から10%へと下げられる。上記を補うものとして、情報交換条約に加盟しているEU加盟国間で開示されたそれらの情報へのアクセスを可能にする目的で、欧州各国の商業登記所間で相互に情報交換が行われる。これにより、加盟国間レベルで事業を行う又は事業を行おうとする会社や専門職の者に対してより大きな安全性と保障を提供し、マーケットにおける透明性を高めることを目指す。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2018年3月16日

仮想通貨と法規制の展望

政府および法令が対応し得るスピードよりも速く商業的発展や社会的変化が起こることは、しばしば見受けられる現象である。仮想通貨の場合2009年にビットコインが市場に登場し、ユーザによって迅速に受け入れられた結果として数百の仮想通貨が追随してから数年が経過した。同じような形態ではないにしても、今日、約1500の仮想通貨が世界中で使用されている(公式に存在する法定通貨の約7倍の数となる)が、政府の対応は今のところ無いに等しいか、あったとしても非常にゆっくりしたものである。 仮想通貨が非中央集権的な創造と貿易の産物であること、及び仮想通貨の発行に関する責任者が存在しないこと、そして価値の管理の面では、常に信用及びシステムに永続的に接続している個人に基づく状況であることを考慮すると、仮想通貨は法規制とは相容れないと結論付けることができる。基本的に、政府は通常の法定通貨を政府及び従来の権力によって効率的に管理・規制することができるが、仮想通貨の場合、前者とはかけ離れた、企業群と個人の間で共有される分散型元帳技術と呼ばれるデータベースによって効力を付与される。銀行及び規制当局は、仮想通貨取引に帰来する法定通貨の送金は常に停止することができるが、仮に仮想通貨が法定通貨に換金されていない場合は同じようにはいかない。 規制欠如のもう一つの理由は、政府が仮想通貨の規制をすることは法定通貨の一般的な信用を損ねることになり、結果的にシステムの崩壊に繋がる危険があると考える傾向にあるためである。第二に、もしかしたら政府は、この仮想通貨という現象への対処方法も、実際に法規制をする意味があるかどうかさえも分かっていないのではないかという推測も成り立つ。 実際のところ、とりわけ10代や若者を中心に仮想通貨をただの支払い方法としてだけではなく、投資の対象として購入する人は、ますます増加の傾向にある。最近の例では、ある若者はビットコインの購入理由として、自身の貯金では大きな投資は難しいが、仮想通貨は気軽に購入可能である上、支払いに使用することもでき、短期間での価値の増加も望めるためと述べた。おそらくこの若者は一般的に言えばその逆に、この手の投資は短時間で急落する可能性もあるという意識が欠落していたが、事実としては今のところ、この若者は正しいことを示している。 しかしながら、仮想通貨を「金銭」としてみなすべきか、あるいは無形のコモディティや資産とみなすべきか、という問いが存在する。仮想通貨は単なる投機の対象物、かつ、非合法な経済活動の道具となりうるものだという主張は、金及びダイヤモンドのような、他の資産価値が信用に基づくものであるものもまた、非合法的サービスや武器の購入の報酬手段として使用される現実と比較されるべきである。とすると、なぜ他の通常の資産への投資には仮想通貨より多くの貸付が付与されるのだろうかという、疑問も生ずる。 市場のアプローチは、通貨として取り扱うよりも、資産として捉える方向性にある。2017年12月、先物取引所および投資信託取引所において仮想通貨の取引が開始され、その高い価格変動性が素早い収益を促し、顕著な成功を収めている。最近のニュースによると、2017年度の一番収益の高かったファンドの収益の87%が、仮想通貨のエクスポージャーによるものだった。 市場は仮想通貨を、一般的かつ公式に認識されている支払い手段としてではなく、資産として扱っている。仮想通貨は実際には、それだけではないにしても、今の所通常の通貨として機能しているというよりは、物々交換経済の支払い手段とされているのが現状である。仮想通貨が支払い方法の一つとして使用されているのは、特定の商品もしくはサービスの供与の代わりに、同等の価値を有するとみなされる他の資産を売主が受け取るといった物々交換経済における同様の基盤のように支払い者と受領者の間の相互信用に支えられているためである。つまり、仮想通貨の価値の認識とその将来の価値への信用である。しかし、仮想通貨を「金銭」と呼ぶのは難しい。なぜなら、この概念は法概念を具体化しており、交換可能な単位として認められるためには名目上の力によって一定の法の承認を満たさなければならない。仮想通貨は同じ骨格を共有している。それらは分散された「金銭」だが、果たして正式に政府や中央銀行によって保証される従来型の金銭に等しい法定通貨と考えるべきだろうか? 少なくとも現状においては、そうすべきではないだろう。ほとんどの国が仮想通貨の法的性質についての考えをまとめられていない一方で、インドは仮想通貨を法定通貨と考えることを否定した。その代わり、それらを仮装「資産」と呼ぶことで、不法行為への資金提供のための使用を厳重に取り締まる対策を公表した。 スペインの財務大臣は2015年、仮想通貨は支払い手段として機能し、その特殊な性質から「その他所得」と考えるべきであり、したがって、その送信は付加価値税の課税対象となるが免税がされる、との結論を示した。 最近では、通貨当局は、紙幣の発行と並行して、デジタル通貨創設に対して門戸を開くべきとの提案がされている。つまり、中央銀行がデジタル通貨を公共に対して発行するということであり、個人又は法人はクラウドに設置される仮想通貨口座の所有者になるということであり、当該口座を取り扱うためのプライベートキーは中央銀行によって補完されるということである。この方法によれば、中央銀行は仮想通貨によって行われる取引に介入することができるようになり、同時に、預金保有者に対して合法的に責任可能となる。しかし、まずは、そのようなスキームを設ける利益及びそのようなコンセプトが一般に受け入れられるかについて、仮想通貨への投資は匿名で行われることを念頭に、自問すべきである。次に、もし仮想通貨がクラッシュしたら、政府は、多額の利益を求めて非常に乱高下することに賭けて仮想通貨に投資をした人を救済するべきだろうか。政府は先物に多額の投資をした者を助けるだろうか。もし答えがNOであるなら、なぜ仮想通貨については政府が救済すべきなのだろうか。 ロシアや中国といった一部の国が独自の仮想通貨を開発している一方、日本やベラルーシといった国では、仮想通貨を禁じたり妨げたりする代わりに、仮想通貨交換業を規制する法令を整備した。さらには、既に「仮装通貨国家」となる考えを述べているスイスのように、仮想通貨の世界資本となるようなアプローチをする政府もある。税の透明性に欠けていることで有名な他の国々や地域が短期間でそのようにならなければ、それは驚くべきことだろう。 銀行はどうだろう。銀行は、ブロックチェーン技術が金融取引の状況を変えていることを知ってはいるが、そのアプローチは、規制の枠組みがないことから、非常に慎重である。例えば、もし多くの銀行によってブロックチェーンが使用されたら、ブロックチェーンはSWIFT支払いに取って代わる結果となるだろう。つまり、仮想通貨の価値はネットワークへのシームレスコネクションにリンクしており、もしこれが失敗すると、彼らの現在の価値には大きな疑問符がつけられることとなるだろう。激しい乱高下は銀行にとって仮想通貨マーケットから当面は距離を置く、さらなる理由となる。しかし、銀行はその根底にある技術に深い興味を抱いているように思われる。リップル(Ripple)のケースでは、ブロックチェーン技術から生じるビジネスチャンスを逃したくないため、100以上の銀行及び金融機関が彼らの商品の一つを採用した。 仮想通貨は安全といえるだろうか。先週、この件についてマーケットと投資家に関するショッキングなニュースが飛び込んできた。1月26日のほんの数時間のうちに、500百万アメリカドル以上の価値のあるXEMコインの仮想通貨ユニットが、日本企業のコインチェックから盗まれた。ハッカーが同会社のセキュリティを破り、インターネットに接続されたコンピューターにあったホットウォレット内のバウンティを見つけたことにより生じた盗難だった。この盗難は約260,000人の投資家に影響を及ぼし、そのうちのほとんどが日本の投資家であったが、被害に遭った投資家に対して同会社は、420百万USドルを財源の上限とした部分補償を提案した。     2017年の4月、日本は世界で初めて仮想通貨交換業に関する法令を施行したことに言及するのは適切だろう。当該法令は、信頼でき、かつ、安全な仮想通貨取引のための確固たる基礎を構築することを目的として、財務及び技術の両面において将来の交換業者に非常に多くの要件を制定した。マーケットのプレイヤーとして参加するにあたっての規制を設ける方法での行政によるフィルターを持つことは、仮想通貨システムに対する公共の信用性を与える効果があった。日本の金融庁は2017年9月下旬に最初の仮想通貨交換業者の登録を12の業者に出した(今日における登録業者数は16)。以降、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格の爆発的な上昇を私たちは目撃した。これは、一部には仮想通貨を用いた取引を行う日本の小数投資家が多く参入したことによると言える。コインチェックは金融庁の登録を受けずに仮想通貨取引所の業務を行なっていたが、法の施行前から当該業務を行なっていたため、みなし業者として、業務の継続が認められていたためである。XEMコインの購入を決めた投資家のほとんどはミレニアル世代で、経済力に限りがあるが、彼らはシステム(そのセキュリティも含めて)を信用し、短期で大きな利益を得る期待を抱いていた。2014年にマウントゴックスで同様のケースが発生していたため、リスクがないと言うものはいなかった。アメリカの規制当局によれば、2009年から2015年の間、取引の約3分の1がハックされていたが、一般投資家はこの事実や仮想通貨取引のリスクにかかるその他の要素に気づかない場合が多い。コインチェックのケースで言えば、規制はハッキング予防には不十分であることが判明したため、日本の金融庁によって設けられた法的枠組みが十分といえるのか、といった疑問が投げかけられている。しかし、金融庁の立場から言えば、ブロックチェーン技術が未だ開発途上であるが、そのテクノロジーそのものにあるため、犯罪予防の解決策が金融規制当局の十分な管理下になかったということは、不公平ではないだろう。いずれにせよ、必要なものは、潜在的投資家に仮想通貨取引の基礎及びそれを支える技術、さらには、この種の資産とそれに関する取引に固有のセキュリティリスクを説明するための基本的かつ不可避的なルールであろう。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2018年2月9日

ブロックチェーンとスマートコントラクト

技術の進歩とそれがビジネスや社会へ適応していくリズムは、立法者が法制度の枠組みを制定するよりも早い速度で進んでいることは明らかである。仮装通貨の管理および仮想通貨に深く関わる「ブロックチェーン」は、そのような状況を表す二つの明確な例である。 ブロックチェーン(分散型ネットワーク)システムは、膨大な量のデータベースを管理するコンピュータネットワークによって生成される信頼および合意に基づいている。 ブロックチェーンは誰にでも開かれているパブリック型の場合もあれば、特定の人物にのみアクセスが限定されるクローズド型の場合もある。いずれにせよ、本システムの特質は、一元的管理者によってコントロールされているのではなく、接続されたすべてのコンピュータはシステム管理に同等に参加する、その非中央集権化にある。本システムは全てのユーザー間で、互換可能なコミュニケーション言語を使用する共通のソフトウェアによって管理される。 オペレーションシステムは暗号化、あるいはアルゴリズムの使用によって保護されている。この使用によりデータの改ざんを妨ぐことができ、ブロックチェーン内において妨害的あるいは不正確な情報が存在しないことを保証する。データベースには、ユーザーが各自実行する取引や登録情報が蓄積され、常に横断的かつ非階層的な変更および拡張にさらされている。同じシステムに接続された全てのコンピュータに共通した手順規定書(プロトコル)が、ブロックチェーン内で実行される取引の不可逆性、ひいては理論上の不可侵性を確立する。 データベースに保管されるブロック台帳は連続的に繋がり合い、仲介がなく、かつ、暗号化されていることに伴い改ざん不可能な条件を持つことにより、本システムは取引を検証する仲介者を要せず、ひいては、法制度上およびビジネス制度上、重要な結果をもたらすことになる。 なぜブロックチェーンの重要性がこんなにも謳われるのか?マス市場におけるブロックチェーンの使用によるダイレクトな結果のひとつは、多様な商取引分野における仲介者の消滅であろう。例えば、金融取引においてブロックチェーンを共有することによって、個人の間で直接支払い、受領が行われるようになると次の二つの事象が起こることが推測される。第一に、支払者の口座に資金があるかどうかを検証する仲介者が排除されること。次に、本取引がほぼ即時に成立するようになること。これは、SWIFT送金の終了さらにはクレジットカードによる支払仲介の終了を意味する。同様のことが信用取引にも言えよう。システムの敏捷性が従来とは異なる業者がこのような取引に参加することを可能にし、従来の金融機関と競合することができるようになるからである。したがって、銀行業界では伝統的なビジネスに並行して、ブロックチェーンをビジネス手段として活用している新しい業者と競い合うために、新しいブランドの立ち上げが待望されている。 ブロックチェーンのアプリケーションの一つに「スマートコントラクト」がある。これは一連の明確に定義された要因が満たされること(以下「条件」という。)で結果が生成されることにより、自動的な実行を可能とする当事者間のデジタル契約のことである。具体的なサービス契約をしたい等の特定のデータをアプリケーションに導入すると、アプリケーションシステムには契約者によって託された条件が登録され、契約者が同意したデータを使用して契約を実行する。一定の条件が発生するとシステムは、合意された内容を実行した結果である処理を自動的に実行するものとする。そこには、賠償金や和解金の支払いなども含まれるだろう。しかし、IT技術者には一見単純に見えることが、当事者間契約の状況や事実関係が曖昧である場合やシステムに導入された確立された要因が正確に一致しない場合などには、法的問題を生じさせることがある。例えば、小包の遅配は賠償の支払いに値するかもしれないが、遅れの理由が明確でない場合や運送会社に明確な非がない場合にも、賠償金を一律に払う必要があるのか、という疑問が生じる。コンピュータシステムはこの場合、たとえ法的に不公平だとしても、一律に実行する事になるであろう。 スマートコントラクトは、契約当事者の意思形成及び意思表示の場面において技術的な第三者の介在を許可することを意味する。我々はこれを、契約者が拘束力を持つ媒体として受け入れ合意した意志をコンピュータコード形式で明示した「デジタル」表現と呼ぶことができよう。コンピュータプログラムは、契約両当事者によって供給されたデータによって成立し、各当事者が合意に達した内容を与える仲介人として機能し、自動的に契約を実行する。しかし、システムが作動するには、法律用語をコンピュータ言語に正確に置き換えなければならず、契約実行システムのコンピュータ化あるいはロボット化は契約当事者の本来の意思の調節を促し、コンピュータ言語の欠如のために、偏向化あるいは単純化を招きかねない。両言語の間には非常に大きなズレが存在することは、すでに周知の通りである。 契約条項のシステム化とは別に、スマートコントラクトは、契約書を法的に特徴付ける最低限の要件である、目的、合意及び原因を持たなければならない。 分散化されたシステムは、契約の目的という点で法律問題の原因になりうる。しかし、少なくとも比較的単純な取引においては、システム自身が、契約目的が合法的なビシネスに属するか否かどうかを特定する能力があると考えるのが理論的である。 他方、スマートコントラクトにおいて停止条件あるいは解除条件は有効かという疑問がある。その答えはNO であるべきである。誰がシステムを管理しているのか、また、契約両当事者が裁判管轄に関する合意を交わしていない場合の裁判管轄はどうなるのか、という疑問は残る。 なりすまし詐欺を避けるために契約両当事者の本人確認の必要性、あるいは、取引に登録されたデータの実証の必要性といった、別の問題も生じている。並行して、コンピュータ間の契約、つまり取引成立に人の介入を要しない契約の場合の法的有効性の問題がある。法的安全性の観点において、とりわけスマートコントラクトがパブリック型ブロックチェーン内で使用される場合に、非常に重要な問題である。これらの問題に対する解決策は、登録データをフィルターに通し、本登録データが変更不可能なステータスを得る前に真性かどうかの検証を可能にするアプリケーションの開発といった技術革新の中にこそ存在する。 スマートコントラクトを商取引に使用する先行事例は存在するが、将来的に大量使用されることでシステムの欠陥が露見した際に、市場の参加者がこの種の契約形態を信頼できるよう、技術リソースの調整が求められることとなるだろう。 また、適切に処理され分析された何百万ものデータの蓄積を持つスマートコントラクトのシステムそのものが、人工知能によって生み出された分析システムに則り判断する、契約当事者に認められたデジタル仲裁人のもと、特定の契約上の紛争をロボット化された形式で解決する未来へと我々を導いていく可能性を、否定することはできない。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。 va@vila.es 2017年12月22日

選択的ディストリビューション契約: 非正規の第三者サイトにおける販売の禁止

2017年12月6日、欧州連合司法裁判所は、オンライン販売に関する契約上の制限に関して、非常に重要な判断を示した(事件番号第230/16号)。 本事件は、Coty Germany GmbH(高級化粧品製造会社)とParfümerieAkzente GmbH(販売代理店)との間の紛争に関して、フランクフルト高等裁判所(ドイツ)から欧州連合司法裁判所に照会がなされたため審理がされた。Cotyは、ディストリビューターがCotyによって認められていないインターネット・プラットフォームを使用して同社の商品を販売することを禁止する条項を、既存の選択的ディストリビューション契約に加える修正をしようとした。これに対しAkzenteは、当該契約の修正を拒否し、Amazon.de(ドイツアマゾン)を通じてCoty商品の販売を行った。その結果としてCotyは、当該販売行為の差し止めを求めてAkzenteを訴えたが、ドイツの第一審はこの訴えを退けた。Cotyはこれを不服としてフランクフルト高等裁判所に控訴し、同裁判所は、本契約修正条項がEU法制度およびEU判例法に沿っているかを判断する予備判決を欧州連合司法裁判所に求めた。 本件に関連して4つの質問が提起され、欧州連合司法裁判所の判断は、以下に述べる3つの重要な論点に集約される。 (1)   欧州連合機能条約(Treaty on the Functioning of the European Union “TFUE”)第101条第1項によれば、高級品の選択的流通網は、以下の条件を満たす限り、禁止されない。 販売業者は質に関する特性及び選択的な流通ルールの客観的基準に基づいて選択され、当該基準はすべての潜在的な販売業者に一律に課されること 製品の性質上、品質保持及び適切な使用を確保するために、上記のような選択的な流通ネットワークを要すること 規定される基準が、必要限度を超えないこと 欧州連合司法裁判所は、製品(この場合は化粧品)の威信と高級イメージを保持する必要性は、選択的 ディストリビューション契約の枠組みにおける販売制限の存在を正当化するとし、当該見解は2011年10月13日付ピエール・ファーブル判決に矛盾しないとみなした。 (2)   本件で問題となっている条項は、製品が認可された販売業者へ販売、関連付けられることを保証し、それによって、製品自体の品質イメージ及び高級イメージが保持されることを保証する。上記はさらに、ディストリビューション契約に定められた合意された販売条件に沿った適切な販売環境の保証をも含むものである。仮に製造業者との契約及び商業的な関係に拘束を受けない非認可の第三者サイトを通して製品販売がされた場合、適切な販売環境は保証されない。 このような条項は消費者が同製品に対して持つ高級イメージの保持に一貫して貢献し、ひいては同製品の主要な特性の保持にも貢献する。 同様に、2011年10月13日付ピエール・ファーブル判決とは異なり、本条項はインターネット上の販売を絶対的に禁止するものではないことは、強調されるべきである。すなわち、本条項は、高級イメージ保持のために必要限度を越えない、との判断を示した。 また、欧州連合司法裁判所は、約90%の電子商取引が、流通業者自身のオンラインショップにおいて行われているという最近の調査結果も考慮した。 上述を鑑み、問題となった契約条項は、(i) 商品の高級イメージを保持することを目的とし、(ii) 一律に適用され(差別的に適用されてはならない)、(iii)追及される目的に照らして相当であることから、欧州連合機能条約(TFUE)第101条第1項の観点において合法であると判断されるべきであるとした。 (3)   第三の問題は、当該契約条項が、 EU規則第330/2010号に定められる特に重要な制限の一つに該当し、欧州連合機能条約(TFUE)第101条第3項を理由として、当該EU規則に基づく一括適用免除の規定の恩恵を受けられるのかという点であった。 欧州連合司法裁判所は、当事者間で合意された選択的ディストリビューション契約は、ディストリビューターが第三者のサイト上及びネット上の検索エンジンで商品の広告をすることを許可し、消費者が公式の「オンライン」ディストリビューターが販売する製品を容易に見つけることができることを認めているとの見解を示した。 したがい、当該契約条項が特定の種類のインターネット販売を制限したとしても、それは(i)EU規則第330/2010号 第4条 b におけるディストリビューターの顧客の制限や(ii)同規則第4条 cにおける最終消費者への受動的販売の制限には該当しないとした。   欧州連合司法裁判所は、本判決によって、製造業者が、自社製品の高級感及び品質イメージを維持する重要性及び権利を強調し、選択的流通契約の枠組みにおける制限的措置の合法性を認めたといっていいだろう。これは、前述の製品が非公式の第三者サイト上で販売されることによって、製品の重要な特質が危険にさらされないようにすることを保証することを意味する。 現時点で明確に言えないのは、第三者サイトが製品の品質と高級イメージ保持の期待基準を満たしている場合には、当該契約条項は法的根拠を失い、販売差し止めを強制できなくなるのか、という点であろう。 Eduardo Vilá より詳細な情報につきましては下記までご連絡ください。va@vila.es 2017年12月8日